[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2000年11月中旬〜12月中旬)
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[韓 国]

韓国重工、民営化へ

韓国の複合企業である斗山社(Doosan Corporation)は韓国重工業(HANJUNG)の36%の株式を一株あたり6ドル80セントで韓国開発銀行から買収した。なお、同社は、韓国為替銀行が所有しているHANJUNG株の15.7%の選択売買権(オプション)を持つため、これで合計51.7%の株式を所有することになった。HANJUNGの株式は、韓国電力公社(KEPCO)が40.5%、韓国開発銀行が43.8%、韓国為替銀行が15.7%所有していた。

韓国政府は1998年7月、HANJUNGとKEPCOなどの国営企業11社の民営化計画を発表し、HANJUNGなどの5国営企業の即時民営化を、KEPCOなどの6国営企業の段階的民営化(数年内)をそれぞれ決定していた。

なお、斗山社はビール製造から精密機械まで幅広く事業を展開している。

[インド]

カイガ1号機が営業運転開始、ラジャスタン4号機は送電開始

10月12日に送電を開始していたカイガ1号機(PHWR=加圧型重水炉、22万kW)が11月16日に、営業運転を開始、インド13番目の原子力発電所となった。

一方、11月3日に初臨界に達していたラジャスタン4号機(PHWR、22万kW)が11月17日、送電を開始した。初臨界から初送電の期間が僅か14日間であり、それまでのカイガ1号機の16日間より2日間短縮された。

インドでは2000年3月以降、カイガ2号機(PHWR、22万kW)が、またラジャスタン3号機(PHWR、22万kW)が6月に、それぞれ営業運転を開始しており、今回のカイガ1号機を含めて原子力発電設備容量は250万kWとなった。このほか、ラジャスタン4号機(PHWR、22万kW)も2001年内にも営業運転開始の見通し。なお、2000年3月8日に着工したタラプール3、4号機(PHWR、各50万kW)は、3号機が2005年10月、4号機は2006年7月にそれぞれ初臨界の予定。

[米 国]

CEG、ナインマイルポイント1、2号機を買収

コンステレーション・エナジー・グループ(CEG)の子会社であるコンステレーション・ニュークリア(CN)社は12月12日、ナインマイルポイント1号機(BWR、63万5000kW)の100%および2号機(BWR、116万9000kW)の82%をナイアガラ・モホーク(NiMo)社などの4社から8億1500万ドルで買収することで原則合意したと発表した。2001年半ばまでには規制当局からの承認を得て買収を完了する見通し。同発電所は、ニューヨーク州スクリバに位置し、1号機はNiMo社が100%所有、また2号機はNiMo社(41%)、ニューヨーク州電力・ガス庁(18%)、ロチェスター・ガス&エレクトリック社(14%)、セントラルハドソン・ガス&エレクトリック社(9%)、ロングアイランド電力庁(18%)が共同所有している。

買収額の内訳は、現金分が8億1500万ドル(発電所:7億3700万ドル、燃料:7800万ドル)で、取引完了時に半額の4億750万ドルを現金で支払い、残りの半額については5年間で支払う。また、CN社は買収完了時に4億5000万ドル払込まれている廃炉基金を引き継ぎ、すべて廃炉措置に関して責任を負うことになる。なお、CN社としては、廃炉基金に今後8800万ドルを支払うことになる。一方、売却4社は今後10年間、同発電所が発電する電力の90%を35セント/kWhでCN社から購入することも盛り込まれている。

ナインマイルポイント1、2号機の買収をめぐっては、1号機(100%)、2号機(41%)を所有しているナイアガラ・モホーク(NiMo)社および2号機(18%)の共同所有者であるニューヨーク州電力・ガス庁(NYSEG)が1999年6月24日、アメージェン社への売却で原則合意した。この時の提示金額は、1号機の100%と2号機の59%で1億6320万ドル。しかし、2000年5月12日に両機の売却契約は白紙撤回され、規制当局者であるニューヨーク州公益事業委員会(PSC)が売却撤回を承認したため、両機とも再度の競争入札にかけられていた。その後、2号機の14%を所有するロチェスター・ガス&エレクトリック(RG&E)社と9%を所有するセントラルハドソン・ガス&エレクトリック社も加わり合計82%となり、2000年6月1日に競売にかけることになったが、同機の18%を所有するロングアイランド電力庁は持分の売却には応じなかった。

