[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2001年12月中旬〜2002年1月中旬)

フィンランド:政府、新規原子力発電所を原則承認

−5月にも議会で決定か

フィンランド政府は1月17日、全閣僚18名 (うち2名は棄権) で表決を行った結果、同国5基目となる新規原子力発電所の建設を10対6で承認した。民間電力会社テオリスーデン・ボイマ社 (TVO) が2000年11月15日に行った申し入れに応えたもの。2001年2月には、同国の規制当局であるフィンランド放射線・原子力安全局 (STUK) が「新規炉の建設計画は概ね安全基準を満たしている」と事前評価。建設予定地点となる既存のロビーサ発電所とオルキルオト発電所の各地元自治体も翌3月、相次いで増設支持を表明した。

同国では原子力法によって原子力発電所の建設許認可手続きがいくつかのステップに分かれており、終了まで通常では数年がかかる。まず政府が新規立地の是非を検討し、承認された場合、さらに議会で審議が行われる。そして議会 (一院制) の承認を受けた時点で初めて、TVO は新規発電所の建設許可を申請することが出来る。議会は早ければ今年5月にも結論を出すとみられている。

フィンランドでは1993年2月にも政府が新規原子力発電所の立地を承認したものの、同年9月に議会が107対90の僅差で否決した経緯がある。しかし、世論の動向を踏まえ、当時とは政治的状況が大きく変化しているとする見方が一般的。最近の世論調査では新規立地に賛成する割合が上昇傾向にあり、今年1月にフィンランドの有力紙が実施した世論調査でも、40%が新規立地に賛成し、反対と答えた33%を上回っている。91年末に実施された世論調査では賛成28%、反対49%だった。

議会が建設を承認した場合、既存のロビーサ発電所あるいはオルキルオト発電所サイトのどちらかに建設されることになっている。炉型は BWR にするか PWR にするかまだ決まっていない。出力は100〜160万kW、建設コストは100〜150億フィンランド・マルカ (17〜25億ユーロ、14〜22億米ドル) と見積もられている。

TVO は新規立地を申し入れた理由として、(1) 株主 (フィンランド国内の電力会社や産業界等) が必要とする追加電源の確保、(2) 原子力は再生可能エネルギーとともに2008年〜2012年に CO2 排出量を1990年レベルにまで削減するとした京都議定書の遵守に不可欠 −の2点を挙げている。

TVO の社長兼最高経営責任者M.パーボラ氏は、新規原子力発電所は追加電源としての役目に加え、高経年化により閉鎖する火力発電所の代替としての役目を持つだけでなく、長期的には安定した電力価格の維持に貢献すると新規立地の意義を強調。また、原子力発電は発電コストが低く、自由化された北欧電力市場に最適な電源であると説明している。T.ラヤラ TVO 理事会議長は「遅くとも2010年代までに競争力のある追加電源が必要」と述べ、新規の原子力発電所を建設することにより将来にわたって多様な電源オプションを確保することが可能となり、電力価格の安定化に寄与するとの考えを示した。

なお TVO で技術部長を務めるA.ラスタス氏は、新規原子力発電所の設計には最新の技術を応用した複数の選択肢があるとした上で、約4年で完成できるような安全性と経済性に優れた単純化された設計の炉型を採用する方針を明らかにしている。

フィンランドでは電力の約55% (2001年は53%) を産業部門が消費しているが、2000年5月にフィンランドエネルギー産業連盟 (Finergy) が発表したレポートでは、今後10〜15年で産業部門の電力消費は60%に上昇すると予測されている。また、産業部門のエネルギー効率はこれ以上の向上が見込めないことから、2015年までに同国の電力消費量は970億kWh/年 (現在は約800億kWh/年) に達し、380万kW の追加設備が必要になると結論している。一方、北欧全体の電力消費量は、99年の3800億kWh が2015年には4200億kWh に増加するため、700〜800万kW の追加設備容量が必要になると見込んでいる。こうした状況を踏まえ、Finergy は「環境保全や経済的な観点からも新規立地の推進は妥当であり、京都議定書の目標達成には、将来さらに6基目の原子力発電所が必要となる可能性も否定できない」との見解を示していた。

フィンランドは実質的な電力輸入国 (2001年は北欧諸国やロシアからネット値で100億kWh の電力を輸入)。北欧は水力発電が電力供給の主力で、電力量や電力価格が降雨量に左右されやすい構造になっている。北欧全体でみると、降雨量の多い年と少ない年では740億kWh の差が出るケースさえある。現在は北欧の電力市場は供給過剰だが、Finergy は通常の降雨量を想定すると、2005年前後に供給不足に転ずると予測している。またフィンランドの天然ガス依存は今後も増大するとみられているが、パイプラインはロシアからしかなく、安定供給を不安視する向きも多い。

Finergy によると、フィンランドの2001年の原子力発電電力量は225億kWh (前年比5億2800万kWh増) で、総発電電力量に占める原子力の割合は約30%となった。

発電所別では、オルキルオト発電所 (BWR、87万kW×2基、TVO所有) が142億kWh、ロビーサ発電所 (PWR、51万kW×2基、Fortum社所有) が81億kWh。稼働率はオルキルオト1号機が97.6%、同2号機が95.1%、ロビーサ1号機が92.1%、同2号機が89.0%だった。

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