[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2001年3月中旬〜5月中旬)
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[韓 国]

韓国水力・原子力発電会社が設立

韓国電力公社(KEPCO)の水力および原子力の発電資産を全て引き継ぐ形で、韓国水力・原子力発電会社(Korea Hydro & Nuclear Power Company)が4月2日に発足した。新会社の設立は、産業資源省(MOCIE)が1999年1月に発表した電気事業再編計画に沿ったもので、2001年4月までにKEPCOの発電部門を6社に設立・分割して、2002年2月から順次民営化する方針。

新古里3号機に改良型加圧水型炉の採用を決定

韓国水力・原子力発電会社(KHNP)のKim Jong-shin上級副社長は5月16日、新古里3号機に改良型加圧水型炉(APR、140万kW)を採用することを明らかにした。なお同1、2号機には韓国標準型炉(KNSP=PWR、100万kW)の採用が決定している。

APRは、コンバッション・エンジニアリング社(ウェスチングハウス社が吸収)のシステム80+型炉の設計をベースにした130万kW級のPWR(KNGR:韓国次世代原子炉)をさらに改良させた140万kW級のPWRである。

韓国では現在、霊光、古里、蔚珍、月城などの4サイトに16基の原子力発電所が運転中。建設中の原子力発電所は、2002年に完成予定の霊光5、6号機、2004年と2005年に完成予定の蔚珍5、6号機の計4基。

現行の原子力開発長期計画では、2015年までに新たに10基の原子力発電所を増設する一方で、古里1号機と月城1号機を2008年と2013年にそれぞれ閉鎖する予定になっており、2015年時点では28基となる。

2000年12月末現在の韓国の原子力発電設備は1371万6000kWで、昨年1年間の原子力発電電力量は1089億6000万kWhを記録、総発電電力量の40.9%を占めた。電力消費量は前年比で11.9%増加した。

[米 国]

民主党がエネルギー政策発表、原子力技術開発継続を盛り込む

民主党は5月15日、ブッシュ政権のエネルギー政策(5月17日正式発表)に対抗する形で、独自のエネルギー計画を公表した。下院民主党のエネルギー作業部会がまとめたもので、省エネと再生可能エネルギーに重点が置かれているものの、原子力発電については国内の電力の約20%を供給しているとの認識を示した上で、前クリントン政権の方針を維持する考えを示している。

民主党のエネルギー政策は原子力について、先進的な原子力発電技術の研究開発を進めるとともに、核廃棄物(使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物)の発生量を削減し、安全に処分する環境にやさしい方法を開発する努力を継続するとしている。

NEIが「ビジョン2020」公表−2020年までに原発5000万kW新設を

米国の業界団体である原子力エネルギー協会(NEI)は5月23日、2020年までに新規に原子力発電所を5000万kW建設するなどとした、産業界としての目標を示した「ビジョン2020」を公表した。

NEIのコルビン理事長は、構想をまとめた背景には、@エネルギー需要の増加Aエネルギーの供給不足B環境面での緊急事態C成長の持続の必要性――という4つの要因があるとした上で、構想の実現は達成可能との自信を示した。

ビジョン2020は、以下の目標を掲げている。

  • 原子力は、安全で信頼でき競争力をもった環境にもやさしい電源であると広く認識される。
  • 2020年までに5000万kWの新規原子力発電所が建設される(5000万kWの新規原子力発電所が追加されることによって、温室効果ガス等を排出しない原子力発電のシェアは30%に達する)
  • 既存ならびに新規の原子力発電所を支える国内および世界の原子力産業界は強固でかつ競争力を持っている
  • 政策立案者と公衆が、経済成長と環境目標を達成するため、持続可能な原子力がエネルギー供給に占める割合をさらに高めるよう要求する。
  • 医療や食品安全、水管理、そして水素のようなクリーンな燃料を生産するため原子力技術が広く利用される。
  • 原子力技術を世界的に展開するにあたって米国のリーダーシップが引き続き誇示される。
NEIはビジョン2020を補完する実際的な戦略目標を以下のように掲げている。
  • 国家および国際的なエネルギー・環境政策の必要不可欠な柱として、原子力に対する卓越した公正な認知を得る
  • 矛盾のない予測可能な規制手続きのもと、原子力発電所の高い安全性と信頼性を維持する
  • 競争力をもった信頼できる、統合された強固な核燃料サイクルを達成する
  • 競争市場において原子力発電の資産価値を最大化する
  • 原子力ならびにこれに関連した技術に対する政策立案者と公衆の支持を高める
  • 原子力産業界の今後のニーズにこたえるため、必要なインフラと資格を備えた人材の開発を行う
エネルギー省の2002年度予算要求額192億ドル

エネルギー省(DOE)は4月10日、2002会計年度(2001年10月〜2002年9月)の予算案を公表した。それによると、前年度の要求額から約1.6%増の192億ドルとなっている。このうち原子力科学技術関係は、総額で2億2300万ドルを要求、前年度歳出額と比べると8.4%減。一方、使用済み燃料の処分向けには前年度より14%多い4億4500万ドルが計上されている。

原子力科学技術(2001年度:2億4590万ドル、2002年度:2億2310万ドル)

2002年度では、@原子力技術の革新的な利用、すなわち第4世代原子炉技術のロードマップの作成Aコストや安全性、廃棄物、核不拡散などの分野での研究開発活動B将来の努力目標を達成するための原子力基盤施設の維持――などが支援される。2002年度の予算要求は、米国のエネルギー政策やこれに関連した優先的な研究項目、先進的な加速器利用プログラムの終了といった、現政権による検討結果がまだでていないものについては予算要求は行われていない。

