[諸外国における原子力発電開発の動向] 最近の動き (2000年9月中旬〜10月中旬) top

[インド]

カイガ1号機、送電開始

カイガ1号機(PHWR=加圧型重水炉、22万kW)が9月26日に初臨界に達し、10月12日に送電を開始した。インドで13番目の原子力発電所となる同機は、1994年5月に二重格納容器に構造上の問題があったことが判明したため2年半工期が遅れていた。2号機(PHWR、22万kW)は1号機より3ヵ月後の1989年12月に着工、1999年9月に初臨界に達し、同12月に送電開始。2000年3月5日に正式に運転を開始してインドで11番目の原子力発電所となっていた。

インドは今年に入り、カイガ2号機に続いて、6月1日に国内12番目の原子力発電所であるラジャスタン3号機(PHWR、22万kW)も営業運転を開始しており、国内の原子力発電設備容量は228万kWとなった(別表参照)。このほか、ラジャスタン4号機(PHWR、22万kW)も年内に臨界に達する見通し。タラプール3、4号機(PHWR、各50万kW)は2000年3月8日に着工し、3号機は2005年10月、4号機は2006年7月にそれぞれ臨界の予定。

こうした中で、パジパイ首相は、ロシアのプーチン大統領がインドを公式訪問した10月3日、二国間における原子力分野での研究協力協定に署名した。この中には、インド南部のタミール州クダンクラムで計画されている、インド初の大型原子力発電所(VVER=ロシア製PWR、100万kW)2基の建設プロジェクトの協力も含まれている。1号機は2006年、2号機は2007年の初臨界を見込んでいる。同プロジェクトは1998年、ロシアから30億ドルの融資で共同建設することが両国間で合意されていたが、今回のプーチン大統領の訪印では、追加融資が検討されていることが表明された。

なお、インドにおける原子力発電量は現在、総発電量の約2%しか占めていないが、2020年には原子力発電設備容量を現在の10倍近くの2000万kWにもっていく計画がある。

インドの原子力発電所
原子力発電所出力
(万kW)
炉型着工臨界営業運転設備利用率(%)
(1999-2000年)
カクラパー1号機22PHWR1984年12月1992年9月1993年5月85%
カクラパー2号機22PHWR1985年4月1995年1月1995年5月91%
マドラス1号機17PHWR1971年1月1983年7月1984年1月75.4% (1998年-1999年)
マドラス2号機17PHWR1972年10月1985年8月1986年3月71.5% (同上)
ナローラ1号機22PHWR1976年12月1989年3月1991年1月83%
ナローラ2号機22PHWR1977年11月1991年10月1992年7月79%
ラジャスタン1号機10CANDU1965年8月1972年8月1973年12月71%
ラジャスタン2号機20CANDU1968年4月1980年10月1981年4月80%
ラジャスタン3号機22PHWR1990年2月1999年12月2000年6月35.4% (2000年8月)
タラプール1号機16BWR1964年10月1969年2月1969年10月67%
タラプール2号機16BWR1964年10月1969年2月1966年10月87%
カイガ2号機22PHWR1989年12月1999年9月2000年3月
カイガ1号機22PHWR1989年9月2000年9月
建設中
ラジャスタン4号機22PHWR1990年10月

同上
タランプール3号機50PHWR2000年3月

同上
タランプール4号機50PHWR2000年3月

同上
クダンクラム1号機100VVER


計画中
クダンクラム2号機100VVER


同上


[パキスタン]

チャシュマ発電所、パキスタン側に納品

中国核工業集団公司(CNNC)は9月25日、チャシュマ原子力発電所(PWR、32万5000kW)のパキスタン原子力委員会(PAEC)への引き渡しを完了した。同国で2番目となるチャシュマ発電所は1999年11月25日に初の燃料装荷したあと、2000年5月3日に初臨界を達成、同6月13日に送電を開始していた。

同発電所は、1992年2月のPAECと当時の中国核工業総公司(旧CNNC)との間で取り交わされた原子炉供給協定に基づき1993年8月に着工された。採用されている原子炉は、中国の秦山1号機(PWR、30万kW)の改良型である。

当初の計画では1998年11月に送電を開始、1999年4月に営業運転開始の予定であったが、基準炉である秦山1号機で1998年、炉心計装部の振動問題が発生したため、大幅に工程が遅れていた。


