[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2001年9月中旬〜10月中旬)

[台 湾]

第四発電所の運転が遅れる見通し

台湾の経済部 (省) は10月30日、今年4月に建設継続が決定した第四 (龍門) 原子力発電所 (ABWR、135万kW 2基) の営業運転開始を2年延期して、2006年7月以降とする方針を明らかにした。

当初の予定では、燃料の初装荷は2003年8月16日頃で、営業運転開始は2004年7月16日となっていた。行政院 (内閣) が第四発電所の建設再開を発表した時点で、経済部は初号機の営業運転開始を2005年7月と目標を定めたが、建設プロジェクトの主契約者は現実的に見積ると2006年8月になると期日を示した。一方、発注元の台湾電力公司はこれに不満を表明、2006年4月30日までの運転開始を希望していた。

経済部は、段階では経済の低迷で電力需要の伸びは鈍化しており、既存の発電設備でも十分に賄うことが可能であるとの見解を示している。なお、第四発電所の建設工事の進捗率は2001年9月末時点で34.85%。

[インド−ロシア]

クダンクラム建設プロジェクト土木工事がスタート

インド南部のタミル・ナド州クダンクラムに建設が計画されている、インド初の大型原子力発電所 (VVER=ロシア製 PWR、100万kW) 2基の建設プロジェクトは10月7日、土木工事がスタートした。土木工事の段階では、堅い岩盤の掘削作業が行われ、本格的な建設工事は来年初頭になる見込み。

同発電所の1号機は2007年に、2号機は9ヵ月遅れてそれぞれ運転開始の見込み。インド南部のアンドラ・プラデシュ、カルナタカ、ケララ、タミル・ナドの4つの州に電力を供給する予定。

同プロジェクトは1988年以来、インドと当時のソ連の間で交渉が進められていたが、ソ連が崩壊したために1992年に中断した。その後、交渉は再開され、最終的にインド、ロシア両国は、(1) ロシアから VVER (ロシア製 PWR) を供給、(2) 建設費の54%はロシアからの低金利の長期貸付ローンを充当 − の協力条件で合意した。

なお、同プロジェクトでは約1万名のインド人労働者と300〜350名のロシア人技術者が従事することになる。

[米 国]

NRC、5基の原子力発電所の出力アップを承認

米国原子力規制委員会 (NRC) は、ビーバーバレー1・2号機、コマンチェピーク1・2号機、シアロンハリスの各原子力発電所の出力アップ (Power Uprate) を相次いで承認した。

ビーバーバレー1・2号機は、これまでの出力 (設備容量) からそれぞれ1.4% (約1万2000kW) 上がり82万2000kW になる。同発電所を所有するファーストエナジー・ニュークリア・オペレーティング社は今年1月18日、NRC に対して出力アップを申請。NRC は、原子炉蒸気発生設備 (NSSS) や計装制御系統、電気系統、事故評価、放射線影響、運転・技術仕様の変更などに焦点をあてて検討を行ってきていたが、発電所機器のわずかな変更と原子炉の運転条件のさらに正確な測定を可能にする技術的な改良によって2基の原子炉の出力を安全に上げることができると判断した。NRC の承認を受け、両機の出力アップは今秋にも実施される。

TXU エレクトリック社のコマンチェピーク発電所は1号機が1.4%、2号機が0.4%の出力アップを承認された。出力アップは、2号機については直ちに、1号機も来春には行われることになっている。ノースカロライナ州にあるシアロンハリス発電所は、約4.5% (5万1000kW) の出力アップを認められた。今年12月に出力アップが行われる予定の同発電所では、新型燃料の採用と蒸気発生器の交換によって出力アップをが可能になった。(9月下旬〜10月中旬)

炭疽菌対策に放射線照射

炭疽菌事件で米国民の間に不安が広がっているなか、米国郵政公社は手紙や小包中の炭疽菌の殺菌に放射線照射を用いていることを明らかにした。同公社によると、ホワイトハウス宛ての郵便物はオハイオ州の施設に送られて放射線照射が行われている。放射線照射は、食品中の病原体の駆除や医療器具の滅菌など幅広い分野で使われている1960年代に商業化された技術で、郵便物を開封しないで炭疽菌を殺菌できるという特徴を持っている。ポッター郵政公社総裁は、郵便物の安全を確保するために照射技術にかなりの投資をしていく考えであることを表明した。また AP 電は、複数の企業がフロリダの照射サービス会社との間で郵便物の放射線照射について協議していると報じている。(10月中旬)