大学炉の燃料支援(2001年度:1200万ドル、2002年度:1200万ドル)

2002年度では、核燃料支援を要求しているすべての大学の研究炉に対して引き続き核燃料の供給を行う。また、DOEと産業界による補助金プログラムの調整も引き続き行われ、国内の大学が参加した教育・訓練・研究が支援される。大学の原子力工学課程に在籍している学生に対して、研究奨励金が20〜24件、奨学金が50件について支給される。さらに、原子炉共同利用プログラム(Reactor Sharing Program)も継続され、原子炉を持たない大学の教職員が他大学の原子炉を利用できるようにする。このほか、少なくても23の大学の原子炉に対する原子炉改良プログラム(Reactor Upgrade Program)も継続される。

原子力発電所の最適化(NEPO)(2001年度:500万ドル、2002年度:450万ドル)

2002年度では、照射構造材の長期的な信頼性、長期的な疲労、原子力発電所の重要機器・構造物の経年影響の評価など、2000年度と2001年度に始まったプロジェクトへの支援継続が要求されている。要求額がわずかに減少しているのは、2002年度に実施される予定の研究開発プロジェクトの件数が減ったため。

原子力研究イニシアチブ(NERI)(2001年度:3480万ドル、2002年度:1810万ドル)

2002年度では、革新的な原子炉や燃料技術の開発を成功にもっていくとともに、原子力発電の拡大に影響を及ぼす問題と取り組めるよう、現在のNERIを継続することが要求されている。DOEは1999年度に着手した43件の研究プロジェクトを終了させるとともに、2000年度に選ばれた10件と2001年度に選ばれることになっている約25件のプロジェクトを継続する。また、DOEは、2001年度に始まった2国間による5件の国際プロジェクトも継続する。2002年度では、新規の案件を選ぶ予定はない。

原子力発電関係(2001年度:750万ドル、2002年度:450万ドル)

2002年度の予算要求では、第4世代原子炉技術ロードマップ案の完成が盛り込まれている(2001年度:450万ドル、2002年度:400万ドル)。要求額の減額は、2001年度におけるALWR(改良型軽水炉)設計評価の完了(−100万ドル)と小型炉の導入にかかる実行可能性調査の完了(−100万ドル)、改良型ガス炉開発活動の作業範囲の縮小(−50万ドル)、改良型炉開発活動の縮小(−50万ドル)によるもの。

放射性廃棄物関係

2002年度では、民事用放射性廃棄物管理局(OCRWM)向けの予算として、前年の3億9000万ドルに対して4億4500万ドルが要求されている。このうちの1億3400万ドルは核廃棄物基金から、また3億1000万ドルは軍事用核廃棄物処分基金から手当てされる。支出目的は、ヤッカマウンテンでのサイト特性調査に3億5550万ドル、廃棄物の受け入れ・貯蔵・輸送関係に590万ドルなどとなっている。

NRC予算要求額は5億1300万ドル

原子力規制委員会(NRC)の2002会計年度の予算要求額は5億1310万ドルとなった。このうち、4億6920万ドルは手数料の形で事業者から徴収するため、実質的な要求額は4390万ドルで、2330万ドルは核廃棄物基金から、2030万ドルは一般財源から手当てされることになっている。分野別の要求額は以下の通り。

−原子炉安全:2億3140万ドル
−核物質安全:5500万ドル
−核廃棄物安全:6320万ドル
−国際原子力安全支援:510万ドル
−管理・サポート:1億5220万ドル
−監察:620万ドル

ヤッカマウンテン・プロジェクトの報告書公表

米エネルギー省(DOE)の民事用放射性廃棄物管理局(OCRWM)は5月4日、核廃棄物(使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物)貯蔵所計画「ヤッカマウンテン・プロジェクト」に関する4篇の報告書を公表した。その中心的な報告書である「科学・工学報告」(Science and Engineering Report)は、ネバダ州のヤッカマウンテンでDOEがこれまでに行ってきたサイト特性調査の結果や、貯蔵所と廃棄物パッケージの設計、長期にわたった貯蔵所のパフォーマンス評価の結果などをまとめたもので、全体では900ページ。

報告書によると、考えられるほとんどのシナリオのもとで、1万年以上にわたって一般の人たちが貯蔵所からの放射線で被曝することはないと結論づけている。また、ヤッカマウンテンの天然バリアによって貯蔵所への地下水の浸入が制限されるだけでなく、耐食性に優れた処分パッケージが仮に破損したとしても放射性核種の移動が抑えられるため、使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物は人間環境から隔離されると指摘している。

OCRWMは、科学・工学報告と同時に、「環境影響声明案の補遺」「全体のライフサイクル・コスト報告」「拠出額の適正報告評価」という3つの報告書を公表した。このうち、環境影響声明案の補遺は、1999年8月に公表された環境影響声明案を改訂したもので、科学・工学報告の中に記述されている調査結果をもとに環境への影響を再評価している。それによると、改訂版では、ヤッカマウンテンから20キロ離れた場所に住む人が受ける平均年間線量を以前の報告より低く見積もっている。具体的には、貯蔵所が操業を開始してから最初の1万年については、放射性物質の放出とこれにともなう被曝はなく、1万年が過ぎた時点での20キロ離れた場所の線量レベルは自然の放射線レベルをはるかに下回ると予測されている。

ライフサイクル・コスト報告は、核廃棄物政策法が1983年に制定されて以来、DOEが2000会計年度までに67億ドルの経費を支出したことを明らかにするとともに、2001年から2119年(貯蔵所の永久閉鎖時期)までにさらに493億ドルがかかると試算している。なお、核廃棄物基金への拠出額については、現行の1ミル/kWh(1ミルは1000分の1ドル)という額は適正であり、変更する必要はないと勧告している。

