[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2002年5月中旬〜6月中旬)

[中 国]

嶺澳1号機、営業運転を開始

 中国通信によると、嶺澳1号機(PWR、98万5,000kW)が5月28日に正式に営業運転を開始した。

 同機は初臨界に達した22日後の2月26日に送電網に接続され、4月21日には100%出力運転に成功していた。同機は予定より48日早く電力網に接続していたため、営業運転開始も1ヵ月半繰り上げられた。年末までに32億kWhの発電を行う予定。嶺澳プロジェクトは第9次5ヵ年計画に組み込まれ、1号機は1997年5月、2号機(PWR、98万5,000kW)は同12月にそれぞれ着工している。2基合わせた建設費は40億ドル。

 なお、2号機は現在、総合調整試験と引渡し準備のピークを迎えており、年内の営業運転開始を目指している。

[台 湾]

低レベル処分場建設に向け新機関設立へ

 台湾原子能委員会(AEC)は、低レベル廃棄物の最終処分場建設に向け新しい実施機関を設立するよう行政院(内閣)に要望した。

 すでに、AECは最終処分場建設のための準備調査を終えている。それによると、新しく設立される機関は公社の形をとることが検討されたいる。なお、新機関は、これまで廃棄物処分を担当していた台湾電力(Taipower)から業務を引き継ぐことになっている。

 台湾電力では、原子力発電運転部(NOD)がサイト内の放射性廃棄物管理を、また原子力バックエンド管理部(NBMD)がサイト外の放射性廃棄物管理を担当する。

 台湾は1982年から蘭嶼島で低レベル廃棄物の中間貯蔵を行っていたが、1996年に地元の反対などで廃棄物の搬入が中止された。これまでに受け入れた廃棄物はドラム缶で、合計9万7,672本。台湾電力は、蘭嶼島へ廃棄物が搬入できなくなったことから、各原子力発電所サイトで専用貯蔵庫の建設を開始した。貯蔵能力は、国聖発電所がドラム缶4万本、金山発電所が同2万3,000本、馬鞍山発電所が同4万本。

 こうしたなか、台湾電力は1998年2月にAECに対しサイト選定の予備的結果を報告した。それによると、低レベル放射性廃棄物最終処分場の最有力候補として、台湾本島西岸から約80海里、中国大陸北西部から約10〜20海里の大陸沿岸に位置する金門県のLittle Chiu Yu島が選定された。なお、低レベル廃棄物処分をロシアや中国、北朝鮮などに委託するオプションも検討されたが、いまのところ台湾国内で処分することが最優先されている。(6月)

[米 国]

ターキーポイント3、4号機が運転認可を更新

 米原子力規制委員会(NRC)は6月7日、フロリダ・パワー&ライト(FP&L)社から申請されていたターキーポイント3、4号機(PWR、各72万6,000kW)の運転認可の20年延長を承認した。これにより、3号機は2032年まで、4号機は2033年まで運転できることになった。

 これまでに、NRCから運転認可の更新を認められた原子力発電所は、2000年3月のカルバート・クリフス1、2号機(PWR、各88万kW)、同5月のオコニー1、2、3号機(PWR、1・2号機=各88万7000kW、3号機=89万3000kW)、2001年6月のアーカンソー・ニュークリア・ワン(ANO)1号機(PWR、88万3000kW)、エドウィン・ハッチ1、2号機(BWR、1号機=89万8,000kW、2号機=91万1,000kW)の8基で、ターキーポイント発電所を加えると計5サイト・10基となった。

NRC、ブランズウィック1、2号機の出力増強を承認へ

 米原子力規制委員会(NRC)は6月6日、カロライナ・パワー&ライト(CP&L)社所有のブランズウィック1、2号機(BWR、各89万5,000kW)の出力を15%増強することを承認した。NRCは両機について、原子炉蒸気発生設備(NSSS)や計装制御系統、電気系統、事故評価、放射線影響、運転・技術仕様の変更などに焦点をあてて検討を行っていた。

