[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2000年6月中旬〜7月中旬)

[中国 - ロシア]

ロシア、中国の高速実験炉の建設に協力

ロシア当局者は7月20日、中国が2005年に初臨界を予定している高速実験炉(CEFR、6万5000kW)の建設に参加すると発表した。ロシアのCEFR建設プロジェクトへの参加は、プーチン・ロシア大統領が沖縄サミットに先立って中国を公式訪問した際に最終合意されたものである。

このプロジェクトでは、ロシア側が専門家を派遣させることと周辺機器を供給することが両国の間で合意されている。ロシアには、世界で唯一商業規模の高速炉であるBN‐600型炉(出力60万kW)が運転中である。

ロシアはこれまで、建設中の田湾1、2号機(VVER‐1000、100万kW)とウラン濃縮工場(遠心分離法)などの2つのプロジェクトで中国に協力してきた。中国は、建設中の高温ガス炉(HTR、1万kW)とともに、原子力開発計画の中でCEFRを重要な柱と位置付けしている。


[米 国]

DOEがFFTF運転再開などで環境影響声明案

米エネルギー省(DOE)は7月24日、研究開発の基盤となる原子力関連施設の新設や運転再開が地元の環境にどのような影響を及ぼすかを分析した環境影響声明(PEIS)案を公表した。医療や産業用のアイソトープ製造施設、宇宙探査用のアイソトープ電池製造施設、そして民間のエネルギー研究開発を支えるための関連施設が検討の対象となった。具体的にDOEは、既存の施設の利用や研究炉1基の新設、1〜2基の加速器の新設、ワシントン州ハンフォードにあるFFTF(高速中性子束試験施設)の運転再開、商業用の原子力発電所を用いたNASA(米航空宇宙局)向けの電池用のアイソトープ製造などについて検討した。またDOEは、こうした原子力関連施設の拡張や運転再開をしない場合の影響についても検討を加えた。ただ、今回の環境影響声明案は、どの方法が望ましいかという判断はまったく下していない。

この声明案は、7月28日から9月18日にかけて一般に公開され意見が聴取されることになっている。DOEは、こうした意見を参考に、11月に最終環境影響声明をまとめることにしている。この最終声明も一般に公開されて意見が聴取され、今年12月には最終決定が下される。

使用済み燃料の引き取り遅れ問題でDOEと電力会社が合意

米エネルギー省(DOE)のリチャードソン長官は7月20日、PECOエナジー社との間で、使用済み燃料の引き取りが遅れている問題で合意に達したと発表した。米国では、使用済み燃料を国の責任で引き取り処分し、その費用は発生者である電力会社が負担することが法律で決まっている。しかし、1998年までに完成することになっていた処分場の開設が大幅に遅れているほか、中間貯蔵所の計画も進んでいない。現在、処分場の候補サイトとしてネバダ州のユッカマウンテンで科学的な調査が行われているものの、開設にはまだ相当の時間がかかるとみられており、2010年までの開設は難しいとの見方がでている。DOEの予定によると、科学的な調査に基づき、ユッカマウンテンを最終処分場として大統領に勧告するかどうかの決定を来年にも行うことになっている。

今回の合意は、使用済み燃料の引き取り問題をめぐるDOEと電力会社間の合意としては初のもので、当初の契約の改訂という形をとっている。同社のピーチボトム原子力発電所に限って適用されるが、今後これをベースに他の原子力発電所にも適用されるとみられている。DOEと電力会社による協議は発電所ごとに進められる。

合意内容は、PECOエナジー社による核廃棄物基金への支払を、DOEによる使用済み燃料の引き取りが遅れたことによってPECOエナジー社が負うことになったコストに見合って減額するというもの。同社は、追加コストがDOEによる使用済み燃料の引き取りが遅れたことによるものであるということが証明できれば、核廃棄物基金への支払額を調整することができる。DOEは、今後10年間にわたって最大で8000万ドルに達するとみている。

DOEが核物質管理長期戦略を公表

エネルギー省(DOE)のリチャードソン長官は7月13日、DOEが管理している核物質の状況を明らかにするとともに、そうした核物質管理の統合化をめざした長期戦略を公表した。核物質の取り扱いに対するDOEのタタキ台となるもの。冷戦当時に行われた核兵器の研究や設計、試験、製造のほか、基礎科学や原子力工学の研究開発でも核物質が使われ、現在は国内の36ヵ所で管理が行われている。核物質が管理されている施設の半分以上が40年以上も経ち老朽化が目立っていることもあり、こうした核物質の管理を統合し効率的に行おうというのがねらい。余剰核物質について、そのまま処分するか別の用途にあてるために貯蔵するかどうかを決めることも活動項目として含まれている。

