[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2001年11月中旬〜12月中旬)

[中 国]

嶺澳1号機、試運転を開始

広東省にある嶺澳1号機(PWR、98万5,000kW)では12月8日、燃料の初装荷が行われた後、試運転に入った。2002年7月に運転開始の予定。

嶺澳サイトに2基の原子力発電所を建設するプロジェクトは第9次5ヵ年計画(1996〜2000年)に盛り込まれ、1号機は1997年5月、2号機は同12月にそれぞれ着工した。2基合わせた建設費は40億ドル。建設計画によると、同サイトでは、第1期工事の2基のほかに、さらに2基の原子力発電所を建設する第2期工事も予定されている。

中国では現在、大亜湾1、2号機、秦山の3基の原子力発電所が運転中で、発電設備容量は計226万8,000kW。また、第9次五ヵ年計画(1996年−2000年)で組み込まれていた浙江省・秦山U、同秦山V、広東省・嶺澳、江蘇省・田湾の4サイト8基の原子力発電所が建設中で、全てが完成する2005年末時点では原子力発電設備容量が計909万8,000kWとなる。

[南アフリカ−中国]

南アフリカと中国、2002年に原子力協力協定締結へ

南アフリカ政府は、2002年の第1四半期にも中国との間で原子力協力協定を締結する見通しであることを明らかにした。

中国を訪問していた南アフリカのムベキ大統領は12月10日、中国の江沢民・国家主席との会談の中で、あらゆる分野における両国の協力関係を持続的に発展させることで合意した。

[米 国]

フォートカルホーン発電所、運転認可を20年延長へ

オマハ公営電力(OPPD)の取締役会は2001年12月13日、ネブラスカ州にあるフォートカルホーン原子力発電所(PWR、50万2,000kW)の運転認可の20年延長を2002年1月に米原子力規制委員会(NRC)へ申請することを決定した。NRCからの承認は2003年中頃の見通し。

フォートカルホーン発電所は1973年7月に営業運転を開始し、2013年までの運転が許可されているが、運転認可が更新されれば2033年までの運転が可能。

OPPDはフォートカルホーンの運転期間を60年間に延ばすにあたって1350万ドルがかかるとみている。すでに申請のための準備費用などを含めて680万ドルを支出しているが、OPPDが所有する他の発電所の発電コストと比べると3分の1であるため運転認可延長を決めたもの。ちなみに、OPPDは、同発電所の代わりに他電源のガス火力発電所などを新規に建設すると6億〜10億ドルの費用がかかると試算している。

FFTFの閉鎖が正式に決まる

米国エネルギー省(DOE)は2001年12月19日、ワシントン州リッチランド近郊のハンフォードにある高速増殖炉試験炉FFTF(Fast Flux Test Facility)の閉鎖を正式に発表した。8ヵ月に及ぶ検討の結果、運転を再開することは現実的ではないと判断されたもの。

FFTFは、核燃料や材料、原子炉安全技術を試験することなどを目的として1982年に運転を開始したが、原子力研究開発が縮小される中で92年に運転を停止し待機状態に置かれていた。その後、原子力研究に対するニーズが高まったのを受け運転再開が浮上。エイブラハムDOE長官は2001年4月、前政権によるFFTF閉鎖の決定を保留し、一般からの意見を求めるなどして運転再開の可能性について検討することを命じた。

DOEの要請を受け、アドバンス・ニュークリア&メディカル・システムズ社はFFTFを医療と研究用のアイソトープの製造に使用すると提案した。しかし、DOE内に設置された検討チームは、法的な問題に加えて、使用済み燃料の処分や最終的なデコミッショニングにともなうコスト、アイソトープの販路の確保などについてから疑問を示したため、運転再開は断念される形になった。

