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エイブル 原子力発電所の現場で培った技術力を廃炉作業や再生エネルギー分野でも発揮

2018年1月10日

エイブルはプラントの建設や保守を出発点として1992年に創立。原子力発電所内での作業ノウハウを活かしながら課題解決に向けたロボット開発なども手掛け、福島第一原子力発電所廃炉作業でも大きく貢献している。同社の佐藤順英代表取締役に話を伺った。

佐藤順英代表取締役

<現場に即した対応力で短期に課題を解決>
 エイブルは、発電所などのプラント建設・保守を最も主要な事業としており、機器、装置、配管などの据え付け工事やメンテナンス工事を手掛けている。弊社は創業当時から原子力発電関連事業に取り組み、プラント建設の段階から発電所の中に入って作業しているので、建設上のコンセプトもよく理解している。
 特に福島第一原子力発電所に関しては、扉はどちら側に開くか、行きたい方向に行くためにはどこから入ればよいかなど、隅々まで把握している。自身は前職で東京電力の系列会社に在籍しており、プラント内部を手掛けるエンジニアだったので、現場を見て何が起きているのかを把握し、困っていることを熟知した上で、プラントに携わるどのメーカーの顧客にもお役に立てればという思いがある。また、顧客がまさに今困っている課題に対し、すぐ駆けつけて解決策を考え、その場で対応することを重視している。
 こうして原子力を事業の中心に据えてきたため、やはり東日本大震災の影響は多大だった。福島県大熊町にあるエイブル本社は、福島第一原子力発電所事故で立ち入り禁止となってしまい、現在は広野工業団地内に事務所と研究所を移している。

プラント保守作業

 現在は、原子力発電所の再稼働に向け、柏崎刈羽原子力発電所や浜岡原子力発電所等の新規制基準対応の安全対策など、微力ながらお手伝いしている。震災後も弊社が定期検査から手がけてきているFMCRD(改良型制御棒駆動機構)やRIP(インターナルポンプ)など原子炉周辺の安心安全なメンテナンスがきちんとできるよう、技術者を絶やさず引き継いでいくことを信念として現在まで頑張ってきており、これから再稼働が進んでいくことを期待している。

<CO2排出削減に向けて再生可能エネルギー事業も展開>
 弊社は再生可能エネルギーに関しても、設計・調達・建設(EPC)が可能である。太陽光発電は2013年より手掛けており、福島県内に建設した3か所のメガソーラーは、いずれも稼働中で約4メガワットの発電を行っている。また、木質バイオマス発電所を協力会社とともに2019年初頭にいわき工業団地内で着工し、国内最大級の112メガワットを発電する予定で、海外から木質100%のペレットを輸入して地元の小名浜港に建てる保管倉庫から内陸の発電所までピストン輸送で運び、環境にやさしい発電を実現していく。
 さらに水素燃料電池に関し、水素を吸着できる金属を中に入れた消火器のような形状のキャニスタを使用した蓄電システムの実用化に向けて研究開発を進めている。これらの事業を通じ、被ばく線量の制限があり原子力発電所内に入れない社員の雇用を支える一方、弊社自らが発電所を手掛けることでノウハウを蓄積し、将来のエンジニア育成などにもつなげようとしている。
 再生可能エネルギーも原子力発電と同様にCO2排出削減に貢献できるとして力を入れているが、安定供給など全体を考えてみるとやはり原子力発電をなくすことはできない。エネルギー問題に関しては、なかなか冷静な議論がされず国民の理解が十分得られていない面があるが、弊社としても原子力発電の安全面などについてきちんと説明していかなければならないと考えている。

<福島第一原子力発電所の排水作業を短期で成し遂げ東京電力から表彰>
 震災の後で人が立ち入ることができなかった福島第一原子力発電所では、まず周囲の伸びてしまった木を切らないと作業ができない状態だった。そこで、既存クレーンの先端につけて、作業車の中でモニタを見てジョイスティック(方向を操縦するレバー)を使い遠隔操作で木を切るなど、人に代わって線量の高いところでも仕事ができるようなロボット等を作ってきた。
 2016年夏、福島第一原子力発電所1、2号機周辺の高線量地区での難工事において、弊社が開発したロボットにより半年という短期間で直面していた問題を解決することでき、東京電力様から表彰いただいた。この工事をきっかけとしてスピード感をもって正確に作業を進める弊社の実力が認知されてきたことは喜ばしいことである。

福島第一で活躍した汚染水処理工事用ロボット


 福島第一原子力発電所では、弊社など中小企業の人たちも協力し合い、一丸となって廃炉に取り組んでいるが、大手メーカーに隠れてあまり知られてこなかった面もある。今後はフットワークよく取り組むことができる地元の中小企業をうまく活用しながら廃炉を進めて頂ければよいと思う。
 こうした開発や研究は大変だが、弊社はやりがいを感じて取り組んでおり、広野事業所奥の大きな建屋の中で実証実験を行っている。設計図だけの段階で現場に行くのではなく、加工場などで組み上げて実際と同じ大きさのモックアップ環境を整え、想定通りに動くかどうか確認した上で現場に臨んでいる。一から積み上げるばかりでなく、既存の製品や技術を組み合わせたり、これまで原子力発電所の現場で培ってきた知識を応用したりして、早期の課題解決に努めている。こうして遠隔操作等の技術も蓄積していき、先々は介護など別の多様な分野でも応用できればと考えている。
 将来の原子力人材の確保は大切であり、弊社では現場でボルトを締めたり、声をかけあって資材を運んだりできる人材の育成がまず基本となる。例えば計器が故障していた場合、そこに信号を送る配管が詰まっているのか、計器そのものが壊れているのか、複数の可能性の中から正しい解決策を判断した上で、その場で対応しなければならない。2人で動かせる資材も管理区域内ではより多くの人員確保が必要であるなど状況に応じた手順の選択も必要となる。来年度も弊社の姿勢や志に納得してもらった上で10人ほどの新卒入社が決定しており、実際に現場で手を動かして作業のできる人材を絶やさないようにしたい。