 CP&L社は今後、1号機の運転停止中に2段階に分けて15%の出力増強を行う計画で、すでに高出力タービン1基や給水加熱器2基、給水ポンプ・タービンなどの設置は完了済み。また、1号機につづいて、2号機でも出力増強工事を予定している。さらに、1、2号機の運転認可の20年延長をNRCに申請する計画も持っている。

 なお、1号機は3月1日に燃料交換のために運転を停止するまでに、軽水炉の世界新記録である707日間の連続運転を達成した。

国内濃縮産業の安定で合意

 米国の濃縮事業者であるUSEC社は6月18日、エネルギー省(DOE)との間で、国内濃縮産業の安定化に向けて協力するとした合意覚書に署名した。DOEとUSEC社の協力関係の強化をねらったもの。

 DOEは、USECと協力して、10年内に改良型の遠心分離濃縮工場を建設・運転開始することを約束。手始めとして、30日内に新しい協力研究開発協定を結び、作業部会を設立する。またDOEは、ロシアとの間で結ばれた高濃縮ウラン協定のもとで代理執行業者を務めているUSEC社を支援することを約束した。

 一方、USEC社は、2010〜2011年頃に改良型のウラン濃縮工場の運転を開始するとともに、新しい工場が運転を開始するまでケンタッキー州にあるパデューカ濃縮工場で、年間3500トンSWUの最低生産規模を維持することを約束した。

[カナダ]

使用済み燃料法案が議会を通過

 使用済み燃料の管理方法の選定手順などを定めた法案が6月13日、カナダ連邦議会上院で可決、議会での関門を全てクリアーした。同法案は2001年4月にグッデール連邦天然資源相によって提出され、今年2月26日に下院を通過していた。今後、内閣の助言のもと、女王(総督)の承認により成立する。

 法案には、使用済み燃料の発生者と所有者が長期的管理を目的とした「廃棄物管理機構」(WMO)を設立することなどが盛り込まれている。WMOは使用済み燃料の長期管理に関する業務全般を行う非営利組織で、設立後3年以内に戦略を策定する。具体的には、@カナダ盾状地の深地層処分、A各原子力発電所サイトでの地上貯蔵、B地上または浅地層での集中貯蔵――の3種類の管理オプションを検討して、この中から最適な方法を連邦政府に対して提案する。WMOは、政府の承認を経て管理方法が決定された後は、実施主体として使用済み燃料の管理も行う。

 法案はまた、使用済み燃料の発生者・所有者であるカナダ原子力公社(AECL)と原子力発電所を所有する電気事業者3社に対して、使用済み燃料の管理・処分のための信託資金を設立することを定めている。AECLならびに原子力発電事業者は毎年、この信託基金への支払を行うほか、法案成立後10日以内に初回分として5億5,000万カナダドルを支払うことになっている。

[英 国]

BNFL、ガス炉の閉鎖を前倒し

 BNFLは6月21日、8基のマグノックス炉の閉鎖を前倒しすると発表した。それによると、コールダーホール発電所(GCR、6万kW×4基)は2003年初頭(当初予定は2006年)に、チャペルクロス発電所(GCR、6万kW×4基)は2005年3月まで(当初予定は2008年)に、それぞれ予定を早めて閉鎖する。他のマグノックス炉は当初の予定通りに閉鎖される。

 マグノックス炉は、1950年代から60年代にかけて運転を開始した初期のガス冷却炉。英国では電力の卸売価格が引き続き下落しており、他のマグノックス炉に比べても出力が小さい両発電所の経済性は非常に低く、運転コストが売電収入を上回っているのが現状。そのためBNFLは両発電所に限り、2000年5月に発表したマグノックス炉の閉鎖計画に盛り込まれた閉鎖予定時期の前倒しを決断した。

[フランス]