原子力基盤・教育の改善に向け提案公募

米国エネルギー省(DOE)原子力科学技術局は2001年12月20日、原子力基盤・教育イノベーション(Innovations in Nuclear Infrastructure and Education:INIE)プログラムの提案を公募すると発表した。INIEプログラムは、大学にある研究・訓練炉の利用法を新たに考えるとともに、大学間または各大学とDOE傘下の国立研究所、産業界との間の協力関係を構築しなおすことによって大学の原子力工学課程を充実・強化することをめざしたもの。提案の締め切りは2002年3月11日で、応募資格は(国内に)原子炉施設を所有する大学、あるいは政府が所有する研究炉を利用している大学に限定される。助成対象者に選ばれると1件あたり年間10〜200万jが支給される。最長で4年間までの延長が可能。2002年夏までには、助成対象者が決まる。

米国では、1975年には全部で47の大学に原子力工学課程があったが、2001年までに24に減少した。また、6大学で原子力工学課程が存亡の危機に立たされている。原子力工学を専攻する学生数も79年には学部で1800名、修士課程で900名、博士課程で600名を数えたが、99年時点で、学部550名、修士250名、博士190名まで落ち込んだ。大学の研究炉も1979年には全部で63基あったものが、現在は27基しかない。

DOEは、原子力技術者の需要が、学部、修士、博士課程でそれぞれ供給の3倍に達しており、このままいくと2004年までには4倍に拡大するとみている。こうした事態を憂慮したDOEは、将来のエネルギー安全保障と国家安全保障に欠かせない原子力技術者を要請することを目的として、政府として原子力教育の整備・拡充に乗り出した。

[英 国]

原子力債務の管理機関を設立へ

P.ヒューイット貿易産業相は11月28日、過去の原子力プログラムから生じた公営企業の債務の整理を目的に、債務管理機関(LMA)の設立を発表した。LMAは主に原子燃料会社(BNFL)と原子力公社(UKAEA)の債務と資産の管理責任を引き継ぐ。

BNFLは同日、LMAの設立を歓迎する声明を発表。H.コラム会長は、「原子力施設を安全かつ効率的に運営するという重要な業務から、資産・債務の管理業務を分離することで、BNFLはより競争力のある体質になる」とコメントした。

SMP、プルトニウムを用いたアクティブ試験に着手

原子燃料会社(BNFL)のセラフィールドMOX燃料加工工場(SMP)は12月20日、前日の保健安全執行部(HSE)による認可の発給を受け、プルトニウムを用いたアクティブ試験に着手した。

SMPは、同じセラフィールド・サイト内にある酸化物燃料再処理工場(THORP)で抽出されたウランとプルトニウムを主原料として、MOX燃料を製造する。

[ドイツ]

経済相、脱原子力と温暖化防止の矛盾を指摘

連邦政府のミュラー経済相は11月25日、政府のエネルギー政策報告書を公表。運転中の19基の原子力発電所を全廃した上で温室効果ガス削減目標を達成しようとすると、天然ガスの輸入拡大と国内炭の生産縮小を余儀なくされ、ドイツ経済は大きな打撃をこうむると警告した。

同相はすべての原子力発電所を2020年までに閉鎖することを前提に、同年における温室効果ガスの排出削減量を90年と比べて16%減と40%減とする2つのシナリオを設定し、それぞれについてドイツ経済やエネルギー情勢に与える影響を予測した。ドイツはすでに90年から99年までの間に約15%の温室効果ガス削減を達成していることもあり、前者は現実的な目標ととらえられているのに対して、後者は現政権が発足する前に連邦政府の調査委員会が設定した野心的とも言える目標値。

報告書によると、現在の政策や市場動向をふまえると、16%の削減目標はドイツ経済にそれほどの影響を及ぼすこともなく達成が可能という。ただ、目標達成のためには、エネルギー生産業者に対してより高い環境税を課す必要が出てくる。また、1次エネルギー消費量に占める天然ガスの割合が21%から28%に増加、エネルギー輸入依存度も60%以上に上昇することが予測されている。

40%の削減目標を達成するためには16%削減の場合よりもさらに5000億マルク(約28兆円)の財政負担が強いられることになる。これは、1次エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合を3%から10%、ガスの割合を21%から41%にそれぞれ大幅に拡大する一方、石炭火力を24%から11%に減少させなければならないため。同相は、こうしたエネルギー政策はドイツ経済を失速させるだけでなく、国のエネルギー安全保障をも危うくすると警鐘を鳴らしている。

