[JAIF] 第40回原産年次大会学生セッション実施報告

第40回原産年次大会学生セッション
〜青森における原子力キャリアデザイン、最前線技術者の思いと情熱〜
4月10日(火)12:15〜14:00 ホテル青森 孔雀の間


1.主 催:日本原子力学会 学生連絡会

2.協 力:日本原子力産業協会

3.司 会:岡本 将典 日本原子力学会 学生連絡会 運営委員長
               神戸大学 大学院 自然科学研究科 修士2年

4.講演者:
      佐藤 岳之 東北電力(株)東通原子力発電所 技術課
      高松 伸一 日本原燃(株)再処理事業部 放射線管理部
              放射線安全課 副長
      野中  仁 電源開発(株)原子力事業部 電気グループ 課長代理

5.参加者:約100名
      @ 参加大学・高専:4大学、2高専 他 約40名
        神戸大学(1名)、東北大学(5名)、弘前大学(16名)、
        武蔵工業大学(4名)、八戸高専(6名)、函館高専(1名)他
      A その他のフロア参加者:約60名

6.セッションの目的:

  • 学生連絡会は、原子力技術者と学生の意見交換を通して、原子力産業界に対する学生の認識向上に資する目的で、昨年、横浜で開催した第39回原産年次大会に続き、今年も、原産年次大会の一環として青森で学生セッションを実施した。
  • 青森は、今や、日本の商業的原子燃料サイクルの完結基地といえる。学生セッションでは、青森に所在する電力会社、再処理事業の現場で働く若手技術者から、仕事への思い、情熱を語ってもらい、これからの原子力産業の担い手となる若い学生、生徒にキャリアデザインのひとつの指針を提示するとともに、彼らの質問に答えた。

7.概要:

 司会者から、学生連絡会を紹介し(同連絡会は、日本原子力学会の学生会員相互の交流を通して、学生の活動支援および原子力学界の発展に資することを目的として1998年に設立された)、セッションの趣旨を説明した後、各講演者から、それぞれの会社を選んだ理由、経験した業務、学生に伝えたいことなどを講演し、学生からの質問に答えた。

<講演>

佐藤 岳之 東北電力(株)東通原子力発電所 技術課
 地元への愛着、専門を活かせること、スタートしたばかりの東通原子力発電所に関わりたいことから、就職先に東北電力を希望した。起動試験に従事し思い入れがある。炉心・燃料管理を担当している。仕事で大事なことは、若手には、バイタリティ、向上心、フットワーク。中堅には、折衝・交渉力、情報収集力。より上になれば、状況判断力、リーダーシップが必要と思う。東通発電所は青森県初の原子力発電所で、県の原子力産業推進のためにも、県民の信頼獲得が第一と考える。将来可能なら、プラント撤去後の跡地の利用のような中長期プロジェクトを手がけたい。学生には、ガッツ、先輩や上司に問いただす姿勢を持ってほしい。

高松 伸一 日本原燃(株)再処理事業部 放射線管理部 放射線安全課 副長
 地元出身で、専門を活かせること、日本で未完成の先端技術に関われることから、日本原燃を希望した。放射線管理と放射線管理設備の設計に携わっっている。仕事で大事なことは、やる気、体力、コミュニケーション力、実行力。放射線管理部門は、運転部門の運転したい気持ち、保修部門の保修したい気持ちを抑え、適切な放射線防護措置を指導・助言する立場にあると考える。日本原燃は、原子燃料サイクルの輪の重要部分を担う。地域住民への情報提供が重要である。安全な施設運営を積み重ね、安心を確立していきたい。

野中  仁 電源開発(株)原子力事業部 電気グループ 課長代理
 専門を活かし、電力会社で、規模の大きい原子力発電所にイチから携わりたいことから、電源開発を希望した。パトロール、起動・運転操作、発電機・変電機を担当、電気設備の設計にも従事した。大間発電所の受電設備、開閉装置の設計を行っている。仕事で大事なことは、相談しやすい、されやすい環境をつくるコミュニケーション、一致団結して仕事ができるチームワーク。大間発電所は、全炉心MOX燃料利用を目指し、日本の軽水炉プルトニウム利用計画の柔軟性を拡大すると考えている。日本のエネルギー政策の中心になり得る青森には、技術系学生にとり、自分で設計したものが組み上がり、自分で試験し、自分で運転するという感動とそのチャンスがある。

<質疑応答>

 事前に八戸高専から寄せられた質問に、講演者が回答した。

質問1.(原子力発電所運転の)人的ミスを防ぐために行っている具体的方策は?
(野中)誤動作、誤操作の防止には、2通りの考え方で対応している。装置異常に対して制御装置が働くことと、インタロックシステム(誤操作の場合、正常な操作を行わないと次の操作に進めない仕組み)である。

