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特集 (株)アドフューテック 「顧客ニーズをつかみ独自の付加価値つけた計測機器提供」

2015年10月26日

特集のロゴ(仮) 今年原産協会の新会員に加わったアドフューテックは、東証一部セイコーホールディングの中核企業であるセイコーインスツル(株)から出資を受け、2004年10月に放射線測定機器の専門会社として設立。現在は放射線計測機器の輸入販売に加え自社開発のソフトウェアやハードウェアの販売も行っており、モニタリング分野などを中心に福島の復興へ向けて大きな力を発揮している。同社で活躍する3名に話を伺った。(中村真紀子記者)

AdfutechIMG_6274根本龍男代表取締役=写真中央
原明常務取締役(放射線事業管掌)=写真右
矢島辰雄放射線事業部営業企画課長=写真左
 弊社、アドフューテックは現在創立11年目で、放射線計測機器の輸入販売や自社開発ソフトウェアおよびハードウェア販売を行っています。セイコー・イージーアンドジー(株)との協働によるガンマ線スペクトル解析プログラム開発を主な業務として、事業を始めましたが、輸入販売を行いながら顧客のニーズを探っていく中で、新しいコンセプトの弊社独自計測器なども開発しています。海外との取引も多く、弊社でしか取り扱っていない輸入製品も多数あります。また弊社ではただ製品を輸入するばかりでなく、さらに付加価値をつけてユーザーに使いやすいように提供しています。弊社の根本代表取締役は兄弟会社のクリアパルス(株)とコンピューター総合研究所(株)の代表取締役社長も兼務しており、これまでに培った放射線測定関連技術とIT技術を融合して、社会に貢献できる製品を送り出しています。今回はアドフューテックで取扱っている製品の一部を紹介させて頂きます。
●「AT1320シリーズ」食品放射能(セシウム)スクリーニングシステム
 福島第一原子力発電所事故から間もなく、ベラルーシのATOMTEX社製「AT1320A」および「AT1320C」食品放射能(セシウム)スクリーニングシステムを国内に紹介しました。当初のシステムはセシウム134/137の合算放射能値の測定結果報告でしたが、顧客からの開発要請の声に応えて、セシウム134/137の個別放射能値の算出や、人工核種と天然核種の違いがわかるソフトウェア開発、日本語表示でスペクトルと解析結果印刷できるソフトウェアの提供で、利用者の使い勝手の向上を図りました。
 2011年9月1日に福島市給食センターに納品し、早い段階から放射線計測装置で福島県内の食品放射能検査に貢献することができました。同システムは他社製品に比べ、低価格/高性能を実現し、温度自動校正装置の採用等で、厳しい現場環境でも格段の稼働率を誇ることができました。当初は特に営業活動も行わずに口コミで広まってご購入して頂き、累計400システム以上を福島県内に納入しました。
●AT6101DR GPS内臓土壌汚染スクリーニングシステム
 「AT6101DR」は、果樹園や水田などの土壌中に存在するセシウム134やセシウム137および天然放射性核種であるカリウム40などを直接的に測る装置です。設置してから5分ほどで1kgあたりのベクレル値が測れ、簡便なデータ採取を可能としました。GPSによる位置情報を線量率、スペクトルと同時にマッピングできるところも評価されており、地方のテレビ局でも何度か紹介されました。JA新ふくしまなど多くの機関で活用されており、そのユーザーの一つである福島大学では「ロケット」の愛称で親しまれています。
●RS-500 放射線線量率マッピングシステム
 カナダのRadiation Solutions Inc.が製造している同システムは、上空からヘリコプターで線量を測定します。米国エネルギー省(DOE)が使用しているのと同型を日本原子力研究開発機構(JAEA)が購入され、福島第一原子力発電所事故の際に航空機サーベイで全国のマッピングを行いました。この装置で測定し線量率が色分けされた東北・関東地区のマッピングは、国民に一番理解しやすいかたちで提供されました。
●Srl2:Eu ヨウ化ストロンチウムシンチレータ
 低エネルギーから高エネルギーまでの広いレンジで優れたエネルギー特性を持ち、更にすぐれた半値幅分解能を持つシンチレータで、米国が国策で開発し、2009/2010年の米国「R&D100」にも選ばれた製品です。一般的なガンマ線用のシンチレータはNaI(Tl)検出器を使うものが主流ですが、半値幅分解能が6.5%から8.0%程度でセシウム134と137を分離できませんでした。
 本製品では3.2~3.5%の高分解率で、今までNaI(Tl)検出器では判定できなかったセシウム134と137の分離が可能になりました。弊社が初めてSrI2:Eu検出器を採用したシステムを実用化しました。
●Prime スペクトルユーザインターフェース
 弊社が独自に開発したシンプルで使いやすいインターフェイスです。簡易な操作で他社のMCAのファイル変換が可能で、一目でわかりやすい表示を実現しました。
●Prime In-Situ システム
 多機能スペクトロメータである本製品は、地表に沈着した放射性物質の放射能濃度や沈着物に起因する空間放射線量をSrI2:Euシンチレーション検出器を利用して測定できます。これまでは高分解能ですが高価格なゲルマニウム半導体検出器を使用したIn-Situ測定が主流でしたが、低価格のSrI2:Euシンチレーション検出器でも、実現できました。福島県大熊町で2013年に実際に測定した際には、福島県庁や福井県庁のご担当者も測定に同行されました。ゲルマニウム半導体検出器は使用する際には液体窒素や電気冷却に約8時間を要しますが、本製品は電源を入れてすぐに測れるので、緊急時のデータ計測に適しています。
●AFT-DDS 可搬型放射線深さ分布スペクトロメータ

