[諸外国における原子力発電開発の動向] 最近の動き (2000年7月中旬〜8月中旬) top

[米 国]

NRC、MOX施設の申請検討で指針

米原子力規制委員会(NRC)は8月22日、混合酸化物(MOX)燃料施設の建設・操業申請に先だち、検討指針となる最終検討計画を公表した。MOX燃料施設は、軍事用の余剰プルトニウム処分の一環として、エネルギー省(DOE)がサウスカロライナ州のサバンナリバーに建設を予定しているもの。DOEは、デューク・コジェマ・ストーン&ウェブスター(DCS)との間でMOX施設の建設・操業契約を結んでいる。ここで製造されたMOX燃料は、原子力発電所に装荷されることになっている。

NRCの規則では、MOX燃料成形加工施設のようにプルトニウムを取り扱う施設の操業者は建設許可と操業認可を取得することが求められている。今回、NRCが公表した最終検討計画は、安全や保障措置、環境影響の面からMOX施設の申請を検討するにあたっての指針となるもの。具体的には、@申請者の財務面での適格性A放射線被曝や火災などの緊急事態に際しての防護措置B特殊核物質の盗難、紛失、転用に対する防護計画――などについて検討することになっている。

NRC、特殊核物質の規制改定

NRCは7月25日、ウランやプルトニウムなど大量の特殊核物質を所有、処理する施設の規制を改定する最終規則を承認した。NRCがすすめている安全性に焦点を定めた、実績をベースにした規制への転換の一環で、規則の発効日から6ヵ月以内に安全解析実施計画を作成するとともに、4年以内に安全解析を終了するよう求めている。解析にあたって、@工場と外部での災害、ならびにそれらが事故を引き起こす可能性A潜在的な事故シーケンス、ならびにその確率と影響B潜在的な事故を防止あるいは緩和するための組織やシステム、機器、コンポーネントならびに人員の行動――などを明らかにする必要があるとしている。

また、NRCから認可を取得している業者は、NRCが定めている基準を超えて放射性物質や特定の化学物質が排出するような事故に対する防護プログラムを策定することも要求している。なお、今回の規則改定によって、国内の7ヵ所の燃料加工施設と建設が計画されているMOX加工施設が影響を受けるとみられている。

ドミニオン社、ミルストン原子力発電所を落札

ドミニオン・リソーシーズ社は8月7日、ノース・ユーティリティーズ(NU)社が所有するミルストン1号機(BWR、68万9000kW、閉鎖)、同2号機(PWR、89万5000kW)、同3号機(PWR、120万9000kW)の93.47%を買収することでNU社と原則合意に達したと発表。

買収価格は、発電所と関連施設が11億9500万ドル、核燃料の1億500万ドルの合わせて約13億ドル。燃料費を含めた各原子炉の内訳は、すでに閉鎖済みのミルストン1号機が100万ドル、同2号機が4億4340万ドル、3号機の93.47%の所有権が8億5330万ドルとなっている。

ドミニオン社はミルストン2、3号機の買収より運転中の原子力発電所が、ノースアナ1号機(PWR、94万kW)、同2号機(PWR、94万4000kW)、サリー1、2号機(PWR、84万kW)と合わせて計6基となる。

なお、ドミニオン社は、2000年1月にコンソリデーテッド・ナチュラル・ガス(CNG)社との合併を完了。また、同3月にニューヨーク電力公社(NYPA)所有のジェームス・A・フィッツパトリック原子力発電所(BWR、82万9000kW)とインディアンポイント3号機(PWR、102万3000kW)の競争入札に応じたが、エンタジー社が落札したため、買収を断念した。

アーカンソー・ニュークリア・ワン2号機、蒸気発生器を交換へ

ウェスチングハウス・エレクトリック(WE)社は8月8日、エンタジー社所有のアーカンソー・ニュークリア・ワン(ANO)2号機(PWR、89万7000kW)向けの交換用蒸気発生器(SG)2基を納入したと発表した。

SGはWE社が設計したものでは最大で、WE社の下請けであるスペインのENSA社が33ヵ月間で製造、7月9日にENSA社から出荷していた。SGの据付けは9月中旬から開始され、運転再開は年内の見通しである。

ENSA社はWE社の下請けとして、@ANO2号機向けの2基、A1999年と2000年に中国の秦山原子力発電所向けの4基、B2000年初頭にサザンカンパニーが所有するファーリー1号機向けの2基−−計9基のSGを製造、出荷している。

