[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2001年3月中旬〜5月中旬)
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米政府、国家エネルギー政策発表

-- 原子力発電拡大を勧告

ブッシュ大統領は5月17日、原子力発電の拡大をエネルギー政策の1つの柱とする包括的な国家エネルギー政策を発表した。チェイニー副大統領を座長とする国家エネルギー政策策定 (NEPD) グループが4か月をかけてまとめた報告書の形をとっており、全体で160ページを超えている。8つの章で構成されており、全部で105項目の施策の実施を大統領に勧告している。この報告書で勧告されているすべての項目については、現行の法律の枠内で実施されるほか、必要な場合には新しく法律が制定される。また、外国が関係する勧告については、国際的な慣例にしたがって実施に移される。

原子力発電拡大を勧告

ブッシュ大統領は、ミネソタ州セントポールで行った演説の中で正式にエネルギー政策を発表。大統領は、省エネのための技術革新促進による需要削減、エネルギー源の多様化、供給ネットワークの近代化がエネルギー政策の基本方針だとした上で、クリーンで供給の制約がない原子力発電を拡大しなければならないと強調した。

大統領の発言は、「新世紀のエネルギー:国内のエネルギー供給の拡大」と題する報告書の第5章で指摘されている原子力発電の拡大勧告に沿ったもの。報告書は、稼働中の原子力発電所の設備利用率を昨年実績から2ポイント程度あげ92%に改善するだけで、新規に200万kW の発電所を建設したことになると指摘。また、すでにかなりの原子力発電所で実施されている、各種方法を用いて稼働中の原子力発電所の定格出力を上げることについても、約1200万kW 分の設備容量の拡大につながるとの考えを示している。さらに、原子力発電量を増やす方策として、運転認可を60年まで延長することが有効と述べ、稼働中の原子力発電所の90%で運転認可が延長されると予想している。

そうした上で、原子力規制委員会 (NRC) に対しては、安全に配慮しながら、稼働中の原子力発電所の運転認可を延長したり定格出力を上げることを促進するよう勧告している。また、エネルギー省 (DOE) 長官と環境保護庁 (EPA) 長官に対しては、原子力発電が環境の改善に寄与する可能性を評価するよう指示している。

再処理の再検討も

使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物 (核廃棄物) の処分問題については、連邦政府が処分の責任を果たさなければならないと再確認した上で、フランスや英国、日本が進めている再処理路線にも言及。こうした方法を採用したとしても地下貯蔵所の必要性がなくなる訳ではないとしながらも、燃料として再利用可能な物質と高レベル放射性廃棄物に分けることにより貯蔵所の最適な利用がはかれるとの考えを示している。また、加速器を用いた核変換 (消滅処理) に関心が高まっていると指摘。この方法と再処理との併用により、核廃棄物の量と毒性が大きく減らせると強調している。

そして NEPD グループは、先進的な核燃料サイクルと次世代の原子力技術を開発するという枠内で、放射性廃棄物の発生量を大きく削減できるとともに核拡散抵抗性に優れた (核拡散につながりにくい) 燃料のコンディショニング方法の研究、開発、導入を見込んだ政策を米国としても再検証すべきであると勧告している。NEPD グループは、そうすることで、米国としても分離プルトニウムの世界的な蓄積を阻止することができるとしている。さらに、米国としては、進んだ核燃料サイクル技術を持つ友好国との協力のもと、クリーンでより効率的な、廃棄物の発生量が少ない、核拡散抵抗性に優れた再処理と燃料処理技術も検討する必要があると勧告している。

このほか報告書は、核融合について、まだ開発の初期段階にあり利用可能なエネルギー源になるまでにはまだかなりの時間がかかるとしながらも、排出物がない、発生する放射性廃棄物の寿命が短い、炉心溶融や核拡散の心配がない−などの理由から、将来のエネルギー源としてみた場合には有望との考え方を示している。NEPD グループはその上で、核融合を含む次世代技術を開発するよう大統領が DOE 長官に指示するよう勧告している。

[終わり]

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