なお今回、明らかにされた核物質の状況は以下の通り。

プルトニウム239:約100トン

国家安全保障プログラムの余剰高濃縮ウラン:174トン(このうち半分は金属、残りの半分は酸化物や原子炉燃料、照射済み燃料など各種形態)

低濃縮ウラン:28サイトに4700トン超

劣化ウラン:34サイトに76万トン超

ウラン233:5サイトに1900kg

DOE所有の使用済み燃料:4サイトに約2500トン

その他の物質:1億キュリーを超える5万品目超(各種のアイソトープが含まれる)

NRCとEPAによる放射線防護基準論争でGAOが報告書

米会計検査院(GAO)は7月14日、原子力規制委員会(NRC)と環境保護庁(EPA)との間の放射線防護基準制定をめぐる論争に終止符をうつには議会の介入が必要だとする報告書を公表した。ニューメキシコ州選出のドメニチ上院議員(共和党)の要請に応じてまとめたもので、2つの連邦政府機関が放射線防護の規制手法や方針で合意することが重要だとしながらも、NRCとEPAが直ちに合意に達する可能性は低いと指摘している。

EPAは公衆の放射線防護という視点にたち各種基準を公布するとともに、汚染施設の浄化作業の規制を行ってきた。一方NRCは、原子力の商業利用を規制する一環として放射線防護基準を定めるとともに、商業用原子力施設のデコミッショニング作業の監督を行っている。このほか、ユッカマウンテンで進められている使用済み燃料処分場向けの放射線防護基準については、議会の命令によって科学アカデミー(NAS)が勧告することになっている。

EPAとNRCによる放射線防護基準に対する意見の食い違いはこれまでにもみられ、GAOは1994年に公表した報告書の中で指摘していた。2つの組織が対立してきたのは、ユッカマウンテンに計画されている高レベル放射性廃棄物(使用済み燃料)貯蔵所と原子力施設の浄化・デコミッショニングに関する放射線防護基準。最大の問題になっているのは、地下水の防護基準をどう定めるかという点で、NRCが大地や空気中、地下水などあらゆる線源による被曝量を年間25ミリ・レムとしているのに対し、EPAは地下水についてNRCとは別の基準を設け、そのまま飲んでも安全な基準にする必要があるとの立場をとっている。GAOによると、EPAの考え方にしたがうと実際の線量限度は状況によって異なり、年間数分の1ミリ・レム程度になる場合がある。

GAOは報告書の公表に先立ち、NRCとEPAの意見を聴取した。NRCは、報告書の内容は基本的に問題ないとするとともに、議会に調停役を頼むことに異論はないとの考えを示したが、EPAはGAOの結論に同意できないとの見解を表明した。


[フランス]

仏フラマトム・独シーメンス、原子力合弁会社設立の最終合意に署名

仏フラマトムと独シーメンスは7月5日、両社の原子力事業を統合した新会社の設立について最終合意書に署名した。新会社はフラマトム社が66%、シーメンス社が34%を出資して設立され、社名はフラマトムANP(Advanced Nuclear Power)社となる。新会社は欧州連合(EU)の独占禁止当局の承認を得た後、年内にも事業を開始する見通し。今回の最終合意を受けて、両社の原子力部門は新会社の正式発足まで個別に独立した運営を行う。シーメンス社の原子力部門は、シーメンス原子力発電会社(Siemens Nuclear Power GmbH、所在地:バイエルン州エアランゲン)と名称を変更する一方、フラマトム社の原子力部門は10月をめどにパリ本社から独立する予定。

今回の合併は、世界的な原子力企業の再編の動きに呼応して、独仏の原子力部門を統合、強化する目的で両社が昨年12月、基本合意に達していたもの。両社がこれまでに供給した原子炉は、運転中の世界の原子力発電所の約2割にあたり、新会社が誕生すると世界最大の原子炉メーカーとなる。同社は1万3500人の従業員を抱え、約30億ユーロの年間売上げを見込んでいる。事業内容は、燃料製造から原子力発電所の設計、建設およびメンテナンスまで多岐にわたり、とくに燃料分野ではフラマトム社の筆頭株主である核燃料公社(COGEMA)の支援を得て、再処理やMOX燃料加工事業も視野に入れている。また、これまで両社が行ってきた既存炉の改良や旧ソ連型原子炉の安全性向上、次世代型原子炉である欧州加圧水型炉(EPR)の共同開発など、従来業務についても引き続き積極的に取り組む姿勢を示している。

