[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2000年11月中旬〜12月中旬)
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ベルギー:政府委員会、原子力オプション維持を支持

-- 現政権のゆるやかな脱原子力政策にストップ

政府の特別委員会は12月18日、2020年を見据えた同国のエネルギー開発計画に関する提言をとりまとめ、テルーズ・エネルギー大臣に報告書を提出した。それによると、各電源との比較検討を行った上で、技術開発による原子力安全の向上と、発電コストの削減が課題としながらも、地球温暖化防止などの環境保全面などに着目し、原子力オプションと技術力の維持が必要と提言している。また、同委員会は政府が主張する使用済み燃料の直接処分政策についても、再度検討するよう勧告している。

同委員会は運転中の原子力発電所の早期閉鎖を裏付ける科学的、技術的根拠はないと断言しており、1999年6月に発足した新政権が打ち出したゆるやかな脱原子力政策と真っ向から対立する結論を出している。報告書は今後、エネルギー大臣が任命した5人によるピア・レビューにかけられるが、作業を主導する同大臣が緑の党出身であるため、公正なレビューが行われるかどうかを懸念する見方もある。

今回の検討作業は、16名の専門家によって将来の電力需要見通し、最新技術や温室効果ガス排出削減技術、電源別の環境影響や、発電コストと外部コストの評価など9つのテーマ毎に行われた。検討委員会の委員長は、国立ベルギー銀行頭取であるポーウェル氏とベルギー放射性廃棄物・核物質管理庁 (ONDRAF/NIRAS) の理事長であるストレイド氏のふたりが共同で務め、ポーウェル氏は経済分野、ソトレイド氏はエネルギー分野を主に担当した。

発電コスト評価では、原子力や石炭、ガス、石油、風力、バイオマス、水力など2010年時点の新規プラントを想定して燃料コスト、非燃料コスト (投資や運転・保守コスト) および外部コスト (大気汚染、騒音、温室効果ガス、電離放射線等) を計算した。原子力発電については、大型加圧水型軽水炉 (PWR、130万kW 程度)、ウェスチングハウス社の AP600 型 (PWR、60万kW)、モジュールタイプの高温ガス炉 (MHTGR、80万kW) の3つの炉型について1kWh あたりの発電コストをそれぞれ1.28ベルギーフラン (BEF、約3.5円)、1.22 BEF (約3.3円)、1.7 BEF (約4.6円) と試算している。これはいずれも1.74フラン (約4.7円) のコンバインドサイクル・ガス火力の発電コストを下回る。

また、再生可能エネルギーをはじめとするこれ以外の電源に関しては、厳しい評価が下された。太陽光発電は、技術および経済的理由から2020年までは主要な代替エネルギーにはなりえないと結論。また、木材やワラなどを利用したバイオマスによる発電も4%未満の低いシェアにとどまると予測している。風力は2010年に電力需要の6%程度を占める可能性があるものの、これには政治的な援助と天候に恵まれるという条件が加えられた。ディーゼルエンジン、燃料電池などのコジェネレーション (熱電併給) による発電は2010年に170〜230万kW 程度の設備容量しか達成できず、代替エネルギーとしての戦力にはならないとの見方が示された。天然ガスは最も有望な電源と位置付けられているものの、原子力の代わりに天然ガスで発電した場合、年間の炭酸ガス排出量が現在のほぼ2倍にあたる1,800万トンに達することから、主力代替エネルギーとはならないとの見解が示されている。

ベルギーでは、80年代後半に8基目の新規プラントの建設計画が反対運動によって放棄された。その後、MOX 燃料加工施設の拡張や国外再処理委託契約をめぐり核燃料サイクル政策に関する議論が高まり、抜本的なエネルギー政策の見直しを望む世論が高まった。このため、キリスト教社会党が率いる前政権は1999年2月、エネルギー、環境、経済、雇用などの専門家16名 (いずれもベルギー国内の学識経験者) からなる委員会を発足させ、作業を開始した。前政権が1999年6月の総選挙に敗れた後も、同委員会の活動は自由党、社会党、緑の党からなる連立政権に引き継がれた。

[終わり]

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