[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2000年1月中旬〜2月中旬)

米国:DOE、2001年度予算要求額189億ドルに

−原子力研究イニシアチブも継続へ

米エネルギー省 (DOE) のリチャードソン長官は2月7日、2001会計年度 (2000年10月〜2001年9月) の DOE 予算案を議会に提出した。今年度の歳出レベルと比べると16億ドル、9%増の総額189億ドルとなっている。このうち、研究開発予算は全体の40%に相当する76億ドル。DOEの予算要求は、4本の柱で構成されており、科学技術分野が約32億ドル (12%増) 、国家安全保障分野が約66億ドル (8%増) 、エネルギー資源分野が約22億ドル (8%増) 、環境分野が約68億ドル (8%増) 。

国際原子力研究プロジェクトに着手

原子力局関係は、2000年度の歳出予算 (2億8500万ドル) と比べると約2100万ドル増の3億600万ドルとなっている。このうち原子力エネルギー研究開発は、2000年度とほぼ同額の9220万ドルを要求。99年度に着手した原子力研究イニシアチブ (NERI) は、原子力研究開発予算全体の約38%を占め、今年度 (2240万ドル) の56%増に相当する3500万ドルを要求している。

DOE によると、2001年度には99年度に選定した研究テーマを終了させるとともに、新規に「国際クリーンエネルギー・イニシアチブ / 国際原子力研究イニシアチブ」 (I-NERI) に着手する。I-NERI は、原子力発電所の建設・運転コストの低減や安全性の向上、核不拡散、放射性廃棄物対策など、原子力の将来に影響を及ぼすとみられる主要な問題に2国間協力で取り組もうというもの。DOEとしては、I-NERI によって、原子力技術の将来の展開にあたっての国際的議論の中で影響力を行使することをねらっている。なお NERI プログラムでは、99年度には46件の提案に対して1850万ドルの助成が行われた。2000年度では7件、2001年度では15件の提案に対して、助成が行われることになっている。2001年度の要求額の内訳は、従来の NERI が約2730万ドル、I-NERI が約680万ドルとなっている。

米国は、化石燃料の燃焼にともなう環境影響の低減に向けて、エネルギー効率の向上、原子力と再生可能エネルギーの利用に照準を定めた戦略に着手している。このうち原子力の柱になっているのが原子力発電所最適化 (NEPO) プログラム。NEPO は、98年に78%だった平均設備利用率を2010年までに85%に引き上げることを目的に2000年度から始まったもので、2001年度には500万ドルの予算が要求されている。

改良型放射性同位元素発電システム (ARPS) には、NERI についで多い3120万ドルが要求されている。ARPS は、厳しい環境下でも長い年月にわたってきわめて高い信頼性で数 kW の電力を供給できる、保守が不要なアイソトープ電池のことで、NASA の宇宙探査などに利用するのが目的。アイソトープ電池の改良にあたっては、プルトニウム238の将来的な確保が問題視されている。DOE によると、今あるプルトニウム238の在庫は、サバンナリバーの原子炉と処理施設で作られたものだが、こうした施設が閉鎖されたり、段階的に運転が中止されることになっているため、近い将来については問題ないものの、長期的には NASA の活動に支障がでると予想されている。このため、ARPS の中でプルトニウム238の確保に関して460万ドルが要求されている。このほか ARPS には、宇宙利用の可能性に重点を置いた、核分裂技術を特殊な目的に利用することの評価が含まれている。要求額は200万ドル。

人材養成で大学研究炉にも支援

原子力エネルギーの研究開発の中で、大学の研究炉燃料支援として今年度と同額の1200万ドルが要求されている。原子力をエネルギー選択肢の1つとして維持するためにも、次代を担う科学者やエンジニアの養成が必要との考えから、大学での原子力工学教育や、こうした教育・訓練に不可欠な研究炉に資金を提供しようというもの。現在、米国には20州の27の大学で29基の研究炉が稼働している。こうした研究炉は研究用の中性子源としてだけでなく、医療用アイソトープや生命科学、環境保護、新材料、エネルギー転換、食品照射などの研究に利用されている。

