[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2001年10月中旬〜11月中旬)

[インド]

ロシアとの協力でさらに原発2基の建設を検討

インドはロシアとの間でクダンクラムに原子力発電所2基 (VVER、各100万kW) を建設するプロジェクトの最終覚書に署名した。また両国は、クダンクラム・サイトに原子力発電所をさらに2基増設するプロジェクトの検討にも入った。

なお、ロシアが提案したクダンクラム建設プロジェクトでは、80億〜90億ドルをかけて全部で6基の原子力発電所を建設することが盛り込まれている。(11月)

[米 国]

ナインマイルポイント1、2号機の買収が完了

コンステレーション・エナジー・グループ (CEG) の子会社であるコンステレーション・ニュークリア (CN) 社はこのほど、ナイアガラ・モホーク (NiMo) 社が所有するナインマイルポイント1号機 (BWR、63万5000kW) の100%と、NiMo 社やニューヨーク州電力・ガス庁、ロチェスター・ガス&エレクトリック社、セントラルハドソン・ガス&エレクトリック社等4社が共同所有する2号機 (BWR、116万9000kW) の計82%分の買収を完了したことを発表した。

ニューヨーク州公益事業委員会 (PSC) が10月下旬、CN 社による同発電所の買収を承認したことで、関係当局のすべての承認が得られたため実質的に買収完了となった。

ナインマイルポイント発電所はニューヨーク州スクリバにあり、1号機は NiMo 社が100%所有、また2号機は NiMo 社 (41%)、ニューヨーク州電力・ガス庁 (18%)、ロチェスター・ガス&エレクトリック社 (14%)、セントラルハドソン・ガス&エレクトリック社 (9%)、ロングアイランド電力庁 (18%) が共同所有している。

CN 社は2000年12月にナインマイルポイント1、2号機を NiMo 社などの4社から8億1500万ドルで買収することで原則合意していたが、売買契約で指定されていた2001年7月1日までに譲渡が完了しなかったため違約金が発生、最終的に買収価格は燃料費を含め7億6200万ドルに下落した。

NRC、デュアン・アーノルド原発の出力増強を承認

原子力規制委員会 (NRC) は11月7日、ニュークリア・マネージメント社 (NMC) が2000年11月に申請していたデュアン・アーノルド原子力発電所 (BWR、56万5000kW) の出力を15.3% (8万kW) 増強することを承認した。ただ、同発電所の運転者である NMC と筆頭共同所有者であるアライアント・エナジー社は当面、8%の増強にとどめる方針。出力増強に備え今春の燃料停止期間中に高圧タービンなどを交換していた。同発電所はアイオワ州リンに位置し、アライアント・エナジー社 (70%)、セントラル・アイオワ・パワー社 (20%)、コーン・ベルト・パワー社 (10%) などの3社が共同所有している。

NMC は1999年2月、米中西部を供給基盤とするアライアント・エナジー社、ノザンステーツ・パワー (NSP) 社、ウィスコンシン・パブリック・サービス (WPS) 社、ウィスコンシン・エレクトリック・パワー (WEPCO) 社などの4電力会社が共同で原子力発電所の運転管理を行うことを目的に設立された。

NMC は現在、キウォーニ発電所 (PWR、56万3000kW)、ポイントビーチ1、2号機 (PWR、各50万9000kW)、モンティセロ発電所 (BWR、56万9000kW)、プレーリーアイランド1、2号機 (PWR、各56万kW)、デュアン・アーノルド発電所 (BWR、56万5000kW) −の7基の原子力発電所を運転管理している。

証券取引委員会、ファースト・エナジー社と GPU 社の合併を承認

証券取引委員会 (SEC) が10月29日にファースト・エナジー (FE) 社による GPU 社の吸収・合併を承認したことを受け、新しく生まれ変わった FE 社は11月7日より業務を開始した。新生 FE 社は顧客数が430万人で、国内6番目の投資家所有の電力会社となった。新会社の取締役会は FE 社から10名、GPU 社から6名の計16名で構成される。

FE 社と GPU 社の両取締役会は2000年8月、FE 社が GPU 社を買収することで合意。それによると、FE 社が45億ドルで GPU 社を買収し、GPU 社の74億ドルの負債と優先株も引き継ぐことになっていた。

なお、旧 FE 社は1997年11月にオハイオ・エジソン社とセンテリオール・エナジー社が合併してできた米国12位の電力持株会社。オハイオ州中北部とペンシルベニア州西部を供給基盤とし、デービスベッセ原子力発電所 (PWR、91万5000kW)、ペリー原子力発電所 (BWR、125万kW)、ビーバーバレー1、2号機 (PWR、各89万1000kW) などの4基を含め1163万kW の発電設備と7500マイルの送電網を有する。

