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「J-PARC」の産業利用で報告会、供用開始から10年をとらえ記念セッションも

2018年7月25日

J-PARC報告会/記念セッションの模様

 大強度陽子加速器施設「J-PARC」(茨城県東海村)の産業利用成果に関する報告会が7月23、24日、都内で開催された。日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が共同運営する「J-PARC」は、世界最高レベルのビーム強度を有し、多彩な二次粒子の生成で、基礎科学から産業応用まで幅広い研究手段を提供する実験施設群として2008年に供用を開始した。
 今回の報告会では、特に中性子ビームについて、産業界が利用しやすい仕組み作りを目指し、「J-PARC」供用開始と同時期に発足した「中性子産業利用推進協議会」(会長=今井敬・新日鐵住金名誉会長)の設立10周年記念セッションも設けられた。
 記念セッションでは、「中性子産業利用推進協議会」発起人の一人である庄山悦彦副会長(日立製作所名誉相談役)が挨拶に立ち、「日本が知的創造立国としての強みを発揮し、国際競争を勝ち抜くには、2世代先取りした技術開発をしなければならない」と訴えた。その上で、ものづくりを支える新材料開発での量子ビーム利用の重要性を述べ、「大学や企業を巻き込み産学官が連携して成果をあげる仕組み作りが必要」などと、研究施設の活用に向けて協議会の役割を改めて強調した。
 また、J-PARCセンター長の齊藤直人氏は、これまでに500件以上の課題を採択し産業利用で成果をあげてきた「物質・生命科学実験施設」(MLF)の現状を説明した上、成果創出の加速化、将来の大型計画の実現に向けて、まずは、「施設の稼働率をあげる」必要性を繰り返し強調した。

中性子産業利用推進協議会の設立総会で挨拶する橋本昌茨城県知事(2008年5月当時、東京・お台場にて)

 茨城県も独自に2本の中性子ビームラインをMLFに設置し産業界の利用に供しているが、県産業戦略部の富田俊郎氏によると、産業利用では、県ビームラインを利用した課題がMLF全体の61%を占めており、今後も、地域産業への波及の他、中性子関係の教育・研究拠点の形成にも活かしたいとしている。
 また、日立製作所材料イノベーション研究センタの村上元氏が特別講演に立ち、材料技術開発における量子ビームの活用事例として、「稼働状態にあるモーターの磁場の可視化」について披露した。これにより、磁気測定結果を活用しモーター設計の高精度化につながり、従来より40%薄型化した「アモルファスモーター」開発の成功は、日本産業技術大賞(日刊工業新聞主催)で2018年の総理大臣賞を受賞した。