総選挙で、保守・中道が勝利

 6月9、16の両日に実施された国民議会(下院)選挙の結果、先の大統領選挙で再選を果たしたシラク大統領(共和国連合:RPR)率いる保守・中道が勝利を収めた。保守派は大統領選挙での勢いに乗って「大統領多数派連合」(UMP)を組織し、過半数を越える議席を確保。一方の左派陣営は、オランド社会党党首を中心に巻き返しをはかったが大敗を喫した。これにより、フランスで5年間続いた保革共存体制は解消された。また、今回の選挙は、欧州での右派回帰の流れを強く印象付けた。この潮流が、今年9月予定のドイツ総選挙にも影響を及ぼすとの見方もある。

 開票結果によると、UMPは全577議席の約6割にあたる355議席を獲得。これに、保守・中道を合わせると、約7割の399議席(改選前は245)を占める勢力になる。一方の左派は、改選前の議席(314)をほぼ半減させ、178議席に後退した。大統領選挙で躍進したルペン氏は、総選挙には出馬せず、同氏が率いる極右政党の国民戦線(FN)も議席を確保できなかった。投票率は、過去最低の61%。なお、UMPは選挙後、ジュペ元首相を暫定代表に据え、今秋にも単一政党に移行する予定。

 スーパーフェニックス(FBR、124万kW)の閉鎖をはじめ、これまで反原子力政策を主導してきた緑の党は、議席数を31から3へと大きく減らした。同党の全国書記を務めたボワネ元環境相は、東部ドール地区で落選した。同党が少数野党に退いたことに加え、原子力推進の立場をとる中道・右派が政権に就いたことから、今回の選挙は原子力産業界にとって最善の結果となった。新内閣は、再指名されたラファラン首相の下、産業大臣(正式名:経済・財政・産業大臣)にメール氏、環境大臣(同:エコロジー・持続可能開発大臣)にバシュロ=ナルカン氏、厚生大臣(同:厚生・家族・障害者大臣)にマティ氏、研究大臣(同:青少年・国民教育・研究大臣)にフェリ氏が就任した。

 ラファラン首相は7月3日、施政方針演説を行う予定。新たな政策として、減税や年金改革、移民規制などが打ち出される見通しだが、欧州加圧水型炉(EPR)の発注など具体的な原子力開発計画が盛り込まれるかどうかは未定。新政府は、歳入減の穴埋め策として、国営企業の民営化を加速させる構えを示しており、ガス公社(GDF)や電力公社(EDF)はその有力候補にあがっている。

[ドイツ]

バッテンフォール社、ハンブルク電力を完全買収へ

 スウェーデンの国営電力会社であるバッテンフォール社は6月11日、ハンブルク市が所有するハンブルク電力(HEW)の25.1%株式を8億6,900万ユーロ(約1000億円)で買収する方針を固めた。バッテンフォール社はすでにHEWの73.8%を所有しており、今回の株式買収が8月に開催予定のHEWの株主総会で承認されると、バッテンフォール社はHEWの株式のうち、市場にある1.1%を除く98.9%を手中に収めることになる。

 バッテンフォール社は、欧州市場への参入拡大をめざし、99年11月にHEWの25.1%株式を取得し、ドイツ進出の足がかりをつかんだ。その後もシドクラフト社(21.8%)やE.ON社(15.4%、当時はプロイセン電力)、市場投資家からHEWの株式を買取り、支配力を強めた。この時期にドイツでは大手電力会社が次々に合併し、現在のRWE社、E.ON社が誕生。バッテンフォール社は、両社が合併を機に放出した旧東独のVEAG、BEWAG、LAUBAGの株式をHEWを通じて獲得した。今回の買収は、バッテンフォール社がこの4社を統合し、新会社を設立するための総仕上げ。新会社が予定通り2003年初めに設立すると、RWE社、E.ON社に次ぐドイツ第3位の電力会社の誕生となる。

 バッテンフォール社は、スウェーデン国内に6基の原子力発電所を所有し、2001年の売上電力量は1,410億kWhにのぼり、欧州5位の規模。HEWはドイツ第5位の電力供給力を持ち、E.ON社と共同でドイツ北部に4基の原子力発電所を運転している。旧東独にあった旧ソ連型原子力発電所は東西再統一の際、すべて閉鎖されたため、VEAG、BEWAG社とも運転中の原子力発電所は持っていない。

