[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2001年1月中旬〜2月中旬)
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欧州:新規原子力発電所立地の可能性を示唆

-- 今後20年の欧州原子力開発事情を展望

スウェーデン原子力産業会議会長でバッテンフォール社 (スウェーデンの国営電力会社) 発電担当取締役のN.アンダーション氏は2月12日、ベルギーのブリュッセルで開催された「エネルギー円卓会議」で講演し、欧州での新規原子力発電所立地の可能性を示した。

「今後20年間にわたる欧州の原子力発電の展望」と題して講演。「原子力発電は停滞しているとの見方が一般的だが、EU 域内で35%の電力を供給している事実を忘れてはならない」としたアンダーション氏は、強調した上で、西欧諸国で原子力発電所の新規立地が進まない理由として、(1) 新規に発電所を必要とするほど需要がない (2) 新規に発電所を必要とする国は、ガス火力に投資する傾向にある (3) スリーマイル・アイランド発電所とチェルノブイリ発電所の事故が、いまだにエネルギー政策に影響を及ぼしている−の3点を挙げた。そして、原子力は経済性、安全性、信頼性、環境負荷のあらゆる面で他電源よりすぐれており、京都議定書の目標を達成するためにも、少なくとも今後20年間は EU のエネルギー・ミックスに不可欠な電源であることを強調した。

また同氏は、原子力発電オプションの存続の必要性は認める一方で、欧州での原子力発電の利用拡大を可能性が低いと予測した欧州委員会のグリーン・ペーパー「欧州のエネルギー安全保障の確立に向けて」 (2000年11月発表) の見解を否定。個人的な考えとしながらも、原子力発電の利用拡大は不可避と指摘した。

さらに同氏はグリーン・ペーパーの原子力に関する認識不足として、放射性廃棄物問題等を指摘。「放射性廃棄物はクリーン・デベロップメント・メカニズム (CDM) から原子力を除外する際の理由として引き合いに出されるが、家庭からの廃棄物や産業廃棄物の量に比べればきわめて少ない。放射性廃棄物管理計画で欠けているのは最終処分場の建設だけであり、それには政治的な後押しが必要」と強調した。

同氏はまた、「欧州では今後20年以内に、追加的電源が必要と判断した国が新規原子力発電所を建設する可能性が高い」と述べ、昨年11月にフィンランドの民間電力会社 TVO が新規原子力発電所立地に関する原則決定を申請したことに言及。今後、同様な動きがフィンランド以外でも起きてくる可能性があるとの見通しを示した上で、追加的電源として原子力が選択される条件として以下の5点を挙げた。

  • 電力会社や政府が、より長期的な視点に立ち、電力の安定供給を最優先課題とする
  • 自由化された電力市場で電力輸出入は不可避となっているが、ある程度の電力自給率を確保する
  • 電力自給率の確保、エネルギー源の分散化、温室効果ガス排出削減に政府が関与する
  • 原子力オプションを検討する電力会社が、合理的なタイムスケジュールで立地を進められるよう、複雑な許認可手続きを簡素化する。
  • 適切な広報活動を通じ、立地地域の合意を取りつける

アンダーション氏はスウェーデンとドイツの掲げる脱原発政策に触れ、「いずれも政治やイデオロギーに基づく判断で、多くの現実的な困難に直面している」と語り、両国の非現実的な政策の行方は不透明との見方を示した。一方で、英国の BNFL や BE 社が呼び掛けている新規原子力発電所立地に関する国レベルでの議論を「大いに意義深いもの」とし、期待感を示した。

[終わり]

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