[米 国]

ユニコム社とPECOエナジー社の合併が最終承認

米証券取引委員会(SEC)は10月20日、ユニコム社とPECOエナジー社の合併を承認した。今回の承認を受け、合併後の新会社である持株会社のエクセロン社が正式に発足する。10月23日からニューヨーク証券取引所で取引が開始される。また、新会社はシカゴとフィラデルフィラの証券取引所にも上場する予定である。

新会社のエクセロン社はシカゴに本社を置き、国内最大の原子力発電運転会社(17基・1650万kW)となり、顧客数が500万以上で年間売上は120億ドル。同社は合併後、イリノイ州とペンシルベニア州で送電事業を行うほか、中西部と中部大西洋諸州では発電設備容量で他社より優位に立つこととなった。

なお、すでに米原子力規制委員会(NRC)は8月4日、コモンウェルス・エジソン(Com Ed)社とPECOエナジー社が所有する20基(内3基は閉鎖)の原子力発電所のエクセロン社への運転認可の移転を承認している。

USEC社、DOEと共同で遠心分離法の実証工場を建設

濃縮事業者のUSEC社は10月6日、米エネルギー省(DOE)と共同で、オハイオ州パイクトン(ポーツマス)に改良型の遠心分離技術を開発するための実証プラントを建設すると発表した。なおUSEC社は9月19日、オークリッジ国立研究所(ORNL)で進められていた遠心分離技術の開発で蓄積された技術や経験を共有することを内容とした「研究開発に関する協力協定」をDOEとの間で結んでいる。

当面はORNLのイースト・テネシー・テクノロジー・パーク(ETTP)で既存の試験施設を利用。1年以内に開発の本拠地であるポーツマスに移転して、5年以内には実証工場での開発試験を終了する見通し。また、改良型の遠心分離技術が確立されるまでの期間、現在ポーツマスにあるガス拡散法濃縮工場はバックアップとして待機させることとなった。

米国ではガス拡散法に代わる濃縮方法としてAVLIS(原子レーザー法ウラン濃縮)に絞って開発を進めてきていた。しかしながら、USEC社は1999年6月、経営戦略上の理由から、次世代型ウラン濃縮技術であるAVLISの技術開発を中断すると発表していた。

NRC事務局、使用済み燃料貯蔵施設の安全評価を公表

米原子力規制委員会(NRC)事務局は10月6日、プライベート・フュエル・ストーリッジ社(PFS)が申請していた使用済み燃料中間貯蔵施設の建設について、安全上問題はなく規制要件に適合しているとした安全評価報告を公表した。この施設は、ユタ州トゥーエル郡のゴシュート・インディアンのスカルバレー・バンド保護地に建設が予定されているもので、4万4000トンの使用済み燃料の貯蔵が可能。今回の安全評価報告公表により、同プロジェクトは一歩前進したことになる。NRCは、来年の早い時期にも最終環境声明を公表し、同年末か翌年にはPFSの申請に対して結論をだす予定としている。

米国内の原子力発電所から出た使用済み燃料は、政府が引き取り処分することが法律で決まっており、エネルギー省(DOE)と電力会社の間でも契約が結ばれている。しかし、当初予定されていた1998年の引き取り義務を政府が果たせなかったため、電力会社としても独自の対応を迫られ、8社共同でPFSを設立した。

PFSは、NRCの要求に応じて科学技術的な調査を3年間にわたって実施。この6月には、同プロジェクトは環境上の影響は無視できるとした環境影響声明案がNRCによって公表されている。


[カナダ]

ロシアからのMOX燃料試験体がチョークリバー研に到着

燃焼試験のためにロシアから輸送されることになっていた核兵器解体プルトニウムを使用したMOX燃料試験体が9月25日、カナダ原子力公社(AECL)のチョークリバー研究所に到着した。試験体はカナダ原子力安全委員会からMOX燃料の陸・海・空路輸送の認可を受けた容器に収められ、ロシアから空路でカナダのオンタリオ州トレントンの空軍基地に搬入され、そこからヘリコプターで研究所まで輸送された。試験体には528gの核兵器級のプルトニウムが含まれている。