米SEC、E.ON社の英パワージェン社買収を承認

 米国証券取引委員会(SEC)は6月12日、ドイツのE.ON社による英国第2位の電力会社であるパワージェンの買収を認める方針を明らかにした。また、この買収を審査している欧州連合(EU)、英国、米連邦エネルギー規制委員会なども承認を与える方針であることから、手続きは7月初めに完了する見通し。買収が成立すると、19カ国の電力・ガス市場に約3,000万の顧客を抱え、年間電力供給は約3,400億kWhに達する。

 E.ON社は99年6月にVEBAとVIAGが合併してできた国内大手の総合エネルギー企業。両社の子会社だったプロイセンエレクトラ社とバイエルンベルク電力が統合してできたE.ONエネルギー社はRWEパワー社を抜き、ドイツ最大の原子力発電会社。E.ON社は、ドイツ市場での需要が頭打ちであるため、国外市場への進出を積極的に狙っていた。昨年4月には、パワージェンに総額141億ドル(約1兆6000億円)にのぼる100%買収交渉を持ちかけ、合意に達した。パワージェンは、約784万kWの発電設備容量を持ち、英国市場の約1割を占める。また同社は、傘下に米国ケンタッキー州のルイビル・ガス&エレクトリック(LG&E)社を持つため、今回の買収にはEUをはじめ英、米の独占禁止当局の承認を必要とした。

 E.ON社のハルトマンCEOは、この買収は国際的なエネルギー企業のリーダーをめざす同社にとって重要なステップになると評価した上で、米国市場への参入は一層の市場拡大のチャンスを秘めているとして、今後の事業展開に強い意欲を示している。なお、SECは承認の条件としてE.ON社に今後5年をめどに化学、アルミ、石油、金属などの非エネルギー部門を手放すよう求めており、E.ON社も当初からその意向を固めていた。

[スイス]

議会、運転期間の設定と再処理禁止に否定的

 スイス国民議会(下院)は6月20日、連邦政府が昨年3月に提出した改正原子力法案 の審議を行い、原子力発電所の運転期間に制限を設けないことと再処理を禁止しないことで大筋合意に達した。しかし、議会は審議不十分のまま、翌21日に今期の日程を終え、9月中旬に再開予定の会期に持ち越しとなった。

 スイスは、90年9月の国民投票を受け、2000年までの10年間は原子力発電所の新規建設を凍結した。今回の法案は、政府が2000年以降の原子力開発計画を視野に入れて策定したもので、昨年3月に議会へ提出されていた。法案は、発電所の運転期間を設定していないものの、使用済み燃料の再処理禁止を盛り込んだ。また、99年には運転期間をそれぞれ30年と40年に制限するよう求めた2つの反原子力イニシアチブが提出されているが、下院審議では運転期間設定と再処理禁止の両方とも認めない意見が大勢を占めた。

 各発電所から発生する使用済み燃料は現在、英原子燃料会社(BNFL)と仏核燃料公社(COGEMA)に再処理を委託しており、下院はこの再処理路線を支持する格好となった。ただ、全州議会(上院)は昨年12月、再処理契約が切れる2006年から10年間を再処理一時停止(モラトリアム)とする方針を固めている。再処理問題は法案策定の段階で、政府内でも意見が分かれた。今後の議会審議では、再処理をどうするかをめぐって下院と上院の間で協議が難航することも予想される。

 このほか、法案では高レベル放射性廃棄物の処分は原則として国内に処分するとしながらも、厳しい条件付きで国外処分も認めている。原子力施設の立地については、連邦政府に強い権限を与え、連邦で決まった建設プロジェクトをカントン(州)が阻止することができないよう定めている。議会は、こうした点に関してまだ十分な審議を行っていない。

 スイス原子力協会(SVA)によると、昨年の原子力発電電力量は、過去最高の253億kWhを記録した。原子力は、総発電電力量の約35%を占め、水力(約60%)に次ぐ主要電源。SVAは、上院での審議経過はまだ決定的ではないとし、今後の審議を見守りたいとしている。

[スウェーデン]