エンタジー社は2003年にANO2号機の運転認可20年間延長する申請を米原子力規制委員会(NRC)に提出する予定にしており、今回のSG交換は運転認可更新に向けての一環。なお、1号機は2000年2月に運転認可更新をNRCに申請している。

GPU社、ファーストエナジー社に吸収・合併へ

GPU社とファーストエナジー社の取締役会は8月8日、ファースト・エナジー社がGPU社を吸収・合併することを満場一致で決めた。合併が完了すると顧客数が430万人の国内6番目の投資家所有の電力会社が誕生することになる。

合意内容は、ファーストエナジー社が45億ドルでGPU社を買収することになっているが、GPU社の74億ドルの負債と優先株も引き継ぐことになっている。

GPU社は1999年12月にスリーマイルアイランド1号機(PWR、87万2000kW)、2000年7月にオイスタークリーク原子力発電所(BWR、65万kW)をそれぞれアメ−ジェン社へ売却している。

証券取引委員会、エクセル・エナジー社を承認

米証券取引委員会(SEC)は8月17日、ノーザン・ステイツ・パワー(NSP)社とニューセンチュリー・エナジーズ(NCE)社の合併を承認した。合併後の新会社の名称はエクセル・エナジー社となった。

両社の合併は1999年3月25日に発表されており、すでに関連する州、原子力規制委員会(NRC)、連邦エネルギー規制委員会(FERC)、米司法省など関係当局の承認を受けており、今回のSECの承認により合併の手続が完了することになった。

NSP社はミネソタ州を中心に中西部州の北部地域で電力を150万、ガスを50万の需要家にそれぞれ供給しており、モンティセロ発電所(BWR、56万9000万kW)、プレーリーアイランド1、2号機(PWR、56万kW×2基)の計3基の原子力発電所を所有している。

一方、NCE社はコロラド・パブリック・サービス社とサウスウエスタン・パブリック・サービス社が合併して1997年8月にできた会社で、コロラドを拠点に電力を150万、天然ガスを100万の需要家にそれぞれ供給している。

両社のCEO(最高経営責任者)は、再編された電力市場で成功を収めるには企業規模を拡大する必要があると合併に合意。新会社のエクセル・エナジー社は電力市場での競争力を確保しながら、天然ガス事業の拡大などエネルギー事業の多角化を推進している。


[カナダ − ロシア]

AECL、ロシアからのMOX燃料試験体を空輸する方針に

カナダ原子力公社(AECL)は7月28日、燃焼試験のためにロシアから輸送されることになっている核兵器解体プルトニウムを使用したMOX燃料試験体を空輸するため、新しい緊急対応援助計画(ERAP)案をカナダ連邦運輸省に提出した。計画案については、28日間にわたって一般から意見の聴取が行われる。

カナダ、米国、ロシア各政府は1999年、米ロの核兵器解体により発生した余剰兵器級プルトニウムをMOX燃料に加工し、CANDU炉を利用して発電しながら処分するための技術的な実証を目的とした燃焼試験を、カナダの試験施設で行うことに合意。米ロ両国からMOX燃料試験体をぞれぞれ9体(約3%の濃度で兵器級プルトニウムを約120g含有)、チョークリバー原子力研究所に運び、NRU研究炉(出力13.5万kW、重水減速・冷却タンク型)を用いて数年間にわたり照射試験が行われることになった。

当初、AECLではロシアからのMOX燃料試験体を大西洋とセントローレンス川経由でモントリオール近くのコーンウォールまで水上輸送し、そこから陸路でAECLのチョークリバー研究所に搬入する計画を立てていた。しかし、セントローレンス川沿いの住民の反対により、実施が困難な状況になっていた。

新計画では、カナダ国防省のオンタリオ州トレントンまたはケベック州バゴットヴィルのいずれかの空軍基地に空輸で搬入することを提案している。試験に利用されるMOX燃料試験体は、米国のDOEロスアラモス国立研究所とロシアのボチバール記念無機材料研究所で製造が既に行われており、米国からは今年1月14日、空路でチョークリバー研究所に搬入されている。


[英 国]

