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特集 キュリオン社「技術で信頼の確保を」 福島第一で貢献

2015年3月26日

特集のロゴ(仮)

 原産新聞は、多角的な視点から原子力産業界の魅力や課題を情報発信していく特集「原子力―支える力、伸ばす力」を開始する。第1弾として、2015年1月より日本原子力産業協会に加入したキュリオン社を取り上げる。米国での豊富な経験を活かし、廃棄物の分離・安定化技術で福島第一原子力発電所事故での汚染水問題解決に貢献している。(中村真紀子記者)

放射性廃棄物の管理における優れた実績
レイモント取締役社長
レイモント氏 キュリオンは、現在4つの技術を福島第一原子力発電所に提供している。まずセシウム吸着塔を2011年に導入し、非常に良い性能を発揮している。また、モバイル型ストロンチウム除去装置を2台納入しており、東京電力に重用されている。さらに、当社のロボット技術が、2号機格納容器内の漏えい箇所特定に活躍した。
トリチウム除去技術は経済産業省の補助金対象となり、2016年3月までに実証を終える予定だ。本件は海洋放出に関して漁業組合が懸念する点でもあり、世論から原発の信頼性を取り戻すためにも大切だ。キュリオンの技術で海洋放出の必要がなくなり、発生した水素をエネルギーとして利用していけば、これまでの原子力に対するネガティブなイメージをポジティブに変えられる良い機会となる。
2011年の事故直後はまだ余震も続いており、情報が極度に少ない中で、製品を非常に早く納入しなければならなかったため、短期間でかつてない努力が必要になった。しかし、その結果期待に応える製品を納入できたため、努力が報われたと感じている。キュリオンには難問に対して解決する能力があると信頼してもらえれば喜ばしい。またモバイル型ストロンチウム除去装置の導入時には、工場で製作した部品をそのまま運んできて据えつける方式により、高品質のものを迅速に納入できた。

福島第一原子力発電所内の同社セシウム除去システム

福島第一原子力発電所内の同社セシウム除去システム

自身は、キュリオン創設前に原子力廃棄物管理会社NUKEMの社長の経営経験があり、多くの原子力発電所での実績があった。福島第一発電所事故が起きた時も、どのように実施していくかという点は問題だったが、解決方法自体は既知のものだった。現在では、東京電力をはじめ、アトックス、東電設計、東京エネシス、大日機械工業などと良好な協力関係を築いている。
キュリオンは、マンハッタン計画以来の米国内放射性廃棄物の浄化を手掛けている。また、放射性廃棄物の処理について、欧州でも複数国で事業を展開しており、今後日本でも事業を拡大していきたいと考えている。キュリオンの技術には、自社開発のものも多数あるが、パシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)発祥のガラス固化技術などもある。今後もライフサイクルコストを低減できるような技術を所有していきたいと考えており、そこで他社との差別化を図ろうとしている。
日本で活動するにあたり、キュリオンが日本の企業のように見え、日本の企業のように活動することが重要と考えている。2年前より岩崎氏が日本代表として就任したほか、ほぼ福島に駐在している日本人コンサルタントも活躍している。
米国内では、夏にインターンシップで原子力について学べる機会を提供し、若い世代に原子力業界に興味を持ってもらう活動も行っている。
ステークホルダーに対しては、できるだけ情報を開示することが重視されており、キュリオンも努力を続けている。米国内では周辺住民にサイトを訪れてもらい、処理方法についても地域の声を聞きながら、一緒に進めている。意見聴取の過程では、サイト側の最高責任者も同席することとなっており、意思決定者と顔を見て直接話すことで安心感を持ってもらっている。
日本に来て、東京電力を始めとする日本の知己を得たことは個人的にも非常に重要なことだと思っている。特に人を助けるという機会が与えられて福島第一発電所事故の収束に関わることができたことは感慨深い。日本人は自国を良くしていくことに国民としてプライドがあると思う。こうした人たちと一緒に働くことは、当社としてもプロフェッショナルなゴールを実現する場となる。これからも日本や福島に貢献していきたい。

米国での知見を活かす
岩崎洋平副社長/日本代表

Yohei_Iwasaki 自身は、日本で弁護士を経験した後シリコンバレーに留学し、起業家の多い現地の雰囲気に触発されて農業用保水技術事業を米国内で立ち上げた。資金も順調に集まり軌道に乗ってきていたところだったが、東日本大震災が起き、何か日本のために役立つことができないかと考えていた。そのような時にキュリオンのことを知り、自分の会社は別の経営者に託して入社した。キュリオンは米国企業として唯一、東京電力と契約して福島第一原子力発電所に製品を納入している会社。米国で蓄積してきた知見を日本で活用できることに個人的にもやりがいを感じている。少しでも日本や福島に貢献できればと考えている。

【キュリオン社】
ジョン・レイモント氏とラックス・キャピタル社のジョシュ・ウルフ氏の共同ビジョンに基づき、放射性廃棄物・有害廃棄物の分離・安定化ソリューション企業として、2008年に設立。米国カリフォルニア州アーバインを拠点とし、ワシントン州で二つの非放射性試験施設を運営している。欧米に事務所があるほか、日本にも子会社としてキュリオンプラントサービス社があり、顧客サービスの向上を目指している。