パフォーマンス評価モデルの不確かな部分を検討する作業がまだ残っている。このため、これが終了した時点で、今回公表された報告書に対して寄せられた一般からの意見や公聴会で出された意見を踏まえて、最終的にヤッカマウンテンを貯蔵所サイトとして大統領に勧告するかの判断がDOE長官によって下されることになっている。

TVAが4原発の定格出力増強へ

テネシー峡谷開発公社(TVA)理事会はこのほど、ブラウンズフェリー2、3号機(BWR、各115万kW)とセコヤー1、2号機(PWR、各114万7000kW)の定格出力を合わせて26万6000kW上げることを承認した。

TVAは、セコヤー発電所の定格出力をそれぞれ1万3000kW、ブラウンズフェリー発電所の定格出力をそれぞれ12万kW上げることを計画している。セコヤー発電所では、1570万ドルをかけてタービンの高圧ローターを交換することによって出力を上げる。一方、ブラウンズフェリー発電所では、9900万ドルをかけて改良が行われる。両発電所とも、2003〜2005年にかけての保守停止期間中に作業が行われることになっている。(4月)

サスケハナ発電所も10万kW増強へ

PPL社はこのほど、サスケハナ1、2号機(BWR、各110万kW)の定格出力を両機合わせて10万kWあげると発表した。2003年から2004年にかけて予定されている燃料交換停止にあわせて新しいタービンに交換する。タービンの設計、製造、据え付けはシーメンス・ウェスチングハウス・パワー社(シーメンス社の米子会社)が行う。(4月)

原子力発電運転専門会社へ運転を委託

米原子力規制委員会(NRC)はこのほど、パリセード原子力発電所(PWR、78万kW)の運転認可をコンシューマーズ・エナジー社からニュークリア・マネジメント社(NMC)へ移転することを承認した。

NMCは、アイオワ、ミネソタ、ウィスコンシン州の5ヵ所のサイトで7基(デュアン・アーノルド、キウォーニ、モンティセロ、プレーリーアイランド1・2号機、ポイントビーチ1・2号機)を運転しており、7月にも正式に運転認可の移転が行われれば、運転基数は全部で8基となる。(4月)

原子力推進法案が下院に提出

L.グラハム(共和党、サウスカロライナ)、C.ステンホルム(民主党、テキサス)両下院議員は5月2日、原子力発電をエネルギー源多様化の柱とするための施策を盛り込んだ法案を提出した。「2001年電力供給保証法」と題された法案には、原子力分野での人材を確保するための教育プログラムを拡充することなどが明記されている。

また、電力会社が原子力発電所の効率を上げる奨励策を設けるとともに、国内で核燃料の供給が行えるよう産業界の存続を保証することも盛り込まれている。さらに、原子力規制委員会(NRC)の事前サイト許可手続きを試験するための実証プロジェクトを通じて新規原子力発電所の建設を促進するほか、使用済み燃料問題の解決を急ぐことなども規定されている。同様な法案は、今年はじめ、P.ドメニチ上院議員(共和党、ニューメキシコ)によって提出されている。

FPLグループとエンタジー社、合併計画を白紙撤回

フロリダ・ライト&パワー(FPL)・グループとエンタジー社は4月2日、2000年7月31日に合意した対等合併計画が決裂したことを発表した。なお、両社が合併すれば、原子力発電規模でも国内2位に位置する、米国南東部の州を中心に630万の顧客を抱える国内最大の電力会社が誕生するはずだった。

FPLグループ側は、合併を断念した最大の理由として、エンタジー社の財務見通しが不透明な点をあげている。FPLグループは、合併合意に従いエンタジー社に対して財務情報を提供するよう要請してきたが、エンタジー社が再三にわたり情報提供を拒否したため両者の信頼関係が崩れてしまったとFPL側は主張している。

一方、エンタジー社はFPLグループから提案された確認事項を受け入れることになれば、株主の利益を損なわれるだけでなく、規制当局から合併の承認を得られる可能性がなくなるとの見解を示した。

USEC社のポーツマス濃縮工場閉鎖で526人が失業

米国濃縮会社(USEC)は4月2日、6月に予定されているポーツマスのガス拡散濃縮工場の閉鎖で従業員526名を解雇すると発表した。

USECは現政権の計画通りの人員削減を実行しており、ポーツマス工場を閉鎖させた後、時間をかければ運転再開ができるような状態で待機(コールド・スタンバイ)させる模様。

なお、ポーツマス工場が閉鎖することで、ケンタッキー州のパデューカ工場(USEC所有)が国内で唯一操業中のウラン濃縮施設となる。

[カナダ]

CNSC、ブルース・パワー社によるブルースA、B発電所の運転を認可

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は5月9日、ブルース・パワー(BP)社に対して、ブルースA発電所(1〜4号機 各90.4万kW、CANDU=休止中)と同B発電所(5〜8号機 各84.0万kW、CANDU=運転中)の運転認可を発給した。これを受けてBP社は5月12日、ブルースA、B発電所を所有するオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社との間で両発電所のリースに関する契約締結を完了したと発表した。リース契約の総額はおよそ32億カナダドル。

BP社は英国のブリティッシュ・エナジー(BE)社のカナダ法人であるBEカナダ社(79.8%)、カナダのカメコ社(15%)、ブルース発電所の2労組(合わせて5.2%)がブルース発電所の運転のために組織した会社。

