[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2001年8月中旬〜9月中旬)
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[米 国]

今後5年間で計160万kWの出力増強を申請

原子力規制委員会(NRC)事務局は7月31日、今後5年間に46基の原子力発電所で出力増強が申請されるとの見通しを明らかにした。出力アップは総計で160万kW分に達する。

米国の原子力発電所では、1977年にカルバートクリフス1号機の出力増強が承認されて以来、これまでに計250万kW相当の出力増強が承認済み。今年7月31日にはホープクリーク発電所で1.5万kW分の出力増強が認められている。

NRCは出力増強申請を最重要許認可案件の1つと認識しており、審査日程もできるかぎり短くするとの方針を打ち出している。

[ブラジル]

アングラ3号機の建設問題、近く決着へ

ブラジル国家エネルギー政策評議会(CNPE)は9月末にも、アングラ3号機(PWR、130万9000kW)の建設プロジェクトを続行するかどうかを決定するとみられている。同機の建設工事はすでに30%進んでおり、設備機器の70%も輸入されているが、同発電所を完成させるためには、さらに17億ドルが必要と見込まれている。

ブラジルは現在、深刻なエネルギー危機に見舞われており、アングラ3号機の完成を支持する声がある一方で、2003年までに天然ガスなどを燃料とした発電所が完成すれば、同機は不要となるとの見方もある。

なお、アングラ3号機と同じサイトにある1号機(PWR、65万7000kW)と2号機(PWR、130万9000kW)は現在、運転中であり、20%の電力消費制限が課せられている中で、エネルギー供給に貢献している。(8月末)

[フランス]

フランスの原子力産業再編が完了

CEAインダストリー、フランス核燃料公社(COGEMA)、フラマトムANPの3社は9月3日、合同株主総会を開催し、新しい持ち株会社アレバ(AREVA)社のもとで力を結集することを可決した。これを受けて、翌4日にはこれまでTOPCOの仮称で呼ばれていた新会社アレバ社が正式に発足し、フランスの原子力産業再編計画が予定通りに完了した。新会社の初代会長は、COGEMAの会長兼CEOであるローベルジョン氏、また監査役会長は原子力庁(CEA)長官のコロンバニ氏がそれぞれ兼任する。

フランス政府は昨年11月、官民の資本が入り組む原子力産業界の複雑な構造を簡素化し、資本力を強化するために、新持ち株会社を頂点としてCOGEMA、フラマトムANP、フラマトム・コネクターズ・インターナショナル(FCI)社など関係企業をグループ化する再編計画を打ち出した。新会社の株式比率は原子力庁(CEA)が78.96%、政府(財務省)が5.19%を保有するほか、6.23%は投資家に公開される予定。このほか、5.59%はCOGEMAの少数株主だったERAP(石油会社)、CDC(政府系銀行)、TotalFinaElf(石油グループ)の3者がそれぞれ3.21%、1.36%、1.02%、また残りの6.23%はフラマトムの少数株主だったフランス電力公社(EDF)、アルカテル(通信会社)、Framepargne(フラマトムの従業員組合)の3者がそれぞれ2.42%、2.23%、1.58%を所有する。アレバ社は、世界中に4万5000人の従業員を配し、800億フラン(約122億ユーロ、約1兆3400億円)の資産価値を有し、約100億ユーロ(約1兆1000億円)の年間の売上を見込んでいる。

アレバ社の傘下には、フラマトムANP、COGEMAの原子力企業のほか、FCI社や半導体メーカーであるSTマイクロエレクトロニクス社が入る。原子力事業は全体の4分の3を占め、原子力発電所の建設・デコミッショニングをはじめウラン鉱採掘から燃料製造、核燃料サイクル全般までをカバーする。AREVAという名称は、具体的な意味を持たない造語だが、シンプルで発音や表記が簡単な上、フランスだけでなく国際的にも響きのよい、覚えやすい言葉として考案された。

フランスのMOX燃料利用の現状

日本原子力産業会議がフランス電力公社(EDF)に確認したところ、フランスでMOX燃料を装荷済みの原子力発電所は現在、昨年装荷が始まったシノン1号機を含め、20基に達していることが明らかになった。EDFによると、MOX利用を計画中の90万kW級8基については、技術的には可能だが、短期的には装荷にむけた許認可手続きをとらない方針を固めている。その理由としては、(1) MOX燃料のプルトニウム含有率を将来、ウラン燃料と同じ8.65%に変更する可能性があること、(2) メロックス工場の加工容量が現在、年間100tHMであるため、短・中期的にはEDFへの供給量が限られる、(3) 現状下でバックエンドサイクルの総合的バランスをとるため−−と説明している。また、MOX利用を拡大する場合、必要となる運転許可政令の変更に、緑の党の影響下にある環境省が同意しない可能性があることも1つの理由という。