議会、段階的廃止に期限設定せず

 スウェーデン議会は6月11日、今年の3月に連立与党が提出したエネルギー政策法案を174対86で可決した。同法案は原子力発電所の段階的廃止に期限を設定せず、ドイツと同様に脱原子力政策の継続については原子力産業界との合意を模索する内容となっている。議会決定を受け政府は、既存原子炉の運転年数制限を設定するための協議を産業界と開始するとみられている。

 政治決定によって1999年に閉鎖された1号機に続いて閉鎖が検討されている、バーセベック2号機についてはその他の10基とは扱いが異なり、同機を2003年末までに閉鎖するという政府目標が再確認された。一方で、バーセベック2号機の閉鎖条件が満たされたかどうかについては議会が判断することになった。

[チェコ]

テメリン2号機が初臨界達成

 建設中のテメリン2号機(98万1000kW、PWR)が5月31日、初臨界を達成した。2号機は1号機と同じくSKODA社製VVER-1000型炉を採用している。

 テメリン1、2号機は1983年7月に着工。1号機は2000年10月11日に初臨界を達成し、同12月21日に送電を開始したが、非原子力部分のトラブルに度々見舞われ、まだ試運転段階にある。チェコ電力は両機の営業運転を、それぞれ2003年、2004年に開始する予定。

 チェコの2001年の原子力発電シェアは20%だが、テメリン1、2号機が営業運転を開始すると40%に上昇する見込み。また、両機の運転によって国内の複数の火力発電所が閉鎖され、年間1,200万トンのCO2排出を抑制できるとみられている。

[ブルガリア]

EU、コズロドイ3,4号機の2006年までの閉鎖を要求

 EUのG.フェアホイゲン拡大担当委員はこのほどブルガリアを訪問し、ブルガリアのEU加盟の条件としてコズロドイ3,4号機の2006年までの閉鎖を改めて求めた。フェアホイゲン委員は、ブルガリアが主張する2008〜2010年の閉鎖は受け入れられないとの見解を表明、EU拡大担当委員会もブルガリアの2004年の加盟を見送った。

 ブルガリア政府と欧州委員会(EC)は99年11月30日、ブルガリアのEU加盟への条件としてコズロドイ1-4号機の閉鎖で基本合意。1,2号機については2002年末までに閉鎖で合意したものの、3,4号機の閉鎖時期については意見が割れた。ブルガリア側は2002年時点で決定するとの見解を示したが、EC側は3,4号機ともに2006年の閉鎖を提案していた。

 しかしブルガリア国内では、現行のエネルギー政策で定められた3,4号機の閉鎖期限である2010年まで3,4号機の運転を継続させる声が高まっている。

 2000年10月に発表された西欧原子力規制当局連合(WENRA)の報告書は、コズロドイ1-4号機は「1次系配管での漏洩事故に対する十分な安全対策が施されていない」と指摘。安全性の改善は極めて困難として早期閉鎖を勧告した。

 ブルガリア唯一の原子力発電所であるコズロドイ発電所は6基で構成。1〜4号機はVVER-440型炉(旧ソ連型PWR、出力44万kW)の中でも旧式に属するV-230タイプが採用されている。また5,6号機は比較的新しいVVER-1000型炉(同、出力100万kW)を採用している。2001年の原子力発電電力量は196億kWh(前年比14億kWh増)で、原子力シェアは44.6%だった。

[ロシア]

第2再処理工場、2020年に運転開始へ

 財源難から建設が中断しているジェレズノゴルスク(旧名:クラスノヤルスク-26)鉱山化学コンビナートの第2再処理工場(RT-2)の運転開始時期が、2020年になる見通しであることが明らかになった。ロシア原子力省(MINATOM)のシンガリョフ政策報道局長が5月末に、メディアとのインタビューの中で語ったもの。

同局長によれば、現在稼働中のオゼルスク(旧名:チェリャビンスク-65)にある生産合同マヤクの第1再処理工場(RT-1)の処理能力は年間400tUだが、現在の処理量は年間150tU程度。しかし、今後、外国からの使用済み燃料再処理の受入れが本格化すれば、RT-1だけでは対応できなくなることが考えられるため、RT-2の建設を再開し、これに対応する。