OPG社とBE社は2000年7月11日、BP社がOPG社からブルース発電所の設備を2018年まで(オプションで更に25年間延長可能)リースすることで合意したと発表したが、カナダの原子力安全管理法に従い、運転者の変更に伴う運転認可の再発給が必要なため、正式な契約の完了はCNSCによる承認を待つ必要があった。

両社の合意を受けてCNSCは2000年9月27日、認可発給審査に伴う公衆からの意見聴取手続きについて告知。翌3月20日までの期間に意見を受け付けるとともに、公開ヒアリングを2月8日(オタワ)と4月19日(オンタリオ州キンカーディン)に開催した。

認可はBP社とOPG社の同発電所に対するリース契約完了後に発効し、有効期限は2003年10月31日まで。なお、BP社が2003年に2基の運転再開を計画しているブルースA発電所については、引き続き運転休止状態での認可となっており、運転再開のためには改めて認可を受ける必要がある。

オンタリオ州では99年4月に発効したエネルギー競争法にしたがい州内電気事業の自由化が進められており、州営電力会社の旧オンタリオ・ハイドロ(OH)社から発電部門を引き継いだOPG社は2010年までに市場占有率を州内全需要量の35%以下に減らすことを求められている。BP社へのブルース発電所のリースもこの法律に定められた要件を満たすために行われた。

BP社はブルース発電所で発電した電力を、2002年5月にも開放が予定されている州内電力市場で販売する計画だが、市場開放までの移行措置としてOPG社に供給する仮契約を結んでいる。州政府は当初、電力市場の開放を2000年11月に予定していたが、新規独立電気事業者向けの小売システムの立上げ準備などに手間取り、1年半の延期を決定している。

OPG社がオンタリオ州内の大学の原子力工学振興に援助

オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は5月9日、「原子力工学振興のための大学ネットワーク」の設立のために500万カナダドルを提供すると発表した。これはオンタリオ州内の重電工学のコースを持つ大学と協力して原子力工学を振興しようとするもので、対象となる大学はクイーンズ大学、トロント大学、マックマスター大学、ウォータールー大学、ウェスタン大学の5校。

ネットワークはこれらの大学での原子力工学分野の共同研究並びに教育を促進し、技術者と研究者を支援育成することにより、原子力分野の技術開発を振興することを目的としている。またこれによって、将来のニーズを満たした技術者、研究者を産業界へ継続的に供給することで、カナダの原子力産業に貢献することが期待されている。

OPG社では今後5年間、毎年100万カナダドルを上限にネットワークに資金を提供する計画で、ネットワークの資金は、各大学に対するカナダ自然科学・工学研究協会(NSERC)をはじめとする連邦・州の設立した組織からの資金援助を補足するために利用される。

OPG社は今回設立するネットワーク以外にも、ウェストオンタリオ大学への核廃棄物化学分野の研究講座開設のために5年間で75万カナダドルを拠出したのをはじめ、マックマスター大学の3名の志願者に対して大学院修士課程進学のための奨学金並びに就労学生援助として10万5,000カナダドルを拠出するなど、原子力工学の強化に対する個別の支援を行っている。

[英 国]

BE社の2000年度決算、電力価格の下落で減益

BE社は5月16日、2000年度(2000年4月〜2001年3月)の決算を発表。電力価格の下落の影響から、税引き前利益が前年度比2億3100万ポンド減の1000万ポンドと大幅な減益となったことを明らかにした。

2000年度のBE社の原子力発電電力量は635億kWhで前年度を上回ったが、計画外の運転停止や停止期間延長などで、予定していた年間700億kWh台の電力量には達せず、原子力発電の売上高は13億8800万ポンドと前年度より2億3300万ポンド減少した。

一方、2000年度の総売上高は21億2400万ポンド(前年度は20億5800万ポンド)と微増。実質債務は前年度比2億600万ポンド減の7億3000万ポンドとなった。また所有する原子力発電所の運転コストは計6300万ポンドの削減を達成し、2002年度までに1999年度よりも原子力発電所の運転コストを1億5000万ポンド削減する目標を掲げるBE社にとって好材料となった。なお人件費は2300万ポンドの削減に成功しているが、BE社はさらなる削減を目指し5月14日、原子力発電事業関連で400名の人員削減を計画し、労組との調整を開始している。

2000年度の英国の原子力発電電力実績価格はkWhあたり2.17ペンスと、前年度の2.57ペンスを下回ったが、英国における原子力発電コストもkWhあたり1.87ペンス(前年度は1.99ペンス)と圧縮されている。BE社は、「競争力を高めるため今後も原子力発電コストの引き下げと稼働率向上に努力する」としている。

またBE社は、カナダのブルース原子力発電所のリース契約締結や、アメージェン社による米国の原子力発電所買収計画の進展にも言及し、北米での事業展開が順調に進んでいると強調した。

[ドイツ]

英仏向け使用済み燃料の輸送が再開

ドイツの使用済み燃料の国外再処理施設に向けた輸送がこのほど、約3年ぶりに再開された。今年3月にフランスからの返還ガラス固化体がドイツのゴアレーベン中間貯蔵施設に返還されたことを受けて、4月11日に仏核燃料公社(COGEMA)のラ・アーグ工場、5月2日に英国核燃料会社(BNFL)のセラフィールド工場に、いずれもドイツの原子力発電所から取り出した使用済み燃料が到着した。使用済み燃料輸送の国外輸送はドイツ連邦政府が98年5月に禁止して以来、約3年ぶりのことで、98年秋に発足した社会民主党(SPD)と緑の党による連立政権になって初めて。