ミュラー大臣(無所属)は、2000年6月に署名された原子力に関する取決めの際、連邦政府と民間企業との橋渡し的役割を演じた。今回の報告書は、3カ月前ほどに完成していたが、内容をめぐり同大臣が率いる連邦経済省(BMWi)と緑の党主導の連邦環境・原子炉安全省(BMU)との間で意見が対立したため、公表が遅れていた。トリッティン環境相は今回の発表後も、40%の削減目標は達成可能であり、雇用の拡大を促すと反論している。

ドイツで運転中の19基の原子力発電所は、1次エネルギーの約1割、総発電電力量の約3分の1を供給している。経済省によると、原子力発電は90年代に平均して年間1億トンの二酸化炭酸ガス排出抑制に貢献している。発電所が2020年までに全廃されると、炭酸ガス排出量は少なくとも年間7400万トン増加するとみられている。

改正原子力法案、下院を通過

2000年6月の連邦政府と大手電力による署名を受けて、改正作業が進んでいた原子力法案が12月14日、連邦議会(下院)で可決された。同法案は今後、参議院(上院)での審議を経て、来春までに成立する見通し。同法案には、運転中の原子力発電所に発電電力量の上限を設けることや、2005年7月以降は使用済み燃料を直接処分する方針などが盛り込まれている。

これに対して、最大野党で原子力推進派であるキリスト教民主同盟(CDU)は脱原子力がドイツ経済に与える影響は大きいとして反対姿勢を強めており、2002年9月の総選挙で政権を奪回した際には同法を改正する方針を固めている。

一方、ドイツ原子力産業会議は、新法により原子力発電所の運転継続が一定の枠内で保証されることから、法案の下院通過を歓迎するコメントを発表した。また新法成立後も、政府との合意事項が遵守されるように見守る意向を示している。しかし、原子力発電が電力の安定供給や地球温暖化防止に貢献しているにもかかわらず全廃しようとする連邦政府の考えは過ちであるとの姿勢は変えていない。同会議は、連邦政府に対して今後ともドイツの原子力工学技術を維持し、原子力産業を活性化するための方策を強く求めている。さらに、すべての電源を対象に電力供給の安定性や経済性、温暖化防止などを総合的に評価し、包括的なエネルギー政策を策定することが必要との考えを表明している。

フィリップスブルク2号機、運転再開へ

トリッティン環境大臣が12月17日、エネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)社所有のフィリップスブルク2号機(PWR、145万8000kW)の運転再開を承認したのを受け、同日、約70日ぶりに再起動した。同機は2000年10月8日、非常用冷却タンク内のホウ素濃度が規定値を外れた原因を調査するため、運転を停止していた。放射線漏れなど周辺への影響はまったくなかったが、事態を重く見た原子炉安全協会(GRS)は国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル2と判定していた。

EnBW社は停止後、作業が運転手引書に違反していたことを認め、責任者とされる幹部数名を解雇した上、同社が所有する全5基について冷却システムの管理状況を詳細に調査し、再発防止策をとった。こうしたなか、同機が立地するバーデン・ビュルテンベルク州政府の規制当局や原子力発電所の検査・監督機関であるGRSや技術検査協会(TUeV)は同発電所のスタッフや運転管理の現状を評価し、同機の運転停止をさらに長引かせる理由はないと結論付けた。この報告を受け、トリッティン環境相も同機の運転再開を認めたもの。

[スウェーデン]

エスタマル、最終処分場の地質調査受け入れを決定

エスタマル市は12月4日、フォルスマルク地区での最終処分場の地質調査受け入れを正式に決めた。

環境省が11月1日、使用済み燃料最終処分場候補地3地点(オスカーシャム、エスタマル、ティエルプ)での詳細な地質調査実施を許可したのを受け、スウェーデン核燃料廃棄物管理会社(SKB)が地質調査実施を3地点の各自治体に正式に申請していた。今回、エスタマルが他の2地点に先駆けて調査受け入れを表明したことで、SKBは2002年初頭にも地質調査を開始する。