[フランス]

フランスの原子力産業再編計画が発表へ

フランスのファビウス大蔵・経済・産業大臣は11月30日、同国の原子力産業再編計画を発表した。それによると、政府は新しい持ち株会社(Topco)を創設し、その監督下にドイツ・シーメンス社との合弁会社であるフラマトムANPとフランス核燃料公社(COGEMA)からなる原子力部門と、フラマトム社の一部だったフラマトム・コネクターズ・インターナショナル(FCI)社と仏伊合弁の半導体メーカーであるSTマイクロエレクトロニクス社からなる新技術部門を置く考え。また、CEAが所有する原子力研究施設のデコミッショニング基金を創設する計画も明らかにされた。

Topcoの株式は政府が原子力庁(CEA)を通じて78%、他の官民機関が18%を所有し、残りの4%は市場の取引きに委ねられる。再編は2001年末までに完了する見通しで、Topcoの初代会長にはコロンバニ現CEA長官、CEOにはローベルジョン現COGEMA会長兼CEOが就任する予定。

今回の再編計画について、ファビウス大臣は法的にも資本的にも入り組んだ原子力産業界の複雑な構造を簡素化し、効率化をはかることがねらいであるとした上で、再編に伴い透明性の強化をはかる方針を示した。これまで政府は、原子力庁傘下のCEA-インダストリーや国営のCOGEMAを通じて関連企業の株式を所有していたが、今後は持ち株会社Topcoが一括して傘下におさめることになる。また、多角化か独立かの議論で揺れていたフラマトム・コネクターズ・インターナショナル(FCI)社は、原子力部門から切り離され、一部株式が市場に放出されることになった。フラマトム社のビニョン会長兼CEOは、収益性の高いFCIを含めたフラマトム全社の株式を公開するように主張したが、CEAやCOGEMAの反対意見が採用された形となった。今後は各社が所有するフラマトム株式が整理され、持ち株会社TopcoがフラマトムANP社の66%を所有することになる。なお、残りの34%はドイツ・シーメンス社の持分となる。

[フランス − ドイツ]

EC、フラマトムANP設立を条件付で承認

欧州委員会(EC)の独占禁止当局は12月6日、フラマトムANP社の設立を条件付きで承認した。新会社トップには、フラマトム社の会長兼CEOであるビニョン氏が就任する予定。

フラマトム社とシーメンス社は1999年末、世界的な原子力企業の再編の動きに呼応して、両社の原子力部門を統合することで基本合意し、2000年7月にはフラマトム社が66%、シーメンス社が34%を出資して、フラマトムANP社を設立することで最終合意に達していた。こうした動きを受けて、ECは同年8月中旬、新会社の審査に着手した。新会社は世界の原子炉市場の2割、欧州の核燃料市場の8割を占めることになるため、ECは原子力市場の寡占防止の観点から詳細な調査を行う方針を示していた。

今回、ECが提示した条件は、フラマトム社の株主であるCOGEMA(34%)と電力公社(EDF)(9.1%)に対して同社の株式を手放すよう求めた上で、COGEMAがフラマトムANPの新規事業に参加することを禁止している。また、EDFには原子炉や燃料集合体などの資機材の調達先をフラマトム社やシーメンス社以外にも開放するよう命じている。ただECは、フランス政府が先に定めた産業再編にそって、持ち株会社がフラマトムANPを監督下に置くことは認めた。すでに、EDFおよびフランス政府は、オープンで透明な資機材の調達が行えるよう、燃料購入時には広く公開入札を実施するとともに、新型燃料導入時には品質検査期間の短縮に努めるなどの具体策を約束している。こうした措置により、BNFL/ウェスチングハウス/ABB連合やスペインのENUSAがフランス市場に参入するチャンスが生まれるものと見られる。

[スウェーデン]

77%が原子力発電所存続を支持

スウェーデンで実施された最新の世論調査結果によると、77%が原子力発電所の早期閉鎖に反対、また83%がCO2を排出しない原子力の将来的な役割を重視していることが分かった。