USEC、改良型の遠心分離技術開発へ

世界最大のウラン濃縮業者である米国の USEC 社は10月2日、遠心分離法を含めた先進的なウラン濃縮技術の開発を今後も進めていくとともに、オーストラリアのサイレックス・システム社が開発中 (基本パテントは USEC 社が保有) の第三世代の技術であるレーザー同位体分離法 (SILEX) 濃縮技術の開発も継続していくとの方針を明らかにした。USEC 社によると、過去2年間に開発された遠心分離法濃縮技術をベースに、新しい素材と製造工程によって、高い運転実績と信頼性が期待できる。

米国では、1980年代半ばまでの数十年間にわたって遠心分離技術の調査が行われたが、次世代型ウラン濃縮技術である原子レーザー法ウラン濃縮 (AVLIS) の技術開発プログラムの推進が決まったため、1985年に一旦キャンセルされた。しかしながら、USEC 社は1999年6月、経営戦略上の理由から、次世代型ウラン濃縮技術である AVLIS の技術開発を中断すると発表した。

その後、USEC 社は2000年9月、DOE のオークリッジ国立研究所 (ORNL) で進められていた遠心分離技術の開発で蓄積された技術や経験を共有することを内容とした「研究開発に関する協力協定」を DOE との間で結んだため、遠心分離技術が米国のウラン濃縮分野において再び脚光を浴びることとなった。

[英 国]

政府、セラフィールド MOX 工場の操業を認可

英国政府は10月3日、原子燃料会社 (BNFL) のセラフィールド MOX 加工工場 (SMP) の本格操業を承認した。SMP は、同じセラフィールド・サイト内にある酸化物燃料再処理工場 (THORP) で抽出されたウランとプルトニウムを主原料として、MOX 燃料を製造する。

環境庁は98年10月、「SMP による環境影響は無視できる程度で、フル操業を認可すべき」との評価案を公表。これを受け政府は99年6月、「SMP の本格操業は妥当と評価できるものの、最終的な判断は同施設の経済性評価や MOX 燃料市場に関する審査の結果次第」との見解を示していた。今年7月には、外部調査機関であるアーサー・D・リトル社 (ADL) が「SMP は十分な経済性を備えている」との報告書を提出。また、環境・食品・地方問題省 (DEFRA) と保健省は公聴会等を開催して SMP の操業認可の是非を検討していた。

BNFL はすでに、SMP の経済性を評価する基準に照らして、「損益分岐点」とされる40%の販売量を確保しており、ADL はこれが99%に達する確証も十分あるとの見方を示している。SMP の本格操業により、300人以上の直接雇用が創出されるほか、西カンブリア地方全体の関連雇用は1800人に達するとみられている。

BE と AECL、CANDU 炉の設計認証取得に向け作業開始

ブリティッシュ・エナジー (BE) 社は10月18日、CAMDU 炉の英国内での設計認証取得に向け、カナダ原子力公社 (AECL) と共同作業を開始したことを明らかにした。

BE 社は9月11日、今後25年以内に10基程度の原子力発電所を新設することを念頭に政府に要望書を提出した。この中で同社は新規原子炉として、低コストで建設期間が短いウェスチングハウス社の AP1000 型炉、カナダの CANDU-NG 型炉などの炉型を候補として挙げていた。

なお BE 社は、同社が79.8%の株式を所有するブルース・パワー社 (カナダ) を通じて、カナダのブルースA発電所 (CANDU×4基、各90万4000kW)、ブルースB発電所 (CANDU×4基、各84万kW) を所有している。

[ドイツ]

ベルリン市、社民党が第1党に

財政問題などをめぐりキリスト教民主同盟 (CDU) と社会民主党 (SPD) の連立政権が崩壊し、繰り上げ実施となったベルリン市 (州と同格) 議会選挙が10月21日に行われ、シュレーダー首相率いる SPD が第1党に躍進した。SPDの得票率は前回 (99年) より7ポイント増の29.7%。CDU は前回の得票数40.8%から今回は23.7%と17ポイントも落とし、歴史的敗北をきっした。今回の選挙戦は750億マルク (約4200億円) とされる同市の負債が大きな争点となったため、コール前政権の政治献金問題を抱える CDU にとっては不利な展開となった。このほか、旧東独共産政権の流れをくむ民主社会主義党 (PDS) が22.6%と票を伸ばし、CDU と並ぶ勢力となった。自由民主党 (FDP) は9.9%、連邦レベルで SPD と連立を組む緑の党は9.1%だった。第1党の SPD は、緑の党と FDP との連立を協議中。ベルリン市には運転中の原子力施設はないが、首都での選挙動向は来年秋に控えた連邦議会 (下院) 選挙にも影響を及ぼしかねないと見られている。