ラ・アーグ再処理施設に搬出された使用済み燃料は、フィリップスブルクとビブリス、グラーフェンラインフェルトの3発電所の70体で、5台のキャスクに封入された。キャスクを積んだ列車は4月10日夕方、ドイツ南部のウォース駅を出発、フランス北部のナンシー、シャロン、カーンなどを通り、11日の昼にラ・アーグ工場に近いバローニュ駅に到着した。この駅で輸送キャスクはトラックに積み替えられ、同工場の貯蔵プールに保管された。輸送作業は反対派の妨害を受け、予定時間を3時間ほどオーバーしたが、警察の警備により大きな混乱はなかった。

セラフィールド再処理工場へは、ネッカー発電所の使用済み燃料を納めたキャスク3台が4月24日、Walheim駅を出発、翌25日にはビブリス発電所のキャスク2台が独仏の国境にあるWorth駅で積荷された。列車は26日、フランスの北岸港DunkirkでBNFLの専用運搬船に積み替えられ、5月2日にセラフィールドに到着した。ここでも、反対派による抗議活動はあったが、大きな混乱はなかった。

使用済み燃料の輸送は98年春、フランスで輸送容器表面と輸送車両から規制値を超える放射線量が検出され、ドイツをはじめ欧州諸国が禁止に踏み切った。汚染事故の原因究明と対策が講じられ、他国は輸送を再開したが、脱原子力政策を掲げる新政権が発足したドイツでは輸送禁止が続いていた。このため、原子力発電所によっては、搬出されずにサイト内に貯まる使用済み燃料が運転継続を脅かす深刻な問題まで発展した。使用済み燃料の輸送問題をめぐり連邦政府と電力会社の対立が高まる中、両者は昨年6月、原子力政策に関する取決めに合意。電力会社は運転中の原子力発電所に発電電力量の上限を設けるなど、段階的原子力廃止を受け入れる形となったが、優先課題だった使用済み燃料の輸送再開を勝ち取った。

このほど使用済み燃料輸送が軌道に乗ったことから、今後は先の合意にしたがい、原子力法の改正作業が加速するとの見方が強まっている。ドイツは来年秋に総選挙を控えており、緑の党のトリッティン環境大臣はこの秋にも法案を議会(下院)に提出する考えとも伝えられている。

E.ON社、英パワージェン社を獲得

ドイツE.ON社は4月9日、英国第2位の電力会社であるパワージェンに対して同社の100%株式を1株あたり12.19ユーロで購入するという条件を提示。パワージェン社がこの条件を受け入れたことが明らかになった。E.ON社の提示額は市場価格を上回る好条件で、パワージェン社の経営委員会は同社株主に対してこの買収条件を受け入れるよう勧告することを満場一致で可決した。E.ON社はパワージェン社を取得するため、同社の負債を含め、最終的に総額153億ユーロ(約1兆5300億円)を支払う予定。

今回の買収が完了すると、E.ON社はフランス電力公社(EDF)に次ぐ世界第2位のエネルギー供給会社として、3230億kWhの売上と3000万軒の電気・ガスの顧客を抱えることになる。また、パワージェン社は昨年、米国のLG&Eを買収しているため、E.ON社は米国市場への進出も果たしたことになる。ケンタッキー州に本社を置くLG&Eは、約100万軒以上の顧客と900万kWの発電設備を所有する。

E.ON社ハルトマン会長は今後3、4年のうちに同社の非エネルギー部門を手放す計画を明らかにした。化学部門のデグッサ(Degussa)をはじめVAWアルミニウム、石油精錬のVEBAオイル、金属会社のクレックナー(Kloeckner)、不動産会社ビテッラ(Viterra)などを売却し、同社の事業を電力、ガス、水道などに絞っていく。こうした方針はまた、今回の合併に関して米国の承認を得るためでもある。E.ON社は米国の法規に合わせて今後、事業や株主の再編を行う意向を固めている。

E.ON社は99年6月にVEBAとVIAGが合併してできた国内大手の総合エネルギー企業。両社の子会社だったプロイセンエレクトラ社とバイエルンベルク社も統合され、ドイツ最大の原子力発電会社、E.ONエネルギー社が誕生した。E.ON社はEUの合併条件にしたがい旧東独の2大電力、BEWAGとVEAGの株式を手放し、代わりに国外市場でのシェア拡大をねらっていた。なお、旧東独2社は入札の結果、ハンブルク電力(HEW)と米ミラント社(旧サザン・カンパニー)への売却が決まり、これにHEWの主力株主であるスウェーデンのバッテンフォール社が加わり、旧東独の電力事業が統一される見通し。

一方の英国パワージェン社は、中央電力庁(CEGB)が91年に分割されてできた発電会社のひとつ。同社は95年までにすべての国有株式が売却され、完全民営化された。現在の発電設備容量は約784万kW、300万軒の顧客を抱え、英国市場の約1割を占める。98年には地区配電会社であるイースト・ミッドランドの買収に失敗、昨年は米国LG&E社を36億ポンドで買収することに成功したが、折りしも英国卸電力価格が下落し、経営不振に陥っていた。このため、同社のウォリス会長は今回の買収を同社の株主、雇用者、顧客にとっても良い取引であると歓迎している。

今回の買収には今後、欧州連合(EU)をはじめ英、米の独占禁止当局の承認が必要となっており、順調にいくと手続きは2002年春に完了する見通し。

[スペイン]

エンデサ、原子力発電所の一部を売却へ

スペインの最大の電力会社であるエンデサ(ENDESA)は5月23日、事業再編計画の一環としてサンタ・マリアデガローニャ原子力発電所(BWR、46万6000kW)とトリリョ原子力発電所(PWR、106万6000kW)の同社所有分を年内に売却することを明らかにした。同社は4月28日、原子力を含む一部資産を手放す計画が取締役会と株主総会で承認されたと発表していたが、売却の対象となる原子力発電所が明らかになったのはこれが初めて。

