[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2001年7月中旬〜8月中旬)
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[台 湾]

第四原発の建設継続の是非を問う国民投票は見送り

行政院(内閣)は8月10日、第四(龍門)原子力発電所の建設継続の是非を問う国民投票を実施しないことを正式に発表した。経済に与える影響、適法性、実施の場合の経費、世論などを考慮したもの。

行政院は7月、第四発電所の建設継続の是非を問う国民投票の実施を可能にする法案を立法院(議会)に提出していたが、それと並行して、国民投票が政治、経済に与える影響、適法性、実施の場合の経費、世論などについての評価を行っていた。

[インド − ロシア]

クダンクラム建設プロジェクト、10月に正式署名へ

インド、ロシア両国は8月6日、インド南部のタミル・ナド州クダンクラムに建設が計画されている、インド初の大型原子力発電所(VVER=ロシア製PWR、100万kW)2基の建設プロジェクトで合意に達し、10月に正式署名すると発表した。

同プロジェクトの費用は、15億から20億ドルかかると見積られており、1号機は2007年12月に、2号機は2008年12月にそれぞれ運転開始の見込み。インド南部のアンドラ・プラデシュ、カルナタカ、ケララ、タミル・ナドの4つの州に電力を供給する予定。

同プロジェクトは1988年以来、インドと当時のソ連の間で交渉が進められていたが、ソ連が崩壊したために1992年に中断した。その後、交渉は再開され、インド、ロシア両国は1998年6月、ようやく建設協定を調印し、@建設資金の約80%がロシアからの借款でまかなわれること、A同発電所向けの低濃縮ウラン燃料もロシアが供給すること――などで合意していた。

[米 国]

DOEがヤッカマウンテンに肯定的な評価

米国エネルギー省(DOE)は8月21日、ネバダ州のヤッカマウンテンに計画されている使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物の貯蔵所の予備的サイト適性評価を公表した。ヤッカマウンテンで約20年にわたって行われてきた科学的調査の結果を環境保護庁(EPA)が定めた厳しい安全基準に沿って予備的に評価したもので、今年5月にまとめられた報告書の結論を支持した肯定的な内容となっている。

またDOEは同日、ヤッカマウンテンを貯蔵所サイトとして大統領に勧告するかどうかの判断材料とするため、ラスベガスなどネバダ州の3ヵ所で9月に公聴会を開催すると発表した。DOEのエイブラハム長官は、公聴会で寄せられた意見も参考に、年内にもヤッカマウンテンを貯蔵所サイトとして大統領に勧告するかどうかの決断を下すとみられている。大統領が勧告を受け入れれば、原子力規制委員会(NRC)による許認可手続きへと移る。

エネルギー政策法案が下院通過

ブッシュ政権が5月に公表した国家エネルギー政策の内容を盛り込んだ法案が8月2日、下院を通過した。この法案は、8つの下院委員会がとりまとめた4つの別々の法案を1つにまとめたもので、原子力関係では、原子力研究開発プログラムへの資金提供などが盛り込まれている。アラスカの海岸平野での石油掘削を認める提案については、民主、共和両党から強い反対があったものの、共和党203、民主党36、無所属1の合計240人(総数435議席)が法案を支持した。

FFTFの運転再開可能性検討が終了

エイブラハムDOE長官は8月1日、ワシントン州リッチランドにある高速中性子束試験炉FFTF(Fast Flux Test Facility)の運転を再開するか、それとも閉鎖するかの検討が終了したと発表した。また同長官は、癌の治療や研究、産業などに使用する放射性同位元素の製造にFFTFを利用できないかどうかの検討を60日間かけて実施することも明らかにした。DOE長官は、こうした検討結果を踏まえて、FFTFの運転再開あるいは閉鎖を決める。FFTFは1992年に運転を中止。その後、核燃料も取り出され、現在は待機状態に置かれている。

[英 国]

ウィルファ発電所、運転再開へ

原子力施設検査局(NII)は7月31日、ウィルファ原子力発電所の運転再開を承認した。同発電所は2000年4月中旬の定検中に発見された不具合で運転を停止しており、15ヵ月ぶりに戦列に復帰することになった。

