[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2001年1月中旬〜2月中旬)
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[韓  国]

韓国電力、分割・民営化へ

韓国政府は2月19日、韓国電力公社(KEPCO)の発電部門を5社の火力発電会社と1社の原子力発電会社(水力発電会社も含む)に分割し、2003年までに実施される競争入札によって民営化する計画を発表した。まず、4月までに発電会社6社を設立・分割して、2002年2月から順次民営化する方針。また、KEPCOの配電部門は2003年までに分割・民営化され、最終的にKEPCOは国営の送電会社となる予定。

[米  国]

DOE、核燃料サイクル産業の存続支援を議会に勧告

エネルギー省(DOE)は1月下旬、国内の核燃料サイクル産業を存続させるためには国としての緊急支援が必要などとする報告書を議会に提出した。ウランの探鉱や転換、濃縮といった国内の核燃料サイクル市場の経済的な落ち込みを懸念した下院のエネルギー・水資源開発歳出委員会は昨年、DOEに対して、国内の核燃料サイクル産業を存続させエネルギーの安定確保と燃料の分散化が強化できるような具体策を提案するよう要請。今回の報告はこれに応えたもの。

DOEの報告は、米国が掲げる核不拡散の目標の達成にはロシアとの間で1993年に結ばれた高濃縮ウラン協定の履行が重要だとしながらも、同協定のもとで放出が予定されている、DOEが保有している980万ポンドの天然ウランの市場への導入を5年間おくらす法的な措置をとる必要があると勧告している。また、米国唯一の転換業者であるコンバーダイン社に対して、期限を定めて財政面で支援することを議会が検討するよう勧告している。さらに報告は、DOE内に核燃料サイクル安全保障局(Office of Nuclear Fuel Cycle Security)を新設することも提案している。

米国では、国内に残っていたほぼすべてのウラン鉱山が閉鎖されたほか、唯一の転換工場も近いうちに閉鎖される可能性が浮上してきている。また、濃縮事業者であるUSECによる原子蒸気レーザー同位体分離(AVLIS)技術の開発中止、2ヵ所あるうちの1カ所(ポーツマス)の濃縮工場の閉鎖決定など、核燃料サイクル産業の存続が危ぶまれる事態に直面している。

新規原子力発電所の建設支持が増加

原子力エネルギー協会(NEI)が今年1月に実施した世論調査によると、新規原子力発電所の建設を支持する人の割合が全国的に高くなっていることが明らかになった。18歳以上の1000名を対象に聞いたもので、それによると、新規に原子力発電所を建設することに賛成した人の割合は、1999年10月に実施された調査の42%から51%に上がった。これを地域別にみると、大規模な電力危機が発生したカリフォルニア州を含む西部地域で賛成の割合が大きく増え、前回の33%からいっきに52%に上昇した。

また、原子力発電所の閉鎖に賛成する人の割合は、前回の調査で27%だったものが1月の調査では21%に下がった。米国の将来のエネルギー需要をまかなううえで原子力発電が重要な役割を果たすと回答した人の割合も増加した。国内の大きな流れとなっている原子力発電所の運転認可(ライセンス)の延長については、81%の人が「安全基準をクリアーできる原子力発電所の運転認可は更新すべきである」と回答した。

原子力科学・技術者の確保求める法案提出

米国では原子力工学科の退潮が顕著になっており、原子力科学・技術者の確保を懸念する声が一部にあがっているが、原子力分野への学生の勧誘や原子力基礎研究の支援、大学の研究炉の維持などを内容とした法案が2月1日、上院に提出された。ビンガマン(民主党、ニューメキシコ州選出)、ドメニチ(共和党、同)、クラポ(同、アイダホ州選出)の3氏が提案した。ビンガマン議員は法案提出にあたって、原子力科学・技術者の供給は過去35年間で最低になったとした上で、こうした事態が国家安全保障にも重大な影響を及ぼしかねないとの懸念を示した。

法案は、2002〜2006会計年度にかけて、大学の原子力科学・工学課程に資金援助することを盛り込んでいる。具体的には、エネルギー省(DOE)予算として計上し、学部学生と大学院生に対する研究奨励金や原子力工学関係の教職員の雇用費用、研究補助金などに使うとしている。また、大学の研究炉に燃料を提供したり、教育訓練炉の運転再開認可や改良などにも資金を提供することが盛り込まれている。

法案によると、2002会計年度(2001年10月〜2002年9月)で3020万ドル、2003年度で4200万ドル、2004年度で4785万ドル、2005年度で5560万ドル、2006年度で6410万ドルの予算計上を要望している。

