ロシアにおける工業所有権の保護に関するセミナー(2010.2.23)

 昨年5月の日ロ原子力協定の締結により、同協定の発効後には、両国間で具体的なビジネス、原子力関連の資機材の輸出の進展が予想されます。今後、ロシア市場への参入を希望する関係企業にとって有用な情報提供の機会となると考え、当協会は2月23日、都内で、ロシアにおける工業所有権に関するセミナーを開催しました。

rosia13 セミナーでは、ロシアの特許弁理士事務所のイネウレカ社(INEUREKA)CEOのエジェフスキー氏(=写真左)と、特許部門チーフのコズィレコワ氏(=写真下)が来日し、工業所有権の保護に関連する法整備、特許出願の状況と適用事例について説明がありました。

 工業所有権(発明、実用新案、意匠、商標等)、ノウハウの権利は、市場参加を維持するための重要なファクターです。経済的に難しい状況においても、近年のロシア特許庁への出願件数はロシア国内、海外からもコンスタントに増えていること、内、日本からの出願は、機械設備、家電製品、デジタル製品等の製造産業が主であるが、食品や医薬品産業も増加傾向にあることが紹介されました。

rosia23 ロシアで特許取得件数の多い日本企業はロシアに対する経済的関心、財・サービスの結びつきも強く、積極的な事業展開をはかっています。ロシアのWTO加盟の暁には、海外企業のロシア市場進出もダイナミックに増大し、現在、潜在的な市場参加希望企業の出願も積極的になるであろう、特に、日本の原子力を含む産業のポテンシャルからすると、財・サービスの提供は勿論、知的財産権・工業所有権の保護の分野でもより進出してくるのではないかとの予測を示しました。

 ロシアにおける知的財産権・工業所有権の保護は、ソ連時代から今日にいたるまで継承されています。現在、ロシアは関連する主な国際条約に加盟し、知的財産の国内法もそれにあわせて調整されているために、ロシアの知財法が海外の企業にとって真新しいものではないこと、近年、知的財産権侵害の取り締まりが厳しくなっており、ソ連解体時にみられたような権利侵害の事例が激減していると述べ、権利侵害時の対応は、海外企業のロシア市場への進出度のバロメータであり、ひいてはロシア経済の発展を左右する重要な問題であるとの認識を示しました。

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同セミナーの講演風景

 また、現在の原子力関連案件の出願件数については、出願の受付番号(G21 核物理)としては少ないものの、別の分野における申請で原子力に関連しているケースは結構あるとの紹介がありました。

 なお、海外個人・法人によるロシア特許庁への特許の出願は、国家資格を有する弁理士(ロシア全土で1200人程度。80-90%がモスクワとサンクトペテルブルクに集中)を通して実施する必要があること、旧ソ連諸国への出願の場合、ロシアを含む旧ソ連諸国9カ国が加盟するユーラシア特許庁(於モスクワ)を通じて可能であるということです。

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)