[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2001年5月中旬〜6月中旬)
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[台 湾]

立法院、第四原発の建設中断による損害賠償を承認

立法院(議会)は、2000年10月に行政院(内閣)が第四(龍門)原子力発電所(ABWR、135万kW 2基)の建設中止を政策決定した際に生じた損害について契約者に補償金を支払うことを承認した。補償金は米国のGE社と日本の三菱重工業に対して約9400万米ドルが支払われる見通し。なお、GE社は建設中断の時点で、すでに1号機が95%、2号機も80%まで建設工事を進めていた。

[米国 − 韓国]

米国、韓国と初の国際NERI協定に調印

米エネルギー省(DOE)と韓国科学技術省(MOST)は5月16日、国際NERI(International Nuclear Energy Research Initiative)協定に調印した。国際NERIプログラムは、原子力技術分野での研究開発における国際協力の強化をねらったもので、協定調印は今回の韓国がはじめて。DOEは、このほかにも第4世代国際フォーラム(Generation W International Forum: GIF)のメンバーとなっている機関との間で2国間の国際NERI協定を結ぶことを計画している。GIFに参加している機関の共通の関心事項は、先進的な次世代原子炉を開発することにあるため、DOEとしても国際NERIプログラムを通じて第4世代原子炉に関連した研究開発に資金援助をする考え。

今回の韓国と間で調印された協定では、公募で選ばれた米韓の共同プロジェクトチームに対してDOEとMOSTが資金の提供をすることが規定されている。まもなく、米韓それぞれで正式に提案の募集が行われる予定。今回募集が行われるテーマは、@先進的な計装制御・診断A先進的な軽水炉技術B先進的な軽水炉燃料と材料技術C軽水炉の安全技術D先進的な軽水炉の計算手法--。

[米 国]

科学アカデミーが核廃棄物で報告書

米科学アカデミー(NAS)の学術研究会議(NRC)がまとめた報告書は、世界の指導者が核廃棄物(使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物)の処分問題にもっと高い関心を持つ必要があると提言している。6月6日に公表された報告書は、スイス、スウェーデン、ドイツ、日本、フランス、ロシアの専門家を含む国際委員会が作成。米エネルギー省(DOE)と原子力規制委員会(NRC)のほか、8カ国の放射性廃棄物管理機関が協力した。

NRCは、核廃棄物の地層処分計画が世界的に遅れている現状を懸念、国際委員会を組織して報告書をまとめた。委員会の座長を務めたノースワークス社社長のノース氏は、一般の人達の理解を得るにあたっての困難が過小評価されているとした上で、廃棄物管理計画の実施に際しては、技術開発に注ぐ努力以上に意思決定のプロセスに公衆を参加させていく努力が求められると指摘した。

また副座長を務めたスイスのマコンビー氏は、核廃棄物の処分には国際的な協力関係が必要であり、技術的なレベルではこうした関係があるものの、戦略や政治的なレベルでの協力についてはさらに強化する必要があるとの見解を示している。 新年度のNERI、NEERテーマが決まる

米エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は5月30日、原子力研究イニシアチブ(Nuclear Energy Research Initiative: NERI)プログラムのもとで行う2001会計年度(2000年10月〜2001年9月)の新規テーマ13件を公表した。NERIプログラムは、公募方式によってテーマを募集し、この中から選ばれた提案に対して資金を援助するもの。これまでに@モジュール方式による原子力発電所の建設工法A耐熱性燃料被覆の開発――の2件のプロジェクトが完了しているほか、54件のプロジェクトが進行している。今回は145件の提案から新たに13件が選ばれ、それれのテーマに対して初年度は20万〜90万ドルが助成される。3年間の助成総額は1660万ドル。

今回選ばれた研究テーマの中には、アルゴンヌ国立研究所などによるパーティクル・ベッド・ガス冷却高速炉(PB-GCFR)、MITとウェスチングハウス社などによる次世代PWRの高性能燃料設計、アイダホ国立工学環境研究所などによるアクチニド元素燃焼および発電のための臨界超過軽水冷却高速炉の実行可能性調査などが入っている。

