[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2001年9月中旬〜10月中旬)

ベルギー:首相、脱原子力法案の上程を明言

−40年間の運転期間を設定へ

ベルギーのフェルホフスタット首相は10月9日、施政方針演説の中で原子力発電所の段階的閉鎖を定める法案を国会に上程する考えを明らかにした。同首相は新しい法律の中で、無制限だった原子力発電所の運転期間を一律40年とし、40年に達した発電所から順次閉鎖させる意向。これまで原子力発電所の運転期間には期限がなく、10年ごとの安全検査が義務付けられているだけだった。

同首相の発言を受けて、緑の党のデルーズ・エネルギー大臣は年内にも法案を上程する意向を示した。詳しい法案の内容は明らかになっていないが、同大臣によるとドイツの連邦政府と電力会社が今年6月に合意したような発電電力量の設定は行わない模様。法案が実現すると、まず2014年にドール1号機 (1974年に送電開始) が閉鎖され、その後10年以内には現在、電力の約6割を供給している原子力発電所がすべて姿を消すことになる。

脱原子力法案の成立は自由党、社会党、緑の党による現3党連立政権が99年6月に発足した当初から、連立協定に盛り込まれていた。それから2年以上を経て、改めて法案の制定が明らかにされたのは、懸案だったエネルギー開発政策の検討作業が国際的なピアレビューを経て、このたび完了したため。

一連の検討作業では、原子力オプションの維持が提言されているにもかかわらず、デルーズ大臣は今回の段階的原子力発電所の閉鎖がこの提言と矛盾しないと主張し、早急に法案策定に乗り出す構えを見せている。同氏は原子力の代わりにガス火力を導入するとし、将来の電力需要次第では原子力がなくても京都議定書にそった二酸化炭素の排出削減目標を達成することも可能と見ている。

前政権が任命した16名の学識者からなるアンペール (AMPERE) と呼ばれる特別委員会は、政権交代を経て、昨年末に報告書をまとめあげた。それによると、原子力は他電源と比較した場合、安全性の向上や発電コストの削減が課題ではあるが、地球温暖化防止などの環境保全面に優れていることから、原子力オプションと技術力の維持が必要と提言された。また、運転中の原子力発電所の早期閉鎖を裏付ける科学的、技術的根拠はないとし、その後のピアレビューにあたった国際チームもこの意見に同意した。

また、経済協力開発機構/国際エネルギー機関 (OECD/IEA) やエレクトラベル社も、ベルギーにとって原子力発電は主要な電源である上、安全性、効率性ともに世界的に高い水準にあり、経済的にも優れているとして、発電所の運転期間を40年間に限定する方針に強く抗議している。エレクトラベル社によると、昨年1年間のベルギーの総発電電力量は828億kWh にのぼり、原子力はこのうちの55%にあたる458億kWh を供給、フランス、リトアニアに次ぐ世界第3位の原子力シェアを記録した。平均設備利用率は91%に達し、運転実績も世界的に高い水準にある。

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