シボー2号機が全出力運転を達成

フランス電力公社(EDF)によると、N4シリーズ最後の1基であるシボー原子力発電所2号機(PWR、151万6000kW)が6月21日、全出力運転を達成した。同機は昨年11月の初臨界後、12月に送電を開始した。今後は、数カ月間にわたり試運転が行われる予定。

N4シリーズはフランス原子力産業界が総力を結集して開発した純国産炉で、単基出力は世界最大。同シリーズは、シボー1、2号機とショーB1、2号機の合計4基。4基が営業運転に入ると、建設中の原子力発電所はフランスだけでなく欧州においてもゼロになる。

今回、全出力運転を達成したシボー2号機以外の3基は、98年5月にシボー1号機で起こった余熱除去(RHR)系での1次冷却材漏洩が原因となり、その後、約1年間にわたり運転が停止され、対応策が講じられた。安全当局である原子力施設安全局(DSIN)は昨年、条件付きで3基の運転再開を許可したが、EDFに対して抜本的な原因究明を求めている。

ダンピエールをはじめ複数基でSISが異常作動

定期検査のため、運転を停止中だったダンピエール原子力発電所2号機(PWR、93万7000kW)で6月21日から22日にかけて安全注入系(SIS)が機能しないことが、作業員の調査で明らかになった。これを受けて、EDFは他の8基の90万kW級原子力発電所に対してSIS機能を点検するように命じたところ、トリカスタンとビュジェイの2つの発電所で同じ問題が10数回、起こっていたことが判明した。さらに、ダンピエールでもこれまでに同じ現象が5回、発生していたことが分かった。こうしたことから、安全当局である原子力施設安全局(DSIN)は、今回の異常を国際原子力事象評価尺度(INES)の7段階のレベル2と評価した。DSINは複数基の原子力発電所でSISが機能しなかった原因は、弁を開閉するタイミングを記した手順書に誤りがあったためとし、EDFに対して同型の原子力発電所について運転手順書を直ちに確認するよう、運転管理体制の強化を求めた。


[ドイツ]

連邦政府と4電力の合意に批判続出

6月14日に連邦政府と大手電力4社が合意に達した取決めに対して、野党のキリスト教民主同盟(CDU)をはじめ電力業界や関係団体が相次いで声明を発表した。原子力推進の立場をとるCDUは、2002年秋の総選挙で連立政権に返り咲いた場合には、今回の取決めと改正原子力法を無効にすると宣言、現政権に対抗する姿勢を明らかにした。ドイツ原子力産業会議(DatF)のマヨウスキー会長は、経済的に妥当な条件で原子力発電所を運転するという目標は達成できたとして取決めを評価しながらも、原子力廃止が確定したわけではないことを強調した。同氏は、コンセンサス協議に出席したVIAG社の子会社であるバイエルンベルク社のトップでもある。同氏は今回の取決めは最善策ではないが、脱原子力を公約にかかげる現連立政権下では最善に近い解決策として、一定の評価を与えた。さらに、将来の原子力開発が政治的な介入によって妨害されないとの保証を取り付けた点を高く評価した。また同氏は、将来の原子力技術開発を中断させ、次の世代が原子力のオプションを失うような事態に陥らないように警告するとともに、フランスと共同開発中の欧州加圧水型炉(EPR)プロジェクトを今後も継続する重要性をアピールした。

2300人の会員を抱えるドイツ原子力学会のクレブス会長は、さらに批判的な見方を示している。同氏は今回、電力会社は政治的な妥協から不本意ながらも従ったとした上で、政府がこの取決めを遵守するかは極めて疑わしいと強い懸念を示した。特に、原子力発電所の運転継続と廃棄物管理活動に政府が介入しないと保証した点について、急進的な反原子力派がこれに従うかについては疑問が残るとの見解を示した。さらに、ゴアレーベン高レベル廃棄物処分場候補地での調査中断は、廃棄物問題の先送りに過ぎないとして取組みの甘さを批判した。