フィリップスブルク2号機、計画外停止へ

エネルギー・バーデン・ビュルテンベルク (EnBW) 社は10月7日、フィリップスブルク2号機 (PWR、145万8000kW) で今年8月下旬に起こった冷却系の事故原因を詳しく調べるため、同機の運転を一時停止した。同機は8月下旬、4台ある冷却系のホウ酸塩水貯蔵タンクのうち3台でホウ酸が規定濃度を下回ったが、ホウ素を加えた上でその後2週間にわたり運転を続けた。事故は放射線漏れなどの周辺への影響はまったくなかった。

9月末にこの報告を受けたトリッティン環境大臣は EnBW 社の管理体制を問題視し、同社幹部から事情を聴取するなど、連邦政府を巻き込む大きな問題に発展しつつある。同大臣は同機の運転再開は全ての原因究明が前提であると述べており、同機の運転がいつごろ再開されるかの見通しはたっていない。調査が進むにつれ、原子炉安全協会 (GRS) はこの事故を国際原子力事象評価尺度 (INES) のレベル2に引き上げた。

[スイス]

ニトバルデン州、LLW・ILW 処分場建設を承認

ニトバルデン州議会は10月4日、スイス放射性廃棄物管理協同組合 (NAGRA) に対してベレンベルクに低中レベル放射性廃棄物 (LLW・ILW) 処分のための地下研究所を建設することを承認した。今後は、研究所建設の是非を問う州民投票を早ければ来年にも実施する見通し。研究所の建設と運転は、専任企業であるベレンベルク放射性廃棄物管理協同組合 (GNW) が担当する。

ベレンベルクは93年に NAGRA によって、処分場建設候補地として選定された。95年に行われた州民投票の結果、反対が僅差で上回り、建設計画は中断した。このため、連邦政府は専門委員会 (EKRA) に処分方法の検討を依頼し、深地層に回収可能な状態で貯蔵するという新しい概念を導入する方針とした。また、研究施設と処分場を一体に進めていた建設計画を見直し、当面の建設は研究施設のみとし、段階的な意思決定プロセスを経て最終処分場の開設をめざすように改めた。こうした見直しが効を奏して、今回の議会承認が得られたものと見られている。

[オランダ]

ボルセラ原子力発電所の早期閉鎖が再び却下

ボルセラ原子力発電所 (PWR、48万1000kW) を所有・運転する EPZ 社は9月20日、オランダの裁判所がこのほど、早期閉鎖を求める政府の訴えを再び退けたことを明らかにした。裁判所は、政府と EPZ 社がボルセラ発電所を2003年に閉鎖すると決定した際の証拠が不十分としている。裁判所は昨年2月にも EPZ 社の従業員の訴えを受けて、早期閉鎖はオランダの原子力法に違法するとし、運転継続を支持する裁定を下している。

今回の裁判は、両者が94年12月に同機の早期閉鎖について交わしたとされる取決めが争点となった。当時の国家電力計画 (1994年〜2000年) では、同機を2003年に閉鎖することが組み入れられているが、政府と EPZ 社は合意文書を取り交わしたわけではない。この点について、政府は EPZ 社が自発的に合意したものと主張する一方、EPZ 側はこれを否定し、物的証拠がないと反論した。政府は今年6月、自らの訴えを裏付ける証拠を法廷に示すことができなかった。今回の裁定を不服とする政府は、11月にも追加証拠を提出し、再度裁判に訴える構えを見せている。

ボルセラは国内で唯一運転中の原子力発電所で、73年に運転を開始した独シーメンス社製 PWR。同機の運転期間は当初、運転30年目となる2003年末までの予定だったが、同機を所有していた当時の SEP 社 (現在は EPZ 社) は安全系統を改良し運転を延長する計画を打ち出し、94年8月には政府の認可を取得した。しかし、政権が原子力推進派のキリスト教民主勢力から原子力に批判的な労働党に代わり、同11月の議会で同機を2003年末に閉鎖することが僅差で可決された。労働党連立政権はその後の総選挙でも再選され、運転期間をめぐる両者の対立は続いている。