一方、GPU 社は1999年12月にスリーマイルアイランド1号機 (PWR、87万2000kW)、2000年7月にオイスタークリーク原子力発電所 (BWR、65万kW) をそれぞれアメージェン社へ売却している。

電力コンソーシアム、ウラン濃縮工場建設を NRC に申請へ

米国最大の原子力発電事業者のエクセロン社やデューク社が中心となって構成された電力コンソーシアムは、来年早々にも米原子力規制委員会 (NRC) に対しウラン濃縮工場の建設認可を申請する見通しであると発表した。

電力コンソーシアムは、欧州ウラン濃縮業者のウレンコ社 (英国、ドイツ、オランダが共同出資) と協力してガス遠心技術の濃縮工場建設を協議してきており、NRC への申請に先立ち、暫定的にニュークリア&エナジー・セキュリティー・パートナーシップ社と呼ばれる新会社を設立する予定である。

また、エクセロン社とデューク社は10月25日、ブッシュ大統領へ送った書簡で、民営化した米濃縮会社 (USEC) が米国においてウラン濃縮産業を独占している体制に懸念を示した。両社は、USEC が高濃縮ウランの処分に関する米国政府とロシア政府の間における協定 (HEU 協定) の米国側の代理店をしている点に触れ、民営化した USEC の経営状態が先行き不透明であるため、代理店に相応しくないとの考えを示している。 (10月)

[カナダ]

安全当局、ピッカリングAの運転再開を許可

カナダ原子力安全委員会 (CNSC) は11月5日、オンタリオ・パワー・ジェネレーション (OPG) 社のピッカリングA発電所 (1〜4号機 各54.2万kW、CANDU 1997年より休止中) の運転再開を条件付きで認めた。新しい運転認可の有効期限は2003年6月30日。

CNSC は、運転再開の条件として、CNSC が指定した施設の改良とアップグレードを完了することを OPG 社に要求している。また、OPG 社は同発電所の各原子炉の再起動や出力上昇の各段階で、CNSC の承認を得る必要があるほか、各原子炉の運転再開に向けた準備についても半年毎に CNSC へ報告することが義務付けられている。

ピッカリングA発電所は OPG 社の前身であるオンタリオ州営のオンタリオ・ハイドロ (OH) 社が運転していたが、経済性の悪化を理由に1〜4号機の運転が1997年に休止された。その後、99年4月に発効したオンタリオ州エネルギー競争法により OH 社が分割され、同社の発電部門を引き継いで OPG 社が発足した。OPG 社は同発電所の運転再開を決定し、カナダ原子力管理委員会 (AECB、2000年5月31日に CNSC が発足する以前の規制組織) に運転再開認可の発給を要請。AECB はカナダ環境アセスメント法 (CEAA) に従い、運転再開に関する環境アセスメントを開始した。そして、AECB から業務を引き継いだ CNSC は2001年2月16日、ピッカリングA発電所の運転再開は所定の環境影響緩和措置をとれば問題ないとする結論を公表した。

環境アセスメントが終了したことから、CNSC は原子力安全管理法に従い、運転認可発給手続きを開始。6月28日、8月9日、10月3日の3回の公開ヒアリングを経て、CNSC は OPG 社のピッカリングA発電所の運転者としての適格性を確認するとともに、施設の改良やアップグレードといった条件が満たされれば、運転を再開しても環境や公衆の安全や健康への影響はなく、国家安全保障の維持やカナダの国際社会における義務の遂行も可能であるとの結論に達した。

カナダでは、ピッカリングA発電所のほか、ブルースA発電所3、4号機 (各90.4万kW、CANDU 1998年より休止中) でも運転再開が計画されている。両機の運転再開をめざしているのは英国のブリティッシュ・エナジー (BE) 社のカナダ法人である BE カナダ社を筆頭に、カナダのカメコ社、ブルース発電所労組がブルース発電所 (A発電所、B発電所で構成) の運転のために設立したブルース・パワー (BP) 社。BP 社は、両発電所を運転するにあたって、今年5月に CNSC から正式に運転認可を取得。これを受け、発電所所有者である OPG 社とのリース契約が成立した。BP 社は、すでにブルースB発電所 (5〜8号機 各84.0万kW、CANDU) は運転しているが、運転を休止していたA発電所のうち、3、4号機の運転再開を決めている。 (原産マンスリー2001年3月号、2001年6月号参照)