フランスのMOX利用の現状
原子力発電所グロス出力
(万kW)
装荷開始年
フェニックス*25.01973
サンローラン・デゾー-B195.61987
サンローラン・デゾー-B292.11988
グラブリーヌ-395.11989
グラブリーヌ-495.11989
ダンピエール-193.71990
ダンピエール-293.71993
ルブレイエ-295.11994
トリタスタン-295.51996
トリカスタン-395.51996
トリカスタン-195.51997
トリカスタン-495.51997
グラブリーヌ-195.11997
ルブレイエ-195.11997
ダンピエール-393.71998
ダンピエール-295.11998
ダンピエール-493.71998
シノン-B495.41998
シノン-B295.41999
シノン-B395.41999
シノン-B195.42000
クリュアス-192.1未定
クリュアス-295.6未定
クリュアス-392.1未定
クリュアス-492.1未定
グラブリーヌ-595.1未定
グラブリーヌ-695.1未定
ルブレイエ-395.1未定
ルブレイエ-495.1未定
* 炉型は、フェニックス(FBR)以外はすべてPWR。

EDF、仮想発電設備を入札

フランス電力公社(EDF)は9月11日、仮想発電設備(バーチャル・パワー・プラント:VPP)方式による初の電力供給権の入札をインターネット上で行った。VPP方式とは、実際の発電所を売却するのではなく、一定の設備容量を入札にかけ、落札者に電力を供給する売却方法。欧州連合(EU)は今年2月、EDFがドイツのエネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)社の株式取得を承認する条件として実施を求めていた。EDFが独占状態にあるフランス国内の電力市場を新規事業者に開放させようとするECと、民営化や発電所の売却など、急激な自由化をためらうフランスの両者が妥協した格好。

今回の入札の対象になったのは、VPPとして100万kWと、EDFが既存の電力購入契約により外部からの調達が義務付けられている20万kW分で、2日間にわたり欧米から数十社の参加を得て、完売した。落札した企業名や価格は明らかになっていない。次回は今年11月の予定で、その後も2003年まで合計600万kWが入札にかけられる。

昨年2月に始まったフランスの電力自由化は現在、年間消費電力が1600万kWh以上の顧客、約1300戸を対象としており、国内市場の約30%を占める。EDFは、この30%(全体の9%)が600万kWの売却によって開放されることになるとして、市場開放を積極的に進める姿勢を強調している。さらに、小売り自由化の範囲は2001年までに年間消費電力900万kWh以上、2003年までに200万kWhに拡大させる方針も固めている。しかし、フランスの最高裁が急速な自由化は憲法違反との見解を示しているため、今のところ自由化拡大は中断している。EU域内の電力自由化が加速する中、国外市場へ積極的に進出するEDFに対する周辺国からの批判は依然として強いようだ。

昨年1年間のフランスの総発電電力量は約5170億kWhで、このうちEDFによる発電量は90.3%にあたる4670億kWh。EDF以外の発電事業者としてはローヌ公社(CNR)、SNET社(フランス石炭公社の発電子会社)、SHEMなどがある。

EDF、COGEMAと再処理契約

フランス電力公社(EDF)は9月4日、フランス核燃料公社(COGEMA)と使用済み燃料の再処理と管理について契約を更新した。契約期間は今年10月1日から2007年12月で、契約金額は約40億ユーロ(約4400億円)にのぼる。契約の内容は、各発電所からラ・アーグ再処理工場までの使用済み燃料の輸送、再処理およびMOX燃料加工。契約期間中に、約5250トンの使用済み燃料が再処理され、平均して年間100トンのMOX燃料が供給される見通し。

[ドイツ]

ハンブルク特別市で、緑の党が敗北

9月23日に行われたドイツ北部ハンブルク特別市(州と同格)の市議会選挙で、治安強化を訴えた新党「法治国家の攻勢」が躍進を遂げ、連立与党の社会民主党(SPD)と連立を組む90年連合・緑の党が敗北した。SPDは前回並の得票率36.8%を確保し、第1党を維持したものの、緑の党は前回の得票率を5ポイント以上も下回る8.5%にとどまった。両党の合計得票が過半数に達しなかったため、政権が交代する可能性も出てきた。