ボルセラ発電所は昨年、37億kWh を発電し国内の電力需要の約4%を供給、稼働率は90%を超える。EPZ 社は、電力市場の自由化の中で同機の競争力を高く評価しており、最短でも40年間の設計寿命いっぱいの2013年まで運転を継続させる意向を固めている。それ以降の運転継続については、2010年に株主と協議の上、合意を得たいとしている。

[スウェーデン]

オスカーシャム1号機のバックフィット作業、最終段階へ

オスカーシャム1号機 (BWR、46万5000kW) では、10年かけて実施されてきたバックフィット作業が年末に最終段階に入る。タービン交換、計装制御系交換、制御室のレイアウト変更等が中心。

バックフィット作業が完了すると、同機はさらに20年の運転継続が可能になると見られている。(10月22日)

[フィンランド]

最終処分場建設の岩盤試験を1年延長

フィンランドの放射線・原子力安全センター (STUK) は、最終処分場建設予定地であるユーラヨキの岩盤試験を1年延長する意向を明らかにした。これにより2010年に予定されていた POSIVA 社 (最終処分実施主体) の処分場建設認可の取得も、当初スケジュールよりも1年遅れることになるが、STUK、POSIVA 社ともに「2020年に予定している処分場の操業開始に影響はない」との認識を示している。

POSIVA 社は99年5月26日、オルキルオト原子力発電所近郊のユーラヨキ地点を建設候補地として選定。STUK もこれを支持し、政府は2000年12月21日、建設を承認する原則決定を下した。今年5月18日には、議会が159対3 (37 が棄権) で政府の原則決定を承認している。(10月5日)

[スロバキア]

ボフニチェ1、2号機の閉鎖問題をめぐる

欧州議会のG.アダム議員 (英国) とP-N.カウッピ議員 (フィンランド) が、政治決定されたスロバキアのボフニチェ1、2号機 (PWR、出力各43万kW) の早期閉鎖に異論を唱えている。

両議員は今年9月にボフニチェ1、2号機の調査報告書を作成。「VVER-440 型炉の第1世代である同1、2号機は、適切なバックフィット作業により EU 圏内の同世代炉に比肩しうる」として、両機の閉鎖をスロバキアの EU 加盟の前提条件とした欧州委員会の姿勢に疑問を投げかけた。なお、両議員が検討の際の参考とした西欧原子力規制当局連合 (WENRA) が2000年11月にとりまとめた報告書では、「両機は改良を加えれば西側の同年代のモデルに比肩しうる」との見解が示されていた。

スロバキア政府はすでに99年9月、ボフニチェ1、2号機を2006年、2008年に閉鎖することで EU と合意している。両議員は「理論上は閉鎖決定の撤回は難しい」としながらも、「代替電源がなんら確保されていない」と指摘。将来のオプションに、(1) 現在建設が凍結されているモホフチェ3、4号機の完成、(2) ガス火力発電所の建設、(3) 電力輸入 − 等が含まれるとの見方を示した。(10月22日)

[ロシア]

外国用使用済み燃料貯蔵施設の建設が承認

ロシア原子力省 (MINATOM) は10月初旬、外国からの使用済み燃料の受入れに使用する近代的な使用済み燃料貯蔵施設をクラスノヤルスクに建設することを正式に承認したことを明らかにした。この決定は、外国の使用済み燃料の中間貯蔵、再処理受託を目的に、ロシア国内へ外国からの使用済み燃料の受入れを可能にするための関連法案がプーチン大統領の署名を経て成立したのを受けて行われた。

ただし、実際の建設工事の着工は、最初の使用済み燃料再処理契約が外国との間で締結されるまでは行われないとしており、MINATOM では、今後2〜3年内を想定している。

1992年に制定された環境保護法第50条は、放射性廃棄物や放射性物質の中間貯蔵および最終処分を目的とした海外から国内への持ち込みを禁じていたため、ロシアでは外国の使用済み燃料の商業再処理ができなかった。MINATOM は99年秋、環境保護法第50条の改正を含む、外国の使用済み燃料の国内での商業中間貯蔵・再処理受託の実施に関連する法案を議会に提出、法案は上下両議会での審議・可決に続く大統領の署名を経て今年7月11日に成立した。

