[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2001年2月中旬〜3月中旬)
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[米 国]

2000年の発電量、設備利用率とも過去最高を記録

米国では、原子力発電所(103基)の2000年の運転実績が、前年の記録を塗り替え過去最高になったことが明らかになった。原子力エネルギー協会(NEI)と原子力発電運転協会(INPO)が3月13日に開いた共同記者会見で明らかにした。それによると、原子力発電電力量は約7550億kWhとなり、前年の7280億kWhから3.7%増加した。また、設備利用率も90%にあと少しと迫る89.6%を記録し、前年の86.8%から2.8ポイント上昇した。

世界原子力発電事業者協会(WANO)がまとめたデータのINPOの分析によると、米国の原子力発電電力量が記録を更新したのは、以下のような高水準の安全性が維持されたため。

  • 運転中の103基の内、59%の原子力発電所が1度も計画外停止を起こさず1年間稼働した。
  • 3つの安全系(2つの主要冷却系と予備電源)の96%がINPOの目標値を達成した。
  • 20万作業時間にあたりの事故発生件数が0.26件で、他の製造業部門の8件と比べきわめて低い値となった。
  • 集団被曝線量の中央値は、BWRが4年連続、PWRは3年連続でそれぞれINPOの目標値を下回った。
第4世代原子炉と小型炉の提案募集

米エネルギー省(DOE)原子力科学技術局は2月13日に公表した第4世代原子力システムの技術目標案の中で、国内外の関係機関に対し第4世代原子炉に関する情報提供をよびかけた。将来の原子力システムとしてどのようなものが考えられるかということをDOEとして把握し、2030年以前の商業利用をめざして、今後の研究開発の具体的スケジュールとなる技術ロードマップを作成するのが目的。提案の締め切りは4月16日で、情報の提供は電子メールのみ。DOEは、寄せられた情報をもとに、2002年9月までにロードマップを作成する。

DOEが第4世代原子炉として位置付けているのは、@経済性と安全性が高いA廃棄物の発生量が少ないB核拡散抵抗性に優れている(核拡散につながりにくい)――などの特性を備えたもので、@水冷却Aガス冷却B金属冷却Cその他――の4つに大きく分類されている。

また原子力科学技術局は2月16日、第4世代原子炉の情報提供とは別に、モジュール方式の小型炉の提案を募集した。隔離された地域に従来のエネルギー源を用いると割高で環境上も好ましくないケースが多いことから、こうした地域に小型炉を建設できないかどうかということを探るのが目的で、上院の歳出委員会がDOEに調査を命じた。寄せられた提案をもとに報告書がまとめられる。DOEとしては、固有安全性を持ち、費用効果が高く、核物質の盗取や転用がしにくく、燃料交換もそれほど必要ない、工場で製造でき輸送可能――といった特性を備えた原子炉の提案を求めている。原子炉の出力は5万kWを超えないものとしている。5月15日までに議会に報告書を提出することが義務付けられている。なお、提案の締め切りは3月15日。

NRCにMOX工場の建設を申請

原子力規制委員会(NRC)は3月2日、サウスカロライナ州エイケン近郊のサバンナリバー・サイトに混合酸化物(MOX)燃料の製造施設を建設する申請を受け取ったと発表した。デューク・エンジニアリング&サービシーズ、COGEMA、ストーン&ウェブスター3社のコンソーシアム(DCS)が申請した。この工場は、エネルギー省(DOE)が提供する核兵器級の余剰プルトニウムを用いて発電炉向けのMOX燃料を製造するためのもので、DOEがDCSに建設・運転を発注した。

ポーツマス濃縮工場を待機状態に

エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は3月1日、オハイオ州のタフト知事同席のもと、ポーツマス濃縮工場をコールド・スタンバイ(時間をかければ運転再開ができるような状態で待機させること)状態で維持するため1億2570万ドルを拠出すると発表した。濃縮事業者のUSEC社が昨年、同工場を閉鎖すると発表したため、地元のオハイオ州や議会からは、雇用やエネルギー安全保障が損なわれるとの懸念が表明されていたのを受けたもの。

1億2570万ドルは2年にわけて拠出され、2001会計年度に5920万ドル、2002会計年度に6650万ドルの予算が計上されることになっており、ポーツマス工場をコールド・スタンバイ状態で維持するとともに、解雇された従業員が転職するための費用に充てられる。

