[諸外国における原子力発電開発の動向]
話題を追って (2000年1月中旬〜2月中旬)

米国:上院、核廃棄物政策法修正法案を可決

上院は2月10日、原子力発電所サイト内の使用済み燃料貯蔵の問題を解決することを目的とした「核廃棄物政策法修正法案」を64対34で可決した。

クリントン大統領はすでに同法案への拒否権発動を明言しているが、今回の採択は大統領の拒否権を無効にするのに必要な3分の2以上の票に3票不足している。同法案は下院でも年内に票決にかけられる予定であるが、下院での可決は厳しいのが現状。

今回上院を通過した法案の概要は以下の通り。
  1. 中間貯蔵施設の建設・操業は行わない。
  2. 2001年12月31日までに、エネルギー省 (DOE) は大統領に対し、ユッカマウンテンが最終処分場として適切であるかどうかの決定および勧告を行う。
  3. 2002年3月31日までに、大統領は同勧告に対する最終決定を議会に対して行う。
  4. 2006年1月31日までに、原子力規制委員会 (NRC) は処分場建設に係わる認可決定を行う。
  5. 最終処分場は2010年に操業開始の予定。
  6. DOE は建設許可が下りてから18ヵ月以内に処分場への廃棄物の受入れを開始する。
  7. NRC は、サイト内での貯蔵が満杯となったと判断したとき時に、または使用済み燃料を最終処分場に持ち込んだ時に、使用済み燃料の所有権を DOE に移転させる。
  8. 使用済み燃料の受入れスケジュールは、初年度が500トン、以降9年目までに3400トンに増加、さらに25年目までに3900トンに増加させる。
  9. これまで環境保護庁 (EPA) の単独権限であった放射線基準の制定は2001年6月まで延期し、NRC と米科学アカデミー (NAS) は EPA に対しコメントすることができる。

今回の修正法案に対し、ホワイトハウスが拒否権発動を表明した背景には、処分場の放射線基準の制定が EPA の単独権限でなくなると、NRC などにより厳格な基準が緩められてしまう恐れがあるためである。

ユッカマウンテンが最終処分場の候補地となったのは、82年に核廃棄物政策法が制定され、翌83年に DOE が9つの候補地の1つとして選定したことが発端である。同法では、連邦政府が高レベル放射性廃棄物最終処分の責任を負うことと、地層処分場のサイト選定プロセスを規定することが定められている。

サイト特性調査対象をユッカマウンテンに限定した同修正法は87年に成立し、同サイトは高レベル放射性廃棄物の最終処分候補予定地に指定された。

現在、ユッカマウンテンでは、同サイトが高レベル放射性廃棄物 (HLW) の最終地層処分場として適切であるかどうかを判断 (1万年にわたって、サイト周辺環境への放射能汚染がほトンどないかどうか) するための科学的および技術的調査が進行中。最大の調査項目は、サイト周辺の地下水の動向である。

DOE は98年12月、ユッカマウンテン処分場に関する実現可能性評価書を大統領と連邦議会に提出し、2001年まで適性調査を継続する予定である。また、99年8月には DOE から環境影響評価 (EIS) の草案が公表され、「ユッカマウンテンプロジェクトの進行を妨げるような潜在的な環境への影響は確認されなかった」ことが発表された。

同草案の一般からの意見聴取は、99年8月から2000年2月の間に DOE によって募集された。また、DOE はその期間中に公聴会を7州で計16回開催し、それらも考慮に入れて最終版 EIS を2000年中に公表する予定である。


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