またエイブラハム長官は、原子力工学教育研究(Nuclear Engineering Education Research : NEER)イニシアチブのもとで助成する研究テーマとして14大学の19件を選んだと発表した。NEERは、米国の次代を担う科学者やエンジニアにまず原子力工学に関心をもってもらい教育・訓練を行っていく上で不可欠な原子力工学研究を助成するとともに、米国が必要とする原子力科学技術の教育基盤を強化することをねらったもの。今回は、同じ分野の専門家による審査を経て、全部で110件の提案の中から19件が選定された。NEERは1998年に再開されて以来、70件のテーマに資金を助成している。今年選ばれた19件のテーマに対しては、1件あたり初年度で6万〜16万ドルが与えられる。3年間の総額では500万ドル。

今回、選ばれたテーマの中には、ミズーリ大学による加速器駆動システム向けの中性子輸送法、カリフォルニア大学バークレー校による軽水炉燃料棒の熱伝達を改善するための液体金属ボンドなどが入っている。

FFTFの利用可能性について提案募集

米エネルギー省(DOE)は5月23日、ワシントン州リッチランド近郊のハンフォードサイトにあるFFTF(Fast Flux Test Facility=熱出力40万kWhのナトリウム冷却高速炉)の利用方法としてはどのようなものが考えられるかということを一般から募集すると通知した。

FFTFは、先進的な核燃料や材料、コンポーネント、原子炉安全技術を試験することなどを目的として1982年に運転を開始したが、原子力研究開発が縮小される中で必要ないとの判断から92年に運転を中止し待機状態に置かれることになった。その後、増殖炉実験炉であるEBRUも閉鎖された。しかし、原子力研究に対するニーズが高まるとともに、FFTFの運転再開が話題にのぼってきた。

こうした中で、エイブラハムDOE長官はFFTFを閉鎖するという前政権の決定を90日間保留し、一般からの意見を求めるなどしてFFTFの閉鎖を再検討することを決めた。DOEも独自に検討を加えており、7月中には結論が出る予定で、一般からの意見も参考に最終的にFFTFをどうするか決める。

デューク社、マクガイヤー、カトーバ両原発の運転認可更新を申請

デューク・エナジー社は6月13日、カトーバ1、2号機(PWR、各120万5000kW)とマクガイヤー1、2号機(PWR、各122万kW)の運転認可の20年延長を米原子力規制委員会(NRC)に申請した。現在、カトーバ1、2号機の運転認可期限は2024年と2026年、マクガイヤー1、2号機は2021年と2023年。

すでに、デューク・エナジー社は2000年5月、オコニー1、2、3号機(PWR、1・2号機=88万7000kW、3号機=89万3000kW)の運転認可延長(20年)をNRCから取得している。

[英 国]

ブレア政権、長期エネルギー政策を策定へ

6月7日の総選挙で圧勝(総議席数659に対し、労働党:413、保守党:166)した労働党のブレア首相は25日、長期エネルギー政策の検討に着手したことを明らかにした。

これはブレア首相が議会での質疑の際に明らかにしたもので、ウィルソン・エネルギー担当相の監督の下、内閣府のパフォーマンス&イノベーション部(PIU)が検討作業を担当。年内に首相に報告書を提出することになっている。

「競争力を持った価格で信頼性の高い確実、多様なエネルギー供給を確保しながら、地球温暖化問題にも対処する」のがねらい。その背景には、@現在総発電電力量の約25%を供給している原子力発電所が今後徐々に閉鎖されていく、A北海油田や天然ガスの生産量が2004年以降減少し、2006年までに英国は石油の純輸入国となり、天然ガスの輸入依存度が15%に上昇(現在は2%)すると予測されている――等がある。

PIUは、「再生可能エネルギーの拡大とエネルギー需要の削減、という現行のエネルギー政策だけでは、石油と天然ガスの輸入依存度を下げることは不可能」との見方を示しており、新しいエネルギー政策に原子力発電の推進が打ち出されるとの見方も高まっている。

同日、ブリティッシュ・エナジー社(BE)のR.ジェフリー次期会長は、「英国が原子力発電オプションを保持するためには、新しいエネルギー政策の策定が望まれている。カルフォルニアの電力危機の背景や不安定なガス価格、地球温暖化への懸念等を考慮すると、原子力発電の将来における役割を明確にする必要がある」として、新長期エネルギー政策に対し強い期待感を示した。また翌26日、英原子燃料会社(BNFL)も「長期エネルギー政策の検討開始を歓迎する」との声明を発表した。