また、欧州の原子力産業界の連合であるフォーラトム(FORATOM)は、取決めを良いニュースと悪いニュースが入り混じったものと受け止めている。これは、将来の原子力発電所の運転継続に政治的な妨害が及ばないと保証された一方で、現在の高い稼働率と安全性、経済性にもかかわらず政治的な理由により原子力発電所の発電量に制限が設定されたことが理由。フォーラトムは、年間1億7000万トンの二酸化炭素の排出抑制に貢献している原子力が段階的に閉鎖されれば、ドイツは京都議定書の目標達成が難しくなると予測するとともに、連邦政府はヨーロッパ全体が経済的、環境的な目標を達成する上で必要な長期的なエネルギー利用より短期的な政治目的を追求したことになると厳しい見方を示した。

なお、取決めの中で早期閉鎖の対象となったオブリッヒハイムや他からの譲渡発電量が制限されたビブリスA原子力発電所では、今回の取決めをめぐって対応策を協議している。今後の連邦政府および州政府との交渉を経て、最終的な方針が固まる見通しである。

最も古く、小型の原子力発電所であるオブリッヒハイムは、取決めでは2002年に一番最初に閉鎖されることになっている。しかし、同発電所側によると、同機は10年ごとに義務づけられた定期安全検査を1998年に実施したばかりで、使用済み燃料貯蔵についても最近、貯蔵プールを拡張しており、2002年以降の運転継続を妨げる技術的問題はない。このため、同機を63%所有するエネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)社は、他の発電所からの発電量を同機に割り当てることにより2002年以降も運転を続けたい意向を示している。同機はCDUと自由民主党(FDP)が連立政権を握るバーデン・ビュルテンブルク州に立地しており、同州政府はこうした動きを支持するものと見られている。

ヘッセン州のビブリスA原子力発電所では、懸案となっているバックフィット(改良)問題について、同機を所有するRWE社と連邦政府、州政府を交えた交渉が再開し、前進の兆しが出てきた。連邦政府は、改良を施さずに現状のままで同機を運転できる期間を近く決定するとともに、従来の改良工事の範囲や規模を見直す方針を示している。また同機は2001年末に定期安全検査を行わなければならず、RWE社は運転期間や改良工事費用などを勘案して、今後の対応を決定するという慎重な態度を表明している。

同機は1987年に冷却材喪失事故(LOCA)の前兆事象が起こったが、その公表の遅れから、州政府は91年にRWE社に対して地下式の非常用制御室の建設を含む10億マルクを超える大規模な改良工事を行うよう命じた。RWE社は州政府に対し軽減措置を求めていたところ、緑の党が州の政権を握ったため、工事は実施されないまま、同党とRWE社との間で改良工事の必要性と安全性向上の許認可をめぐる対立が深まった。同州では99年春の議会選挙でCDUが政権を奪回したが、今回の取決めでは緑の党が最も閉鎖に固執した。


[スペイン]

アルマラス原子力発電所、10年間のライセンス更新へ

経済省は6月8日、規制当局であるスペイン原子力安全委員会(CNS)の勧告を受け、アルマラス1、2号機に対して10年間の運転認可(ライセンス)の更新を承認した。10年間の寿命延長は昨年のサンタ・マリアデガローニャに続いて2例目。運転開始から15〜16年を経た両機は、ともに米ウェスチングハウス社製のPWR。今回の認可更新に伴い、定期検査時に確率論的安全分析(PSA)を行うことが義務付けられる。

スペインでは従来、2年間ごとの安全審査により原子力発電所のライセンスを更新していたが、保守や改修などにかかる電力会社の負担を軽減するため、政府は昨年、更新期間を長期化する方針を打ち出した。今年3月の総選挙で自由経済路線をとる与党国民党が再選されたことから、こうした規制緩和が加速している。これまでに最も古いホセカブレラで3年、トリリョで5年、サンタ・マリアデガローニャで初の10年延長が認められている。なお、CNSは6月27日、バンデロス2号機の10年間の延長も妥当とする勧告を経済省に提出した。

運転認可が更新されたスペインの原子力発電所 (運転年数順)
2000年7月現在
発電所(炉型・出力kW)
運転年数更新年
ホセカブレラ (PWR、16万)30年3年延長
サンタ・マリアデガローニャ(BWR、46万6000)28年10年延長
アルマラス-1 (PWR、97万4000)
アルマラス-2 (PWR、98万3000)
16年
15年
10年延長
トリリョ-1 (PWR、106万6000)11年5年延長
バンデロス-2 (PWR、108万1000)11年10年延長 (手続き中)

