フォントサイズ:

スギノマシン 高圧水技術やロボット技術などで廃炉時代の新たな課題にも対応

2018年6月25日

 富山県に本社をおくスギノマシンは、自動車、航空機、医薬品・化粧品、エネルギーなど幅広い分野で活躍する機械や装置を製造・販売し、地域に根差しながら全世界へ高い価値の製品を届ける「グローカルニッチリーダー」を目指している。同社プラント機器事業本部生産統括部の酒井英明執行役員/統括部長と中田正宏第二技術部PE設計課長に話を伺った。

中田正宏PE設計課長(左)と酒井英明生産統括部長

<チューブクリーナの開発から発展した多様な製品が発電所内でも活躍>
 スギノマシンは1936年、蒸気機関ボイラなどの配管内部に付着した缶石(スケール)を取り除く清掃機械「チューブクリーナ」専門工場として創業した。ここから、超高圧の水で様々な材料を切断するウォータージェットカッタ、高精度で金属部品を削り出すマシニングセンタ、高圧水で部品の切りくず等を除去する高圧水洗浄機など、多彩な商品群を生み出してきた。
 創業翌年に製品化したチューブエキスパンダ(拡管工具)は、ボイラや熱交換器のチューブを内側からローラで押し広げて圧着接合するもので、発電所には多くのボイラ関連製品があるため、戦前からエネルギー関係の取引があった。1960年代より重電メーカーと共に新型転換炉「ふげん」で、カランドリア管の圧着接合や保守機器などを手がけ、ここから原子力関係の仕事が始まった。当初は、原子炉サービス機器などが主だったが、次第に炉内機器保守装置や検査機器も製作するようになり、その後も原子力発電所の進化に対応しつつ重電メーカーの指導を受けながら、製品開発を進めていった。

高さ27mの試験タンク

 これまでに、高圧水を使った除染装置、圧力容器の溶接部などに傷がないか調べる供用期間中検査(ISI)装置、制御棒駆動用シリンダ洗浄装置など様々な製品を原子力発電所に納品してきた。フロントエンドでは燃料ペレットの検査機器および運搬装置など、バックエンドでは遮へい付きのハッチや廃棄物の減容装置などが利用されている。
 2002年頃からは炉内構造物の取替え工事を行う原子力発電所などで、廃棄物減容のために弊社のアブレシブウォータージェット切断装置が活躍している。また予防保全分野では、原子炉内構造物の溶接部分に発生する応力腐食割れを防ぐため、水中で高圧の水流を発生させ、気泡が崩壊する衝撃圧で対象部を押し延ばし圧縮応力を付加する、ウォータージェットピーニング装置を製作している。こうした機器の取り扱い時は実際に我々も現場に立ち会って、顧客と一緒に工事作業を行っている。
 早月事業所に設けられた技術センターには直径4.5m、高さ27mの試験水槽などの施設があり、原子力発電所の定期点検時に原子炉圧力容器に張られた水の深さを模擬できる環境を保持している。水を張った狭隘部で仕事をする装置やロボットなどは、ここでしっかり試験を行い、現場で確実に作業を行える製品を納めている。

<廃止措置では3D技術によるロボット経路などソフト面の開発も>
 2011年の福島第一原子力発電所事故以降は、以前から行ってきた遠隔操作技術の取り組みを活かし、水深30mでも使用できる耐放射線性を備えたロボットやクローラなど、廃止措置および事故対応装置の開発にも携わっている。2013年には、重電メーカーと共同で壁面や床面などを除染する高圧水遠隔除染装置に取り組んだ。2015年からは燃料デブリ取り出しの研究に取り組んできており、今も工法開発を行っている。このほかにも、線量を遠隔で測定する装置、原子炉建屋の補強装置や、原子炉圧力容器内部調査用の装置なども重電メーカーに指導いただきながら開発している。

バルブをつまんで開閉することも可能なロボット

 ロボットの技術開発では、ハードももちろん大事だがソフトも非常に重要だ。特に10年以上前から取り組んでいる3Dシミュレーションでは、周辺環境の情報をスキャナで取り込み、出発点と到着点の位置情報を与えるだけで途中の干渉物を回避する経路を自動で生成できるソフトを開発している。一般のシミュレーションとは異なり、弊社の技術ではロボットのセンサーデータを元に3D画面のロボットを動かしているので、ロボットが止まれば画像も止まり、瞬時にオペレータが異常を把握できる。この技術をさらに発展させて、遠隔地で通信しながらシミュレーションを行って実機を操作すればオペレータの負荷軽減につながり、工場と現地で相互に情報を共有化できるので日々変化する現地工事に対応する態勢を整えられると考える。

<失敗しても次に活かしていこうとする社風が優れた後継人材を育てる>
 弊社の技術を担っていく若手を育成するには、まずはこの課題に取り組んでみると面白いぞというところを見せて、興味を持たせることからだと思っている。開発では沢山手がけた中のいくつかが成功するだけで、埋もれていくものも山ほどある。だからといって諦めさせず、その経験を次に活かしてやってみろという度量が社風としてある。厳しいスケジュール管理は要求するものの、きちんと開発をやり遂げる環境を作らなければいけない。また、最初に出来上がったものは必ずしも完璧ではないので、どうブラッシュアップしていくかアドバイスしながら、担当者のモチベーションを維持して完成させていかなければならない。
 スギノマシンでは、創業当初からエネルギーに関わる仕事をしてきたからこそ今があるという思いがあり、原子力事業の重要性に非常に理解がある。また、厳しい時代でも継続的に人材が途切れないようにして技術を伝承してきたので、それぞれの年代に教える人がいるのが強みだ。今後も弊社を担っていく次世代へと技術を引き継いでいきたい。