なお、総選挙時の労働党の選挙綱領には「石炭と原子力は、英国の電源の多様化に大きな役割を果たしている」と述べられていた。一方の保守党は選挙綱領の中で、「現行の対策では温室効果ガス排出量の削減は達成できない。保守党はCO2排出量削減に貢献する原子力の将来的な役割を再検討する」としていた。

[スロバキア]

ボフニチェ1、2号機の早期閉鎖計画、7月にも発表へ

スロバキア政府は7月にも、ボフニチェ1,2号機の早期閉鎖計画を正式に固める見通しとなった。政府の閉鎖方針は99年9月に表明されており、それによると1,2号機はそれぞれ2006年、2008年に閉鎖されることになっている。

ロシア製PWRであるVVER-440型炉の第1世代である両機は、欧州連合(EU)から「EUの安全基準を満たしておらず、安全性に問題がある」と指摘されていた。

早期閉鎖に係るコストは3億5000万ユーロと見積もられており、うち1億5000万ユーロを欧州復興開発銀行(EBRD)が、残りをスロバキア政府がデコミ基金から手当てする。

(6月22日)

[ルーマニア]

チェルナボーダ2号機完成へ向け契約

ルーマニアの国営電力会社Nuclearelectrica社はこのほど、カナダ原子力公社(AECL)、伊アンサルド社との間で、チェルナボーダ2号機の最終的な建設契約を締結した。契約総額は約6億8900万米ドル。

ルーマニアのナスタセ首相をはじめ、カナダ,イタリア両国大使の見守る中で締結された建設契約によると、49カ月以内に臨界を達成、54カ月以内に運転を開始する予定である。

チェルナボーダ発電所では2〜5号機が建設中だが、3〜5号機の建設作業は現在中断されている。83年1月に着工された2号機の建設作業は進捗率40%に達しており、追加資金の手当てが課題とされていた。(5月23日)

[ロシア]

下院、外国からの使用済み燃料受け入れ3法案を可決

ロシア議会下院は6月6日、外国の使用済み燃料の中間貯蔵、再処理受託を目的とした関連3法案に対する第三読会を開催し、243対125(棄権7)で採択した。

今回採択された3つの法案は、使用済み燃料の国内への持込みを禁止している自然環境保護法第50条に例外措置を設ける改正のほか、リースを含めた使用済み燃料の輸出入を民法上合法的な契約に限定する原子力法の改正、使用済み燃料の国際貿易によって得られる収入の使途を定めた特別生態環境計画法を新たに規定することがセットになっている。

同法案は今後、上院に送られ審議されるが、政府は核不拡散や環境保護の基本原則、経済面を考慮した、法案に沿った具体的な輸入手続きの作成作業に入った。

92年に制定された環境保護法第50条は、中間貯蔵および処分を目的とした外国(旧ソ連製原子炉が使われている国を除く)からの放射性廃棄物や放射性物質の国内への持ち込みを禁じているため、ロシアでは外国の使用済み燃料の商業再処理ができなかった。改正案では、使用済み燃料とその他の廃棄物を法的に区別し、国際的な安全基準が満たされていることを条件に、ロシア政府の同意のもとで、再処理ならびに中間貯蔵を目的としてロシア国内へ持ち込むことを認める一方で、放射性廃棄物の貯蔵と処分は引き続き禁止している。

ロシア原子力省(MINATOM)は、今後10~20年間に、外国の原子力発電所から発生した使用済み燃料を最大2万トン程度受け入れることにより、少なくとも200億米ドルの収入が得られると試算している。

使用済み燃料ビジネスで得られた収入は、MINATOMの使途特定財源の特別会計に組み入れられ、ロシア国内の環境保護対策や燃料サイクル関連インフラの整備などの社会環境プログラムに充当される。MINATOMの得る収入の25%は再処理や中間貯蔵を受け入れる施設がある自治体へ配分される。

