[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2002年5月中旬〜6月中旬)

カナダ:AECL、次世代CANDU炉を発表

−米国市場に参入へ

カナダ原子力公社(AECL)は、既存のCANDU炉より一層の低コスト化や高信頼性を実現した次世代CANDU炉(ACR)を発表した。6月24日には米国ワシントンDCでAECLのアデル総裁が記者会見を行い、正式に事業に乗り出す考えを表明した。すでに米国原子力規制委員会(NRC)から設計認証を取得するための手続きを開始しており、新規原子力発電所の建設の気運が高まっている同国での受注を目指す。

ACRには、蒸気発生器やタービン発電機などの多くのシステムで、次世代加圧水型軽水炉(APWR)に類似したものが採用されている。また、運転中の燃料交換、単純な燃料設計、柔軟な燃料サイクルの選択など、CANDU炉の持つ長所も継承している。AECLが内外の9電力会社に供給した合計31基のCANDU炉の建設で培ってきた、材料や機器、システムに関する知見が設計にフィードバックされている。当面は出力約70万kWのACR-700を供給するが、100万kW級のACR-1000の設計作業も進める。

建設費は、既存炉と比べて約40%減の1,000米ドル/kW程度と試算されている。運転コストは3セント/kWh程度となる見通し。AECLは、他の原子力発電システムや石油・石炭・天然ガス火力発電などと比べても、ACRが高い価格競争力を持っていると説明している。

主な特徴は、

  • コンパクトな炉心設計、炉心サイズが同規模の既存炉の約半分

  • 高圧蒸気タービンによる熱効率の向上

  • 重水使用量と取り扱いコストの削減(既存炉の4分の1)

  • 低濃縮ウラン酸化物燃料のCANFLEX燃料束の利用による燃料寿命の延長(既存の天然ウラン燃料の3倍)と、それに伴う使用済み燃料の低減

  • モジュール化、プレハブ工法、その他先進的工法の導入

  • 全施設の最適化、コンパクトな基礎伏図

など。

建設については、既存のCANDU炉の経験で得たノウハウを活かし、高品質の設計・施工を維持しつつ、工期の短縮をはかる。その結果、ACR-700の2号機以降については建設期間を36カ月と見積っており、契約から48カ月で営業運転を開始できると見込んでいる。

また、安全面では、2つの独立した原子炉緊急停止系を採用したほか、減速材が熱を逃がす固有の受動的燃料冷却特性や過酷事故時でも放出が限定的などの特徴を備えている。こうした特性は、既存のCANDU炉にも取り入れられているが、高い安定性を有した炉心設計や大きな運転裕度など、受動的安全性をさらに高めた設計になっている。

[終わり]

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