[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2000年12月中旬〜2001年1月中旬)
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[中 国]

高温ガス炉が初臨界達成

中国政府は12月22日、北京市街地から約40キロ離れた清華大学に建設中だった高温ガス冷却炉(HTR‐10、1万kW)が21日に初臨界に達したと発表した。HTR‐10は、将来的には北京電力網と接続する予定だが、現段階では電力を供給する計画はなく、試験を行う拠点となり、技術者の養成などに利用される。同炉は冷却材にヘリウムを用い、従来の軽水炉に比べて高温が得られるため、実用化されれば、発電だけでなく多方面に利用できる。

HTR‐10は1995年に着工し、総工費32.5億円、中心となる設備は中国が独自に設計、製造した。中国は、米国、英国、独、日本に続く世界で五番目の高温ガス炉技術保有国になった。

なお、1989年11月には清華大学の低温熱供給実験炉(熱出力:5000kW)が臨界に達し、冬季の熱供給運転に成功している。

[韓 国]

新月城1、2号機、韓国標準炉を採用

韓国政府は、新月城1、2号機に韓国標準炉(KSNP)を採用すると発表した。2000年8月に、新古里1、2号機(PWR、100万kW)にもKSNPを採用することが決定しているため、KSNPとしてはそれぞれ9、10基目にあたる。1号機が2009年、2号機が2010年に完成の予定。なお、月城1、2、3、4号機(CANDU、1号機=67万9000kW、2、3、4号機=70万kW)は、カナダ製のCANDU炉が採用されている。韓国は現在、16基の原子力発電所が運転中で、電力需要の40%以上を発電している。

原子力開発長期計画によると現在建設中の4基と計画中の4基(新月城、新古里)に加えて、2015年までさらに6基増設されるが、古里1号機が2008年と月城1号機が2013年に閉鎖される見通し。(2000年12月)

[インド]

ラジャスタン4号機、営業運転を開始

2000年11月17日に送電を開始していたラジャスタン4号機(PHWR=加圧型重水炉、22万kW)は12月23日に営業運転を開始、インド14番目の原子力発電所となった。

同機は、原子力規制局から認可を取得、11月3日に初臨界に達した14日後の11月17日に送電網に接続された。なお、同サイトではさらに4基の増設が計画されている。

インドは現在、ラジャスタン4号機の営業運転開始により原子力発電設備容量は272万kW(14基)となった。建設中は2000年3月8日に着工したタラプール3、4号機(PHWR、各50万kW)。そのほか、ロシアから30億ドルの融資で共同建設することになっているクダンクラム1、2号機(VVER=ロシア製PWR、100万kW)が計画中。

[米 国]

原子力発電の経済性が向上

原子力発電所の平均生産コストが十数年ぶりに石炭火力発電所を下回ったことが明らかになった。ワシントンに本社を置くユーティリティ・データ研究所(UDI)がこのほどまとめたもの。それによると、燃料と運転・保守コストを合わせた1999年の平均生産コストでみると、原子力発電所が1.83セント/kWhとなり、石炭火力の2.07セント/kWhを抜いた。米国では80年代半ば以降、石炭火力が最も生産コストの低い電源としての地位を占めてきていた。なお、石油火力は3.18セント/kWh、ガス火力は3.52セント/kWhだった。今回発表されたデータは99年のもので、昨年の石油・ガス価格の高騰は反映されていない。

UDIによると、98年の平均生産コストは、石炭火力2.07セント/kWh、原子力発電2.13セント/kWh、石油火力3.24セント/kWh、ガス火力3.3セント/kWh。石炭火力は前年と変わりなかったが、原子力発電の生産コストが大きく改善されたため、順番が逆転する形となった。各電源の生産コストは、電力会社が連邦エネルギー規制委員会(FERC)に毎年提出している燃料と運転・保守コストに関するデータをもとにUDIがまとめている。この中には資本コストなどが含まれていないため、全体の発電コストではない。(1月上旬)