小型高温ガス炉の導入に備えNRCが検討開始

原子力規制委員会(NRC)事務局は1月31日、南アフリカで開発が進められているペブル・ベッドタイプのモジュール方式高温ガス炉(PBMR)の米国内への導入に備えて、米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社から意見を聴取した。NRC事務局は、重要な安全問題を明らかにするとともに、政策指針の作成に必要な情報の収集へ向けての第一歩と位置付けている。PBMRの建設申請があった場合に備えて許認可手続きを作成するのが目的。

PBMRは単基出力11万kWのヘリウム冷却炉で、モジュール方式の設計を採用している。設計が簡素化されており、建設のための時間が短くコストが低いのが特徴で、需要に合わせて基数を増やせる。現在、南アフリカのEskom社が導入に向けて具体的な検討をしており、エクセロンが12.5%出資している。Eskom社は、すべての検討が順調にいくとの前提で、2002年なかばまでには建設を開始したいとしている。

エクセロンは、米国内に仮にPBMRを建設するとした場合の許認可手続きの迅速化をめざして各種のオプションを検討してきた。NRC事務局としては、同社の検討結果を参考に正式な許認可手続きをまとめることになっている。エクセロンは、NRC事務局の結論を踏まえて、PBMRプロジェクトを国内で進めるかどうか年内にも判断するとしている。

[カナダ]

ピッカリングA発電所、運転再開に向け一歩前進

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は2月16日、オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社所有のピッカリングA発電所(1〜4号機 各54.2万kW、CANDU 1997年より休止中)の運転再開について、問題はないとする環境アセスメントの結論を公表した。

ピッカリングA発電所は州営オンタリオ・ハイドロ(OH)社時代の1997年、経済性の悪化を理由に1〜4号機の運転が休止された。99年4月に発効したオンタリオ州エネルギー競争法によりOH社が分割、同社の発電部門を引き継いで発足したOPG社は同発電所の運転再開を決定、カナダ原子力管理委員会(AECB、2000年5月31日にCNSCが発足する以前の規制組織)に運転再開認可の発給を要請し、環境アセスメントが実施されていた。

この環境アセスメントは、カナダ環境アセスメント法(CEAA)に従って義務付けられているもので、審査中の2000年10月5日ならびに12月14〜15日の2回にわたって公開ヒアリングが実施された。また、結論の取りまとめに際しては、同委員会事務局、OPG社、そして公開ヒアリングでの聴取者からの意見をもとに作成された環境影響評価書と、1年間に及ぶ環境アセスメント実施を通じて公衆から寄せられたコメントについての検討が行われた。

CNSCでは、ピッカリングA発電所の原子炉4基の運転再開は、環境影響評価書に記述されている環境への影響緩和措置を考慮する限り、環境面に重大な悪影響を与えるものではないと結論している。また、環境アセスメント実施中に寄せられた一般公衆からの意見についても、本件についてさらに調停人やパネルによる審議を行うべきであると環境大臣に提案する必要性を認めないとし、追加的な審査は不必要であるとしている。

環境アセスメントが終了したことから、CNSCは原子力安全管理法にしたがい、あらためて運転認可発給手続きを開始する。

[フランス]

フラマトムANP社、正式に発足

フランスの原子炉メーカー、フラマトムグループのポンテ社長とシーメンス社発電事業部(KWU)のケーニング副社長は1月31日、フラマトムANP社設立に関する文書に署名した。両者は99年末、世界的な原子力企業の再編の動きに呼応して、両社の原子力部門を統合・強化することで基本合意。昨年7月にはフラマトム社が66%、シーメンス社が34%を出資することで最終的に合意していた。米国および欧州連合(EU)の反トラスト当局の承認が昨年末に出揃ったのを受けて、今回の正式発足となった。

新会社は、30億ユーロ(約3300億円)の年間売上を見込み、従業員数は1万3000人。これまでに両社が供給した原子炉は11カ国で90基を超える。新会社の事業内容は、燃料製造から原子力発電所の設計、建設およびメンテナンスまで多岐にわたる。

本社はパリに置かれ、社長にはフラマトム社のビニョン会長兼最高経営責任者(CEO)が就任する予定。同氏は、欧州において経済成長や地球温暖化防止に対応可能なエネルギーへのニーズが高まる中、原子力発電を将来のオプションとする新たな気運が出ているとして、欧州市場への期待感を示す一方、原子力発電利用が拡大しているアジアと電力市場の自由化に伴い原子力の経済性が再評価されている米国の2つの市場を強化していく戦略を打ち出している。4つある事業グループのうち、原子力業務担当にビュルクレ氏、機械設備担当にピーセルマン氏、核燃料担当にエステーブ氏、プロジェクト・エンジニアリング担当にフレスロン氏がそれぞれ筆頭副社長として就任する。