エナジー・イーストとRGSが合併表明

ニューヨーク州北部を供給基盤とするエナジー・イースト社とRGSエナジー・グループは2月20日、両社の取締役会が全会一致で合併を承認したと発表した。米国では、電力市場の自由化が進んでおり競争が激しくなると予想されているため、企業規模の拡大をめざした電気事業者間での合併が活発になっている。北東部地域も同様で、ニューヨーク・ステイツ・エレクトリック&ガス(NYSEG)社を子会社に持つエナジー・イースト社と、ロチェスター・ガス&エレクトリック社(RG&E)を子会社に持つRGSエナジー・グループも合併に踏み切った。

合併には連邦政府と州政府の関連当局からの承認が必要だが、両社は1年内にも承認が得られるとみている。合併によってできる新会社は、北東部地域で180万軒の電力需要家と100万件のガス需要家を抱える最大手のエネルギー企業となる。

NYSEGとRG&Eは両社あわせて、ナインマイルポイント原子力発電所2号機(114万8000kW)の32%を所有していたが、コンステレーション・ニュークリア社に売却することで昨年12月に合意している。なお、両社は、コンステレーション社から10年間にわたって同原子力発電所の電力を購入することでも合意している。

バーモントヤンキー原子力発電所、競売へ

バーモントヤンキー・パワー(VYPC)社はバーモントヤンキー原子力発電所(BWR、54万kW)を入札で売却することを決定したと発表した。

同発電所はアメージェン社への売却が合意されており、2000年7月には米原子力規制委員会(NRC)から運転認可の移転が承認されていた。しかし、エンタジー社が2001年1月にバーモント州の公益事業委員会に対し同発電所を入札にかけるよう要請し、さらに買収額がアメージェン社の倍である5000万ドルを提示。これを受け、州の公益事業委員会は2001年2月、同発電所を入札で売却することが価値を最大限に高めることができると判断したため、アメージェン社への売却申請を却下した。

なお、同発電所の買収ではアメージェン社とエンタジー社のほか、入札になった場合には、ドミニオン・リソーシーズ社やコンステレーション・エネジー社も興味を示している。(3月中旬)

[ドイツ−フランス]

フランスからのガラス固化体、ゴアレーベンに到着

フランスのラ・アーグ再処理工場を出発したガラス固化体は3月29日朝、ドイツのゴアレーベン中間貯蔵施設に無事到着した。今回、輸送されたのは、28本のガラス固化体が納められた輸送キャスク6体で、すべてドイツの原子力発電所から発生した使用済み燃料を再処理した際に生じた高レベル廃棄物をガラス固化したもの。使用済み燃料とガラス固化体の輸送は、98年4月に禁止されて以来、初の実施となった。

ガラス固化体を積んだ列車は3月26日早朝にフランスのバローニュ駅を出発、同日夜にドイツ南部のカールスルーエ近くを通り、北部のニーダーザクセン州にむかった。予定では、翌27日夜にダンネンベルク駅に到着し、そこでトラックに移し換え、28日にゴアレーベン入りするはずだった。

しかし、ガラス固化体を積んだ列車がダンネンベルク駅に近づくにつれて、輸送に反対する人々の抗議活動が激しくなった。27日夜、列車がゴアレーベンの約90キロ手前のリューネブルク駅を通過し、ダンネンブルク駅に向かう途中、抗議者が鉄道線路に数珠つなぎに横たわり、中には線路に穴を掘りコンクリートで身体を固定している者さえいた。このため、列車はダンネンブルク駅から20キロ手前のダーレンベルク駅に引き返し、警察が抗議者を撤去し、線路を整備するまで一昼夜にわたって同駅で待機した。結局、ガラス固化体は予定より1日遅れて29日朝、ダンネンベルク駅で列車からトラックに積み換えられ、約20キロ離れたゴアレーベン中間貯蔵施設へ無事搬入された。今回の輸送で動員された警官は約2万人、そのうち1万5000人は中間貯蔵施設が立地するニーダーザクセン州に配された。警察によると、輸送妨害の嫌疑による逮捕者は数百人にのぼった。