カナダ、米国、ロシア各政府は1999年、米ロの核兵器解体により発生した余剰兵器級プルトニウムをMOX燃料に加工し、CANDU炉を利用して発電しながら処分するための技術的な実証を目的とした燃焼試験を、カナダの試験施設で行うことに合意。今回のロシアからの燃料試験体の到着により、1月14日に到着済みの米国からの試験体とともに、年末頃からNRU研究炉(出力13.5万kW、重水減速・冷却タンク型)で照射試験が開始される。試験とそれに続く解析作業の完了は3年後を予定している。

カメコ社、BE社が運転するブルース発電所に出資へ

ウラン企業のカメコ社は10月12日、英国の電力会社のブリティッシュ・エナジー(BE)社との間で、BE社のカナダ子会社であるブルース・パワー・パートナーシップ(BPP)社への15%出資に関する了解覚書に調印したと発表した。

覚書では、カメコ社はBPP社の燃料調達に関する全ての責任を負うことになっており、今後、BPP社の運転するブルース発電所(A1〜4号機:CANDU、各90.4万kW:96〜98年から休止中、B5〜8号機:CANDU、各84万kW:運転中)に対して、ウラン転換サービスを提供するとともに、燃料形成加工業者との契約も行うことになっている。両社の正式な契約は2000年中に行われる予定。

BE社は7月11日、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社との間で、ブルース発電所を2018年まで賃借(25年間の延長オプション付き)することに合意した。BPP社はBE社がブルース発電所を運営するために設立した子会社で、同発電所の労働組合からの出資も5%まで受け入れることになっている。正式な契約の完了は、カナダ連邦政府ならびに発電所の立地するオンタリオ州政府当局による承認が必要であり、2001年の夏頃になる見込み。

BBP社は休止中のブルースA1〜4号機4基のうち、2基の運転再開を計画しており、それが実施された場合、ブルース発電所全体の年間ウラン(U3O8)使用量は1,500万ポンド、転換サービスはUO2で600トンになる。

今回の合意により、カメコ社は今後2年間で1億カナダドル相当の投資をBPP社に対して行うことになる。また、同社はBPP社から、OPG社がブルース発電所向けに製作し、すでに完成済みの燃料在庫を約4,200万カナダドルで買い取る。買い取った在庫は、ブルース発電所の燃料のほぼ1年分。

カメコ社はカナダに拠点を置く世界最大のウラン企業で、核燃料の転換規模も世界最大級。


[英 国]

UKAEA、ドーンレイ施設の解体撤去計画を発表

英原子力公社(UKAEA)は10月9日、総額40億ポンドに上るドーンレイ施設の解体撤去計画を発表した。今後50〜60年間でドーンレイ施設内の余剰施設全てを解体するとともに、全ての放射性廃棄物を安全な専用施設へ移し、敷地内の汚染箇所を除染することを目的としている。

ドーンレイ施設は、ドーンレイ高速炉(DFR、70年代に閉鎖)、ドーンレイ高速原型炉(PFR、94年閉鎖)およびドーンレイ材料試験炉(DMTR)が建設された英国のFBR開発の中心地(政府は92年11月にFBR開発計画を中断)である。また、DFRとPFRの使用済み燃料の再処理を行うFBR燃料再処理工場(処理能力:5〜6トン/年)とDMTR燃料、オーストラリアやグルジアなど海外の研究炉用高濃縮ウラン燃料の再処理なども行う材料試験炉燃料再処理工場(同:約1トン)の2つの再処理施設も有する。

98年6月には経済性の理由により、ドーンレイ再処理施設を手持ちの再処理契約が完了する2003〜2004年に閉鎖することが決まった。現在ドーンレイ施設の業務は、DFRとPFRのデコミッショニングと、PFR燃料の再処理が中心となっている。

今回の計画によると、デコミッショニング作業は、第1期から第5期までの5段階に分けられ、第1期では10〜15年をかけて、DMTRの燃料再処理工場およびDFRやPFRの廃炉をはじめとする現存する余剰施設の解体作業が続けられる。そして第2期終了までに、すべての燃料物質が貯蔵のために処理またはコンディショニングされる。高レベル廃棄物(HLW)は長期貯蔵に適した状態で容器に詰められる。第3期では、ドーンレイにあるすべての燃料処理・取扱工場が解体される。ガラス固化施設や高レベル液体貯蔵施設などの、操業を終了したHLW処理・貯蔵施設の解体作業も開始される。立坑とサイロの取り出し装置も解体される。