[ト ル コ]

トルコ政府、アックユ原発建設計画を凍結

トルコ政府は7月25日、アックユ原子力発電所建設計画を凍結すると発表した。

B.エジェビット首相は「トルコ政府は30〜40億米ドルと見積もられる建設費を捻出できない」と説明。当面は経済の安定に努力し、原発立地は10〜20年後に再検討したいとしている。

アックユが原発立地点として有力視されたのが1970年代。96年には具体的な建設計画が正式に発表され、97年10月にはターンキー(完成品引き渡し)契約、全額融資付きという条件で国際入札が行われた。欧州、米国、カナダ、日本などの原子炉メーカー3グループが応札したものの、入札評価作業の遅れを理由に何度となく決定が先送りされていた。


[チ ェ コ]

テメリン1号機、燃料装荷を完了

建設中のテメリン1号機が7月14日、国際原子力機関(IAEA)の安全指針に従い燃料装荷を完了した。IAEAの専門官らが原子炉を密閉した後、同26日から圧力試験を開始する。チェコ電力(CEZ)は今秋には送電を開始し、来年5月に営業運転開始にこぎつけたい意向。なお同2号機は2002年11月の営業運転開始を予定している。

当初1号機の燃料装荷は8月末に開始される予定だったが、7月5日に原子力規制当局から燃料装荷を許可されたため、予定を繰り上げ翌6日に燃料装荷を開始した。

テメリン原子力発電所はSKODA社製VVER-1000(ロシア型PWR)2基からなり、出力は各97万2000kW。最新のVVER-1000型炉が採用されており、西側の原子炉と同等の安全を確保しているという。同発電所の建設をめぐっては閣内でも意見が分かれ、99年5月に11対8という僅差で辛うじて建設継続が閣議決定された。今回の燃料装荷をめぐっても、同発電所に否定的なハベル大統領自らが原子力規制当局の決定を非難している。また反原子力政策を掲げる隣国のオーストリアは、同発電所の建設に一貫して反対しており、これに対しチェコのM.ゼマン首相が7月初めに不快感を表明するなど、同発電所は国内外に波紋をよんでいる。

チェコでは現在ドコバニ原子力発電所(VVER-440×4基、出力各44万kW)が運転中。同発電所では運転寿命を延長するため、2002年からの定検期間を利用して計装制御系を順次交換する。SKODA社との間で7月、契約を結んだ。一連の交換作業は2009年に完了する見込み。


[ウクライナ]

チェルノブイリ石棺対策会議、基金の3億2200万ドル上乗せに合意

欧州連合(EU)とG7を中心とした37カ国は7月5日、ベルリンで開催された第2回のチェルノブイリ石棺対策会議の場で、「石棺実施計画(SIP)」完了のために必要な資金の確保についての検討を行い、追加的に3億2200万米ドル相当を欧州復興開発銀行(EBRD)の管理するチェルノブイリ石棺基金(CSF)に上乗せすることを決定した。これにより同基金は97年11月にニューヨークで開催された第1回石棺対策会議の場で決定された3億9300万ドルから、7億1500万ドルに増額されることになる。

ウクライナとG7は97年4月、86年に事故を起こしたチェルノブイリ4号機(RBMK:黒鉛減速軽水冷却炉、100万kW)を覆っている石棺の安定化と石棺内部の燃料含有物質(FCM)の除去を進めることに合意し、SIPを取りまとめた。資金については総額で7億6800万ドルが必要であると試算されており、G7やEUを中心とした各国からの拠出によりCSFを設立、EBRDが管理することになっていた。

今回のCSFの増額決定でも、SIP完了には依然5300万ドルほどの資金が不足しているが、この不足額の負担については次回、第3回の石棺対策会議の場で決定される見通し。しかし、EBRDはこの増額により、SIPの中でも最大の事業である、既存石棺の安定化と新規のシェルターの建設が行える目途が立ち、SIPの本格的実施が可能になったとしている。新規シェルターの完成は2005年に予定されている。


[ブラジル]

アングラ2号機が臨界

ブラジル2基目の原子力発電所であるアングラ2号機(PWR、130万9000kW)が7月14日、臨界を達成した。現在、起動試験が行われており、9月までには営業運転を開始する予定。同機は1976年に着工、当初の予定では83年に営業運転を開始することになっていたが、ドイツの銀行団との資金融資協議がもつれたため建設作業が大幅に遅れた。昨年10月には初装荷燃料が発電所に到着し、臨界に向けて準備が進められていた。アングラ2号機はドイツのシーメンス社が設計・製造したもので、エレトロ・ニュークリア社が運転する。