BE社、新供給戦略を発表

原子力発電事業を中核とするブリティッシュ・エナジー(BE)社は8月7日、戦略見直しの一環として、同社が所有する電力・ガス小売事業者のSwalec社をスコティッシュ&サザン・エナジー(S&S)社に売却することを明らかにした。BE社はSwalec社を今年の2月に1億700万ポンドで買収したばかり。

またBE社はS&S社との間で結んでいる既存契約に加えて、最初の5年間は年間100億kWh、残りの5年間は年間75億kWhの電力をS&S社に供給するとした電力の卸売り契約を結んだ。今回の契約量は、BE社の総発電量の約20%にあたる。

英国では年内に新電力取引制度(NETA)を導入することになっており、電力価格はますます低下すると予測されている。BE社の動きはNETAを念頭に置いたもの。

BE社CEO(最高経営責任者)のP.ホリンズ氏は、「Swalec社の買収により独自の小売供給事業を展開するよりも、S&S社に長期にわたって電力を供給する方が効率的と判断した。今回のS&S社との契約は、今年初めのエッグバラ発電所(石炭火力、出力200万kW)の買収と併せ、イングランドおよびウェールズにおけるBE社の競争力を強固にした」と語っている。

また同氏は、英国でのより一層の発電コスト引き下げ、北米市場での積極的な事業展開は今後も継続するとしている。BE社は今回の売却益(売却額は2億1000万ポンド)を、同社の財政強化と主に北米における投資活動に充当する方針。


[フランス]

第2HLW地下研究所立地について報告書

花崗岩層の地下研究所調査候補地のうち数カ所を視察した3名の専門家が8月上旬、政府に報告書を提出した。一行は、視察各地での激しい反対運動をふまえて、高レベル放射性廃棄物(HLW)による人体や環境への影響をはじめ、廃棄物全般に関する情報を住民に提供する必要性を認めるとともに、地下研究所が地場産業である農業や環境に及ぼす影響を十分考慮するよう指摘している。また、立地活動を進める上で、地元自治体に対して交渉プロセスを正式に示すよう提言した。さらに、既存の原子力安全・情報最高会議(CSSIN)と地方情報委員会(CLI)の2機関が重要な役割を担うとの見解を示した。

91年12月に策定された放射性廃棄物管理研究法に基づき、HLW処理処分研究を行うため、地下研究所開設にむけた立地活動が急務となっている。同法では、異なる2つの地層に研究所を建設し、2006年までに研究成果を国に報告することが義務付けられている。このため、これを所管する放射性廃棄物管理庁(ANDRA)は、昨夏に着工した東部の粘土層サイトに続き、花崗岩サイトの選定を早急に進めるため、その第一歩として3名の専門家を今春、現地に派遣した。しかし、一行の訪問は予想を上回る抗議行動を巻き起こし、政府はやむなく今年5月、視察調査を打ち切った。

報告書を受けて、産業、環境の両大臣は引き続き第2サイト建設をめざす意向は変わらないとする共同声明を発表、専門家らの勧告を受けて今後の方針を検討したいと前向きな姿勢を示した。しかし、遅くとも2002年に予定されている大統領選挙までにサイトを選定しない限り、当初の目標達成は不可能とする見方もある。

原子力施設の環境影響調査が再開

ボアネ環境相とジロー保健相は8月1日、ラ・アーグ再処理施設をはじめとする原子力施設が周辺住民に及ぼす健康影響について新たな調査を実施する方針を明らかにした。前回の調査に引き続き、原子力安全防護研究所(ISPN)の放射線防護部スジエ副部長が調査にあたることになった。同氏は昨年7月、核燃料公社(COGEMA)のラ・アーグ再処理施設の健康影響調査をとりまとめ、同施設から出る放射線と地元でわずかに増加した小児白血病との間に有意な関係は見出せなかったとする最終調査結果を発表したばかり。

今回、新たに行われる調査は、@前回の調査と96年に英国で行われたセラフィールド再処理施設周辺における小児白血病リスクに関する調査を比較するとともに、フランスで疫学調査を行ったスピーラ教授陣と連携を強化する、A化学物質による環境や健康への影響を調査するため、必要な人員を補充すること――などが新たに盛り込まれている、英国の調査は、環境放射線の医学的要因に関する委員会(COMARE)が10年以上にわたる調査結果をもとにとりまとめたもので、BNFLの再処理施設が立地するシースケール地方の小児白血病の多発と放射線の影響について疫学調査を行った。