PECOエナジー社とPSEG社、所有の原子力発電所の資本比率を引き上げへ

エクセロン社の子会社であるPECOエナジー社とパブリック・サービス・エレクトリック&ガス(PSEG)社は、ピーチボトム2、3号機(BWR、110万kW2基)のデルマーバ・パワー&ライト社の持分であるそれぞれ7.51%の株式を買収すると発表した。なお、デルマーバ・パワー&ライト社は、セーレム1、2号機(PWR、1号機=113万2000kW、2号機=115万8000kW)の株式持分7.41%もPSEG社にすでに売却している。

これにより、ピーチボトム2、3号機及びセーレム1、2号機の共同所有者の持分は以下の通りとなった。

ピーチボトム2号機:PECOエナジー社(46.245%)
PSEG社(46.245%)
アトランティックシティ・エレクトリック社(7.51%)
同3号機:PECOエナジー社(46.245%)
PSEG社(46.245%)
アトランティックシティ・エレクトリック社(7.51%)
セーレム1号機:PECOエナジー社(42.59%)
PSEG社(50.00%)
アトランティックシティ・エレクトリック社(7.41%)
同2号機:PECOエナジー社(42.59%)
PSEG社(50.00%)
アトランティックシティ・エレクトリック社(7.41%)

なお、エクセロン社は2001年1月12日、新事業体制により子会社であるエクセロン・ジェネレーション社などの持株会社になると発表した。また、この新事業体制により、エクセロン・ジェネレーション社は、PECOエナジー社およびコモンウェルス・エジソン社の所有している発電資産を引継ぎ、総発電設備容量は4600万kWとなった。このうち原子力発電所は17基(計1650万kW)である。

[キューバ]

フラグア発電所の完成放棄が浮上

資金難から建設工事が凍結されているフラグア原子力発電所(VVER−440=旧ソ連型PWR、44万kW2基)のプロジェクトが中止される可能性が強まってきた。昨年12月15日、キューバを訪問したロシアのプーチン大統領との会談の際、同発電所を完成させる意向のないことがキューバ側から示された。カストロ国家評議会議長も、プーチン大統領の帰国後に行った演説の中で、天然ガス火力など原子力以外の発電所の建設を検討していることを明らかにした。

フラグア発電所は、旧ソ連との間で1976年に結ばれた協定にしたがい、83年に建設がスタートした。しかし、ソ連崩壊後に資金の調達が困難になり、92年から建設工事が中断。プロジェクト全体の進捗率は75%で、機器の据え付けも20%完了しているが、米国の強い反対にあって国際社会からの資金調達のめどがたっていなかった。

[英 国]

BNFLのMOX施設の改善を確認

英原子力施設検査局(NII)は2000年12月19日、データ改ざん問題が発覚した英原子燃料会社(BNFL)のセラフィールドMOX燃料実証施設(MDF)が改善されたことを確認する声明を発表した。

1999年に発覚したデータ改ざん問題を受け、NIIは同年9月より調査を開始。2000年2月18日には、BNFLに15項目の改善点を勧告した。これに対しBNFLは同4月18日、5項目について改善を報告。その後NIIが引き続きMDFの改善状況を検査・確認していた。今回、NIIが全15項目の改善を確認したことにより、BNFLはMDFの操業再開に向け大きく前進することになった。

ドーンレイのナトリウム処分施設が完成

英原子力公社(UKAEA)は1月3日、ドーンレイ施設に建設中だったナトリウム処分施設の建設が完了したと発表した。この施設はナトリウム液体金属処分施設で、2000年10月9日に発表されたドーンレイ施設の解体撤去計画に伴う環境復旧計画の中で、重要な役割を担っている。

ナトリウム処分施設は、1994年に閉鎖された高速炉原型炉(PFR)のナトリウム冷却材を塩水に転換する機能を備えている。UKAEAは、PFRから発生した計1500トンのナトリウムを、転換処理後に海に放出する計画である。

UKAEAは現在同施設の総合機能試験を実施しており、今夏の終わり頃をめどに操業開始し、2003年初頭までには大量のナトリウムの処理を終えたいとしている。

BNFL、新型マグロックス燃料の導入を「採算が合わない」と中止

英原子燃料会社(BNFL)は1月25日、計画していたマグロックス燃料の導入を「採算が合わない可能性が高い」として中止することを明らかにした。

マグロックス燃料は、BE社の所有する改良型ガス冷却炉(AGR)用燃料を、マグノックス炉(GCR:ガス冷却炉)用に変更したもので、取り出し後すぐに再処理しなければならないマグネシウム被覆のマグノックス金属燃料とは異なり、被覆にステンレスを採用したセラミック酸化燃料。1990年代初期に開発が開始された。使用済みマグロックス燃料は他のAGR燃料と同様にTHORPで再処理できるうえ、長期貯蔵も可能となる。