第4期では、ドーンレイにある原子炉3基の廃炉がすべて完了し、第5期中に全解体計画が終了する。重複する施設はすべて解体され、廃棄物は無害化されて専用の施設に収容される。汚染された地表は除染される。第5期終了時には記念モニュメントとしてDFRのドームを残し、完全に緑地化するとしている。

ドーンレイ施設の中には、300年間の管理を要する低レベル廃棄物(LLW)処分施設のように、長期の管理および保守を必要とする貯蔵施設地区も存在する。中レベル廃棄物(ILW)およびHLW向けの処分場が確保されなければ、これらの廃棄物もドーンレイで安全に貯蔵する必要がある。ILWを今後50〜60年の期間内にドーンレイ施設から撤去できれば、HLW貯蔵施設は、計画の解体段階の最終局面で施設に残る唯一の「稼働」施設となる。UKAEAは、「その場合、HLWをどこか別の暫定貯蔵所に移送することを検討し、ドーンレイ施設を閉鎖できるようにする」としている。

UKAEAは今回の解体撤去計画を「原子力複合施設のデコミッショニングとしては初めての試み」と位置付け、同計画を規制当局や株主らとドーンレイ施設の今後を論ずる際の叩き台とする意向である。


[ドイツ]

使用済み燃料の輸送が再開へ

ドイツ政府の発表によると、シュレーダー首相とフランスのジョスパン首相は10月中旬、フランス・ビアリッツで開催されたEUサミットの場で使用済み燃料輸送問題について近く両政府間で話し合い、解決策を見出すことで合意に達した。今年6月にドイツ連邦政府と大手電力が原子力政策について合意したのを契機に、ドイツからフランスへの再処理委託は98年4月に中止されて以来、再開に向けて具体的な動きが出てきた。しかし、フランス側は国内のパブリック・アクセプタンス(PA)や法規上の問題から、再処理に伴って発生した廃棄物のドイツへの引渡しが先決であると主張、事業者や所管官庁間の個別交渉では解決が難しく、外交的な対応が必要となっていた。

国内に再処理施設を持たないドイツは従来、フランスのラ・アーグと英国のセラフィールドに再処理を委託していた。ところが前コール政権時代の98年4月、ラ・アーグむけ使用済み燃料輸送キャスクや車両で規制値を超える放射線漏れが検知され、これを機に国外の再処理施設および国内の中間貯蔵施設むけ輸送が全面的に禁止された。SPDと緑の党の連立政権が発足した後も、禁止措置が続き、原子力発電所サイト内に使用済み燃料が貯り続け、発電所によっては貯蔵能力が限界に達し運転停止に陥いる懸念が高まっている。

今年6月に合意されたドイツ連邦政府と大手電力との取決めに前後して、アーハウス中間貯蔵施設むけの国内輸送が1月26日に、フランス、ラ・アーグむけの輸送が9月22日に一部許可され、輸送再開の兆しが出てきたところで、フランス側との対立が表面化した。ただ、使用済み燃料輸送の再開にあたり、ドイツが直面する問題はフランスとの関係だけでなく、反対派による大規模な抗議や妨害行為への対応策がある。すでに今回も、フィリップスブルク原子力発電所周辺で10月中旬に反対派が1000人規模の抗議行動を展開しており、輸送経路や警備など数多くの課題が残っている。

旧東独の2大電力会社再編が加熱

RWE社とE.ON社は10月7日、EUカルテル当局の指示に従い、両社が所有する旧東独の大手褐炭発電会社、合同エネルギー株式会社(VEAG)の81.25%株式の公開入札に踏み切った。EUは今夏、RWE社とVEW社、VEBA社とVIAG社の合併審査の際、電力市場の寡占化を防止するため、両社に対して旧東独電力の株式を手放すことを承認の条件として提示した。VEAGは90年の東西ドイツ再統一に伴い、西側電力会社の出資により設立された。同社は、巨額の負債や施設の老朽化など数多くの課題を抱えているものの、電力会社としてはドイツ国内第4位、旧東独の約6割のシェアを占める上、東西ヨーロッパの中心に位置するため、欧州電力市場への進出をめざす多くの企業が今回の入札に注目している。11月15日の入札期限までに、国内外の10数社が応札するものと見られている。

