[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2002年3月中旬〜5月中旬)

フィンランド:議会、新規原子力発電所建設を可決

−欧州に新たなる潮流

新規原子力発電所建設に関する政府の原則決定を受け、議会(1院制)は5月24日、採決を行い、107対92で新規建設を承認した。議会の承認が得られたことから、民間電力会社であるテオリスーデン・ボイマ社(TVO)は、新規発電所の建設認可を政府に申請する。同国5基目となる原子力発電所は、既存のロビーサ発電所あるいはオルキルオト発電所のどちらかに建設される。

TVOは、年内にも出力が100〜160万kWの炉型を選定するための競争入札を行う予定である。その後TVOは建設サイトを最終的に決め、政府に建設認可を申請する。順調に進めば2005年にも建設認可が発給されて着工し、2010年にも運転開始する見通しである。建設費は17億〜25億ユーロ(約1990億円〜2930億円)とみられている。西欧で新規原子力発電所の建設が決定されたのはフランスのシボー2号機以来、15年ぶり。

フィンランドでは、TVOがオルキルオト発電所隣接区域で1998年1月、国営電力会社Fortum社がロビーサ発電所隣接区域で1998年4月、それぞれ増設のための詳細環境影響評価(EIA)に着手。両社とも1999年8月にEIAを完了し、報告書を貿易産業省に提出した。EIAでは、サイト周辺の住民や環境・天然資源への影響等の調査が行われるとともに、建設計画案に対して周辺住民らから意見を聞く公聴会も開催された。いずれのEIAも、建設作業による影響を別にすれば、温排水放出による海水への影響が最も顕著な環境影響であるとし、それ以外は「新規立地を妨げる環境影響はない」と結論付けた。また両サイトともに住民の過半数が新規立地計画を支持していると指摘した。

その後、両社の合意に基づきTVOが2000年11月、貿易産業省に新規立地の原則決定を申請。2001年2月にはフィンランド放射線・原子力安全局(STUK)が「安全基準を満たしている」との事前評価を下し、2002年1月に政府が新規立地を承認(原則決定)していた。

フィンランドでは1993年にも新規原子力発電所の建設を認めるかどうかの採決が議会で行われた。この時は、107対90で原子力発電所の新規立地が否決された。しかし、温暖化防止に果たす原子力の役割に対する意識が高くなっていることに加えて、世界的な原子力発電実績や安全性の継続的な向上から原子力発電への支持が強まってきていた。今回の採決では全議員(200名)が、審議の最後に行われる投票のために議場に残るなど関心の高さが伺われた。

フィンランドでは現在、Fortum社のロビーサ1、2号機(PWR、51万kW×2基)とTVOのオルキルオト1、2号機(BWR、87万kW×2基)が運転中で、2001年には225億kWhを発電し、総発電電力量に占める原子力の割合は約27%。発電所別に見ると、オルキルオト原子力発電所は142億kWhを発電。一方、ロビーサ原子力発電所は81億kWhを発電した。稼働率はオルキルオト1号機が97.6%、同2号機が95.1%。ロビーサ1号機が92.1%、同2号機が89%だった。

フィンランドの2001年の電力消費量は816億kWhで、前年比2%増。うち53%は産業部門が消費した。電力輸入量(ネット値)は100億kWhで、ロシアからの電力輸入が急増しており77億kWhを記録した。同国では、2015年までに380万kWの新規電源が必要と見込まれており、そうした中でロシアからの輸入電力への依存度低下と、CO2排出量削減に向けて原子力発電への期待が高まっていた。

フィンランドエネルギー産業連盟(Finergy)が発表した報告書は、今後10〜15年で産業部門の電力消費は60%に上昇すると予測している。また、産業部門のエネルギー効率はこれ以上の向上が見込めないことから、2015年までに同国の電力消費量は970億kWh/年に達し、380万kWの追加設備が必要になると結論している。一方、北欧全体の電力消費量は、99年の3800億kWhが2015年には4200億kWhに増加するため、700〜800万kWの追加設備容量が必要になると見込んでいる。こうした状況を踏まえ、Finergyは「環境保全や経済的な観点からも新規立地の推進は妥当であり、京都議定書の目標達成には、将来さらに6基目の原子力発電所が必要となる可能性も否定できない」との見解を示していた。

[終わり]

Copyright (C) JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. (JAIF) All rights Reserved.