コタンタン半島北部での放射線と白血病の因果関係をめぐる議論は、97年の英国医学誌が発端となって起こった。コタンタン半島北部には、ラ・アーグ再処理施設をはじめ、ラマンシェ低レベル放射性廃棄物処分場、フラマンビル原子力発電所、シェルブール港の海軍原子力造船所がある。


[ドイツ]

ベルリン電力の株式をめぐり国際競争が過熱

VEBAとVIAGの合併により誕生したドイツ第2位の電力会社、E.ONエネルギー社は8月10日、同社の所有するベルリン電力(BEWAG)の株式49%をハンブルク電力(HEW)に譲渡することを明らかにした。しかし、これに対してBEWAGの株主である米国のサザン社は、事前に何の相談もなかったとして異議をとなえた。今回のBEWAG株式放出は、今年6月にEU当局が提示した(VEBAとVIAGの)合併条件のひとつで、E.ONエネルギー社は旧東独最大で国内第4位の合同エネルギー株式会社(VEAG)社についても、近く48.5%の株式を手放す見通し。

E.ONエネルギー社の当初の発表によると、同社が持つBEWAGの株式49%とHEWが持つシドクラフト社の株式15.7%を交換することで合意が成立していた。これにより、E.ONエネルギー社はスウェーデンの民間電力会社であるシドクラフト社の株式保有率を36.4%に高め、両者の結びつきを強化する一方、HEWは国内での供給力を拡大し、国内第3位の地位を獲得することができる。なお、HEWは昨年末、シドクラフト社(21.8%)とVEBA社の子会社である独プロイセンエレクトラ社(15.4%)を抜いて、スウェーデンの公営電力会社のバッテンフォール社が事実上の過半数株主(50.2%)となった。今回の株式交換が成立すると、シドクラフト社と現E.ONエネルギー社が持つHEW株も、バッテンフォール社に売却される可能性が高いと見られていた。

株式の交換によってE.ONエネルギー社とシドクラフト社、HEWとバッテンフォール社がそれぞれの連携を強化しようとした思惑に、米国サザン社が待ったをかけた。同社は欧州市場への進出の足がかりとして97年にBEWAGの株式26%を取得、同社を通じてVEAG社の株式取得をねらっていた。水面下の交渉を不服としたサザン社の訴えを受けたベルリン地裁は、E.ONエネルギー社に対してHEWへの株式売却を差し止める判決を下した。このため、ドイツのミュラー経済相が仲介に入り、HEW・バッテンフォール社陣営とサザン社の協議が始まった。

旧東独の電力2社は、1990年の東西ドイツ再統一に伴い、西独地域の大手電力の出資により設立された。旧東独の原子力発電所はすべて閉鎖され、新会社は地域経済振興のため、国産の褐炭を使用することが義務付けられた。しかし、老朽化した旧東独時代の発電施設の改良や環境設備の補充に巨額の投資を強いられたため、経営不振に陥り、株主である西側電力会社は再建策を模索していたが、連邦政府との対立や膨大な債務、東西の格差などで解決策が見出せずにいた。こうしたなか、EU当局は両社の大株主であるVEBAとVIAGに対して、旧東独市場からの撤退を条件に合併を承認した。

VEAGの株式をめぐっては、サザン社やHEW・バッテンフォール社のほか、フランスの複合企業であるスエズ・リヨネーズ・デゾー社、褐炭鉱山会社のミブラクの出資者である米NRGエナジーなどが触手を伸ばしている。また、スエズ・リヨネーズ・デゾー社はE.ON社との合併も協議中と報じられるなど、E.ON社を中心に欧州電力市場の再編が加速している。


[スウェーデン]

バーセベック2号機の今後を議会で審議へ

スウェーデン議会は9月、バーセベック2号機(BWR、61万5000kW)の閉鎖の是非を審議する。9月20日に提出される来年度予算案に、同2号機の処遇が盛り込まれる見通しだ。

2号機の閉鎖問題は、少数与党の社会民主党内部でも意見が分かれており、ビョーン・ローセングレン貿易産業相は8月16日、2001年の2号機閉鎖を時期尚早であるとする見解を明らかにした。同相は「2号機はいずれ閉鎖する」としながらも、97年に規定された2号機の閉鎖条件を現段階ではクリアできないと指摘。「2001年の2号機閉鎖は冬季の南部スウェーデンへの電力供給を脅かす。また化石燃料を利用する発電所からの電力輸入を増大させ、近隣諸国のCO2排出量を増大させる」と懸念を表明している。そのため社会民主党は予算案の審議に先立ち、2号機の無条件閉鎖を主張する左翼党、中央党との間で折衝を開始している。