質問2.原子力発電所の運用(運転)において、最も気をつけていることは?
(佐藤)ソフト面では、法令、ルールを守ること。ハード面は、例えば、燃料管理について、燃料を発電所に運び込み、ペレットを集合体に組み立てるとき、必要な段階でチェックを行うこと。発電所の安全運転と被ばく線量低減を念頭に置いている。

質問3.原子力関連の研究や仕事を行う際に一番大事なことは何か(主に意識の上で)?
(高松)どんな産業も安全が第一。法令遵守も重要である。また、手順書、マニュアルの手順がなぜそうなのか、基準がなぜそう決められているのかを自分で考え、理解することが必要と思う。

質問4.英会話はどの程度必要か?
(高松)フランスでの研修経験、その後フランス人技術者と共に働く環境になり、いずれも共通語は英語で、技術資料も英語である。英語はよく勉強したほうがよい。

質問5.施設周辺(から放出される)放射線が自然界より低いのはなぜか?
(佐藤、高松)周辺線量目標値を定め、それに適合するよう、フィルター等を設計し、許可を得て設置している。

質問6.地域住民の理解をどのようにして得ているか?
(野中)建設準備中の大間発電所について、関係する道路工事状況等を広報誌で月1回お知らせしている。また、地域のお祭り等には積極的に参加する等して、地元の人々との交流を図っている。高校、高専で、年1回、原子力・エネルギー講演会を行っている。これらを通じて、住民の方々に理解をいただいていると考えている。
(佐藤)東通発電所は、地元の理解を得て運転開始するまで40年かかった。現在は、東通村の全世帯に広報誌、カレンダーを社員が出向いて配っている。地元のイベントやお祭りに参加している。フェーストゥーフェースの活動が理解を得る近道と思う。
(高松)大学の学園祭で、放射線について知ってもらうイベントを行った。花崗岩、湯の花、体内にある放射性物質を実際に測定する等により、放射線の存在を体感してもらっている。

 このほか、参加した学生から以下の質問があり、講演者が答えた。

質問7.(弘前大学)理解獲得活動に対して、地域の反応はどうか?
(佐藤)広報誌を配りに訪ねていくと、ご苦労様とねぎらってもらうこともあれば、居留守を使われることもありさまざまであるが、全体としては比較的良好な反応と思う。
(野中)大間の広報活動は好評と聞いている。高校で行う講演会では、内容を理解できたとの感想を寄せられていると聞いている。

質問8.(武蔵工業大学)原子力科卒業の強みは?(司会)電気系卒業生が、原子力工学卒業生と共に働くのは不利ではないか?原子力発電所で働いているのは、原子力系卒業生が多いか?インターネット上の公開情報作成は、原子力工学系技術者が担当しているか?
(佐藤)原子力科卒業生は、入社後、炉心、燃料管理に従事することが多いかもしれない。機械、電気系卒業生には、そういう職種に就く機会は多くないが、原子力について勉強し、自分の強みを活かしていけると思う。
(高松)原子力系卒業生は、原子力関係の職種にとっつきやすい面はあると思う。しかし、入社後の方がよく勉強しなければならない。放射線取扱主任者等の資格取得も必要になる。学生の頃もっと勉強しておけばよかったと思う。
(佐藤)さまざまな分野を専攻した人が集まっている。機械・電気専攻の社員が多く、原子力専攻は、むしろ多くないかもしれない。また、技術系だけでなく、文科系の人にとっても、いろいろな場面で活躍の機会があると思う。
(野中)公開情報の作成は、機械、ポンプ情報等、それぞれその分野の技術者が担当している。

質問9.(函館高専)新規原子力施設の説明会、原子力説明会等は実施しているか?
(佐藤)定期検査時、放射線説明会等のイベントを行っている。
(高松)MOX加工工場が2012年操業開始の手続き中で、青森市、六ヶ所村で説明会を実施した。
(野中)大間は今年月着工予定だが、説明会をインターネットで実施した。

質問10.(東北大学)発電所で事故等が起こると、別の発電所に情報や注意事項が連絡されるか?(司会)発電所建設前に、他の発電所と以前の事故情報は共有しているか?フランスの再処理工場の事故情報等はどうやって集めているか?
(佐藤)他社のトラブル情報も、速やかに届いてくるので、反映している。
(野中)原子力情報公開ライブラリーがあり、参照して反映している。メーカーから設計段階の情報も届く。
(高松)アレバ、セラフィールドの技術情報を取り入れ、設計に反映している。

以 上

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