入札予定の企業として、VEAGにすでに出資しているベルリン電力(BEWAG)、ハンブルク電力(HEW)、エネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)社の他、国外からはスペインのエンデサ社とイベルドローラ社、イタリア電力公社(ENEL)、ベルギーのトラクテベル社などの名前が上がっている。また、米国からは、旧東独の褐炭鉱山会社ミブラグに出資している米NRGエネルギー社をはじめ、数社が単独か共同入札の形で参加すると予想されている。

一方、E.ON社が所有するBEWAGの株式49%については、ハンブルク電力(HEW)と米サザン・エナジー社の間で8月以来、折衝が続いている。E.ON社は当初、BEWAG社の株式をHEW社に譲渡することで合意したが、これに対してBEWAG社の株主でもある米サザン・エナジー社が異議を唱え、交渉は白紙に戻った。HEWの背後には、同社の大株主で、欧州市場への進出に野心的なスウェーデンの公営電力会社、バッテンフォール社が控えており、同社はサザン・エナジー社が9月下旬にBEWAG社の株式を共同で所有するという妥協案にも応じなかった。

こうした中、バッテンフォール社は10月19日、E.ONとシドクラフト両社がそれぞれ所有するHEWの株式、合わせて37.2%に、市場からの新たな買い取りを加えて、HEW社の持ち株比率を71.2%に高める考えであることを明らかにした。バッテンフォール社は4億9500万ユーロを支払う他、同社が所有するスウェーデン、ノルウェー、チェコ、リトアニアの電力株の一部を譲渡する。取引は、年内中に完了する予定。バッテンフォール社とHEW陣営の連携が一層、強化されることは、旧東独株式取得にむけて有利との見方も出ている。


[スペイン]

エンデサとイベルドローラ、合併を合意

スペイン最大の電力会社であるエンデサと第2位のイベルドローラの両社は10月17日、株式交換方式により合併することで基本合意に達した。他の欧州諸国と同様、電力市場の自由化が加速するスペインでは今年3月、アスナール首相率いる中道右派の国民党が再選され、経済自由化路線が一段と強まった。既存企業の吸収・合併が活発化する中、両社は合併により国際市場への進出と事業の多角化をめざす考えを示している。

合併後のエンデサ・イベルドローラ社は、スペイン電力市場の約8割を占めることになるが、新会社は2003年までに資産の約3割を処分する方針を打ち出している。処分される資産は設備容量にして約1500万kW、顧客数は400万件にのぼり、イベルドローラの現在の持分に相当する。これは、巨大合併の審査にあたるスペイン政府やトラスト規制当局からスムーズに承認を取り付けるための次善の策であると同時に、国内の発電設備を近隣諸国に売却する代わりに相手国の市場に参入しようとするねらいがある。新会社のCEOに就任予定のミランダ氏(現エンデサCEO)は、イタリア電力公社(ENEL)、独RWE、E.ON社、仏EDFとすでに交渉中であることを示唆、現イベルドローラCEOであるエレロ氏も隣国ポルトガルとの接触を明らかにしている。

一方で、合併に異議を唱える動きも出ている。石油会社であるレプソル社は同19日、政府に対して合併交渉は公正な競争に反していると訴えた。同社は、イベルドローラに対して自社の傘下にあるガス・ナトゥラル社(天然ガス部門)との合併を提案したにもかかわらず、不公平に扱われたとして交渉の再開を求めている。この訴えに対し、イベルドローラ側はレプソルからの提案はエンデサとの合併合意直前に示された上、具体性に欠ける内容だったと反論している。ただ、イベルドローラの株主であるBBVAやBBKなど大手銀行も、レプソル社を支持しており、こうした動きが政府の承認とならんで合併実現の障害となる可能性もある。

スペインの電力事業は、1、2位のエンデサとイベルドローラの他、フェノーサが3位(市場シェア:13%)、ハイドロカンタブリコが4位(同7%)を占め、この4大民間グループが国内の電力設備と発電量の98%を占めている。スペインの99年の総発電電力量は約2082億kWhで、内訳は石炭火力が57%、原子力が28%、水力が15%(スペイン電気事業協会)。運転中の9基の原子力発電所も、この4グループのいずれかによって所有されている。