一方、米国同時テロを受けて治安強化を政策に掲げた新党が、20%近い得票を得て、大きく躍進した。次期の連邦議会で政権奪回をねらうキリスト教民主同盟(CDU)は、前回から得票率を4.5ポイント落として26.2%だった。

ハンブルク市内には、運転中の原子力発電所はないが、ハンブルク電力(HEW)が本社を構えている。HEWは周辺のシュレスビッヒ・ホルシュタイン州とニーダーザクセン州にあわせて4基の原子力発電所を部分所有している。

改正原子力法案が閣議決定

ドイツ連邦政府と大手電力4社が今年6月、正式に署名した原子力に関する取決めの合意事項を盛り込んだ原子力法改正案が9月5日、閣議決定された。今後は、連邦議会(下院)での審議に移る。

[スペイン]

ENDESA、発電設備をイタリア電力に売却

スペイン最大の電力会社であるENDESAは9月12日、子会社の発電・送配電会社エレクトラ・デ・ビエスゴ(VIESGO)をイタリア電力公社(ENEL)に売却することで合意した。ENELはVIESGOの買収にあたり、18億7000万ユーロ(約2057億円)を支払うほか、同社が抱える2億7700万の負債も肩代わりする。

なお、当初の売却計画に含まれていた24万3660kW分の原子力発電設備は今回、除外されることになった。ENDESAは、原子力特有のこみ入った規制手続きを回避し、取引を迅速に進めるためと説明している。このため、売却が予定されていたサンタ・マリアデガローニャ発電所(BWR、46万6000kW)の50%にあたる24万3000kWとトリリョ発電所(PWR、106万6000kW)の1%にあたる1万660kWは従来通り、同社とイベルドローラが折半出資する合弁会社であるNUCLENOR社を通じて所有される。

売却されるVIESGOの総発電設備容量は236万5000kWで、構成比は石炭火力が40%、ガス火力が32%、水力が28%。今回の買収は、スペインと欧州連合(EU)当局の審査を経て成立する。

ENDESAは今年2月、国内第2位のイベルドローラとの巨大合併を撤回し、その後は独自の事業再編計画に着手した。50億ユーロとも見積もられる国内資産を手放し、欧州を中心とする新規市場を開拓する方針で、今後も資産を売却する意向を示している。

一方のENELも、電力市場の自由化に伴い資産売却を進めている。イタリアでは2003年以降、1社が50%以上の国内発電設備を独占できなくなったため、国内の約80%のシェアを占めるENELは余剰となる1500万kWを3つの発電子会社に分け、順次売却する計画。すでに、その内の1社のエレットロジェン(Elettorogen:550万kW)を入札にかけ、スペインのENDESAが今年7月、26億3000万ユーロ(約2893億円)で買収した。イタリアは、4基あった原子力発電所をすべて閉鎖しており、デコミッショニング事業は99年11月にENELから独立したSOGINが引き継いでいる。

EU、EDFにカンタブリコ買収を許可

欧州委員会(EC)競争総局は9月26日、ドイツのエネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)によるスペイン第4位の電力会社であるハイドロ・カンタブリコの株式取得を条件付で認める調査結果を発表した。ECは、EnBWがフランス国営電力会社であるフランス電力公社(EDF)の支配下にあることから、今回の買収は欧州全体の市場競争に影響を及ぼす可能性があるとして、スペイン政府に介入する形で今年6月から詳細調査を実施していた。

EC当局が示した条件は、スペインとフランスを結ぶ連系設備をEDFが現在の110万kWから400万kW程度まで増強すること。スペインはポルトガル以外の欧州諸国と電力をやり取りする場合、すべてピレネー山脈を越えてフランスを経由しなければならず、その間の連系容量が小さいためにスペインの電力市場が孤立しているとして、両国間の連系設備を所有するフランスに対して改善を求めたもの。

一方、スペイン政府は、カンタブリコの59%株式を取得したEnBWと34%のポルトガル電力両社への議決権の配分を保留している。同政府は、自国の公益企業の議決権を外国資本に3%以上委ねることを拒み、別途、詳細な調査を行っている。

[ロシア]

原子力発電所の単一企業体による運営へ向け政令公布

カシヤノフ首相は9月10日、原子力発電所の建設・運転を担当しているロスエネルゴアトムに国内の原子力発電関連企業20社を統合して、原子力発電単一企業体に再編する政令に署名した。しかし原子力省(MINATOM)は、関係する法的な問題を整える必要があるため、この政令の履行までには、なお2年程度かかる見通しであるとしている。