フランスからドイツ向けのガラス固化体返還は、フランス側がドイツからの再処理用使用済み燃料の受け入れの条件として要求した結果、今年初めの両国首相間の話し合いで合意に達した。今後は、ドイツの原子力発電所から発生した使用済み燃料の国外輸送が再開されることになる。使用済み燃料の輸送は98年4月、フランスで輸送キャスクから規制値を超える放射線量が検出されたため、欧州諸国が全面禁止に踏み切った。その後、各国が輸送を再開する中、ドイツでは社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権が発足したため、3年近く中止されていた。昨年6月の連邦政府と大手電力の合意を契機に、国内外の輸送が許可され、フランスとの交渉が最後のネックとなっていた。

[ドイツ]

2つの州議会選挙、政権交代なし

ドイツ南部のバーデン・ビュルテンベルク州と中部のラインラント・プファルツ州の両州で3月25日、州議会選挙が行われ、それぞれ州政権与党のキリスト教民主同盟(CDU)と社会民主党(SPD)が政権を維持した。バーデン・ビュルテンベルク州はCDUの強力な地盤で、1953年以来同党が政権を握っている。SPDは今回、得票率を前回の96年より8.2ポイント増やし、33.8%まで伸ばしたが、CDUの44.8%には及ばなかった。同州には、ネッカー、フィリップスブルクなど5基の原子力発電所が運転中。

ラインラント・プファルツ州ではSPDが得票率を5%近く伸ばし、44.7%を占め、35.3%のCDUに差を付けた。同州には昨年、閉鎖となったミュルハイム・ケールリッヒ原子力発電所がある。

一方、連邦政府でSPDと連立を組む緑の党は、いずれの州議会選挙でも得票率を減らした。脱原子力政策での相次ぐ妥協が支持を失った要因のひとつと見られている。

[ベルギー]

2000年の原子力発電シェア、55.3%を達成

エレクトラベル社によると、7基の原子力発電所による2000年の発電電力量は前年より11億9000万kWh少ない458億1000kWhを記録した。総発電電力量(828億kWh )に占める原子力発電の割合は55.3%となり、依然として高いシェアを誇っている。平均設備利用率は、前年の93.3%を若干下回り91.3%となった。エレクトラベル社は、原子力発電量と利用率は前年を若干下回ったものの、世界的に見ても高い運転実績を達成したと評価している。

[スイス]

政府、原子力法最終原案を議会に提出

スイス連邦政府は3月、改正原子力法の最終原案を議会に提出した。それによると、政府は99年末に受理した2件の反原子力国民請願(イニシアチブ)を基に国民投票を実施するとしていた従来の方針を覆し、国民投票は2003年まで実施すべきでないと提言している。さらに、2000年まで凍結されていた新規原子力発電所の建設については、計画は国民投票に委ねるとし、10年間の原子力モラトリアムが解除される可能性も出てきた。同法は今後、議会で最長、2年間の審議を経て、成立する見通し。

同法案はまた、低・中レベル放射性廃棄物の処理処分方法については、2000年2月の専門家委員会の提案通り、監視付き回収可能な深地層処分という新しい概念を取り入れるよう勧告している。さらに、原子力発電所の運転者に対して、既存の原子力施設のデコミッショニング基金への拠出に加え、新たに廃棄物処分基金を負担するよう求めている。このほか、核物質の空輸は将来、禁止する方針が示された。

2つのイニシアチブは99年末、パワー・ウィズアウト・アトム(PWA)とモラトリアム・プラス(MP)という2つの市民団体の手によって議会へ提出された。両者は、原子力発電所の運転期間をPWAは30年、MPは40年に制限することを求めており、さらにMPは10年間の原子力モラトリアムの延長を要求している。こうした動きを受けて、スイス政府は、新規原子力発電所建設の是非を問う国民投票の実施を法改正の中に盛り込む方向で98年10月から見直し作業を進めていた。

これに対して、スイス原子力協会(SVA)は、原子力オプションが将来も維持され、既存炉の運転期間に制限を設けないとした点を評価しているが、再処理の禁止や廃棄物基金の追加負担には、批判的な見方を示している。

今回の最終案において政府が脱原子力に慎重な姿勢を示した背景には、最近の住民投票や脱原子力政策に関する民間の調査結果が大きく影響していると見られる。2000年9月にベルン州で実施されたミューレベルク原子力発電所(BWR、37万2000kW)の早期閉鎖の是非を問う住民投票では、3分の2が同機の運転継続を支持する結果となり、2002年の早期閉鎖は回避された。原子力発電所の早期閉鎖について、住民が直接投票の形で審判を下したのは、欧州ではこれが初めてのケースとなった。