ウィルファ発電所はマグノックス炉2基(出力各56万5000kW)で構成され、旧式のマグノックス炉の中では最も新しく、出力も最大。マグノックス炉の閉鎖計画が確定する中、ウィルファとオールドベリーの2発電所の閉鎖時期はまだ正式に決まっていない。

[ドイツ]

ビブリス発電所、バックフィット実施へ

連邦環境原子炉安全省(BMU)のトリッティン大臣(緑の党)は8月2日、ヘッセン州で運転中のビブリスA、B原子力発電所のバックフィット(改良)作業に関する許認可権限を同州政府に委ねることを明らかにした。ドイツでは本来、州政府に原子力規制権限があるが、脱原子力を公約にかかげた社会民主党(SPD)と緑の党からなる連邦政府は、ビブリス発電所のあるヘッセン州で例外措置として許認可権限を握っていた。今回の決定を受けて、同州与党のキリスト教民主同盟(CDU)は、同発電所の所有・運転会社であるRWEパワー社が申請している改良計画を近く承認する意向を固めている。これにより、約10年間続いた同発電所のバックフィットをめぐる問題は、解決に向かうものと見られている。

ビブリスA(PWR、122万5000kW)と同B(PWR、130万kW)発電所は、ヘッセン州唯一の原子力発電所。87年にビブリスA発電所で起こった冷却材喪失事故(LOCA)の前兆事象がきっかけとなり、同発電所の安全性が大きな問題となった。91年に発足した同州のSPD・緑の党の連立政権は、RWE社に地下式の非常用制御室の建設を含む10億マルクを超える大規模な改良工事を求めたため、州政府とRWE社との対立は深まった。特に、ヘッセン州を政治活動の拠点とする緑の党は、同発電所の早期閉鎖を迫ったほか、94年にはシーメンス社のハナウMOX燃料製造工場を操業断念に追い込むなど、強硬な反原子力政策を展開した。

こうした中で、99年2月の州議会選挙でCDUが政権を奪回し、ビブリス発電所をめぐる情勢が一転した。RWEパワー社は昨年、約1億6000万マルクかけて給水ポンプなどの安全機器を改良するというバックフィット計画を新しい州政府に申請した。しかし、こうした動きに対して連邦政府は州政府の原子力規制権限を停止した上、昨年6月の原子力発電に関する合意でビブリスA発電所のバックフィットの手順については連邦政府が主導権を握る旨をアネックス(付属資料)の中に明記するなど、同発電所の早期閉鎖に固執した。トリッティン大臣が今回、強硬姿勢を軟化させた背景には、原子力コンセンサスが今年6月正式に署名となり、段階的な脱原子力政策に関し一定の成果が得られたことにあると見られている。

[チェコ]

テメリン1号機が送電再開

試運転中に発見された非原子力部分の不具合で運転を停止していたテメリン1号機(VVER-1000型炉、出力97万2000kW)が8月15日、送電を再開した。同2号機(1号機と同じ仕様)は現在、1次系循環ポンプの運転準備を行っており、その後燃料を用いないホットテストを実施する予定である。

[ロシア]

元プルトニウム生産炉の運転期間の延長を計画

ロシアでは経済的な問題を理由に、2002〜4年に閉鎖が予定されている元プルトニウム生産炉の運転期間延長が計画されている。

ソ連時代に核兵器の開発拠点となっていた秘密都市にあるプルトニウム生産炉は、ソ連崩壊と冷戦終了に伴いその多くが役割を終え、閉鎖された。しかし、ロシアの原子力産業が軍需から民需への転換を進める中で、3基がコンビナートと都市へのエネルギー供給を目的に運転が続けられている。

現在稼働中の旧秘密都市のプルトニウム生産炉は、トムスク-7(現、セーベルスク)にあるトムスク4、5号機(LWGR、10万kW)と、クラスノヤルスク-26(現、ジェレズノゴルスク)にあるクラスノヤルスク3号機(LWGR、10万kW)の3基で、それぞれ立地地域に電力と熱を供給している。1997年の米露合意により、トムスク4、5号機は2002年と2003年に、クラスノヤルスク3号機は2004年に運転が停止されることになっていた。しかし、ロシア政府は最近になって、財政難から短期間でこの3基の代替プラントを建設する余裕がないとして、閉鎖期日の延期を検討していた。

