[諸外国における原子力発電開発の動向]
話題を追って (2001年2月中旬〜3月中旬)
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米国:原子力推進法案が相次いで上院に提出

原子力発電の重要性を認識した法案が相次いで上院に提出された。まず、2月26日には、上院のエネルギー・天然資源委員会の委員長を務めるマコウスキー議員(共和党、アラスカ州選出)が「2001年国家エネルギー安全保障法案」を提出した。同法案では、石油の輸入依存度を50%に低減することを目標として掲げているほか、原子力についてもいくつかの規定を定めている。

具体的には、米国の原子力発電の現状と原子力発電所の運転認可更新の状況を議会に報告するよう、原子力規制委員会(NRC)委員長に求めている。また、エネルギー省(DOE)に対しては、国としての使用済み燃料戦略を策定するとともに、DOEの原子力科学技術局内に使用済み燃料の研究を担当する部局を新設することも要求している。新設される部局は、使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物の処理、リサイクル、処分に関する研究開発と実証プログラムを総合的に行う。

さらにDOEに対しては、送電網の安定性の維持とベースロード電源の拡大に際して原子力発電が果たしている役割を明記した報告書を毎年議会に提出するよう求めている。このほかDOEは、新規の発電所の建設を促進する上で必要な革新的な金融手法を評価することになっており、原子力を含む利用可能なすべての発電技術が総合的に検証される。

この法案では、電力会社が原子力発電電力量を増やせるよう、生産と資本改善の奨励策が規定されている。また、新規原子力発電所の加速償却だけでなく、使用済み燃料の中間貯蔵コストに用いた資金を経費として処理することも規定している。公益事業者でない原子力発電所の所有者がデコミッショニング基金に資金を払い込んだ場合には減税措置がある。さらに、原子力発電所の売買にともなうデコミッショニング基金の移転は免税措置が適用される。

原子力研究開発予算の充実策も盛り込まれており、原子力研究イニシアチブ(NERI)に6000万ドル、原子力発電所の最適化プログラム(NEPO)に1000万ドル、原子力技術開発プログラム(NETD)に1000万ドルが計上されている。

なお、同法案は、ロット(共和党、ミシシッピ州選出)、ドメニチ(共和党、ニューメキシコ州選出)両議員などを含む超党派の9名が共同提案者として名前を連ねている。

そのドメニチ議員を代表とする、やはり超党派の11名の連名による「2001年原子力発電保証法案」が3月7日に提出された。同法案は、原子力発電電力量の拡大や新規原子力発電所の建設促進、廃棄物問題の解決、原子力規制委員会による規制の合理化を盛り込んでいる。

上院の予算委員会とエネルギー・水資源開発小委員会の委員長を務めるドメニチ議員は、エネルギー・天然資源委員会の委員長を務めるマコウスキー議員の協力を得て、同法案を今年にも成立させたいとしている。この法案では、各種の施策に対して総額で4億600万ドルの予算が計上されている。

まず、マコウスキー案と同じくNERIに6000万ドルが計上されているほか、NEPOに1500万ドル、また大学での原子力工学教育の改善に関して原子力研究諮問委員会(NERAC)が打ち出した勧告を実施に移すための資金として3240万ドルが要求されている。このほか、定格電気出力を少なくても5%上げることを目的として1500万ドルが計上されている。

DOE内における原子力科学技術局の立場を強化するため、原子力科学技術局長を次官補レベルに引き上げることも求めている。また、原子力発電所で事故が起こった場合の公衆に対する補償を規定したプライス・アンダーソン法の改定が明記されている。

新規原子力発電所の建設に関しては、途中でキャンセルされた原子力発電所の完成が可能かどうかをDOEが調査するために300万ドルが、そしてDOEによる新型炉の研究開発に5000万ドルが計上されている。さらにNRCが新しい設計の原子炉向けの規制を定めるために2500万ドル、新規原子力発電所の立地に向けて、NRCがすでに承認しているうちから3ヵ所を選定するために1500万ドルを要求している。

このほか法案では、米国内の発電炉や研究炉を外国の機関が所有する場合に不要と思われる制限の削除や、独占禁止面での検討にあたって重複をなくすことなど、時代にそぐわなくなった法的制限の削除に関する勧告が含まれている。NRCの多くの要件を合理化することも盛り込まれている。

[終わり]

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