 ロシアでは、92年に制定された環境保護法第50条により、放射性廃棄物や放射性物質の中間貯蔵および最終処分を目的とした海外から国内への持ち込みが禁じられていたため、海外の旧ソ連型炉からの使用済み燃料を除き、外国の使用済み燃料の商業再処理ができなかった。しかし、外国の使用済み燃料の中間貯蔵、再処理受託を目的に、国内への使用済み燃料の受入れを可能にする関連法案が2001年7月に成立。国際的な安全基準が満たされていることを条件に、新たに設置される特別委員会の承認のもとで、国内へ持ち込むことが可能になった。

 RT-1は、軍事用プルトニウム抽出施設として1948年から操業を開始した放射化学工場を、VVER-440、FBR、舶用炉、研究炉の使用済み燃料を再処理できるように改造したもので、77年から運転を開始した。現在はロシア国内の使用済み燃料ほか、ブルガリアからのものを640米ドル/kg、ウクライナからのものを300米ドル/kgで再処理している。これらは国際価格に準じたものであるが、近年は上昇傾向にあるという。

 一方、RT-2はVVER-1000の使用済み燃料再処理のために84年に着工。当初は2005年の運転開始の予定であったが、資金難で建設が中断されていた。年間処理能力は1,000〜1,500tU。MINATOMは、今後10〜15年間に、外国から使用済み燃料を最大2万トン程度受け入れることにより、少なくとも200億米ドルの収入が得られると試算している。

 VVER-1000の使用済み燃料は現在、鉱山化学コンビナート敷地内の施設に中間貯蔵されている。また、RBMKの使用済み燃料は、経済的に見合わないとの理由から再処理されずに、発電所サイト内などで貯蔵されている。

使用済み燃料中間貯蔵施設、来年着工へ

 ジェレズノゴルスク鉱山化学コンビナートのスポークスマンは5月中旬、使用済み燃料の乾式中間貯蔵施設の建設を2003年に開始することを明らかにした。

 施設は処分容量1万立方メートル程度のモジュールを段階的に設置する方式で建設され、最終的には3万3,000立方メートルの容量となる。2006年に運用が始まる予定の第1期分の建設費は1億2,000万米ドルと見積もられている。総建設費は3億3,000万〜3億6,000万米ドルの見込み。

 鉱山化学コンビナートでは、容量3,000トンのプール式の使用済み燃料貯蔵施設が操業しているが、新しい施設は、運転コスト削減と安全性向上の観点からフランス、ハンガリー、米国などで実績のある乾式が採用される。

 MINATOMは2001年10月初旬、外国から再処理や中間貯蔵を受託した使用済み燃料の受入れに使用する近代的な乾式中間貯蔵施設をジェレズノゴルスク鉱山化学コンビナートに建設することを承認したものの、最初の契約が外国との間で締結されるまでは建設工事の着工は行わないとしていた。

 一方、再処理施設については、受入れた使用済み燃料の中間貯蔵により得られた収入を財源として整備を行うとしており、RT-2の建設資金もこれで対応することが考えられている。(原産マンスリー2001年11月号参照)

ノバヤゼムリャ諸島に低中レベル廃棄物処分場建設へ

 ロシア原子力省(MINATOM)は、北極海のノバヤゼムリャ諸島ユジーニ島に低中レベル放射性廃棄物処分場を建設することを決定。周辺のノルウェー、スェーデン、フィンランド各政府との間で合意に達した。

 処分場の建設費8,000万米ドルは連邦予算から支出され、建設期間は33カ月と見込まれている。完成後は原子力潜水艦や原子力砕氷船の運航や退役により発生し、現在はアルハンゲリスクとムルマンスク地域に貯蔵されている低中レベル放射性廃棄物を埋設処分する。アルハンゲリ地方セベロドビンスク近郊のミロノバ・ゴラ暫定貯蔵サイトに貯蔵されている廃棄物を受入れることも考えられている。