BE 社、ブルース発電所からの利益が9,000万カナダドルに

BE 社によると、同社の2001会計年度下半期 (2001年4〜9月) のブルース発電所の運転による利益 (出資分) は、予想を上回る9,000万カナダドルであった。なお、次の2002会計年度上半期は、定期点検が予定されているため、利益の計上はない見込み。 (2001年11月下旬)

[フランス]

原子力が選挙戦の争点に

来年4月に大統領選挙、同6月に国民議会選挙をひかえ、脱原子力色を強めている緑の党と他の与党との乖離が表面化しはじめ、原子力政策が選挙戦の争点になる可能性が出てきた。最大野党である共和国連合 (RPR) のレペルティエ (Lepeltier) 党首は11月6日、国民議会で開催された原子力に関するセミナーで現連立政権に対して原子力政策を一本化するよう要求した。「原子力:段階的廃止か復活か」と題する同セミナーは、エネルギー問題に造詣が深いバタイユ議員 (社会党) が企画したもの。

セミナーの冒頭、ピエレ産業大臣 (社会党) は原子力発電を国の主要電源として存続すると指摘。シュバルツァンベルグ研究大臣 (急進左派) は、今後もエネルギー政策において必要不可欠な役割を担うと原子力を支持する見解を示した。これに対し、前環境大臣である緑の党のボワネ党首は、あと1世代のうちに原子力を廃止できると真っ向から原子力に反対する考えを表明した。こうした発言を受け、RPR のレペルティエ党首は、ピエレ、シュバルツァンベルグ両大臣に対して原子力を支持する見解が個人的な考えなのか、政府の公式発表なのかと発言、原子力政策に関する与党間の対立に揺さぶりをかけた。

前回の総選挙で初入閣した緑の党は、来春の選挙で社会党との連立を維持するにあたり脱原子力政策をエスカレートさせる構えを見せている。具体的には、新規原子力発電所の建設中止、再処理の中止、MOX 燃料加工の廃止といったこれまでの方針に加え、20年以内の段階的原子力廃止や高レベル放射性廃棄物地層処分計画の中止を主張する模様。これに対して社会党がどこまで歩み寄るかは不透明な状況だ。

また、開発中の欧州加圧水型炉 (EPR) は、選挙後の新体制に委ねられた形になっている。今回のセミナーでも一部議員から EPR 着工を促す発言があったものの、主要メンバーは具体的な見通しを明らかにしなかった。フラマトム ANP 社は初号機を2003年に着工したい考えを示唆している。

[ドイツ]

シーメンス社、ハナウ MOX 加工施設を解体撤去へ

シーメンス社は11月はじめ、ハナウ MOX 燃料加工施設をロシアに輸出する計画を断念し、解体撤去することを明らかにした。当初の計画では、95年に建設が中止され未使用のままだった同施設の主要機器をロシアに輸出し、核兵器解体から生じる余剰プルトニウムを用いて MOX 燃料に加工にする国際プロジェクトに利用する予定だった。すでに輸出申請も昨年8月、ドイツ政府に受理されていた。しかし、今年6月にジェノバで開催されたG8会合で、プロジェクトに対する資金援助計画がまとまらなかった上、反原子力政策をかかげるドイツ政府からも資金を得られないため、同社は民間の立場で国際的な核兵器解体プロジェクトに関与することは難しいと判断した。

シーメンス社は94年、旧ハナウ MOX 燃料加工施設に対して反原子力政策をかかげる地元ヘッセン州 (社会民主党と緑の党の連立) から操業継続の許可を得られず、同施設を閉鎖した。その翌年、この新 MOX 燃料施設についても同州政府下で操業認可を得る可能性は低いと判断し、9割がた完成していた施設の操業を断念した。

今回の決定に伴い、シーメンス社は同施設の解体撤去に着手することになった。撤去後の跡地はハナウ技術公園として商業利用される予定。

なお、シーメンス社の原子力事業部門は今年1月、フランスのフラマトム社と合併し、フラマトム ANP 社となったが、ハナウの解体撤去はシーメンス社が引き続き、責任を負っている。

[スウェーデン]

最終処分場候補地3地点で詳細な地質調査へ

スウェーデン環境省は11月1日、使用済み燃料最終処分場候補地3地点での詳細な地質調査実施を許可した。

この3地点はオスカーシャム、エスタマル、ティエルプで、スウェーデン核燃料廃棄物管理会社 (SKB) が2000年11月16日、同国の放射性廃棄物管理プログラムの一環として、使用済み燃料の最終処分場建設候補地6地点の中から選定していた。

