[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2001年10月中旬〜11月中旬)

米国:原子力発電設備減少に歯止め

−EIA が長期エネルギー予測

米国エネルギー情報局 (EIA) は11月14日、米国では原子力発電設備の減少傾向に歯止めがかかったとする2002年度の年次エネルギー見通し「アニュアル・エナジー・アウトルック2002」 (Annual Energy Outlook 2002: AEO2002) を公表した。それによると、他の電源と単純に経済性だけを比較した場合、2020年までに新規の原子力発電所が建設されるとはみていないものの、2020年までに閉鎖される原子力発電設備容量を1000万kW と予測、前年度見通し (AEO2001) の2600万kW から大きく下方修正した。EIA は、原子力発電所の運転を継続する場合と新規に発電所 (主として天然ガス火力) を建設する場合のコストを再評価した結果、原子力発電設備の減少に歯止めがかかったと説明している。

AEO2002 では、米国の電力需要は2000年から2020年にかけて年率1.8%の伸びを示すと予測している。伸び率は、前年度予測と同じだが、2020年時点の電力需要は前年度予測より2%高くなっている。電力需要が最も急速に伸びると予測されているのは、コンピュータや事務機器、家庭や商業用の装置・機器など。供給面では、天然ガスと石炭、再生可能エネルギーを用いた電源の割合が高まるとみている。具体的には、天然ガス火力のシェアが2000年の16%から2020年に32%に上昇すると予測している。これに対し、石炭火力のシェアは、52%から46%に低下するとみている。再生可能エネルギーを用いた発電所は、電力市場での競争が激しくなるためコスト的に不利になることから、大きな伸びは見込めないと指摘している。

平均電力価格について AEO2002 報告は、2000年の6.9セント/kWh が2020年には6.5セント/kWh に低下すると予測している。前年度の見通しでは6.1セント/kWh まで下がるとの予測がたてられていたが、天然ガス価格の高騰や電力需要の増加が見込まれているため、大幅な価格低下はないと結論している。AEO2002 報告は、電気事業の再編による運転・保守コストや管理コストの削減が電力価格の低下に寄与するため2006年までに6.3セント/kWh まで下がるものの、天然ガス価格が上昇に転じるため、電力価格も上昇すると説明している。

天然ガスの井戸元価格は、2000年の1000立法フィートあたり3.6ドルが2001年にはほぼ4ドルに上昇したあと2002年には大きく低下し、2020年時点で3.26ドルに達するとみているが、これは前年度見通しの3.2ドルと比べるとわずかながら上がっている。2020年時点の天然ガス需要は前年度予測より少ない1兆立方フィートだが、天然ガス資源の発見に関して楽観的な要素がないため価格が上昇する予測結果となった。天然ガス需要は、年率で平均2%増加し、2000年の22兆8000億立方メートルが2020年には33兆8000億立方メートルに達すると予測されている。これは、発電部門での需要が急速に伸びるとみられているため。

石炭の山元価格は、2000年のトンあたり16.45ドルが2020年には12.79ドルまで低下すると予測されている。石炭の消費量は、年率1.2%の伸びを示し、2000年の10億8100万トンが2020年には13億6500万トンに増加するとみている。2020年の石炭消費量は前年度見通しより6800万トン増えているが、これは発電部門での伸びが予想されるため。

世界の平均石油価格は2000年のバーレルあたり27.72ドルが2001年には22.48ドルに低下するとみている。しかし、2002年以降は上昇に転じ2020年にはバーレルあたり24.68ドルに達すると予測している。前年度見通しでは平均石油価格が22.92ドルまで低下すると予測していたが、石油需要が世界的に大きく伸びるとみられるため上方修正した。なお世界の石油需要は、2000年の日量7600万バーレルが2020年には1億1890万バーレルに増加すると見込んでいる。石油需要がとくに増加するとみているのは、米国のほか、環太平洋地域や中南米地域の発展途上国。米国の石油需要は、輸送部門での需要増加に引っ張られる形で、2020年まで年率1.5%の伸びを示すと予測している。ちなみに2020年時点の石油需要の70%超を輸送部門が占めるとみられている。

エネルギーの利用にともなう二酸化炭素の排出量は、年率1.5%の割合で増加し、2000年の15億6200万トン (炭素換算、以下同) が2020年には20億8800万トンに達すると予測している。これは、前年度の見通しと比べると、商業部門や輸送部門でのエネルギー需要の拡大、石炭火力発電所の設備の拡大が予想されるため4700万トン増えている。一方で、前年度見通しと比べると原子力発電所の閉鎖規模が縮小に向かうと予測されているため、化石燃料の使用拡大を相殺する形になっている。今後の傾向として AEO2002 報告は、化石燃料の使用量が増加する中で、原子力発電量が低下することに加えて再生可能エネルギーの導入もそれほど進まないため、全エネルギー消費量の伸び以上に二酸化炭素の排出量が増加すると指摘している。

[終わり]

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