この調査はストックホルムの市場調査機関であるDemoskop社が、スウェーデン・エネルギー産業連盟(Swedenergy)からの委託により、1000人を対象に実施した。以前の調査と比べて、原子力に対する見方に大きな違いはみられないものの、政府の脱原子力発電所政策に対する支持が極端に下がった。

今回の調査では、53%が「安全が確保される限り、運転中の11基の原子力発電所の運転を継続すべき」と回答。また24%が「期限を設けずに原子力発電所の運転を継続すべき」と回答し、合計で77%が原子力発電所の運転継続を支持した。また、環境問題で取り組むべき最重要課題を「温室効果ガス排出防止」とする意見が73%を占め、「水力発電所開発の抑制」(13%)や「原子力発電所の段階的閉鎖」(10%)を大きく引き離した。

なお2001年1月よりEUの議長国を半年間務めるスウェーデン政府は、「EU全体の温室効果ガス排出量削減」を最重要課題とすることを表明している。(2000年12月21日)

[フィンランド]

政府が最終処分場建設を原則決定

フィンランドのPOSIVA社が申請していた使用済み燃料の最終処分場建設について、フィンランド政府は2000年12月21日、建設を承認する原則決定を下した。POSIVA社は99年5月26日、オルキルオト原子力発電所近郊のユーラヨキ地点を建設候補地として選定、政府に申請していた。政府は今回の決定の理由として、建設予定地域住民が建設計画を支持していることや、原子力安全当局であるフィンランド放射線・原子力安全センター(STUK)も同計画を支持していること等を挙げている。

今回の原則決定を受け、議会は2001年2月にもこの問題を審議する。議会が建設計画を承認する原則決定を下せば、建設許可と操業認可の取得に移る。しかし議会の承認が得られた段階でPOSIVA社は、最終処分場建設の前段階と位置付けられている地下研究施設の建設が可能となり、数年内にも掘削作業を開始するとみられている。

最終処分場は2010年に着工、2020年に操業開始を予定している。POSIVA社の当初の計画では、既存の原子力発電所4基に加え新たに原子力発電所2基を建設すると想定し、設備容量を9000トンとしていたが、その後、既存の4基を60年間運転するとの前提で、4000トンに変更して申請した。

[チェコ]

テメリン発電所、追加的環境影響調査を実施へ

チェコ電力(CEZ)のテメリン1号機(VVER、97万2000kW)で、追加的な環境影響調査(EIA)を実施することになった。12月12日に開かれたチェコのゼマン首相とオーストリアのシュッセル首相との首脳会談で決まった。これにより2001年5月に予定されていた営業運転の開始は遅れることになった。

同機ではこれまでにEIAも含めさまざまな調査が実施されてきたが、隣国オーストリアが同機の運転に終始反対し、チェコのEU加盟拒否を表明するに至った。こうした中で両国の関係悪化を懸念した欧州議会も9月、チェコ政府に対し、テメリン発電所の送電を開始する前に十分なEIAを実施するよう要請した。

12月の首脳会談では、チェコ政府はEUの監督の下、2001年5月までにEIAを完了させることで合意。チェコ、オーストリア、EUの3極から成る専門家委員会を設立し、EUの原子力発電所評価手法に則してEIAを実施することが決定した。シュッセル首相は「全てのEIAを最初からやり直す」ことを主張していたが、国際原子力機関(IAEA)や西欧原子力規制当局連合(WENRA)等の国際機関の手による既存の調査結果は、そのまま採用することで最終的に合意した。ゼマン首相も、テメリン1号機の営業運転は、EIAが完了し承認された後になると言明した。

この会談を取り仕切ったEUのG.フェアホイゲンEU拡大担当委員は、「オーストリアが実施しているチェコとの国境封鎖はEUの理念に反する。今後も国境封鎖を継続する場合、EUはオーストリアに制裁する」と警告。両国間の緊張緩和を強く促した。

なお現在試験運転中のテメリン1号機は12月15日、蒸気タービンの復水ポンプの不具合で自動停止したが、18日には試験運転を再開している。

[ロシア]