また、ドイツのブレーメン・エネルギー研究所は2001年1月、スイスの電力業界の依頼により、2つのイニシアチブに基づき国内の原子力発電所を閉鎖し、再生可能エネルギーによる発電や大規模な効率化で代替する場合の試算コストを発表した。それによると、原子力を太陽光や風力発電で代替し、電熱併給能力を拡大し、電力効率をあげることは技術的には可能としながらも、約460億スイスフランから620億スイスフラン(約4兆円)にのぼる莫大な資金が必要との結論に達していた。

[スペイン]

2000年の原子力発電電力量が過去最高

スペイン原子力産業会議によると、原子力発電所9基による2000年の原子力発電電力量は622億kWhに達し、過去最高だった98年の590億kWhを上回った。総発電電力量(2234億kWh)に占める原子力の割合は27.8%を記録した。平均設備利用率は、前年比3.5ポイント増の90.9%となった。

スペイン原産は、原子力発電所が安全性、効率およびコストの面において優れた実績を収めたと高く評価するとともに、温室効果ガス抑制という役割に加えて、原子力の支持拡大につながるとの見方を示している。

[スウェーデン]

バーセベック1号機の強制閉鎖はEU指令違反

欧州委員会(EC)のM.バルストロム環境担当委員は2月、1999年11月のバーセベック1号機の強制的な閉鎖に関し「環境影響調査を実施せずに閉鎖決定を下したことはEU指令に反する」と非難した。

スウェーデン選出のバルストロム委員は原子力産業に批判的立場をとっているが、バーセベック原子力発電所の強制閉鎖には、当初から温暖化防止の観点から批判的であった。同委員のスウェーデン政府宛公式書簡は、原子力施設の解体・デコミの際に事前に環境影響調査を義務付けたEU指令に言及。「事前に環境影響調査を義務付けていないスウェーデン国内法は、EU指令の重大な違反」と指摘している。

今回の公式書簡は、バーセベック発電所の所有者・運転者であるシドクラフト社のECへの訴えを受けて出されたもの。スウェーデン政府は4月までに同書簡に回答することを求められている。

なおスウェーデン政府は2000年9月、2001年7月1日までとされたバーセベック2号機閉鎖の期限を数年延期すると発表している。(3月1日)

[フィンランド]

リッポネン首相、原子力推進を明言

フィンランドのリッポネン首相はこのほど、ノルウェーの現地紙とのインタビューの中で、「経済性からみて、国のエネルギー戦略の中から原子力発電オプションを除外することは考えられない」とし、原子力発電推進の姿勢を明らかにした。またリッポネン首相は、欧州の反原子力グループによるフィンランド製品の不買運動に対し、強い不快感を示した。

フィンランドでは2000年11月、TVOが政府に同国5基目となる新規原子力発電所立地の原則決定を申請しており、現在政府が検討中。2001年2月には、同国の規制当局であるSTUKが「新規炉の建設計画は概ね安全基準を満たしている」と事前評価。建設予定地点となる既存のロビーサ発電所とオルキルオト発電所の各地元自治体も3月、相次いで増設支持を表明している。

またフィンランドを訪問した欧州委員会(EC)のL.デパラシオ副委員長(兼運輸・エネルギー担当委員)は2月20日、フィンランド議会のエネルギー委員会で講演し、温室効果ガス削減に大きく寄与する原子力の役割を高く評価。「EUが2000年に発表したエネルギー供給確保に関するグリーン・ペーパーが、新規建設の一助となることを願う」と同国の新規原子力発電所建設計画を強く支持した。(3月20日)

[ブルガリア]

コズロドイ5、6号機のバックフィット作業で契約

仏フラマトムANP社と露アトムエネルゴエクスポート社からなるコンソーシアム「ECK」は2月、ブルガリアのコズロドイ5、6号機(VVER-1000、出力各100万kW)のバックフィット作業を受注した。契約総額2億3100万米ドル(フラマトムANP社は1億8000万米ドル、アトムエネルゴエクスポート社は5100万米ドル)と見積もられる今回の契約は、昨年ブルガリアと欧州連合(EU)の間で締結された融資協定に基づくもの。EU加盟を希望するブルガリアは、コズロドイ1、2号機(VVER-440、出力各44万kW)を2003年までに閉鎖、その後同3、4号機(VVER-440、出力各44万kW)も順次閉鎖することがEUから要求されている。なおEURATOM(欧州原子力共同体)なども融資することになっている。