今回、合併に合意したエンデサとイベルドローラ以前にも、電気事業の再編の動きはあった。第4位のハイドロカンタブリコの株式をめぐって、ライバル会社である3位のフェノーサやドイツのエネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)が買収に乗り出したが、いずれも政府が合併を電力市場の自由化に結びつかないとの理由で却下。特に、フランス電力公社(EDF)が株式の4分の1を所有しているEnBWには、フランスの電力市場がスペインより閉鎖的であるとして強い反発が起こった。なお、ハイドロカンタブリコの株式は今年7月、米TXU社が所有率を20%に増やしている。

運転中のスペインの原子力発電所の所有者 (%)
発電所エンデサイベルドローラフェノーサカンタブリコその他
アルマラス-136*5311

アルマラス-236*5311

アスコ-1100**



アスコ-285**15


コンフレンテス
100


ホセカブレラ

100

サンタ・マリア デガローニャ



100***
トリリョ-1
4834.515.52***
バンデロス-27228


(注)*エンデサ・グループのセビリア電力 (CSE) が所有。
**エンデサ・グループのカタルーリャ電力 (FECSA) 所有分を含む。
***エンデサとイベルドローラが 50% ずつ出資した NUCLENOR 社。


[スウェーデン]

FT紙、スウェーデンの原子力発電所早期閉鎖計画を批判

英フィナンシャル・タイムズ紙は9月29日、『混乱する原子力政策』と題した記事を掲載。スウェーデンの原子力発電所早期閉鎖計画を「愚行」と厳しく批判した。

FT紙は「脱原発政策は電力市場自由化の動きに逆行する」とした上で、「政府のバーセベック2号機閉鎖期限の延長は、現実的な経済性を考慮した結果」と指摘。現実にそぐわない早期閉鎖計画にこそ問題があると強調している。

また、「原子力発電所の安全性は極めて高く、40年以上にわたっての運転が可能で、一度投資すれば長期間の経済的優位を維持できる」と主張。早期閉鎖は投資の無駄であり、今後より一層の情報公開と市場の自由化が進展すれば、早期閉鎖政策は撤回されるであろうとの見方を示した。


[チ ェ コ]

テメリン1号機が臨界達成

チェコ電力(CEZ)のテメリン1号機(VVER、97万2000kW)が10月11日、臨界を達成した。同機は今秋にも送電を開始し、2001年5月に営業運転を開始する予定である。なお2号機は2002年11月の営業運転開始を予定している。

CEZは原子力規制当局(SUJB)に10月6日、同1号機の起動許可を申請。SUJBは10月9日に起動を承認した。

ドコバニ発電所、バックフィット作業で契約

チェコのSKODA社は10月12日、ドコバニ原子力発電所のバックフィット(安全性改善)作業で、フランスのフラマトム社とシュナイダー・エレクトリック社のコンソーシアムと契約を締結した。

ドコバニ発電所はロシア製PWRであるVVER-440型炉×4基(出力各44万kW)で構成、いずれも1985〜1987年に営業運転を開始した。今回の契約に基づき、2005年から2009年にかけて、原子炉防護、緊急時操作、等の安全システムのアップグレードが実施される。

今回採用された安全システムは、「スピンライン3」と呼ばれるもので、フラマトム社とシュナイダー・エレクトリック社が共同開発。フランスのフェッセンハイム発電所や、ブルガリアのコズロドイ3,4号機に採用されている。2001年には、ベルギーのチアンジュ発電所、中国の秦山発電所にも採用される予定である。


[ロシア]

ロストフ1号機、11月24日に燃料装荷へ

ロシア当局者が10月中旬に行った発表によると、建設中のロストフ1号機(VVER-1000、100万kW)は、11月24日に燃料の初装荷が計画されている。同機ではすでに機器類の設置が終了しており、プラント系統や機器のコールド運転試験が行われている。10月中〜下旬には、ホット試験も開始される予定。

1998年5月に政府承認された原子力省(MINATOM)の2005年までの原子力発電開発計画の中では、2000年までにロストフ1号機のほか、カリーニン3号機(VVER-1000、100万kW)とクルスク5号機(RBMK-1000、100万kW)の3基の完成を予定している。しかし、原子力発電所運転会社であるロスエネルゴアトムは3月上旬、財政難により建設資金の確保が十分ではないため、計画通り2000年中に完成するのはロストフ1号機のみで、クルスク5号機は2003年、カリーニン3号機は2004年の完成となるとの見解を示していた。


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