[諸外国における原子力発電開発の動向] 主なできごと (2000年9月中旬〜10月中旬) top

台湾:第四原子力発電所の建設をめぐる動き

−新政権は建設中止に傾く。建設続行を主張した行政院長が辞任

林信義 (Lin Hsin-yi) ・経済部長 (大臣) は9月30日、第四 (龍門) 原子力発電所の建設続行の是非を問う再評価委員会の票決 (中止9票、続行6票) を受けて、同発電所の建設の中止を求める報告書を唐飛 (Tang Fei) ・行政院長 (首相) に提出した。

報告書は、(1) 放射性廃棄物の処理問題が解決していない、(2) 第四 (龍門) 原子力発電所を廃止しても早急に電力不足は生じない、(3) 同発電所を停止して天然ガス火力発電所に切り替える、(4) 稼働中の第一、第二、第三原子力発電所の機器の更新計画も棚上げする−などと結論、これまでの方針を大きく後退させる内容となっている。

再評価委員会の立上げ当初、同委員会の座長を務める林・部長は、台湾の原子力産業界が強引に支持する第四 (龍門) 発電所の建設を支持していた。しかしながら、9月16日に陳水扁 (Chen Shui-bian) ・総統が現在運転中の原子力発電所6基から生じる放射性廃棄物の処理問題が棚上げになっていることに懸念を抱いたことから、同部長のスタンスは一転して同発電所の建設中止へと傾いたとの見方が出ている。

また、林・部長は第四 (龍門) 発電所の建設の中止を求める報告書を行政院に提出した9月30日、同建設プロジェクトを中止して、液化天然ガス (LNG) 発電所を建設すべきと指摘。こうした一連の発言を受け10月2日の台湾の平均株価は4%下がった。

一方、前政権で国防部長 (国防相) を務めた国民党員である唐飛・行政院長は10月3日、突然、辞任を発表した。唐・行政院長は建設中の第四 (龍門) 発電所の存続問題で、建設中止を表明している陳・総統と対立しており、結果的に国民党の建設続行の立場を守った形だ。なお、陳・総統は後任の行政院長に陳政権の与党民進党の張俊雄 (Chang Chun-hsiung) ・現副院長を任命した。

第四 (龍門) 発電所は、台北市近郊の台北県貢寮郷塩寮に出力 135 万kW の改良型沸騰水型炉 (ABWR) 2基を建設する計画で、台湾にとって7、8番目の原子力発電所となる。台湾電力公司は1996年5月、米国のゼネラル・エレクトリック (GE) 社と同発電所建設の主契約を結び、日本の日立と東芝が GE 社の企業連合に参加する形式で機器を供給することになった。すでに建設工事の進捗率は30%以上進んでおり、営業運転開始は同1号機が2004年7月、2号機は2005年7月の予定である。

なお、第四発電所の建設が中止となった場合、台湾政府は主契約者の GE 社や、日本企業などから補償金として約900億新台湾ドル (3,120億円) を請求されるとみられている。さらに立法院で多数を占める国民党は、来年の予算案審議の場で、陳政権を揺さぶる構えをみせている。

同発電所の建設が続行した場合は、建設費用の残額は約800億新台湾ドル (2,780億円) であり、建設を中止した場合より台湾政府の負担は100億新台湾ドル (347億円) 少なくなる。

これまでの経緯をまとめると以下の通りである。

1996年5月台湾電力公司、GE 社と第四 (龍門) 発電所建設の主契約を締結。
1999年3月台湾原子能委員会 (AEC)、同発電所の建設計画を承認。
同1号機、着工。
1999年8月同2号機、着工。
2000年3月同発電所の建設反対派の陳水扁氏が総統選挙で当選。
2000年5月同発電所建設の計画再評価委員会が設立。
2000年9月同委員会が建設中止を求める最終報告書を行政院に提出。
[終わり]

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