エスタマルでの実行可能性調査は2000年に完了しており、「フォルスマルク近郊の岩盤は安全な深地層処分場の建設に適している可能性がある」との結果が出ている。SKBは今後5〜6年かけて実施する地質調査では、ボーリング調査や関連調査を行い、さらに詳細な地質データを収集する予定である。

地質調査の受け入れは、最終処分場自体の受け入れを意味するものではない。SKBは他の2地点からの地質調査受け入れの回答を待ち、各地点でも同様な地質調査を行うことになる。残る2つの自治体も2002年2月までには結論を出す見込みであり、SKBは2007年までには最終的に1地点を選定したいとしている。

議会、バーセベック2号機の閉鎖期限を撤回

スウェーデン議会は12月11日、当初2002年7月1日とされていたバーセベック2号機の閉鎖期限を撤回した。バーセベック2号機の閉鎖をどうするかについては、2002年9月に実施される総選挙以降に決定される見通し。

同機の閉鎖期限は、これまで何度も変更されてきた。

「76%が原子力発電の存続を望んでいる」との世論調査結果

スウェーデンで実施された最新の世論調査によると、76%が原子力発電の存続を望んでいることが明らかになった。

この調査はスウェーデンの世論調査機関TEMOが11月、スウェーデン原子力安全訓練センター(KSU)の委託で1000人を対象に実施したもの。それによると、「規制当局が11基の原子力発電所が安全であるとしても段階的に閉鎖する」と回答した人は19%にとどまった。これに対し、37%が「安全性および経済性に問題がない限り運転を継続する」、28%が「運転を継続し、運転寿命に到達したら新規炉で代替する」、11%が「原子力発電開発を推進し、必要とあれば新規炉を建設する」と回答。76%の人が原子力発電を支持している現状が浮き彫りになった。

またスウェーデン議会が掲げる環境対策での最重要課題については、75%が「CO2排出量の削減」、12%が「水力発電所建設の阻止」と回答。「原子力発電所の段階的閉鎖」と回答した人の割合はわずか10%だった。(2001年12月20日)

[チェコ]

チェコとオーストリア、テメリン発電所をめぐる論争に終止符

チェコとオーストリアは、ウィーン近郊のメルク寺院で1年近く続けていた建設中のテメリン発電所をめぐる「メルク協議」に11月29日に合意した。チェコはオーストリアに十分配慮して国内原子力発電所での高い安全性の確保に努力することを約束する一方、オーストリアはチェコのEU加盟協議におけるエネルギー分野の交渉で協力することを約束した。

今回の合意はEUのG.フェアホイゲンEU拡大担当委員の立会いの下、チェコのM.ゼマン首相とオーストリアのW.シュッセル首相との間で成立したもので、両国は互いに独自のエネルギー政策を選択する権利を持つことを尊重しつつ、原子力発電について両国間の信頼のために徹底的に対話することの意義を確認した。オーストリアが提起していたテメリン発電所の安全性に関する問題点29件のうち、すでに9件は解決済みとなっていたが、メルク協議では10件について両国間の理解のギャップが狭められ、残る10件についても「2国間協定の枠内で対処する」ことになった。

テメリン発電所(VVER-1000型炉×2基、出力各97万2000kW)では、1号機が2000年12月に送電を開始し、現在は試運転中。2号機は2002年11月の営業運転開始を目指している。

[リトアニア]

イグナリナ発電所の閉鎖にウクライナの専門家が協力へ

ウクライナのキナク首相とリトアニアのバリオニス外相は会談の中で、イグナリナ発電所(RBMK-1500、150万kW 2基)の閉鎖作業へのウクライナの協力について協議を行った。

これは、2000年末に閉鎖され現在廃止措置が進められているウクライナのチェルノブイリ発電所(RBMK-1000、100万kW 4基)が、イグナリナ発電所と同じ旧ソ連製の軽水冷却黒鉛型炉(RBMK)であることから、チェルノブイリの廃止措置の専門家を支援のためにイグナリナへ派遣するというもの。会談では正式合意には至らなかったものの、前向きに取り組むことが確認された。

