フォントサイズ:

天野IAEA事務局長 農業・医療分野などの原子力技術利用アピール

2017年10月5日

 日本国際問題研究所(JIIA)は10月4日、天野之弥国際原子力機関(IAEA)事務局長を招き、「『平和と開発のための原子力』とIAEAの役割」と題する講演会を都内で開催した。
 天野事務局長は、IAEAは核の番人としての役割だけでなく、食品安全、農業、健康問題、水資源管理、環境保護、工業などへの原子力技術利用も支援していることを強調。放射線照射で昆虫を不妊化させ害虫を駆除する技術により、ツェツェバエや地中海ミバエを撲滅し農産物の輸出ができるようになった例や、放射線照射による品種改良で過酷な生育条件にも強い品種を開発することにより食糧問題を解決した例、放射線医療機器による病気の検診や治療で途上国の人々の健康面向上に貢献している例などを紹介した。
 10月3日の河野太郎外相との会談では、日本政府がIAEA原子力応用研究所の改修プロジェクトに対して100万ユーロの拠出を決定したとの報告を受け2日の島津製作所訪問では、IAEAへに対し食品の安全を確認できる高速液体クロマトグラフ質量分析計の寄贈や同社の技術者派遣などの協力で合意した。天野事務局長はこれらの支援に感謝の意を示すとともに、他の国際機関とも協力しながら、今後も原子力技術を世界の繁栄に役立てていくことに意欲を示した。
 原子力発電については、福島第一原子力発電所事故以降、ドイツ等の撤退例ばかりが取り上げられることが多いが、一方でアラブ首長国連邦など新規に導入する国も多く、地球温暖化防止の観点から原子力発電所の新設も必要とされると言及。今後も原子力発電が世界のエネルギーミックスの中で重要な位置を占めるとの考えを示した。また、事故以降原子力の安全は向上したが、事故を未然に防ぐのと同時に、万が一事故が起こった場合に被害規模を最小限にする努力も不可欠であると語った。

左から野上JIIA理事長、今井原産協会会長、岡本外務大臣政務官、天野IAEA事務局長

 一方、急速に核開発を進める北朝鮮に触れ、「核活動に関してやると言ったことはほぼ実施してきており、地域だけでなく世界全体への脅威になっている」との見方を示し、IAEAでは8月に専門チームを発足させ、知識を集約して核活動監視能力を高め国際社会と共有するとともに、将来IAEAの査察が可能となった際に素早く対応できるように体制を整えていると報告した。
 講演後に行われたレセプションでは、野上義二JIIA理事長と岡本三成外務大臣政務官が挨拶。続いて今井敬日本原子力産業協会会長が「天野事務局長には原産年次大会でもたびたび講演を行っていただいているほか、福島第一原子力発電所事故後にはIAEA特別調査チームをすぐに派遣してデータを国際的に公表していくなど、風評被害の払拭に努めていただいた」と述べ、天野事務局長の再任を祝して乾杯の音頭を取った。