売却される発電設備は全部で約261万kWにのぼり、エンデサが現在、国内外に持つ発電容量(3654万kW)の約7%にあたる。内訳は原子力が24万3660kW(9%)のほか、石炭火力が94万4400kW(36%)、ガス火力が75万3000kW(29%)、水力が66万8000kW(26%)。売却される2基の原子力発電所は、いずれもエンデサが国内第2位の電力会社であるイベルドローラと50%ずつ出資している合弁会社のNUCLENOR社を通じて部分所有しており、サンタ・マリアデガローニャの50%にあたる24万3000kWとトリリョの1%にあたる1万660kWを合わせたもの。

エンデサは、これらの発電設備を自社の子会社の送電会社に移して新しい発電・送電会社を設立し、早ければ6月にも欧米の電力会社数社を指名し、入札を行って年内に売却する方針。母体となる送電会社は、スペイン北部を本拠地とする子会社のエレクトラ・デ・ビエスゴ社。同社は約56万の顧客に年間48億kWhを供給し、市場の約3%を占めている。エンデサによると、新会社は既存の電力4社に続く、国内第5位の電力会社となる。また、新会社はバランスのとれた電源構成と今後とも消費の伸びが期待できる地域にあることから、市場価値は高いと見ている。年間の売上は7億1000万ユーロ(約710億円)が見込まれている。

エンデサは昨年、同国2位のイベルドローラ社との合併を発表した際、両社の資産の3割にあたる約1500万kWの発電設備と約400万件の顧客を手放し、国外市場に進出する方針を打ち出した。しかし、今年初め、両社の合併を審査した政府が厳しい条件を示したため、合併は撤回された。エンデサが今回、発表した資産売却計画では、一連の資産売却により2005年までに50億ユーロ(約5000億円)を調達する一方、主に欧州やラテンアメリカの市場開拓に投資する。同社はすでにアルゼンチンの送電会社エデノールの40%株式を約5億ユーロでフランス電力公社(EDF)に売却している。

2001年6月現在
会社
発電所
エンデサイベルドローラフェノーサカンタブリコ
アルマラス-136 *5311
アルマラス-236 *5311
アスコ-1100 **


アスコ-285 **15

コフレンテス100


ホセカブレラ100


サンタ・マリアデガローニャ50 ***50 ***

トリリョ-11 ***48 + 1*** 34.515.5
バンデリョス-27228

(注)*エンデサ・グループのセビリア電力(CSE)が所有。
**エンデサ・グループのカタルーリャ電力(FECSA)所有分を含む。
***エンデサとイベルドローラが50%ずつ出資したNUCLENOR社が所有。

=今回、売却が決まった設備

スペイン政府、カンタブリコ買収を審査

スペイン政府は5月7日、スペイン第4位の電力会社であるハイドロ・カンタブリコの買収をめぐり、激しい入札競争を繰り広げたドイツのエネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)とポルトガル電力(EDP)の2社に対して、一定の議決権を認めるかどうかを今後3カ月かけて調査した上で決定する方針を明らかにした。

カンタブリコの公開株式入札では、地元のエンジニアリング会社であるフェロアトランティカ(Ferroatlantica)と組んだEnBW側が59%、EDPが34%を取得した。この入札には2社のほか、ドイツ最大の電力会社であるRWEも加わり、1株あたりの入札価格は当初の19ユーロから27.3ユーロまで跳ね上がった。EnBWは総額18億ユーロ(約1800億円)にのぼる資金を投入し、ライバル会社のRWEに競り勝った。

しかし、スペインの法律は外国の国営企業に対してスペインの公益企業における3%以上の議決権を所有することを禁止しているため、フランス国営企業であるEDFが約3分の1を出資しているEnBWと、ポルトガル政府が30%を所有しているEDPは、スペイン政府が特例を認めない限り、両者ともカンタブリコの議決権を3%以上、所有できないことになっている。こうしたことから、スペイン政府はEnBWとEDPに対してカンタブリコの議決権を保留とし、今回の入札について3カ月かけて詳しく調査した上で両者の議決権について決断を下す方針。

一方で、スペイン政府の介入姿勢に対して批判的な見方もある。欧州連合(EU)の規制当局は、EU市場の統一が進むなかスペイン政府による外国の公的資本に対する規制は厳しすぎると警告を発している。しかし、スペイン政府は自国の民間企業を公的な外圧から守るのは当然だと反論している。特に、EDFに対しては、フランスの電力市場が閉鎖的であるとして強い反感を示している。

[スウェーデン]

オスカーシャム発電所、MOX燃料装荷へ向け契約

オスカーシャム原子力発電所の運転者であるOKG社はこのほど、仏のフラマトムANP社との間で、MOX燃料の供給契約を締結した。

契約内容は以下の通り。

  • フラマトムANP社は、回収ウラン(スウェーデンの使用済み燃料をBNFLが再処理して回収したもの)と低濃縮ウラン(ロシアの核解体高濃縮ウランを低濃縮したもの)を用いて、オスカーシャム発電所向け新燃料を供給する。
  • フラマトムANP社は英原子燃料会社(BNFL)に委託し、セラフィールドMOX加工施設(SMP)で、使用済み燃料の再処理から生じたプルトニウムをMOX燃料に加工する。