今回の環境省の許可を受け、SKB は地質調査実施を正式に3地点の各自治体に申請した。各自治体は12月から2002年2月の間にも地質調査の受け入れを決定する。1地点でも調査受け入れが表明された時点で、SKB は地質調査を実施に移す考えだ。

これら3地点は、いずれも花崗岩質だが異なる特性を有している。SKB は、ボーリング調査等の詳細な地質調査に5〜6年かかるとみており、2007年までには最終的に1カ所を選定したいとしている。

SKB は処分場の選定にあたって技術的な実行可能性だけでなく、地元住民からの支持を重視しており、これまでにも住民投票で否決された建設予定地 (ストゥールマン、マロ) を候補地から外した経緯がある。

[ハンガリー]

パクシュ発電所、20年間の運転期間延長計画を発表

パクシュ原子力発電所の当局者は11月、20年間の運転期間延長計画を明らかにした。ハンガリー唯一の原子力発電所であるパクシュ発電所は、VVER-440 (ロシア型 PWR) ×4基で構成。VVER-440 の第2世代炉である V-213 型が採用されており、1〜4号機ともに1980年代に営業運転を開始した。出力は各44万kW であったが、出力増強を行い、1号機は47万kW、2〜4号機は46万kW となっている。

4機とも当初の運転期間は30年に設定されていたが、運転期間を延長することがパクシュ発電所の課題となっていた。今回発表された運転期間延長計画は、2000年に実施された技術・経済性報告書に基づいている。技術報告書は、「パクシュ発電所は運転期間を50年に設定しても安全上支障ない」と結論。また経済性報告書は、「パクシュ発電所は国内の発電所の中で最も発電コストが低い」とし、ハンガリーで2003年1月1日より実施される電力市場の部分自由化において、パクシュ発電所が十分に競争力を持つと結論している。

なお、同発電所では計装制御系の改良作業が現在も進められているが、欧州の原子力規制当局からなる西欧原子力規制当局連合 (WENRA) は「パクシュ発電所の安全レベルは、西側と同等」との結論を出している。

[ロシア]

ボルゴドンスク3、4号機の建設再開を決定

ロシアの国営原子力発電会社ロスエネルゴアトムのパブルシキン副社長は11月16日の記者会見で、ボルゴドンスク (旧:ロストフ) 発電所3、4号機の建設の再開を決定したことを明らかにした。

ボルゴドンスク発電所はソ連時代の1979年11月に政府が出力100万kW の VVER-1000 型炉 (ロシア型軽水炉) 4基の建設を決定、相次いで建設がスタートした。90年8月時点では、1号機の進捗率が95%、2号機が30%、3号機は基礎が完成、4号機は掘削が完了していたが、翌9月に住民の反対運動から建設作業が中断された。

ロシア政府は95年、設計の一部変更により安全性を向上させた上で、1、2号機の建設を再開することを決定したが、原子力省 (MINATOM) は資金難から、進捗率の高い1号機の完成に資金を集中した。その結果、1号機は2001年1月の燃料初装荷を経て、2月には初臨界を達成し、送電網に接続。12月に正式に運転を開始する見込みとなっている。また、建設再開が先送りされていた2号機も2000年11月、2001年中に建設を再開し、5年間で完成させることが決定された。 (原産マンスリー2000年12月号、2001年3月号参照)

今後10年間で10基が営業運転入り

MINATOM のリャベフ第一副大臣は11月14日の下院での答弁で、今後10年間に1年に1基の割合で、合計10基の原子力発電所の営業運転を開始する方針を明らかにした。

計画通り進めば、新規に運転を開始する10基により同国の総発電設備容量は15%、総発電電力量は50%それぞれ増加し、10年後にはソ連当時の原子力発電電力量に匹敵することになる。また、同副大臣は、同じ時期にロシアは海外でも、イラン、インド、中国で6基の原子力発電所を完成させるとしている。

MINATOM の計画によると、ロシアでは今後、原子力発電電力量は火力発電や水力発電の倍にあたる、年5%の割合で増加し、2020年には原子力発電のシェアは37%になる見通し。

ロシアで運転中の原子力発電所は2000年末現在で29基・合計出力2,155万6,000kW で、2000年の原子力発電電力量は1,196億5,000万kW、総発電電力量に占める原子力のシェアは14.95%であった。


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