[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2001年8月中旬〜9月中旬)
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英国:BNFLとBE、原子力オプションの堅持を要望

−原子力の代替は原子力

エネルギー政策の見直しが行われている英国で、原子燃料会社 (BNFL) とブリティッシュ・エナジー (BE) 社が9月、相次いで原子力オプションの堅持を政府に訴えた。

BNFL は9月6日、エネルギー政策の検討作業を着手している内閣府のパフォーマンス&イノベーション部 (PIU) に要望書を提出。同社が原子力発電所の新規立地に向けて準備を整えていることを表明するとともに、「原子力発電は英国のベースロード電源として重要な役割を担っており、原子力オプションを除外した場合、英国は環境負荷の少ない多様で安定したエネルギー供給を達成することは出来ない」との考えを示した。

BNFL は、以下の5項目を提案した。

  • 原子力は温室効果ガスを排出しない利点があることを、気候変動防止対策に盛り込む
  • 原子力施設の新規立地が効率よく行われるよう、許認可システムを改善する
  • ベースロード電源に求められる電力供給の長期契約のあり方を検討する
  • 包括的な放射性廃棄物管理政策を策定する
  • 原子力に関する教育・訓練・研究開発を促進する

BNFL は新規原子炉として、子会社であるウェスチングハウス社の AP600 (PWR、出力60万kW:米国で認証済み) や AP1000 (同、出力100万kW) が候補になるとした上で、新型炉は建設期間の短縮化、建設コストの削減が可能で、その他のベースロード電源と競合できるとの自信を示している。

一方 BE 社も9月11日、政府に要望書を提出し、今後25年内に出力100〜120万kW の原子力発電所を10基程度新規に建設する必要があるとの見解を表明。この中で BE は、最適なエネルギー・ミックスとし、石炭:15%、天然ガス:40%、再生可能エネルギー:20%、原子力:25%を掲げている。

また BE 社は、昨年の電力価格の値崩れにより大打撃をこうむったことから、原子力発電所の新規立地に乗り出すには収益性の回復が前提条件と強調。現在の新卸電力取引制度 (NETA; New Electricity Trading Arrangements) による電力価格が、1000kWh あたり18〜20ポンドであることに触れ、新型炉の立地を可能にするには、1000kWh あたり25〜30ポンドまで上昇する必要があると指摘、このギャップを補填する対策を政府に要望した。具体的には、再生可能エネルギーへの投資奨励のために設定された「再生可能エネルギー責務要綱」をモデルに、原子力の環境面その他の優位性を認めた「長期奨励金 (プレミアム)」を設定することを提案した。

英国では2020年までに約900万kW、さらに2040年までに約370万kW の原子力発電所が老朽化・経済性等の理由で閉鎖される見通しであり、新規立地がない場合、原子力シェアは現在の23%から2020年には5%に減少する。温室効果ガスの排出抑制で重要な役割を果たす再生可能エネルギーも、2020年時点のシェアはせいぜい10%程度と予測され、ベースロードの電力需要はまかなえない。また天然ガスおよび石油の生産量は今後激減すると見られており、現在100%である自給率が2020年には40%以下に落ち込むと見られている。

[終わり]

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