5、6号機のバックフィット作業は、2002〜2005年の定検期間中に実施される予定で、放射線・火災防護、計装制御系、緊急時電源、原子炉の信頼性および稼働率等を改良することになっている。(2月28日)

[ロシア]

海上浮揚式原子力発電所の原型炉建設を計画

ロシア原子力省(MINATOM)のアダモフ大臣は3月13日、地域代表との会合の場で、海上浮揚式原子力発電所を建造する計画を明らかにした。

計画では出力6万kWの原型炉を、白海沿岸のセベロドビンスクに建設するとしており、建設費は約1億米ドルと見積もられている。セベロドビンスク市はロシア北部白海沿岸アルハンゲリ州の中心都市アルハンゲリスク市の西約50kmに位置する軍港で、原子力潜水艦の建造に携わっている「北部機械製造企業」の工場がある。

海上浮揚式原子力発電所の原型炉の建造は北部機械製造企業が担当し、完成後は発電した電力の大半を同企業が利用することになっている。MINATOMでは原型炉に続き、海上浮揚式原子力発電所をシリーズ化して建造する構想を持っている。

ロシアの北部および東部は冬が長く天候が厳しいため、陸上での原子力発電所建設は作業できる期間が短くコスト高になってしまうことから、原子力発電所を造船所で建造し、需要地に曳航して利用することが以前から考えられていた。

MINATOMは1995年から98年にかけ、極東の東シベリア海沿岸の鉱山都市ペヴェクに、かつてソ連海軍向け推進用原子炉として設計した出力3.5万kWのKLT-40C型原子炉(PWR)2基を1隻に搭載する海上浮揚式原子力発電所の設置を計画。2000年5月には科学技術会議で了承している。また、MINATOMはインドネシアの東部遠隔地への原子力発電導入計画に対しても、同様の海上浮揚式原子炉を建造・所有・運転する事業計画を提案したが、同国の経済危機で1998年に中止している。

沿海地方で新規立地に関するフィージビリティ調査を再開

ノーボスチ通信が3月13日付で伝えたところによると、慢性的なエネルギー不足に悩むロシア極東沿海地方で、新規の原子力発電所立地に関するフィージビリティ(実行可能性)調査が再開されることが、同日にウラジオストックで開かれた関係者による記者発表で明らかにされた。

計画されている発電所の総出力は128万kWで、カナダ製のCANDU炉が建設される予定であるが、ロシアの戦略ミサイルのサイロで利用されている技術の導入による耐震性の強化が図られることになっている。既にカナダのICA社がファイナンシャル・コーディネータを引き受けることに同意しており、海外の有力投資家へ打診が行われている。

フィージビリティ調査はノボトロイスクとアレセニエフの2カ所のサイトに絞って行われ、約3年で完了する見込み。4年後に建設を開始し、8年後に完成というスケジュールがたてられている。建設費は約25億米ドル。

ロシア極東地域はエネルギーのインフラが脆弱で、かねてから慢性的なエネルギー不足が深刻な問題となっており、原子力省(MINATOM)はターンキー方式でカナダからCANDU炉を導入、建設費の一部は近隣の中国や韓国への売電によって賄うことを計画していた。しかし、中国では近年、電力産業の発展が目覚しく、近い将来には極東地域における安価な電力の輸出国になる可能性があるなど、この地域の情勢は大きく変化しつつあることから、ロシアとしては産業振興と電力輸出という当初の目的を達成するためにも、原子力発電の早急な開発が求められていた。

内閣改造で新原子力相にルミャンツェフ氏

プーチン大統領は3月28日に内閣改造を実施、原子力相にアダモフ前大臣に代わり、ロシア研究センター(RRC)「クルチャトフ研究所」のA.Y.ルミャンツェフ所長を指名した。

ルミャンツェフ氏は1945年生まれの56歳。モスクワ工科大学を69年に卒業後、RRCクルチャトフ研究所に入所し、94年に同所長に就任。固体物理学と中性子物理学が専門の科学者で、99年にはロシア科学アカデミーの会員になっている。


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