スウェーデンでは、74年にオスカーシャム1号機に少数体(3体)のMOX燃料を試験装荷した実績があるが、その後スウェーデンが使用済み燃料の直接処分方針を固め、国内の使用済み燃料はすべて中間貯蔵施設CLABで貯蔵されたため、スウェーデンからの使用済み燃料輸送は1982年を最後に途絶えている。こうしたなか、OKG社は98年11月、オスカーシャム原子力発電所(BWR、1号機:46万5000kW、2号機:63万kW、3号機:120万5000kW)へのMOX燃料装荷をスウェーデン政府に申請した。今回の契約は、政府が申請を認可した時点で正式に成立する。申請に関しては規制当局がすでに技術的な安全性を確認しており、年内にも政府の決定が下される見通しである。

OKG社は、使用済み燃料の国外移送を禁じる法律が発効する前の70年代に、オスカーシャム1、2号機で発生した使用済み燃料(140トン)の再処理をBNFLに委託しており、BNFLの酸化物燃料再処理工場(THORP)が操業開始するまで、セラフィールドに貯蔵されていた。使用済み燃料は97年に再処理され、136トンの劣化ウランと900kgのプルトニウムを回収している。スウェーデンは、使用済み燃料を直接処分するため処分容器に封入する技術は持っているが、プルトニウムを高レベル廃棄物としてガラス/セラミック固化する技術を所有していないため、OKG社は、MOX燃料に加工、原子炉で照射した後、使用済み燃料として処分する方針を固めた。

なおBNFLは5月8日、オスカーシャム原子力発電所用のMOX燃料供給契約を仏フラマトムANP社と契約したことで、セラフィールドMOX燃料加工施設(SMP)の経済性を評価する基準に照らし、「損益分岐点」とされる40%の販売量を確保したことを明らかにした。BNFLは、あわせて英国政府の判断待ちとなっているSMPの操業開始を強く主張した。

[フィンランド]

議会、政府の最終処分場に関する原則決定を承認

フィンランド議会は5月18日、政府が昨年末に下した最終処分場建設に関する原則決定を159対3の圧倒的多数で承認した。

フィンランドのPOSIVA社は99年5月26日、使用済み燃料の最終処分場建設について、オルキルオト原子力発電所近郊のユーラヨキ地点を建設候補地として選定、政府に申請した。政府は、建設予定地域住民が建設計画を支持していることや、原子力安全当局であるフィンランド放射線・原子力安全センター(STUK)も同計画を支持していること等を挙げ、2000年12月21日、建設を承認する原則決定を下したが、同国の原子力法に従って議会による承認が必要とされていた。今回の議会による承認で、POSIVA社は最終処分場建設の前段階と位置付けられる地下研究施設(ONKALO)の建設が可能となり、その後、建設・操業の認可取得を目指すことになる。

岩盤の特性などを調査するONKALOは、2003〜2004年の間に建設を開始。ONKALOでの実際の調査作業は2006年頃にスタートする予定で、最終処分場の建設・操業の認可申請はそれ以降になるとみられている。

最終処分場は2010年着工、2020年操業開始を予定している。

[チ ェ コ]

テメリン1号機の追加的EIAが終了

オーストリアの要求に従って実施されていたテメリン1号機(PWR、出力97万2000kW)の追加的環境影響調査(EIA)が3月26日に終了し、チェコ環境省は「同機の環境影響は小さく許容範囲である」としてEIAを承認した。

今回のEIAに対する公開ヒアリングは、4月25日にテメリン近郊のツェスケーブデヨビツェ市で開催された。同様のヒアリングがオーストリアでも開催されることになるが、オーストリアは「今回のEIAでは不十分」と主張している。

一方、チェコを訪問したフィンランドのリッポネン首相は5月3日、チェコのゼマン首相との会談後の記者会見で、フィンランドのロビーサ発電所と同じVVER(ロシア型PWR)を採用したテメリン発電所の安全性に問題はないとの考えを示した。

なお、試運転中のテメリン1号機は5月3日、非原子力部のトラブルで運転を停止した。チェコ電力(CEZ)は、「タービンなど2次系で複数の技術的問題が発見され、燃料節約のために運転停止を決定した」と説明している。同機は7月初旬まで運転を停止する予定。

[ルーマニア]

チェルナボーダ1号機、運転認可を更新

ルーマニアの原子力活動規制委員会(CNCAN)はこのほど、チェルナボーダ1号機(CANDU、出力70万6000kW)の運転認可を2003年まで延長することを承認した。ルーマニアでは運転認可を2年毎に更新することが義務付けられている。(5月9日)

[南アフリカ]

PBMR用燃料加工工場の設計で契約

ドイツのニューケム・ニュークリア社と英国原子燃料会社(BNFL)、そして南アフリカのエンジニアリング・マネージメント・サービス社(EMS)の3社からなる国際コンソーシアムは3月下旬、国営電力会社Eskom社が開発を進めているペブルベッド・モジュール高温ガス炉(PBMR)向けの燃料加工工場の設計契約を受注したことを明らかにした。国際コンソーシアムは今後、PBMR計画の事業主体となっているPBMR社(Eskom社の子会社)の社内チームと協力して、安全性、経済性に優れた近代的な燃料加工工場の開発を目指す。

PBMR社、BNFL、ニューケム社の共同声明では各社の役割分担について、ニューケム社は所有する燃料要素加工工場で開発・使用されてきた技術的ノウハウとプロセス仕様を提供し、BNFLは豊富な設計、安全、運転に関する実績や経験をもとにそれら技術要素の実用化をサポートするとしている。また、EMS社は最終的なエンジニアリング作業を担当する。