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可搬型放射線深さ分布スペクトロメータAFT-DDS

 深さ方向の情報を測定できないかとの声に応えて自社で開発しました。AFT-DDSという名称ですが、現場では「天狗」の愛称がついています。長いアルミの部分に独立した10系統のCsI検出器が組み込まれています。セシウムは、未整地の果樹園などでは表層から5cmほど、水田などかきまぜてしまうと15cmほど、流れで土の状態が変わる河川などの場所では、表面から40cmほどの深いところに溜まっているとされ、除染で剥しても適切でなければ数値は下がらないことがあります。これまでドリルで土壌サンプリングを行い、測定室でワンサンプル毎に何時間もかかって正確な数値を出し評価をしていましたが、この装置では、5分以内でその場所のBq/kgで放射能分布がわかります。
●そのままはかるNDA(んだ)
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そのままはかるNDA(んだ)

 本来NDAは「Non Distractive Assay」の略ですが、開発当時流行っていた朝ドラの「あまちゃん」の東北地方の方言にちなんで「んだ」と読んでいます。輸入品での経験を活かして改良化を図り、すべて国産化した製品で、ソフトウェアはアドフューテック製、ハードウェアはクリアパルスに製造委託しています。食品モニタリングの開始当初は、1リットルの検体が必要で、キャベツなどは千切りにした上でぎっしり詰めなければならなかったため、給食センターなどはともかく、個人菜園等では大量サンプルの用意は大変で、検出用につぶしたりきざんだりしたら食べられなくなってしまいました。「そのままはかるNDA」では食品を丸ごと非破壊で測ることができ、おばあちゃんが作った野菜を孫に食べさせる時にお母さんに安心してもらえるよう、銀行のATMのように住民が気軽に立ち寄って簡単に測れるイメージで開発されました。タッチパネル式になっていて画面上の食材の絵をタッチすれば測れ、一般の方には○×で測定結果が表示されるし、食品管理者向けにはスペクトルを見て数字を確認するメニューも選ぶことができます。すでに、福島県内に42式が納入されています。
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 この他にも弊社開発製品として、SrI2:Euシンチレータスペクトル収集システムを活かしたマルチコプタ(ドローン)搭載スペクトル収集システムなどがあり、大学や研究機関などとも連携を図りながら新たな製品づくりに取り組んでいます。
 また原子力発電所向けには、中部電力と新規制基準に合わせたマルチコプタ放射線モニタリングに関する協力を行っており、来年度には実用化を予定しています。有事の際は海域1キロ先の海洋サンプリングや線量測定を行うことが要求されていますが、浜岡原子力発電所は港に出るまで迂回が必要なため、マルチコプタを導入することとしました。風速20m/秒でも安定して飛行し1リットルほどの海水サンプリングも運べるよう、厳しい環境下での自動運転にも対応を進めています。
 弊社の歴史はまだ11年ですが、放射線計測20年以上の経験者が集まっています。余談ですが矢島課長は福島第一原子力発電所事故以前、簡易放射線モニター「はかるくん」を発案し、低価格の学習・教育用の放射線測定器としてクリアパルスが開発および製造を行っております。結果として、国民の皆様の安全に対して、大いに貢献することができました。
 弊社は世界中から放射線を測るための様々な機器、装置を紹介させて頂いており、さらに自社製品を加えシステム化する事業も進めて「放射線の窓口」として、顧客の皆様に頼れる存在になる事を目指しています。弊社の最大の売りは、顧客のニーズに合わせた優れたものを紹介できることであり、小さな組織なのでタイムリーに製品を紹介できる強みもあります。福島県内の現場にも常に誰かが足を運んでおり、おいしい食べ物ばかりの土地なので、つい太って帰ってきてしまうのが心配の種ですが、今後も放射線計測を通して、福島の人たちをはじめ社会に貢献したいと、社員一同努めています。