BNFLはこのマグロックス燃料を、マグノックス炉の中でも比較的新しいオールドベリー発電所(GCR2基、出力各23万kW、1968年に営業運転開始)とウィルファ発電所(GCR2基、出力各56万5000kW、1971-1972年に営業運転開始)に装荷することを検討していた。BNFLが2000年5月23日に発表したマグノックス炉運転計画によると、(1)マグロックス燃料の開発、(2)運転認可が切れる2004年(ウィルファ)および2008年(オールドベリー)以降の定期安全審査−を前提として、オールドベリー発電所とウィルファ発電所はそれぞれ、2013年、2016年(または2021年)まで運転を継続するとされていた。

しかし今回BNFLは、「マグロックス燃料の導入に技術面および安全面でのリスクはない」としながらも、「マグロックス燃料の導入には多額の投資が必要で、長期的観点から将来の電力価格等を考慮すると、商業的リスクが高い」と判断。マグロックス燃料の導入中止を決定した。

[フランス]

原子力安全機関設立が難航

フランス国民議会(下院)は2000年12月中旬、新しい原子力安全機関として放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)を設置する法案を可決した。IRSNは、原子力庁(CEA)傘下の原子力安全防護研究所(IPSN)と、保健省傘下の放射線防護局(OPRI)の機能を統合する公的機関。主に、原子力施設安全局(DSIN)が行う各種評価作業を技術面からサポートし、公衆や放射線に携わる従事者の放射線防護を管理する。

IRSNの設立は当初、ジョスパン首相の肝いりで98年に着手された原子力安全規制法案の中に盛り込まれる予定だった。しかし、法制作業は99年、参事院が草案を違憲とする勧告を下したため、事実上断念された。このため、今回の法案では、原子力安全と放射線防護に関する行政を技術的に支援する機能がIRSNに一本化されるにとどまった。

なお、新組織の業務内容については、まだ詳細が明らかになっていない上、監督権限をめぐり産業省、環境省、保健省、研究省の間で対立が続いている。フランスでは2002年に国政選挙が予定されており、各政党間の思惑が交錯する中、こうした問題が解決するにはさらに時間がかかるとの見方が強い。

[ドイツ]

旧東独の2大電力会社の株式取得で進展

RWEとE.ONの両社が所有株式の売却を進めていた旧東独の合同エネルギー株式会社(VEAG)とベルリン電力(BEWAG)の2社のうち、VEAGの81.25%については昨年12月、ハンブルク電力(HEW)への売却が決まったものの、E.ON社が所有するBEWAGの49%株式については、まだ売却先が決まっていない。2件の巨大合併を審査したEUは昨年夏、電力市場の寡占化を防止するため、RWEとE.ON両社に対してVEAGとBEWAGの株式を手放すことを承認の条件として提示した。旧東独の両社は、巨額の負債や施設の老朽化など数多くの課題を抱えているものの、今後の電力需要増が見込めるチェコやポーランドなどの東欧市場に隣接することから、市場拡大をめざす企業にとって有望な投資先となっている。

RWE社が32.5%、E.ON社が48.75%を所有するVEAG社の株式81.25%は2000年12月13日、ハンブルク電力(HEW)が約29億マルク(約1450億円)で落札した。HEWはドイツ北部を本拠地とする電力会社で、市場拡大に積極的なスウェーデンの公営電力会社、バッテンフォール社が大株主。今回の落札により、HEWは褐炭鉱山会社であるラウバク(Laubag)の92.5%株式も併せて取得し、旧東独一帯の860万kWの石炭火力発電所と1万キロを超える送電システムを取得した。同時に、再統一後の投資と設備改良のため、約50億マルク(2500億円)に膨らんだ負債も肩代わりすることになったが、バッテンフォールとHEWは東欧市場への大きな足がかりとして今回の落札に満足している。HEWの他、イタリア電力公社(ENEL)、米国からはNRGエナジー社とアメリカン・エレクトリック・パワー社、ドイツのエネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)社とBEWAGが入札に参加した。