PBMR社は、南アフリカ原子力会社(NECSA)のペリンダバ研究所にあるBEVA施設の建物を利用して、新しい燃料体製造ラインを設置することを計画している。BEVA施設はアパルトヘイト政策で南アフリカが国際的に孤立していた1988年に、クバーグ原子力発電所(PWR、96.5万kW 2基)向けの燃料形成加工施設(ペレット成形ならびに集合体製造)として操業を開始。しかし、その後のアパルトヘイト撤廃により安価な核燃料を国外から調達できることになったことから、高い製造コストで国際競争力のない同施設は1995年に閉鎖された。

PBMRは電気出力11万kWの小型高温ガス炉(ヘリウム出口温度摂氏900度、圧力6.9MPa)で、経済性に優れた次世代発電炉としてEskom社により1993年から検討が進められてきた。98年には正式に建設計画がスタートし、現在は環境影響調査(EIA)や詳細フィージビリティ調査(FS)、内外の専門家からなる中立的なパネルによる検討が実施されている。PBMR社はこれらの作業の終了を待って、2002年に実証炉の建設作業をスタート、2006年にも営業運転に入ることを計画している。また、同計画にはBNFLと米国の電力会社のエクセロン社がそれぞれ22.5%、12.5%出資している。

PBMRの燃料体は、ドイツで実証されているTRISO被覆粒子燃料含有グラファイト球形燃料体を元にした、直径60mmの球形燃料で、燃料体の内部に粒子状の燃料を約15,000個(ウラン約9g)含む直径50mmの炭素製燃料ゾーンがある。粒子燃料は、二酸化ウランの核を多孔質炭素の緩衝材で包んだ上に、さらにシリコン・カーバイド層を挟んだ2層のパイロカーボンで被覆した直径0.7mmの小球で、ヘリウムガスの冷却材が喪失した際に考えられる最高炉内温度である摂氏1,650度の条件でも内部の放射性物資を外に放出しない強度を備えている(図参照)。

1基のPBMRには、およそ31万個の球形燃料体と、13万個の燃料粒子を含まないグラファイト球が装荷される。また、使用済み燃料は直接処分される計画である。

[IAEA]

世界の原子力発電所の2000年末現在の運転・建設状況を発表

国際原子力機関(IAEA)は5月3日、発電炉情報システム(PRIS)への各国からの報告をもとに、2000年末現在の世界の原子力発電の現状をまとめた。それによると、運転中の原子力発電所は438基、総設備容量(ネット値、以下同じ)は3億5,132万7,000kW。2000年中の世界の総原子力発電電力量は2兆4,475億3,000万kWhで、2000年末時点での運転経験は、9,800炉・年を超えた。また、世界の総発電電力量に占める原子力の割合はおよそ16%、全原子力発電電力量の83%が先進工業国に集中していることが明らかになった。

2000年中に新たに送電を開始した発電所はブラジルのアングラ2号機(122万9,000kW、PWR)、チェコのテメリン1号機(92万1,000kW、ロシア型PWR=VVER)、パキスタンのチャシュマ1号機(30万kW、PWR)、インドのラジャスタン2,3号機(各20万2,000kW、PHWR)とカイガ1号機(20万1,000kW、PHWR)の合計6基・305万6,000kW。また、新たに建設が開始されたのは中国の田湾2号機(100万kW、PWR)、日本の東通1号機(106万7,000kW、BWR)と浜岡5号機(132万5,000kW、ABWR)の3基で、建設中の発電所は31基になった。

2000年中の総発電電力量に占める原子力発電の割合の上位10カ国は、フランス76.4%(原子力発電電力量3,950億kWh、以下同じ)、リトアニア73.7%(84億kWh)、ベルギー56.8%(454億kWh)、スロバキア53.4%(164億9,000kWh)、ウクライナ47.3%(724億kWh)、ブルガリア45.0%(181億8,000万kWh)、ハンガリー42.2%(147億2,000万kWh)、韓国40.7%(1,035億kWh)、スウェーデン39.0%(548億kWh)、スイス38.2%(249億5,000万kWh)。なお、原子力発電の割合が4分の1以上だった国は17カ国に達した。

近年の原子力発電の動向を地域別にみると、北米では2000年末現在で118基の原子炉が運転中だが、運転中基数は僅かながら減少傾向にある。西欧では150基の原子炉が運転中で、基数は概ね横ばいを維持している。中・東欧並びにCIS諸国で運転されている原子炉は68基で、建設中の原子炉が若干完成している一方で、経年化した炉の閉鎖も行われている。中東、極東、南アジアには94基の運転中の原子炉があるが、中国、インド、韓国、日本を中心に、原子力発電の明確な拡大計画が進められている唯一の地域となっている。

(IAEAの集計では、送電開始をもって運転中としている。したがって日本の「もんじゅ」は運転中として分類されている。)

[世 界]

ウラン協会が世界原子力協会に改称

イギリスに本部を置くウラン協会(UI)は5月10日、カナダのトロントで開催した定例会合で、名称を世界原子力協会(World Nuclear Association: WNA)に変更したと発表した。

UIは1975年にウラン生産者機関として設立したが、すでに設立趣旨の範囲を越えた活動をしていた。また、UIは現在、地理的にもヨーロッパ、アジア、オーストラリア、北米などにおける大部分の原子力産業界の会社や機関で構成されており、さらに南米やアフリカの関係機関からの参加申し込みもあるため名称の変更に踏み切った。

WNAは従来通り、年2回の定例会合と商業ベースでのワーキング・グループを通じ、気候変動及び持続可能な開発に焦点を当てている政策決定者やオピニオン・リーダー、国連組織の活動を支援し、原子力産業の発展と国民の原子力に対する理解がさらに深まるよう活動していくとしている。

なお、WNAの名誉会長には国際原子力機関(IAEA)の前事務局長であったハンス・ブリックス氏が就任する予定。


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