ロシアではMINATOMが直接運営しているレニングラード発電所(RBMK=軽水冷却黒鉛減速炉、100万kW 4基)以外の原子力発電所(建設中を含む)を、MINATOM傘下の統一原子力発電企業ロスエネルゴアトムが運転している(管理権はMINATOMにある)。

今回の政令に示された措置は、政府によって7月11日に承認されたエネルギー部門再編に関する基本方針の中に示されていた項目の一つで、ロスエネルゴアトムはすでに運転を行っている原子力発電所9サイト(バラコボ、ベロヤルスク、ビリビノ、カリーニン、コラ、クルスク、ノボボロネジ、スモレンスク、ボロゴドンスク:旧名ロストフで、現在1号機が試運転中)の管理権と、レニングラード発電所の運転・管理権をMINATOMから移転されることになる。これによりロスエネルゴアトムは、旧秘密都市で電力と蒸気を供給するために運転が続けられている元プルトニウム生産炉3基を除く全ての発電炉の運転・管理を行うことになる。

また、ロスエネルゴアトムはアトムエネルゴレモント(原子力発電所の機器や交換部品の生産)、アトムテックエネルゴ(原子力発電所に関する各種調査や、技術面や安全面での支援を提供)、VNIIAES(原子力発電運転研究所)などの、原子力発電所建設や運転に関係する企業群も傘下に収めることになる。

アダモフ大臣(当時)は2000年10月に、ロシアの原子力産業を原子力発電所の運営企業体と核燃料製造・供給企業体の2つに再編する計画を2001年第一四半期中に開始すると表明。2001年1月にはプーチン大統領により連邦議会下院の常任幹部会の特別ワーキング・グループが設置され、具体的な議論が行われていた。

ワーキング・グループは2月12日の初会合で、単一企業体による運営のメリットとして、全ての原子力発電所の運転を需要に合わせて調整することで、発電分野での天然ガス使用量の一定の削減効果が期待できる点や、交換部品の供給窓口を一本化することにより発電所の定期検査が合理化でき、期間も短縮できる点などを上げている。しかし、エネルギー分野での独占を取り締まる立場にある経済開発省は、この案では再編後のロスエネルゴアトムがロシア全体のエネルギー市場の23%、欧州部に限れば40%を支配することになるとして、無条件の統合には反対を表明していることから、実施のための条件はまだ整っていない。

なお、原子力産業再編のもう一つの懸案である、核燃料関連企業の統合については、すでに関係法令がプーチン大統領の署名を得ており、MINATOM傘下の燃料製造企業TVELや燃料供給企業のテクスナブエクスポートなどが統合されることが決まっている。

ボルゴドンスク(ロストフ)1号機、全出力運転を開始

建設中のボルゴドンスク(旧名:ロストフ)1号機(VVER-1000、100万kW)は9月中旬、全出力運転を開始した。試験運転を続けた後、今年中には営業運転を行う予定。

ロシアになってから最初の原子力発電所となる同機は、1月21日にはじめて燃料が装荷され、2月20日には初臨界を達成、3月30日には送電網に接続された。なお、この間に発電所近隣の町ボルゴドンスクの住民からの要望により、ロストフからボルゴドンスクへの発電所名の変更が行われた。

ボルゴドンスク1号機は電気・蒸気併給炉で、慢性的に電力不足に悩むロシア南部地域への電力供給が期待されている。(原産マンスリー2001年3月号参照)

[ロシア−カザフスタン−ウクライナ]

ウクライナ向け燃料供給で合弁会社設立

ロシアの核燃料製造企業体TVELとカザフスタンの国営原子力会社カザトムプロム、ウクライナの国営原子力会社NAEKの3社は、ウクライナの原子力発電所向けの燃料製造を行う合弁会社を設立した。カザトムプロムのザキシェフ総裁が地元メディアのカザフスタン・トゥデイに語ったところによれば、合弁会社設立に関する合意文書の署名は9月12日にキエフで行われた。出資比率は3社均等で、各33.3%となる。

合弁会社がウクライナに供給する燃料の製造に関しては、カザトムプロムが東カザフスタンのウルバ施設で燃料ペレットを、NAEKがジルコニウム被覆管をそれぞれ製造し、それらをTVELが燃料集合体に成形加工することが予定されている。


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