BEWAGの株式売却については、E.ON社が昨年8月にHEW社と結んだ株式譲渡契約を不服とした米サザン・エネルギー社が交渉に加わり、折衝が続いている。昨年12月4日にはサザン・エネルギー社の訴えを受けたベルリン地裁が、E.ON社に対してBEWAG株式のHEWへの売却を一時禁止する判決を下し、仲裁裁判所に委ねられることになった。同地裁の判決は、1977年にベルリン市がBEWAGを民営化した際、株主との取決めの中で20年間は株式を所有するよう定められたことが根拠となっている。仲裁裁判所の判決は早ければ今年3月にも下される見通しだが、場合によってはさらに遅れる可能性もある。

一方、E.ON社は昨年12月、VEAGの株式をHEW社に売却した際、HEW社から同社が持つスウェーデンのシドクラフト社の株式15.7%を取得し、同社の株式比率を40%以上とした。E.ON社はさらに同社の100%株式買収に乗り出す構えを見せている。これに対して、RWE社も今年1月、スペイン第4位の電力会社であるハイドロ・カンタブリコ社の過半数株式の取得に名乗りをあげ、すでに入札を表明しているポルトガル電力(EDP)と争う意向を示している。

[スペイン]

当局がエンデサとイベルドローラの合併承認

スペイン最大の電力会社であるエンデサと第2位のイベルドローラの巨大合併を審査していたスペイン独占禁止当局は1月11日、両社の合併を条件付きで承認し、審査はスペイン政府の手に移った。同政府は2月9日にも決定を下す見通しであるが、両社の幹部は今回、独禁局の承認が得られたことから当初より楽観的な見方を示している。

両社は昨年10月に合併合意を発表した際、2003年までに資産の約3割を処分する方針を打ち出しており、今回の承認もそうした動きに一応の評価を与えた格好。スペイン電力市場の約8割を占める新会社は、発電と配電をそれぞれ約4割、6割程度に削減するとともに、両社合わせて800万人にのぼる顧客を半減する方針を示している。こうした動きを見越して、スペイン第4位のハイドロ・カンタブリコの株式をめぐり、ポルトガルの国営電力(EDP)やドイツ第1位のRWE社が応札するなど、2大電力会社の合併を契機にスペインの電力業界の再編が激しさを増してきた。

[スイス]

脱原発コスト、約4兆円と試算

ドイツのブレーメン・エネルギー研究所は1月16日、スイス国内で運転中の5基の原子力発電所を閉鎖し、再生可能エネルギーによる発電や大規模な効率化で代替する場合のコストを試算した調査結果を発表した。それによると、原子力を太陽光や風力発電で代替し、電熱併給能力を拡大し、電力効率をあげることは技術的には可能としながらも、即時閉鎖の場合、最低でも約620億スイスフラン(約4兆円)にのぼる莫大な資金が必要との結論に達した。

この調査は、市民団体が政府に提出している2つの脱原子力に関するイニシアチブ(国民発議)をふまえて、電力業界が同研究所に依頼していたもの。イニシアチブでは、パワー・ウィズアウト・アトム(PWA)が原子力発電所の即時閉鎖を、またモラトニアム・プラス(MP)が原子力発電所の運転期間を40年に制限した上で新規建設のモラトリアムの延長を求めている。同研究所は2000年2月、スイス電力業界の依頼により試算を行っており、原子力に代わる電源としてガス火力を採用すれば約400億スイスフラン(約2兆6000億円)の追加支出が発生するとの結論を導き出している。この調査では、再生可能エネルギーの可能性や電力効率の向上といった視点が欠けているとの批判が集まったため、再調査が行われた。

今回の調査では、標準的ケースとしてベツナウ1、2号機とミューレベルグ発電所が50年間、ゲスゲンとライプシュタット発電所が60年間にわたって運転を継続すると想定した上で、2つのイニシアチブに基づき原子力発電所が閉鎖された場合のコストが試算された。さらに、前回の調査結果をふまえて、ガス火力での代替シナリオとそのコストも紹介されている。 

