[諸外国における原子力発電開発の動向]
話題を追って (2001年10月中旬〜11月中旬)

欧州議会、原子力存続を決議

欧州議会は11月15日、欧州連合 (EU) 域内のエネルギーの安定供給に関するグリーンペーパーについて決議文を採択した。グリーンペーパーは昨年11月に欧州委員会 (EC) が採択していたもので、議会審議を経て正式に承認されたことになる。決議文によると、EU 域内のエネルギーの安定供給を確保するとともに、京都議定書に基づき2010年までに温室効果ガスの8%削減を進めるため、EU 各国に原子力や再生可能エネルギーなどの炭酸ガスを排出しないエネルギー源への移行を推進するよう求めている。具体的には、EU 域内の総発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合 (98年時点で15%) を2010年に22%とする目標を掲げるとともに、原子力発電を現状のレベルで維持し、クリーンな石炭火力発電所を建設することが必要不可欠としている。また、原子力発電所の安全運転やデコミッショニング、放射性廃棄物管理に関する経験や技術が劣化しないよう、人材やノウハウを保持するため必要な対策をとることを勧告している。

放射性廃棄物問題については、一層の研究と努力が必要であるとの見方を示した上で、各国に対して早急な対応を求めるとともに、処分方策に対して公衆から信頼が得られるよう努力を払うことを勧告している。また、このための選択肢を EC が提示すべきとの考えも表明している。

議会の承認に対して、欧州原子力産業会議 (FORATOM) は、エネルギー利用に関する理性的な考えや常識が勝利を収めた結果と受け止めている。また、エネルギーの供給確保や温室効果ガス削減における原子力の役割が欧州議会で明確に再認識されたことに一定の評価を与えている。

今回の決議により、原子力は EU の選択肢のひとつに認められたが、各国の原子力政策の違いから積極的な原子力開発が支持されるまでには至らなかった。EC は、グリーンペーパーの中でエネルギー効率、再生可能エネルギーと同様に原子力の開発を最重要視していたが、欧州議会の決議文では、原子力開発については現状のレベルを維持するとの姿勢にとどまっている。また、原子力発電所の新規建設の可能性については、地球規模での気候変動の急激な悪化など、原子力の復活が必要とされる場合に備え、開発体制を整えるよう勧告している。

EU 15カ国のうち、運転中の原子力発電所をもつ国はフランス (57基)、ドイツ (19基)、英国 (33基)、スウェーデン (11基)、スペイン (9基)、ベルギー (7基)、フィンランド (4基)、オランダ (1基) の8カ国。原子力発電は EU 域内の総発電電力量のうち、約35%を供給している。

[終わり]

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