新会社は昨年11月にフランス政府が発表した原子力産業再編計画に基づき、フランスの持ち株会社TOPCOの傘下に入る。EUが示した合併条件では、フラマトムANP社の事業のうち、核燃料分野へのCOGEMAの参加は禁止されており、EDFは原子炉や燃料集合体などの資機材をフラマトムANP社以外から積極的に調達するよう命じられている。

EC、EDFにEnBW株式取得を許可

欧州委員会(EC)は2月7日、フランス電力公社(EDF)に対して、ドイツ3位の電力会社であるエネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)社の4分の1株式(25.1%)取得を条件付きで承認した。昨年10月に審査を開始したECは、EDFに対して国外市場への進出に積極的である一方、自国の市場開放を怠っていると非難、フランス側に改善策を要求していた。

このためEDFは、EU内で遅れていた自由化のペースを加速し、2003年までにEU指令レベルの35%を超える42%まで拡大、年間消費電力が200万kWh以上の顧客を対象とする方針を発表した。また、ドイツの南西地域の電力会社からなる電気協会(OEW)に加盟し、フランスの発電会社であるローヌ・ナショナル社(CNR)の代表権も放棄する。

ECは今回の株式取得について、EDFとEnBWの両者による隣国スイスでの市場独占を防ぐため、EnBWに対してスイスの電力会社WATTの24%株式を売却するよう求めた。なおEDFは、スイスのモーターコロンバス社の株式20%も取得している。

99年末、ドイツでRWEとVEW(現RWE)、VEBAとVIAG(現E.ON)による2大合併が進む中、EDFはドイツ南部のバーデン・ビュルテンベルク州が所有するEnBW社の株式を購入する交渉権を獲得した。EnBW社は97年、バーデンベルク社とシュワーベン・エネルギー供給公社(EVS)の合併により誕生し、現在はRWEパワー、E.ONエネルギーに次ぐドイツ第3位の電力会社。所有する原子力発電所はフィリップスブルク1、2号機(100%所有)とオブリッヒハイム(63%同)、ネッカー1、2号機(各9%同)の5基。

[ドイツ]

2000年の原子力発電電力量、1697億kWhに

ドイツ原子力産業会議(DAtF)によると、運転中の19基の原子力発電所による2000年の発電電力量は、過去最高だった97年の1704億kWhをわずかに下回る1697億kWhとなった。DAtFは、完全自由化されたドイツの電力市場でも原子力発電は高い実績を維持していると評価している。ドイツの総発電電力量に占める原子力発電の割合は34.5%、1次エネルギーに占める割合は約1割。平均時間稼働率も91%を超えた。

DAtFによると、原子力発電は昨年1年間に約1億7000万トンの炭酸ガスの排出抑制に貢献しており、これはドイツ国内を走る車両からの排出量に等しいという。ドイツでは61年以来、原子力発電量の累積は3兆1000億kWhに達しており、延べ30億トンの二酸化炭素の排出が抑制された計算になる。

[スイス]

2000年の原子力発電電力量、過去最高を記録

スイス原子力協会(SVA)によると、運転中の5基の原子力発電所による2000年の年間発電電力量は、過去最高だった98年を2.5%上回る250億530万kWhを記録した。発電のほか、熱供給としてゲスゲン発電所が周辺の工場むけに1億7400万kWh、ベツナウが「レフナ」地域暖房システムむけに1億3200万kWhを供給した。2000年の各発電所の発電量と稼働率は以下の通り。

  • ライプシュタット 88億2300万kWh (90.2%)
  • ゲスゲン 78億400万kWh (92.3%)
  • ベツナウ-1 25億3800万kWh (79.4%)
  • ベツナウ-2 30億7100万kWh (95.8%)
  • ミューレベルク 28億1700万kWh (90.1%)

[スペイン]

エンデサとイベルドローラ、合併を撤回

スペインの2大電力会社であるエンデサとイベルドローラは2月5日、両社の合併計画を撤回することを決定した。両社はスペイン政府が2月2日に示した合併承認の条件を受けて、合併のメリットはないと判断した。昨年10月に合併で合意した両社は、政府の合併審査にそなえて国内の設備や顧客を手放し、市場の独占を防ぐ計画を打ち出していた。

当初の合併案では、両社あわせて3800万kWにのぼる発電設備のうち、約40%に相当する1500万kWを売却する方針だった。これに対して、スペイン政府は発電事業で42%、配電事業で48%まで縮小するよう求めた上、新規の需要家の確保にも制限を与えた。それによると、新会社は1800万kWの施設と約800万の顧客を処分しなければならない。