ブラジルでは現在、アングラ1号機(PWR、65万7000kW)が運転中のほか、同じサイトに3号機(PWR、130万9000kW)を建設する計画がある。ただ、3号機については16億ドルと推定されている建設資金の調達のめどがたっていない。


[世 界]

99年の世界の一次エネルギー統計で原子力発電量は3.8%増加と報告

BPアモコ社(旧ブリティッシュ・ペトロリアム社)は6月21日、99年の世界の一次エネルギー統計を発表した。それによると、99年の世界の原子力発電量は前年に比べ3.8%増加、天然ガスも含め他の一次エネルギー源より高い伸びを示した。

99年の世界の一次エネルギー消費量は景気の低迷にも拘わらず、0.2%の増加をみせたが、過去10年の平均増加率の0.9%と比べ低い値となった。これは、中国の一次エネルギー消費量が10.7%も低下したことによるもので、中国を除けば世界全体では1.4%増加していることになる。

中国は米国に次ぎ世界第2位の石炭消費国であるが、同国政府の政策で小規模の鉱山や石炭を消費する国営企業が閉鎖されたため、99年の石炭消費量は前年に比べ16.8%も急激に落ち込んだ。一方、経済危機から回復した韓国の一次エネルギー消費量は、対前年比9.3%増となり、過去10年間(89年から99年)の平均増加率を上回った。

また、欧州連合(EU)の一次エネルギー消費量は平均0.4%の増加であったが、欧州全体では0.3%減少した。ルーマニアやブルガリア、チェコ、ハンガリーなどの消費量が平均して3%以上落ち込んだことが原因。なお、旧ソビエト連邦諸国は90年代に入って初めて対前年比で増加し1.4%となった。

原子力

99年の世界の原子力発電量は対前年比で3.8%増加、特に米国では新規の原子力発電所が運転を開始していないのにも拘わらず、既存の原子力発電所で設備利用率が大幅に向上したため対前年比で8.0%増加となった。その他、経済が回復基調にあるロシアで16.3%、韓国で14.9%、それぞれ原子力発電電力量が増加した。

石油

99年の世界の原油価格は、前年の平均1バレル13ドル11セントから39%上昇し平均1バレル18ドル25セントとなった。石油輸出国機構(OPEC)の産出量は、対前年比で5.4%減少の日産2930万バレルとなった。イラクの産油量(国連の制裁措置が解除され20%増加)を除けば、OPEC諸国は7.2%減少、94年以降で最も低い生産量となった。非OPEC諸国をみると、米国が3.8%、メキシコが4.8%、対前年比でそれぞれ減少。なお、英国は対前年比で3.4%増加した。

99年の世界の石油消費量は、対前年比で1.6%増加、特に経済が回復基調をみせているアジア太平洋地域では3.6%増加した。なお、米国の石油消費量は対前年比で2.2%増加した。

天然ガス

天然ガスの99年の消費量は対前年比で2.4%増加、過去10年間の平均増加率の1.7%を上回り、世界の一次エネルギー消費量全体の24%までにシェアを伸ばした。ガスの市場シェアが拡大した背景には、@市場の自由化、A環境面での利便性、Bコンバインド・サイクル・ガス火力での技術革新−−があり、今後ともシェアが上昇するとみられている。世界最大の市場である米国での消費量は、暖冬に加え燃料である原油が低価格であったことから、対前年比で0.5%の増加にとどまった。

石炭

世界の一次エネルギー消費量全体に占める石炭のシェアは低下傾向にあり、99年の消費量も対前年比で5.1%減少した。米国に次ぎ世界第2位の石炭消費国である中国は政策により大幅に消費が落ち込んだ。欧州でも石炭の消費量が低下傾向を示し、対前年比で5.2%減少した。最大の石炭消費国である米国の99年は対前年比でほぼ増減なし、中国を除くアジア諸国は過去10年間の平均2.8%を下回る対前年比0.6%の増加であった。

水力発電および他の再生可能エネルギー

99年の水力発電量は、世界全体で対前年比0.9%増となった。その他の再生可能エネルギーでは、風力発電量が急速に増加してきていることが明らかになった。


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