下院、外国からの使用済み燃料受け入れ3法案を支持

ロシア議会下院は2000年12月21日、外国の使用済み燃料の貯蔵、再処理受託を目的としたロシア国内への受け入れについての関連3法案に対する第一読会を開催。300対30(棄権8)の大差で支持を決めた。

92年に制定された環境保護法第50条は、中間貯蔵および処分を目的とした外国(旧ソ連製原子炉が使われている国を除く)からの放射性廃棄物や放射性物質の国内への持ち込みを禁じているため、ロシアでは外国の使用済み燃料の商業再処理ができなかった。

こうしたことから、ロシア原子力省(MINATOM)は99年秋、外国からの使用済み燃料の商業再処理・中間貯蔵受託を目的とした関連法案を議会に提出、審議が開始されていた。法案では、使用済み燃料と廃棄物とを法的に区別し、国際的な安全基準が満たされていることを条件に、ロシア政府の同意のもとで、再処理ならびに中間貯蔵を目的として使用済み燃料をロシア国内へ持ち込むことを認める一方、放射性廃棄物の貯蔵ならびに処分は引き続き禁止している。

MINATOMは、今後10~20年間に、外国の原子力発電所から発生した使用済み燃料を最大2万トン程度受け入れることにより、少なくとも200億米ドルの収入が得られると試算している。また、得られた収入は国内の環境保護対策や燃料サイクル関連インフラの整備などに充てられることになっている。

法案は今後、下院での第二・第三読会を経てた上で上院に送られ、可決後にプーチン大統領の署名を経て成立することになる。

[ウクライナ]

チェルノブイリ発電所、12月15日に閉鎖

チェルノブイリ原子力発電所は12月15日、4基ある原子炉のうち最後まで運転を続けていた3号機(黒鉛減速軽水冷却炉:RBMK-1000、100万kW)の運転が停止され、閉鎖された。

閉鎖記念式典は現地時間の午後1時から行なわれ、クチマ大統領は首都キエフの会場から映像で結ばれた発電所の制御室に向けて、3号機の停止を命令。1時16分に炉心へ緊急停止棒が挿入され、原子炉はその数分後に停止された。

3号機は一次系配管で亀裂が発見されたために、12月6日から計画外の停止中であったが、記念式典のために閉鎖前日の14日に、蒸気漏れの予防策として送電系統から切り離された状態で、制御可能な最小出力で運転が再開されていた。

国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は閉鎖の前日に、ウクライナ政府のチェルノブイリ発電所閉鎖決定並びに運転中の原子力発電所の高い安全性を確保するとする公約に対して、満足していると表明。IAEAとしてもチェルノブイリ発電所閉鎖に伴う廃棄物管理だけでなく、1〜3号機の廃炉措置に関する計画立案から管理、実施に至る手法の高度化に関しても支援を行うことを明らかにした。

1995年12月、G7と欧州委員会(EC)はウクライナとの間で、チェルノブイリ発電所を2000年までに閉鎖する見返りに西側が代替電源確保のための資金援助を行うとする了解覚書に調印。ウクライナは代替電源として、建設中のフメルニツキ2号機とロブノ4号機の2基(ともにVVER-1000=ロシア型PWR、100万kW)の原子力発電所の完成を主張、G7側もこれに大筋で同意した。

しかし、その後の交渉の中でチェルノブイリ発電所閉鎖作業や代替電源完成までの中継ぎに必要な化石燃料の確保への支援を巡り、ウクライナと西側が対立。クチマ大統領は支援の決定が閉鎖の前提となるとして、閉鎖の正式決定を回避する一方、西側の援助の中心となる欧州復興開発銀行(EBRD)は、資金援助は閉鎖時期ならびに出資額の妥当性についての根拠の明確化が前提となるとし、お互いに決定を留保した。

2000年に入り閉鎖期限が近づくと両者の交渉も進展し、ウクライナ政府は3月に同発電所の年内閉鎖を明言。続けてクチマ大統領も6月5日には閉鎖時期を12月15日とすることを正式に発表した。そして9月15日、ウクライナと欧州連合(EU)は首脳会談の後、ウクライナがチェルノブイリ発電所を12月15日に永久閉鎖することを確約する一方、EUは代替電源として2基の原子力発電所完成計画にEUのEuratom融資およびEBRD融資を約束するという共同声明を発表。チェルノブイリ発電所閉鎖の道筋が明確になった。