 ノバヤゼムリャ諸島への放射性廃棄物埋設処分場建設は、92年に検討が開始。94年からはアルハンゲリスクとムルマンスクの両地方政府の代表によって計画が進められてきた。2001年には公開ヒアリングが両地域で開催され、連邦天然資源省がサイト立地点に関する予備的調査の報告書の中で、肯定的な結論を示した。そして、今年に入ると、連邦環境委員会により計画が承認され、作業計画が策定された。また、スウェーデン、ノルウェーなどが参加する国際コンソーシアムも計画を承認した。

[ロシア−米国]

高濃縮ウラン取引、市場ベースの価格に

 米ロ両国政府は6月19日、ロシアから米国が購入する高濃縮ウラン(HEU)の価格を市場ベースの変動制に変更することで合意した。ロシアの核兵器解体により発生するHEUを米国で発電所燃料に加工して使用することを取り決めた計画の残り12年間に適用される。

 合意では、HEUを受け入れている米国のUSEC社とロシア側の窓口である全ロ貿易公団(TENEX)との間で取り決めている定額取引を終了し、代わりに市場ベースの変動価格制を導入することが決められた。

 合意には、米国は2013年まで毎年最低5,500トン分離作業単位(SWU)−HEU約30トンに相当−、合計で約500トンのHEUをロシアから購入するが明記されている。ロシアは20年間にわたる計画中に、少なくとも合計75億米ドルの収入を得る見込み。

この計画の開始から現在までの8年間に、USECはロシア側に25億米ドルを支払い、核弾頭約6,000発相当のHEUを受け入れている。計画全体では約2万発相当の核弾頭が処理される。

 USECによると、新しい価格決定方式は2003年1月の取引から導入される予定で、今年中は1トンSWU当たり9万420ドルを支払う。

[リトアニア]

イグナリナ発電所の閉鎖でEUと基本合意

 リトアニアと欧州連合(EU)は6月11日、ルクセンブルグで開催されたEU加盟国と加盟候補国による外相会議で、イグナリナ発電所(RBMK-1500、150万kW 2基)の完全閉鎖について基本合意に達した。リトアニアが同発電所2号機の2009年閉鎖を約束する見返りに、EUが閉鎖のための広範な資金援助を行うというもの。1号機は2005年の閉鎖がすでに決まっている。

 またEU側は、リトアニアのEU加盟交渉についても、最大限の支援を行うことを約束した。リトアニアは年末までにEUへの加盟交渉を終え、2004年に予定されているEUの加盟国拡大に加わることを目指している。

 今回合意されたEUによる資金援助は、イグナリナ2号機の閉鎖に伴って生じる諸問題に対処するために長期にわたり提供されるもので、欧州復興開発銀行(EBRD)が管理している同発電所の廃炉基金とは別枠の予算として取り扱われる。しかし、具体的にどの程度の金額の支援を行うかについては、結論が先送りされた。リトアニア政府は、イグナリナ発電所の完全閉鎖には24億ユーロの資金が必要であるとしている。

  旧ソ連型炉の軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)であるイグナリナ発電所については、EUが安全性に対して強い懸念を示しており、閉鎖への支援ならびにリトアニアのEU加盟交渉の開始と引き替えに、同国に対して1号機を2005年、2号機を2009年までに閉鎖することを要求。これに対し、リトアニア共和国議会(セイマス)は2000年5月、1号機を2005年に閉鎖し、2号機については閉鎖時期に関する議論を2004年以降に開始することを承認した。

 2000年10月に就任したパクサス首相(当時)は、イグナリナ発電所閉鎖承認の議会決定の撤回を主張するとともに、さらに新しい原子力発電所を建設して電力を近隣諸国に輸出する意向を示した。アダムクス大統領もこれに同調したため、議会と対立する形になった。しかし、2001年7月3日に議会の承認を受け就任したブラザウスカス首相は、EUが求めているイグナリナ2号機の2009年の閉鎖に理解を示し、議会でも閉鎖に向けた議論が進められた。


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