まず再生可能エネルギーによって代替する場合は、約300万kWの太陽光発電施設と約100万kWの風力設備が必要となる。ただ、再生可能エネルギーの稼働率が自然条件に左右され、平均すると10〜12%にとどまるため、これを化石燃料でバックアップする必要がでてくる。このためのコストは、原子力発電所の即時閉鎖の場合で約621億スイスフラン(約4兆4000億円)、運転期間を40年に制限する場合で約462億フラン(約3兆円)と試算された。

また、原子力を電力効率化で補うには、全国規模で強制的に普及を進めることを前提として、それぞれ476億フラン(約3兆1000億円)と332億フラン(約2兆2000億円)のコストがかかると試算された。

さらに、原子力発電所の閉鎖は3つのリスクを招く危険があると警告している。まず、資本集約型の原子力発電施設を、安全に運転を継続できるにもかかわらず早期に閉鎖することによって資本の崩壊が起こるリスクが生じる。次に、原子力がガス火力に置き換えられた場合、石油価格と連動しているガス価格が政治的要因などにより急激に上下するリスクが生じる。最後に、原子力が化石燃料に置き換えられると、大気汚染と温室効果ガスの排出が加速し、その結果、発電部門での排出量増加をカバーするため、国民にどこかで過剰なコスト負担を強いるような政策がとられる危険性がある。

スイスでは、90年9月の国民投票を経て、2000年までの10年間は新規原子力発電所の建設を凍結することが決まった。モラトリアムが切れる2000年以降については、国民投票の実施に有効な10万人を超える署名を得て2つの反原子力発議(イニシアチブ)が99年末に議会へ提出された。スイス政府は、現行の原子力法が同じく2000年に効力を失うことから、将来の原子力開発政策を法改正のなかに盛り込む方向で見直しを進めている。

政府は2000年3月、新規原子力発電所建設に関する国民投票の実施と使用済み燃料の再処理禁止を改正法案に盛り込む意向を示した。また、焦点となった既存炉の運転期間については、同年10月までに幅広い協議を行った上で、運転年数に制限を設けず、保守点検により安全性が確認される限り運転継続が可能とする方針が示された。原子力法の最終原案は今年3月、議会に送られ、最長で2年間の審議を経て成立する見通し。

アルプス山系を抱えるスイスは、水力が重要な電源として総発電電力量の約6割を占めている。一方、運転中の5基の原子力発電所は、水力に次ぐ35%の電力を供給している。

[フィンランド]

2000年の原子力シェア30%

フィンランドの2000年の原子力発電電力量は219億7000万kWhで、総発電電力量に占める原子力の割合は約30%となった。

発電所別に見ると、オルキルオト原子力発電所(BWR2基、出力各87万kW)は140億7000万kWhと、総発電電力量の約20%を発電。一方、ロビーサ原子力発電所(PWR2基、出力各51万kW)は79億kWhを発電した。稼働率はオルキルオト1号機が95.7%、同2号機が95.5%。ロビーサ1号機が84.8%、同2号機が91%。4基の平均稼働率は91.75%だった。

1999年の原子力発電電力量224億kWhから4億3000万kWh減少したことについて、フィンランドエネルギー産業連盟(Finergy)は、燃料交換に伴う運転停止が影響したと説明している。(1月9日)

[チ ェ コ]

ドコバニ発電所、135億8800万kWhを発電

チェコ唯一の原子力発電所であるドコバニ発電所は、2000年に135億8800万kWhを発電した。ドコバニ発電所はPWR4基(いずれもVVER-440)から成り、出力は各44万kW。前年に比べて2億3100万kWh増となったことについて、同発電所関係者は、保守点検作業の効率を上げ、運転停止期間を短縮した成果と強調している。

ドコバニ発電所では2001年より10年間、5億4000万ドルを投じて、計装制御系システムの交換作業を中心としたバックフィット作業を行なう予定である。(1月12日)

[ルーマニア]

ルーマニアの2000年の原子力発電量は55億kWh

チェルナボーダ1号機(CANDU、出力70万6000kW)は、2000年に55億kWhを発電(前年比7億kWh増)、総発電電力量(528億kWh)に占める原子力発電の割合(シェア)は10.3%(前年比0.4ポイント減)となった。