クチマ大統領、新しい独立原子力規制機関の設置を命令

クチマ大統領は12月5日に議会で開催されたチェルノブイリ発電所閉鎖計画に関する聴聞会の後、政府機関から独立した新しい原子力規制機関の設置に関する大統領令を交付した。

大統領令は、現在の国家原子力発電検査本部と、環境・天然資源省原子力規制局を統合して、ウクライナ国家原子力規制委員会を新設するというもので、新しい委員会は、他の政府機関から独立した行政機関となる。

クチマ大統領は大統領令の交付と同時に、内閣に対し、必要な人員や設備、後方支援、財源等の割り当てを含む新委員会設置に関する法案の起草を1カ月以内に行うよう指示を出した。また、新委員会の委員長には、環境・天然資源省原子力規制局副局長のヒリシチェンコ氏が指名された。

独立した原子力規制機関の設置に対しては、西側諸国や国際機関から、ウクライナの原子力部門への援助増額の条件として、これまでも何度となく要請されてきていたが、結論は先送りされていた。しかし、欧州復興開発銀行(EBRD)が、チェルノブイリ発電所閉鎖の代替電源として2基の原子力発電所を完成させるための融資に際して、独立した規制機関の設置を条件の一つにあげていたことから、議会の聴聞会でも設置を求める意見が出され、大統領の最終的な決断に至った。

[欧  州]

EBRDとEuratom、チェルノブイリ発電所の代替原子力発電所完成への融資決定

欧州復興開発銀行(EBRD)と欧州原子力共同体(Euratom)は12月15日のチェルノブイリ発電所閉鎖を前に、建設が中断されているフルメニツキ2号機(旧ソ連型PWR:VVER-1000、100万kW)とロブノ4号機(同)を安全性の向上を図ったうえでチェルノブイリの代替電源として完成させる事業(K2R4プロジェクト)向けに総額8億米ドルを融資することを承認した。

EBRD理事会は12月7日、4つの条件をつけた上で2億1,500万米ドルの資金融資を承認。融資はウクライナ政府の保証の下で、国営原子力発電会社であるエネルゴアトムに対して行われる。EBRDが融資の条件として定めた項目は、@チェルノブイリ発電所の永久閉鎖の確認、A運転中の原子力発電所の安全性に対する保証(西側と同レベルの安全基準に準拠して運転されていることを確認する国際的な原子力規制機関による報告、G7並びに欧州委員会(EC)による技術支援の公約、ウクライナ政府による同国の規制当局への必要な独立性と手段付与の公約、等)、B国際通貨基金(IMF)役員会によるウクライナへの拡大信用供与措置(EFF)の承認、C本プロジェクトに対して融資を計画している他の機関による承認 -- の4件。

また、融資とその履行に際しては、プロジェクトの対象となる2基だけでなく、エネルゴアトムが所有している現在稼働中の13基の原子力発電所全てに対する安全性向上や、配電会社の民営化と税収入の増加を柱とする電力分野の再編なども求めている。

EBRD理事会での採決は、59カ国、EC、欧州投資銀行(EIB)からなる61の出資者により行われ、棄権を除く89%の賛成で承認された。

一方、Euratomを代表するECも12月13日、同プロジェクト向けとして、エネルゴアトムに対する5億8,500万米ドルの融資を行うことを承認した。

K2R4プロジェクトには総額で14億8,000万米ドルが必要とされており、EBRDとEuratom以外にも、出資に合意した各国の輸出信用機関から合計3億4,830万米ドル、ロシアが1億2,370万米ドル、そしてエネルゴアトムとウクライナ政府がそれぞれ1億5,860万米ドル、5,000万米ドルを拠出することが関係者間の協議で内定していた。

1995年12月、G7、EUとウクライナはチェルノブイリ発電所を2000年までに閉鎖する見返りに代替電源確保のための資金援助を行うとする了解覚書に調印。ウクライナは最も少ない投資で実現可能な代替電源として、建設が中断されている2基の原子力発電所の完成を提案し、西側もこれに同意していた。