両社は合併撤回の大きな理由のひとつとして、回収不能コストの減額をあげている。スペインでは、電力自由化への移行期間として2010年までの間、電気料金に4.5%を上乗せすることで電力会社の回収不能コストの回収が許されていた。しかし、欧州委員会(EC)はスペイン政府に対して、この制度が企業向けの補助金にあたると指摘し、見直しを求めていた。両社は、自由化に伴う合併で生じる損失分は、回収不能コストの回収で保証されると見込んでいた。

今回の2大合併が失敗に終わったことで、フランスEDFやドイツRWEと並ぶスペイン資本による巨大電力会社が生まれる可能性はなくなった。このため、電力市場の自由化が進む中で、周辺国からスペイン市場への進出が加速するとの見方が強まっている。スペイン第4位のハイドロ・カンタブリコ社をめぐっては、ポルトガル電力(EDP)とドイツのRWE社の他、ドイツ第3位のEnBW社も株式公開買付け(TOB)に加わる構えを示している。また、今回の合併が白紙に戻ったスペイン第2位のイベルドローラに対して、昨年秋の交渉でエンデサに敗れた大手石油会社のレスポール社やドイツ第2位のE.ON社が買収にむけ強い関心を示している模様。

[ハンガリー]

2000年の原子力シェアは40.6%

パクシュ原子力発電所の2000年の原子力発電電力量は141億7900万kWhで、総発電電力量に占める原子力の割合(シェア)は40.6%だった。なお、1999年は140億9600万kWhを発電し、原子力シェアは38.3%だった。

パクシュ発電所はPWR4基(いずれもVVER-440)で構成されたハンガリー唯一の原子力発電所。出力は1号機が47万kW、2-4号機が各46万kW。各機ともに当初の運転期間は30年に設定されており、バックフィット(改良)作業を重ねて、運転期間を延長することが計画されている。これまでに3,4号機が10年間の運転期間延長を規制当局から承認された。

同発電所では計装制御系の改良作業が現在も進められており、欧州の原子力規制当局が参加する西欧原子力規制当局連合(WENRA)は「パクシュ発電所の安全レベルは、西側と同等」との結論を出している。

同発電所の運転実績は世界的にみても高い水準にあり、4基全体の累積設備利用率は85.81%(2000年末)に達している。
(1月25日)

[ロシア]

ロストフ1号機、2月20日に初臨界達成

建設中のロストフ1号機(VVER-1000、100万kW)が2月20日に初臨界を達成した。同機では1月21日にはじめて燃料が装荷されており、ちょうど1カ月後の臨界となった。試運転が順調に行けば、3月には送電網に接続され、8月には全出力運転を達成。営業運転開始は10月になる予定。

[南アフリカ]

PBMR計画、独立した専門家パネルが検討へ

鉱物・エネルギー省(DME)は1月下旬、国際原子力機関(IAEA)の勧告に従い、国営電力会社Eskom社が進めているペブルベッド・モジュール高温ガス炉(PBMR)開発計画に対して、現在進められている詳細フィージビリティスタディ(FS)、環境影響調査(EIA)に加え、独立したパネルを設置して同計画を検討することを決定した。

パネルは14〜16名の原子力専門家で構成、メンバーの大半は国外から招聘される。PBMR開発については、Eskom社の主張通りの経済性が確保できるかを疑問視する専門家もいるため、パネルのメンバーにはPBMR計画に批判的な専門家も加えられる。

パネルは、PBMR計画の技術や工学、安全性と放射性廃棄物について審査を行うほか、Eskom社の主張している経済的実現可能性についても調査する。1年程度の検討の後、意見を取りまとめてDMEに提出する。

PBMRは電気出力11万kWの小型高温ガス炉で、輸出も視野に入れた次世代発電炉として、Eskom社により1993年から検討が進められてきた。98年には正式に建設計画がスタートし、クバーグ原子力発電所サイトへの建設を前提としたEIAが開始された。2000年4月に政府からFSの実施承認を得た後は、英国原子燃料会社(BNFL)と米国の電力会社のエクセロン社がそれぞれ22.5%、12.5%の出資を決めている。

一連の準備作業が終了し、FSの結果に対する出資者の承認ならびにEIAの結果に対する政府の承認と規制当局からの許認可発給へと順調に進めば、2002年に実証炉の建設作業をスタート、2006年にも営業運転に入ることができるとみられている。実証炉の建設費は10億ランド(約150億円)の見込み。


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