このほか原子力局関係では、高速中性子束照射試験施設 (FFTF) プログラムに、2000年度 (2800万ドル) より約60%多い4400万ドルが要求されている。FFTFは、安定した高エネルギーの中性子を発生できる施設としては唯一のもの。リチャードソン長官は昨年8月、待機状態におかれているFFTFの運転を再開するかどうかについて、国家環境政策法 (NEPA) に基づいた検討を開始すると表明。これは、FFTFの運転を再開した場合に環境にどのような影響を及ぼすかを調査するもので、2001年度はじめには、そうした検討が終了し、今年12月には DOE 長官から決定に関する説明が正式に出されることになっている。ここで、運転の再開が決まれば、システムを復旧させるための概念設計活動と、必要な改善措置に着手する。もし、永久閉鎖という決定が下されれば、使用済み燃料貯蔵キャスクの調達や冷却材ナトリウムの抜き取りが行われる。

放射性廃棄物の処分プログラム関係では、総額4億3750万ドルを要求している。このうちの3億2550万ドルは核廃棄物基金から、また1億1200万ドルは軍事用廃棄物処分プログラムから引当てが行われる。要求額の内訳は、ユッカマウンテンでのサイト特性評価に3億5830万ドル (2660万ドル増) 、廃棄物の受け入れ・貯蔵・輸送に380万ドル (190万ドル減) などとなっている。

ロシアの再処理中止も視野に

国家安全保障関係では、DOE 内に半独立の国家原子力安全保障庁 (NNSA) を3月1日付けで設立することが法律で決まっており、今後は同庁のもとで核不拡散や余剰核物質の処分が行われる。DOE は2000年1月に出された決定に関する説明の中で、核兵器の解体から生じる余剰プルトニウムのうち17トンについては固化、また33トンについては MOX 燃料に加工して発電炉で利用することを明らかにした。これを受け DOE は、2001年度に核解体・転換施設と MOX 燃料成形加工施設の設計を続けるとともに、固化および関連施設の設計に着手する。解体・転換施設の建設は2002年度に予定されている。

ロシア側のプルトニウムの処分について協議が行われており、今春には米露2国間協定が締結される見込みとなっているが、協定が結ばれない場合には解体・転換施設の建設に着手しない可能性もある。2001年度の要求額は、余剰高濃縮ウランの処分も含め、国内での余剰核物質処分に1億7350万ドル、ロシアの余剰核物質処分関連に4000万ドルとなっている。ロシアの核物質処分の一環として、米露共同でガスタービン・モジュラー型高温原子炉 (GT−MHR) の研究開発が継続して行われることになっており、2001年度には1000万ドルをかけて電力転換システムと核燃料の予備設計が実施される。

なお、DOE の各種施設にいろいろな形で貯蔵されている合計1トンのウラン233については、高濃縮ウランやプルトニウムの処分ほど緊急性はないものの、ウラン233が核兵器に利用可能なため、引き続き検討を行うことになっている。ウラン233の評価と処分戦略には、2001年度で43万5000ドルが要求されている。

このほか DOE は、ロシアの原子力発電所から発生する使用済み燃料の再処理によって得られるプルトニウムが大きな脅威になるとの認識を示しており、プルトニウムをこれ以上蓄積させないための対策を検討するとしている。具体的には、ロシア国内に使用済み燃料貯蔵施設を開設するほか、核拡散につながりにくい核燃料サイクル技術を共同で開発することを検討する。ロシアでは現在、マヤクの RT-1 再処理施設で年間2トンのプルトニウムが発生している。DOE としては、原子力発電所から出てくる使用済み燃料を再処理しないで、そのまま乾式貯蔵できないかどうかについて評価し、それが可能な場合には実施に移すことを検討している。このため、2001年度で新規に7000万ドルを要求している。

NRC は4億8810万ドル要求

原子力規制委員会 (NRC) は議会に対し2001会計年度予算案を提出、今年度より181万ドル多い4億8810万ドルを要求した。要求額の94%に相当する4億6000万ドルは認可取得者の手数料で賄われる。また、2160万ドルは核廃棄物基金から、1250万ドルは一般財源から引き当てられる。認可取得者の手数料については2001会計年度をスタート時点として2005年度まで毎年2%の減額が提案されている。NRC の支出内訳は、原子炉安全2億1710万ドル、管理・支援1億4470万ドル、核廃棄物の安全5790万ドル、核物質の安全5740万ドル、国際原子力安全支援480万ドル−などとなっている。

なお2001年度予算要求では、正職員を今年度の2813名から2785名に減らすとしている。内訳は、原子炉安全1407 (2000年度1425、以下同じ) 、管理・支援618 (623) 、核物質安全396 (394) 、核廃棄物安全272 (267) 、国際原子力安全支援39 (同) 、監察官室44 (同) 、その他事務9 (同) 。


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