この件についてはすでに両国の当局者が調整に動いており、2001年初頭にはチェルノブイリ発電所の専門家と国際チェルノブイリセンター(ICC)のスタッフで構成されたウクライナ側の調査団が、イグナリナ発電所の廃止措置とその関連分野での協力の可能性を探るためにイグナリナ発電所を訪問。その後、ICCのスラブチ国際研究所(SLIRT)とイグナリナ発電所との間で、廃止措置の基本作業に関するエンジニアリングおよび技術面での継続的な支援についての了解覚書への署名が行われている。

旧ソ連型炉であるイグナリナ発電所については、欧州連合(EU)が安全性に対して強い懸念を示しており、閉鎖への支援ならびにリトアニアのEU加盟交渉の開始と引き替えに、同国に対して1号機を2005年、2号機を2009年までに閉鎖することを要求。これに対し、セイマス(リトアニア共和国議会)は2000年5月、1号機を2005年に閉鎖し、2号機については閉鎖時期に関する議論を2004年以降に開始することを承認した。(2001年12月中旬)

新首相、イグナリナ発電所の2009年の閉鎖に理解

今年7月3日に議会の承認を受け就任したブラザウスカス首相は、英国の新駐リトアニア大使との会合の場で、EUが求めているイグナリナ発電所の2009年の閉鎖に理解を示した。しかし、同首相は同時に、総発電電力量の74%を供給しているイグナリナ発電所の閉鎖は、失業者の増加や電気料金の値上がりなど、リトアニアに数多くの問題をもたらすとした上で、リトアニアだけでは同発電所の廃止措置を行うことができないとも語った。

2000年10月に就任したパクサス前首相は、同年5月に議会が承認したイグナリナ発電所閉鎖承認の撤回を主張するとともに、さらに新しい原子力発電所を建設して電力を近隣諸国に輸出する意向を示していた。(2001年12月上旬)

[ロシア]

新しい原子力地域熱供給プラント建設を計画

ロシア原子力省(MINATOM)とロシア北部白海沿岸のアルハンゲリ州政府はこのほど、同地域内に原子力地域熱供給プラント(NDHP)を建設する考えであることを明らかにした。近く合意に達する見通し。

計画では州内のリカシハ村の近郊に約7億米ドルをかけてNDHPを建設し、2010年に運転を開始するとしている。立地点は、アルハンゲリ州の主要都市であるアルハンゲリスク、セベロドビンスク、ノボドビンスクの3市に熱を供給するのに最適な場所として選ばれた。

MINATOMのルミャンツェフ大臣はこの計画を、連邦政府が1998年7月に正式決定した「1998〜2005年のロシアにおける原子力利用発展プログラムと2010年までの展望」と題する長期計画の一部と位置付けるとともに、国内すべての原子力発電所のエネルギー料金に含まれている設備投資金を充当するとしている。

アルハンゲリ州内の平均電気料金は他の州と比べて割高になっており、1kWh当たり0.92ルーブル(約3米セント)。また電力会社は、経年化した機器のメンテナンスのために近く料金の30〜40%の値上げを計画している。こうしたことから、アルハンゲリ州政府では、将来の地域経済の発展のためには、原子力開発は不可欠であるとの立場をとっている。

なお、同地域では今年3月、MINATOMが地域代表との会合の場で、海上浮揚式原子力発電所をセベロドビンスク市に建設する計画を明らかにしている。(原産マンスリー2001年4/5月号参照)

[ウクライナ]

欧州復興開発銀行の2原発への融資が白紙に

欧州復興開発銀行(EBRD)はウクライナで建設中のフメルニツキ2号機(VVER-1000=ロシア型PWR、100万kW)とロブノ4号機(同)の原子力発電所2基を完成させるプロジェクト(K2R4プロジェクト)への融資を無期限に延期した。

G7とウクライナは1995年12月、チェルノブイリ発電所を2000年までに閉鎖する見返りにG7が代替電源確保のための資金援助を行うとする了解覚書に調印。ウクライナは代替電源として、建設中のフメルニツキ2号機とロブノ4号機の完成を主張、G7側もこれに大筋で同意した。