WENRA、EU加盟候補国の原子力発電所を調査

西欧原子力規制者協会(WENRA)は11月9日、EU加盟候補国の原子力安全について報告書をとりまとめた。それによると、リトアニアのイグナリナ発電所とブルガリアのコズロドイ発電所以外はすでに西欧並みの安全レベルにあるか、または将来、到達する見込みがあるとの評価が下された。対象となった国はブルガリア、チェコ、ハンガリー、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベキアの7カ国。この7カ国では現在、24基の原子力発電所が運転中のほか、チェコで2基のVVER(旧ソ連型PWR)が建設終盤を迎えている。運転中の24基は、ルーマニアのチェルナボーダ(CANDU)とスロベニアのクルスコ(PWR)を除き、すべて旧ソ連時代に開発された原子炉で、内訳はVVERが20基、軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)が2基。

今回の調査は、99年3月の第1回調査から約1年半ぶり、2回目となり、原子力発電所の安全状況と各国の安全規制体制が評価の対象となった。WENRAは、前回調査で十分な情報が得られなかったVVER第1世代炉について調査団を派遣し、各規制担当官や運転者との会合を実施し、情報不足を補うなど特別の措置をとった。

今回の調査で、安全性の改善が見込めないと評価された原子力発電所は、リトアニアのイグナリナ1,2号機とブルガリアのコズロドイ1〜4号機。RBMKを採用しているイグナリナ発電所は設計上、格納容器が設置できないため、西側の安全レベルに達するのは難しいという見方が一般的。ブルガリアのコズロドイ1〜4号機は、VVERの中でも旧式の第1世代(VVER-440V-230タイプ)に属する。同国政府はこの4基を2003年に閉鎖すると約束しているが、それまでに現行の設備改良プログラムが完了する見込みはないと判断された。

西側設計のスロベニアのクルスコとルーマニアのチェルナボーダをはじめとする他の発電所は一部に課題を抱えているものの、安全上の問題はないと発表された。また、昨年末に送電を開始したチェコのテメリン1号機と建設中の同2号機については、一部の安全上の問題が解決すれば、西側の基準に見劣りしないレベルに到達できると評価され、運転開始に反対している隣国のオーストリアや一部ドイツの懸念を払拭した。

WENRAは各国の規制体制について、前回以降、すべての国で進展があったと一定の評価を下した。特に、チェコの規制当局は西側と同等レベルにあると高く評価された。一方、改善を必要とする国として、ブルガリア、ルーマニア、リトアニア、スロベニアがあがった。ブルガリアでは、議会が規制当局設立のための法案を否決しており、規制担当官の待遇や地位が保証されていない。ルーマニアでは、チェルナボーダ発電所を運転するヌクレアル・エレクトリカ社が電力料金を回収できず、適切な安全レベルの維持が脅かされていると警告された。また、リトアニアではイグナリナ発電所の運転者に安全管理上の責任と権限が与えられていないと指摘、スロベニアでは安全規制体制を確立するため、規制当局への予算措置を改善するよう求めている。

調査の対象となった発電所のうち、EU加盟にむけて閉鎖が決まっているのはVVER第1世代であるブルガリアのコズロドイ1、2号機とスロバキアのボフニチェ1、2号機、RBMKを採用しているリトアニアのイグナリナ1号機。ブルガリア政府はコズロドイ1、2号機を2003年までに閉鎖すると約束したが、同じくVVER第1世代である同3、4号機の閉鎖については国家エネルギー戦略の改訂を理由に先送りしている。また、スロバキア政府はボフニチェ1、2号機をそれぞれ2006年、2008年に閉鎖すると約束している。イグナリナ1号機は同国議会が2005年の閉鎖を決定、同2号機は2004年以降に閉鎖時期の議論を行うことで合意されたが、EUは2009年の閉鎖を求めている。