今回の法改正により、使用済み燃料はその他の廃棄物と法的に区別されることになり、国際的な安全基準が満たされていることを条件に、新たに設置された特別委員会の承認のもとで、再処理ならびに中間貯蔵を目的として国内へ持ち込むことが可能になった。

MINATOM は法案の審議と並行して、クラスノヤルスク鉱業化学コンビナートに海外からの使用済み燃料の受入れを視野に入れた設備容量3万トンの乾式中間貯蔵施設の建設を検討。また、再処理施設については、受入れた使用済み燃料の中間貯蔵により得られた収入を財源として整備を行うとしており、チェリャビンスクの生産合同「マヤク」にある第1再処理工場 (RT-1) の改造、または資金難から工事が中断されているクラスノヤルスクの第2再処理工場 (RT-2) の完成によって対応することが考えられている。

[ウクライナ]

建設中の発電所完成でロシアと協力

ウクライナとロシアは10月上旬、2000年末に閉鎖されたチェルノブイリ発電所の代替電源として、ウクライナで建設中のフメルニツキ2号機 (VVER-1000=ロシア型 PWR、100万kW) とロブノ4号機 (同) の原子力発電所2基を、両国の資金と協力により完成させることに合意した。

これはウクライナのキナク首相とロシアのカシヤノフ首相が会談後の記者会見で明らかにしたもので、同時にウクライナ政府は2基の完成に係る工事には両国の企業を独占的に採用することも決定した。合意では、ロシアが機器や機材、そして融資を提供するとしているが、詳細は両国間で調整中。

欧州委員会 (EC) は2000年9月、ウクライナに対してチェルノブイリ発電所閉鎖の代替電源となる2基の原子力発電所完成 (K2/R4 プロジェクト) に対し、ユーラトムからの融資を中心にして、欧州復興開発銀行 (EBRD) からの融資などを加えて対応することを承認。EBRD は2億1500万米ドルの拠出を表明したが、一方で融資条件としてウクライナに対し、(1) チェルノブイリ発電所の永久閉鎖の確約、(2) G7 と EU による技術支援とウクライナ国内における政府機関から独立した原子力規制機関の設置、(3) K2/R4 プロジェクトに対する他の国際金融機関の資金的関与、(4) 国際通貨基金 (IMF) の同国に対する拡大信用供与 (EFF) の延長 − の4項目を提示していた。

これに対し、ウクライナのクチマ大統領は2000年12月5日、政府機関から独立した原子力規制組織となるウクライナ国家原子力規制委員会の設置を命じる大統領令を公布。また、同15日にはチェルノブイリ発電所を永久閉鎖した。一方、最後まで残っていた IMF の EFF 延長が今年9月下旬に決定され、これを受けてウクライナ政府は融資の条件が全て整ったとして、直ちに EBRD に対して K2/R4 プロジェクトへの融資の実施を求める声明を発表した。

しかし、これに対して EBRD 側は融資の実施を留保した。このためキナク首相は、チェルノブイリ発電所の代替電源を可能な限り早急に確保することが最も重要であるとし、EBRD や EU などのこの件に関する取組みに疑念を表明。同プロジェクトの早期完成のため、G7 と EU 主導による国際協力の枠組を一方的に放棄して、ロシアとの2国間協力に切りかえることを明らかにした。

ウクライナとロシアは、今後2〜3年をかけて2基の原子力発電所を完成させるとしており、それに必要な資金は約6億米ドルと見積もっている。なお、ユーラトムと EBRD による融資を中心とした計画では、同プロジェクトの総経費は14億8000万米ドルとされ、このうちロシアが1億2370万米ドル、ウクライナが5000万米ドルを拠出することになっている。

エネルゴアトム社の新 CEO にネダシコフスキー氏が就任

ウクライナ内閣は9月26日の閣議で、国営の原子力発電所運転会社であるエネルゴアトム社の新社長兼最高経営責任者 (CEO) にY.ネダシコフスキイ氏を指名した。

エネルゴアトム社では2001年4月まで、同氏とN.ニグマチュリン氏が共同で CEO を務めており、4月以降はニグマチュリン氏が CEO、ネダシコフスキー氏は社長兼最高執行責任者 (COO) の職にあった。


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