ウクライナのクチマ大統領は2000年6月、チェルノブイリ原子力発電所を12月15日に閉鎖することを正式に発表。これを受けて欧州委員会(EC)は9月、K2R4プロジェクトに対し、ユーラトムからの融資を中心にして、それに欧州復興開発銀行(EBRD)による融資等を加えて対応するとした総額14億8,000万米ドルからなる融資計画を承認した。

EBRDは同年12月7日、ウクライナに対し、@チェルノブイリ発電所の永久閉鎖の確約、AG7とEUによる技術支援とウクライナ国内における政府機関から独立した原子力規制機関の設置、BK2R4プロジェクトに対する他の国際金融機関の融資、C国際通貨基金(IMF)の同国に対する拡大信用供与(EFF)の延長――の4項目を1年以内に満たすことを条件に、2億1,500万米ドルの融資を決定した。

EBRDは2000年11月29日の理事会で、K2R4プロジェクトへの融資の承認を正式に決定する予定であった。しかし、この前日にウクライナのキナク首相がEBRDのジャン・ルミエール総裁に宛てた手紙で、融資にあたりEBRDが上記4項目とは別に要求している細かな条件の内、@電力の卸売価格と小売価格のそれぞれ24%、30%の値上げ、A原子力発電所のデコミッショニング基金の設立、BEBRDの要求に沿った法律の改正――の3点について、ウクライナ当局がさらなる協議を求めたため、EBRDでは状況が整った時点で新しい議論をウクライナ側と開始することとして、融資の決定を見送った。

この結果、EBRDが期限としていた12月6日までに融資承認の決定が出来なくなり、条件や金額等の融資に関する合意事項はすべて無効となった。EBRDでは、K2R4プロジェクトに対する融資計画自体はキャンセルされたわけではないが、協議を再開しても、一から議論をはじめる必要があるとしている。

EBRDによるK2R4プロジェクトへの融資金額自体は小さいが、同プロジェクトのコーディネータ役を務めていることもあり、ユーラトムを含む他の融資機関も、EBRDの決定に歩調を合わせている。このため、K2R4プロジェクトへのG7とEUの融資計画全体が白紙に戻されることになった。

ロシアとの2国間協力で完成めざす

ウクライナ当局によれば、ウクライナのドビナ第一副首相とロアシのクリシテンコ副首相は12月中旬、ウクライナで開催された2国間経済協議の場で、両国の協力によりフメルニツキ2号機とロブノ4号機を完成させるための合意文章に調印した。調印式典にはウクライナのクチマ大統領とロシアのプーチン大統領も出席。プーチン大統領は、ロシア側はすでに必要な予算措置を2002年度予算に計上していることを明らかにしており、両国では2002年春の作業開始を目指している。なお、クチマ大統領は、この合意は、先に白紙となったK2R4プロジェクトに関するEBRDとの今後の協議を除外するものではないとしている。

両国はすでに10月上旬、両発電所を両国の資金と協力により完成させることにて原則合意しているが、ウクライナとEBRDとの協議が白紙に戻ったことを受けて、12月5日には、ロシアのカシヤノフ首相とウクライナのキナク首相が、モスクワで開催された貿易、経済、科学技術分野での強力に関する政府間協議の後に開かれた記者会見の場で、合意に向けた準備作業が進展していることを改めて確認している。

会見の席でキナク首相は、EBRDの融資条件を受け入れられなかった理由として、国内および経済的な問題を挙げ、とくに電気料金の値上げを問題視した。

両国では、2基の発電所完成に必要な資金を、EBRDの見積の3分の1にあたる約5億米ドルと見積もっている。(原産マンスリー2001年11月号参照)

稼働率の上昇見込む

ウクライナ国家原子力規制委員会のヒリシチェンコ委員長は12月4日、2000年末のチェルノブイリ発電所3号機(RBMK-1000、100万kW)の運転終了に伴う電力供給の損失分を、2001年は既存の原子力発電所の好調な運転によりほぼカバーすることができたと、報道陣に語った。

同委員長によると、2000年の原子力発電所の平均稼働率は68.2%であったが、2001年は72.6%に上昇する見込みで、これにより2001年の原子力発電電力量は前年より3ポイントの増加となる。この電力量の増加分はチェルノブイリ3号機の年間の発電電力量にほぼ匹敵する。


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