イタル・タス通信によれば、ロシア政府は近々行われることになっている1997年米露合意の正式調印を前に、合意内容を変更してトムスク4、5号機を2005年12月31日、クラスノヤルスク3号機を2006年12月31日まで運転することを米国側に提案することにしており、8月下旬にはカシヤノフ首相がルミャンツェフ原子力相に対して、ロシア政府を代表して米国との交渉・署名に当るよう、指示を出した。

ロシアの旧秘密都市の元プルトニウム生産炉
(LWGR:黒鉛減速・軽水冷却炉)
発電プラント所在地運転開始現状
マヤク1号機チェリャビンスク-65
(現:オジョルスク)
生産合同 "マヤク"
19481987 閉鎖
同2号機19511987 閉鎖
同3号機19511990 閉鎖
同4号機19511989 閉鎖
同5号機19521990 閉鎖
トムスク1号機トムスク-7
(現:セーベルスク)
19551990 閉鎖
同2号機19581990 閉鎖
同3号機19611992 閉鎖
同4号機1964運転中
同5号機1965運転中
クラスノヤルスク1号機クラスノヤルスク-26
(現:ジェレズノゴルスク)
19581990 閉鎖
同2号機19611992 閉鎖
同3号機1964運転中

[カザフスタン]

関係者が放射性廃棄物埋設処分ビジネスに前向き発言

イタル・タス通信によると、カザフスタンで原子力開発の実務を担当している国立原子力センター(NNC)のタキバエフ科学研究官は8月15日、首都アルマトイで開かれた記者会見で、同国は低中レベル放射性廃棄物の埋設には理想的な条件を備えていると発言した。

カザフスタンでは海外から放射性廃棄物を受け入れて自国内に埋設処分する計画が関係者の間で検討されており、7月25日には国営原子力会社カザトムプロムのザキシェフ総裁が、海外から放射性廃棄物を受け入れて国内で埋設処分するすることが可能であり、そのために法律を改正して放射性廃棄物の輸入を認めるべきであると発言した。同氏は廃棄物受入によって得られた収入で、国内の廃棄物処分や汚染地域の環境復旧を進めるべきとしている。

具体的な廃棄物処分場としては、操業が終了したウラン鉱山が考えられており、埋設後約30年で放射能が減衰してほぼ安全なレベルになるとしている。

カザトムプロムによると、カザフスタンの放射性廃棄物の総量は2億3,700万トンに達している。また、セミパラチンスク核実験場跡の汚染地域の環境復旧も課題となっており、これら廃棄物処分と汚染地域環境復旧の事業の実施には11億1,000万米ドルが必要と見積もられている。

高レベル放射性廃棄物に関してザキシェフ氏は、ロシアに輸送して再処理することには反対を表明している。同氏によると、再処理には4億5,000万米ドルが必要になるが、国内のセミパラチンスク核実験場跡地に長期間貯蔵する場合は、この15分の1の予算で済むという。

カザフスタンは旧ソ連時代にセミパラチンスク核で実験が行われるなど、核兵器開発の重要地域と位置付けられていた。また、ウラン、石油、石炭資源が豊富で、主なウラン鉱床としてはステプノゴルスク、シェフチェンコ、タボシャラがあり、既知ウラン資源は世界全体の約19%に当る86万トンと推定されている。なお、同国ではカスピ海沿岸アクタウでBN-350(FBR原型炉、出力15万kW)のシェフチェンコ発電所が73年から運転され、発電や海水の淡水化に利用されていたが、経済性を理由に99年4月に閉鎖されており、現在稼働中の原子力発電所はない。

同国では原子力政策の策定や原子力開発の推進、輸出入規制、核実験場の復旧管理等の政策面を担当する原子力庁が1992年に設置され、翌93年には原子力の基礎研究、産業応用開発、放射能汚染への対処等の実務面を担当するNNCが設立されている。


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