スウェーデンとデンマークの2つの独立系コンサルティング会社が、スウェーデン政府の求めに応じて2号機の閉鎖条件を検討したところ、いずれも「2001年に閉鎖した場合、失われた電力量の約半分しかまかなえなくなる」との結論に達している(2000年6月)。

同国のエネルギー委員会(SNEA)も同様の結論に達し、その理由として「北欧電力市場は自由化されており、また他国からの電力輸入も容易なため、電力価格は極端に低迷している。したがって新規電源を建設するインセンティブがない」と指摘。一方でSNEAは、「デンマーク、ドイツ、ポーランドからの電力輸入は、厳冬期でも安定した供給が保証されている」とし、2001年7月1日までの2号機閉鎖を支持している。これに対しSNEA内には、「97年に規定された2号機の閉鎖条件を満たしていない状況で、議会がその条件を曲げて閉鎖を強要するようなことがあれば、それは明らかに政治的判断であり、SNEAはあくまでも事実関係に基づき判断する必要がある」と批判する向きもある。

なお同国の送電網を所有・運営するSvenska Kraftnat社は、「2号機が閉鎖された場合、南部スウェーデンへの電力供給は、厳冬期には電力輸入に頼るとしても危機に瀕する」と警告している。

バーセベック発電所の閉鎖問題は97年2月、連立政権を形成する3党の間で合意。1号機を98年7月1日までに、2号機を2001年7月1日までに閉鎖するとされた。実際に1号機が閉鎖されたのは99年11月30日であり、2号機の閉鎖には「省エネ、非化石燃料発電等で年間40億kWhの電力損失がまかなわれた場合のみ」との条件がつけられていた。


[国際−ウクライナ]

チェルノブイリ石棺実施計画、第2段階へ

チェルノブイリ石棺実施計画(SIP)への資金供給を目的に設立されたチェルノブイリ石棺基金(CSF)を管理する欧州復興開発銀行(EBRD)は7月27日、チェルノブイリ発電所を運転しているウクライナのエネルゴアトム社との間で、CSFからのSIP事業への新たな資金拠出に関する合意文書に署名、SIPが第2段階に進んだと発表した。

今回の合意は、ベルリンで5日に開催された第2回チェルノブイリ石棺対策会議でのCSF増額の決定を受けて行われたもので、EBRDはCSFからエネルゴアトム社に対し、SIPの運営管理費として、2億9500万ユーロの割り当てを行う。エネルゴアトム社はEBRDとの合意を受け、テクテル・ナショナル社、フランス電力公社(EDF)、バッテル記念研究所からなる国際コンソーシアムとの間で、2007年に予定されているSIPの完了までの運営管理サービスについての契約を結んだ。

第2回チェルノブイリ石棺対策会議では、欧州連合(EU)とG7を中心に、SIP完了に必要な資金の確保についての検討が行われ、CSFに3億2200万米ドル相当を上乗せし、7億1500万ドルに増額することが決定されていた。

チェルノブイリ原子力発電所では現在、4基ある原子炉のうち、3号機(RBMK:黒鉛減速軽水冷却炉、100万kW)だけが運転を続けているが、ウクライナのクチマ大統領は6月5日、同発電所を今年12月15日に閉鎖することを正式に発表している。

今回の合意は、7月26日に行われたウクライナのユシチェンコ首相とEBRDのフランク第一副総裁との間の、ウクライナの経済や原子力安全、エネルギー分野の再構築等をテーマとした会談の後に取り交わされた。これと並行して開かれたエルミロフ燃料エネルギー相率いるウクライナ政府代表団とEBRDスタッフとの実務者会合では、チェルノブイリ発電所閉鎖にともなう代替電源としてウクライナ側が求めている、建設中のフメルニツキ2号機とロブノ4号機の2基(ともにVVER-1000=ロシア型PWR、100万kW)の原子力発電所の完成に対する援助についての協議も行われた。2基の発電所の完成には14億5000万米ドルが必要と見積もられており、EBRDではこのうち2億米ドル程度の援助を行うことを検討してい るが、EBRD理事会による正式決定には至っていない。


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