同機はルーマニア唯一の原子力発電所で、カナダ型加圧重水型重水炉であるCANDU-6を採用し、1996年12月に営業運転を開始した。2000年の平均設備利用率は88.3%だった。

同発電所では2-5号機が建設中だが、3-5号機の建設作業は中断されている。2号機の建設作業は進捗率40%に達しているが、完成までには7億5000万米ドルの追加資金が必要とみられている。(1月19日)

[ロシア]

ロストフ1号機、燃料の初装荷が行われる

建設中のロストフ1号機(VVER-1000、100万kW)に1月21日、163体の燃料集合体が初装荷された。当初、ロシアの原子力発電所運転会社ロスエネルゴアトムは2000年11月24日に燃料初装荷、2000年内の試運転開始を計画していた。

ロストフ1号機は試運転が順調に行けば、2月中旬に初臨界、3月には送電網に接続され、8月には全出力運転を達成する予定。規制当局による営業運転認可の発給は10月になる見通し。同機が営業運転を開始すれば、1990年に営業運転を開始したスモレンスク3号機(RBMK-1000、100万kW)以来となり、ソ連からロシアに移行して初めての新規の原子力発電所となる。

ロストフ発電所はソ連時代の1979年11月に政府が出力100万kWのVVER-1000型炉4基の建設を決定、相次いで建設がスタートしたが、住民の反対運動から1990年9月に建設作業が中断された。ロシア政府は1995年、設計の一部変更により安全性を向上させ、1、2号機の建設を再開することを決定したが、ロシア原子力省(MINATOM)は資金難から、進捗率の高い1号機の建設を優先して行ってきた。なお、ロスエネルゴアトムは2000年11月、2号機についても2001年内に建設を再開し、5年間で完成させると発表している。

2000年の原子力発電電力量は1,306億kWh、シェアは14.9%

ロシアの2000年の原子力発電電力量は前年より197億kWh多い1,306億kWhで、初めて旧ソ連時代の発電実績を超えた。また、発電電力量に占める原子力の割合は14.9%となり、前年より0.5ポイントの上昇。2000年中は、新規に発電を開始した原子力発電所はなかったが、平均稼働率が74.7%となり、前年より約10ポイント上昇したことが発電電力量の増加につながった。

ロシアには2000年末現在、29基・2,155万6,000kWの原子力発電所が稼働中であるが、原子力省(MINATOM)のアダモフ大臣によれば、設備容量は2010年には2,200万kW、2020年には3,500万kWにまで拡大する見込みである。

[ウクライナ]

2000年の原子力発電電力量は773億5,500万kWh、シェアは45.3%

ウクライナの2000年の原子力発電電力量は773億5,500万kWhとなり、前年の720億6,500万kWhから7.3ポイント増加した。また、同国の2000年の総発電電力量1,706億9,900万kWhに占める原子力発電のシェアは45.3%となった。

ウクライナでは2000年末現在、13基・1,181万8,000kWの原子力発電所が稼働中。なお、チェルノブイリ3号機(RBMK-1000、100万kW)は2000年12月15日に閉鎖された。欧州最大の原子力発電所であるザポロジェ発電所(VVER-1000、100万kW 6基)は全原子力発電電力量の48%を占める368億6,500万kWhを発電。一方、2000年末で閉鎖されたチェルノブイリ3号機の発電電力量は、8.7%にあたる67億2,000万kWhだった。

2000年のウクライナの原子力発電所の平均設備利用率は68.7%で、前年より4.5ポイント増加した。チェルノブイリ3号機は76.5%の設備利用率を記録し、これはウクライナの5ヵ所の原子力発電所の中で最も高かった。

[アルメニア]

2000年の原子力発電電力量は18億4,000万kWh

アルメニアで唯一稼働しているアルメニア2号機(VVER-440、40.8万kW)は、2000年中に124日間の長期の運転停止に見舞われたため、原子力発電電力量は18億4,000万kWhとなり、前年の18億9,000万kWhより若干減少した。また、設備利用率も60.71%となり、前年より2.56ポイント低下した。

2000年中の計画外の運転停止は3回で、そのうち1回はINESの評価尺度でレベル1、残りはレベル0であった。また、計画停止も、メンテナンスとアップグレードに加えて使用済み燃料移送が行われたため長期化した。


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