[諸外国における原子力発電開発の動向]
話題を追って (2000年1月中旬〜2月中旬)

世界のエネルギー消費、2020年に60%増加へ

米エネルギー省・エネルギー情報局 (DOE・EIA) は3月16日、世界のエネルギー消費が2020年には60%程度増加するとの予測結果を公表した。EIA がまとめた「インターナショナル・エナジー・アウトルック 2000」 (International Energy Outlook 2000) によると、世界全体のエネルギー消費は97年には380×1015Btu (英国熱量単位、以下QBtu) だったが、今後23年間で60%増加し、2020年に608QBtu に達すると予測されている (標準ケース、以下同) 。地域別では、発展途上国の伸びが大きく、97年実績の122.9QBtu がほぼ2.2倍の272.1QBtu に増加すると見込まれている。このうち、伸びがとくに大きいのはアジアと中南米で、それぞれ2.29倍、2.44倍に増加するとみられている。また、中東とアフリカの伸びも大きく、それぞれ1.92倍、1.81倍に達すると見込まれている。こうしたことから、世界全体のエネルギー消費に占める発展途上地域の割合は、97年時点の32%が2020年には約45%まで上昇すると予測されている。これに対し、先進工業国のエネルギー消費は97年から2020年の間に27.6%しか増加しないとみられている。

発展途上地域の二酸化炭素排出量が大幅増

エネルギー消費の急激な増加にともない、二酸化炭素の排出量も大きく増加し、97年に61億7500万トンだったものが2020年には62%増の100億900万トンに達するとみられている。地域別では、発展途上地域の二酸化炭素排出量の伸びが大きく、とくにアジアと中南米では、97年の実績と比べてそれぞれ2.22倍、2.74倍に達すると見込まれている。一方、先進工業国ではエネルギー消費の伸びが鈍ることもあり、二酸化炭素の排出量は、2010年時点で17%、2020年時点で29%の上昇にとどまる。また97年時点では、先進工業国の排出量が発展途上地域の排出量を7億8100万トンほど上回っていたが、2010年時点ではこれが逆転し2800万トンほど発展途上地域の排出量が多くなる。さらに、2020年時点では、こうした傾向が拡大し、先進工業国の排出量を発展途上地域が10億トン上回ることになるとみられている。なお EIA は、2020年の先進工業国の二酸化炭素排出量は90年と比べると11億トン増えることになるが、このうちのほぼ半分が天然ガスの使用拡大によるものと分析している。

天然ガスの消費が大幅拡大へ

世界全体のエネルギー消費を供給源別にみると、現在最大のエネルギー源となっている石油の地位は変わらない。発電分野で天然ガスへの転換がすすむため、石油の占める割合は97年の39%から2020年には38%に低下するものの、輸送部門での伸びが予想されることから、石油消費は2020年までに年間1.9%増加し、97年の7300万バーレル/日が1億1300万バーレル/日に達するとみられている。消費の伸びが最も大きいのは天然ガスで、標準ケースで2倍以上の増加が見込まれている。天然ガスのエネルギー消費全体に占める割合も97年の22%が2020年には29%に上昇すると予測されている。天然ガスはとくに先進工業国の発電分野で大きな増加を示すとみられている。全エネルギー消費に占める石炭の割合は、97年の24%が2020年には22%に低下すると予測されている。石炭のシェアがそれほど低下しないのは、アジアを中心とした発展途上国での消費増加が見込まれているためで、世界の石炭使用量増加分のうちの97%を中国とインドの2カ国が占めると予測されている。なお、石炭消費の増加分のほトンどすべてが発電分野とみられている。

2010年を境に原子力発電設備が減少

EIA は、原子力発電については2010年に3億6800万kW のピークに達したあと徐々に低下し、2020年には3億300万kW に減少すると予測している。極東地域で積極的な原子力発電開発が進められていることから、短期的には原子力発電設備の増加が見込まれるものの、米国をはじめとした先進国での老朽炉の閉鎖が新規分を上回るため、長期的には減少傾向にあると EIA は分析している。具体的には、アジアの発展途上国では2020年までに3000万kW の新規原子力発電所が稼働すると予測されているが、先進工業国全体ではこの間に6400万kW の原子力発電所が閉鎖されると見込まれている。世界全体の電力消費は、97年の12兆kWh が76%増加し、2020年には22兆kWh に達すると予測されている。電力消費はとくにアジアの発展途上国で伸びが大きく、これに中南米地域が続いている。EIA によると、世界全体の電力消費増加分の52%をこの2つの地域が占めるという。


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