[諸外国における原子力発電開発の動向]
話題を追って (2001年5月中旬〜6月中旬)
top

ドイツ:連邦政府と電力4社、原子力政策で正式に合意

ドイツ連邦政府と大手電力4社は6月11日、昨年6月に合意していた原子力発電所の発電量の設定などを盛り込んだ取決めに正式に署名した。首都ベルリンで行われた署名式には、連邦政府からはシュレーダ首相 (社会民主党、SPD) ほか、トリッティン環境相 (緑の党)、ミュラー経済相 (無所属)、電力からは E.ON 社のハルトマン氏、RWE 社のクント氏、エネルギー・バーデンビュルテンベルク (EnBW) 社のゴル氏、ハンブルグ電力 (HEW) のティム氏 (いずれも最高経営責任者:CEO) が出席した。

両者は昨年6月、(1) 原子力発電所の発電電力量の制限、(2) 2005年6月までに限った使用済み燃料の再処理実施、(3) 2005年7月以降の直接処分にそなえた中間貯蔵施設の設置、(4) 原子力発電所の運転継続に関する連邦政府の保証、(5) 原子力法の改正−−などで合意。原子力発電所の運転期間については、送電開始から32年とした上で、これまでの運転実績をベースに2000年以降の発電電力量を19基合わせて約2兆6,233億kWh と設定している。規定の発電量に達した原子力発電所から順次、閉鎖となるが、発電所間で電力量の譲渡が認められるため、全ての原子力発電所が閉鎖となる時期は予測できない。なお、この取決めを受けて RWE 社は、休止中だったミュルハイム・ケールリッヒ (PWR、130万2000kW) を正式に閉鎖したほか、E.ON 社も合理化計画の一環としてシュターデ (PWR、67万2000kW) を2003年に閉鎖する方針を明らかにしている。

今回の正式署名は昨年6月の合意後、政権党内の合意形成や使用済み燃料の輸送再開など、連邦政府と電力会社双方の懸案事項が解決したことを受けて実現に至った。ただ、連邦政府が脱原子力政策に関する合意として高く評価しているのに対して、電力側は妥協の産物との見解を示しており、両者の受け止め方には大きな隔たりがある。

ドイツ最大の原子力発電設備を抱える E.ON 社は声明文の中で、今回の合意はエネルギー・コンセンサスとは異なるとした上で、電力会社は連邦政府がめざす脱原子力政策を受け入れたのではなく、運転中の原子力発電所の運転期間の確保や運転継続の保証を獲得するために現実的な妥協をしたと主張している。RWE 社も、考えられる選択肢の中では最善との見方を示している。

こうした中で、最大野党のキリスト教民主/社会同盟 (CDU/CSU) は、来年秋に予定されている総選挙で政権に復帰した場合は今回の取り決め事項を撤回し、原子力推進を打ち出す方針を明らかにしている。

今後は、合意事項を盛り込んだ原子力法の改正作業に移るが、法案は夏季休会明けにも連邦議会 (下院) に提出される見通し。

[終わり]

Copyright (C) 2001 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. (JAIF) All rights Reserved.