毎年輸入される使用済み燃料の量は、受け入れ施設がある地方自治体を代表する上院議員との協議の結果をもとにして連邦政府が設定する。

MINATOMは99年秋、外国からの使用済み燃料の商業再処理・中間貯蔵受託を目的とした関連3法案を議会に提出。議会下院は2000年12月21日に第一読会を開催し、300対30の大差で支持。今年4月18日の第二読会でも250対125で採択した。

ロシア下院では3段階の手続きを経て法案を採択する。先ず、本会議の第一読会で法案の基本的な内容が討議され、承認された場合は担当委員会に送付される。委員会では第一読会での意見、コメントなどを反映した修正案を作成して本会議に提出。修正案は本会議の第二読会で詳細な審議が行われる。最終審議となる第三読会では第二読会で採択された最終案に対する可否のみの採決を行う。

下院で採択された法案は上院(連邦構成の自治体の首長、議会議長で構成)に送付され審議・採択の後、大統領の署名を以って成立する。

ムルマンスク低レベル液体廃棄物処理施設の改良工事が完了

ロシアの北極海沿岸のムルマンスクで国際協力プロジェクトとして進められていた低レベル放射性廃棄物処理施設の改良と拡張工事が6月下旬に完了した。今回の工事により、既存の処理建屋に新しい設備を設置して改良が図られるとともに、施設の増設も行われ、年間処理能力は1200立方メートルから5000立方メートルに拡張された。

原子力船の運行や退役した原子力潜水艦から発生する低レベル液体放射性廃棄物の処理が行われているアトムフロート社のムルマンスク放射性廃棄物処理施設は、処理能力が限界に達していたが、ロシア政府の資金難から拡張もされずに、未処理の廃棄物が十分に管理されないまま大量に貯蔵されている。一方では、旧ソ連時代の1950年代から、同地域を含む北極圏での放射性廃棄物の海洋投棄も行われていた。

これに対してバレンツ海で漁業を行っているノルウェーをはじめとする周辺諸国から、海洋汚染を危惧する声が上がり、同施設の処理能力の拡張を目指した「ムルマンスク・イニシアチブRF」と呼ばれる国際プロジェクトが94年にスタートした。

なお、ロシア海軍の日本海での放射性廃棄物の海洋投棄をきっかけにして、日本の資金援助により極東地域でも、液体放射性廃棄物処理施設の建設プロジェクトが同じく94年にスタートしている。

[ウクライナ − 国際]

K2/R4プロジェクトのフェーズ2の契約が調印

フラマトムANP社は6月22日、ロシアのアトムストロエキスポート社とのコンソーシアムがウクライナの電力会社であるエネルゴアトム社との間で、建設が中断しているフメルニツキ2号機(VVER=ロシア型PWR、100万kW)とロブノ4号機(同)の完成を待って改良するというK2/R4プロジェクトのフェーズ2計画の受注に関する原則合意文章に調印したと発表した。契約額は1億2,500万ユーロで、2基の原子力発電所が完成した後、最初の3回の定期検査のための運転停止期間を利用して西側先進国の安全基準を満たすレベルまでの改良を行う。

同コンソーシアムは既に2000年10月(当時はフラマトム社とシーメンス社。2001年1月に原子力部門を統合してフラマトムANP社設立)、K2/R4プロジェクトのフェーズ1にあたる2基の発電所の完成に関する契約についても、エネルゴアトム社との間で原則合意文章に調印しており、今回のフェーズ2の契約はその延長線上にあるもの。2つの契約を合わせた受注総額は7億ユーロ。

G7と欧州連合からなる西側先進国グループは、チェルノブイリ発電所(RBMK、100万kW 4基)の閉鎖を巡るウクライナとの交渉の中で、代替電源としてフメルニツキ2号機とロブノ4号機の完成と改良を支援することで合意。2000年12月のチェルノブイリ発電所閉鎖にあわせて、K2/R4プロジェクトへの融資の枠組として、欧州復興開発銀行(EBRD)とEuratom、各種の輸出信用機関(ECA)からなる包括プログラムが作られた。

コンソーシアムは、この包括プログラムによる具体的な融資が確定し次第、事業に着手する予定で、計画ではフメルニツキ2号機の完成を2004年中、ロブノ4号機の完成を2006年中としている。


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