WENRAは、EU加盟国のうち、原子力発電所を運転している9カ国(フランス、フィンランド、ベルギー、ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデン、オランダ、英国)にスイスを加えた10カ国の原子力規制当局の責任者からなる国際組織で、フランスの原子力施設安全局(DSIN)のラコステ局長が会長を務めている。WENRAは、EUが加盟国拡大を検討する上で参考となる技術的な情報を任意に提供している。ただ、対象の発電所について閉鎖すべきか否かの判断や具体的な閉鎖時期の決定は、各国の規制当局に委ねるとし、WENRA自身は関与しない方針をとっている。今回の報告書は2000年11月8日にEU作業グループに提出され、EU関係機関と全加盟国政府に配布された。

EU加盟候補国で運転中の原子力発電所
炉型
VVER
第1世代
VVER
第2世代
VVER
第3世代
RBMKその他
ブルガリアコズロドイ1〜4
コズロドイ5,6

チェコ
ドコバニ1〜4(テメリン1,2) *

ハンガリー
パクシュ1〜4


リトアニア


イグナリナ1,2
ルーマニア



チェルナボーダ1
(CANDU-6)
スロバキアボフニチェ1,2ボフニチェ3,4
モホフチェ1,2



スロベニア



クルスコ (PWR)
合 計6基12基2基2基2基
* テメリン1,2号機は営業運転開始前 (1号機は昨年末、送電開始。2号機は建設中)
VVER第1世代=VVER-440 (V-230)
VVER第2世代=VVER-440 (V-213)
VVER第3世代=VVER-1000 (V-320)

EC、エネルギー供給保障についてグリーンペーパーを採択

欧州委員会(EC)は11月29日、欧州連合(EU)域内のエネルギーの安定供給に関するグリーンペーパーを採択した。それによると、京都議定書に基づき2010年までに温室効果ガスの8%削減を進める上で、原子力発電が重要な役割を果たすとの見方を示すとともに、将来のエネルギー需要に対応するため、抜本的な対策を講じる必要性を強調した。原子力以外の電源については、天然ガスは短期的なメリットがあるものの将来の開発には不確実性がともなうとの見通しを示した。また、再生可能エネルギーの開発には限界があるとの厳しい評価を下している。

ECがエネルギー政策を策定するのは、90年代半ば以来のことで、今後はこのグリーンペーパーを基にEUとしての包括的なエネルギー戦略を検討することになる。とくに、EU域内のエネルギー供給保障について、既成にとらわれない幅広く革新的な議論を展開させたいと積極的に取組む姿勢を示している。

今回の報告書では、まずEU域内のエネルギー・セキュリティに注目し、現在すでに化石燃料の輸入などで50%に達している域外へのエネルギー依存度は、このままでは20〜30年以内に70%に増加すると警告、エネルギーの自立をめざした政策が必要であると勧告している。また、加盟国が抱えるエネルギー問題には共通したものも多い上、1カ国の施策が他国に影響を及ぼす可能性もあることから、地球温暖化など共通した問題の解決にはEU規模で取り組む必要性があると提言している。さらに、エネルギーの外部依存を抑制するための方策として、省エネ、エネルギー税の整備、大規模な水力発電を含む再生可能エネルギーの開発、原子力の利用などに言及している。このうち、再生可能エネルギーについては、EU内の発電シェアを現在の6%から2010年までに12%に倍増させるよう求めるとともに、原子力については、オプションとして維持する必要があるとした上で、あらゆる側面からの議論や分析を行い、特に放射性廃棄物の管理技術や安全性確保においては研究を継続するよう求めている。

グリーンペーパーについて、欧州原子力産業会議(FORATOM)のシュミット-キュスター会長は、EU内のエネルギー自給率向上と地球温暖化防止に果たす原子力の役割が認識されたとして、報告書を歓迎する声明を発表した。同氏は、EU地域のエネルギー・セキュリティ問題に関する議論が活発化し、その過程で原子力の役割や重要性が再確認されるとの見解を示すとともに、エネルギー問題の解決にむかう第一歩と高く評価した。

同氏はまた、今後エネルギーに関する議論を行う上で、放射性廃棄物の問題は避けて通れないテーマであると指摘した。特に、高レベル放射性廃棄物処分場については、産業界の努力に反して政府の取組みが不十分であるとし、グリーンペーパー採択を契機として各国政府としても早急に対応するよう要請した。


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