[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2002年6月中旬〜7月中旬)

[インド]

高速増殖原型炉の建設に着手

 インド原子力省(DAE)はこのほど、インド原子力規制委員会(AERB)から高速増殖原型炉(PFBR、50万kW)建設の準備作業に対する認可を受け、同炉の掘削・土木工事を開始したと発表した。

 PFBRは、DAEの傘下にあるインディラガンジー原子力研究センター(IGCAR)に建設される予定で、2008年末までに完成し、2009年初頭の運転開始を目指す。

 なお、IGCARでは、高速増殖実験炉(FBTR、4万kW)が1985年に初臨界に達したあと、1997年に送電を開始している。(7月)

[米 国] NRC、AP1000の申請を受理

 米原子力規制委員会(NRC)は7月2日、ウェスチングハウス・エレクトリック(WE)社が3月28日に申請したAP1000型炉の設計認証を正式に受理した。申請書類に問題がないと判断したもの。

 AP1000型炉は出力110万kWの加圧水型炉(PWR)で、原子炉を停止したり事故の影響を軽減するにあたって重力や圧力差を利用した受動的な安全システムを採用しているのが大きな特徴。設計寿命は60年に設定されている。AP1000型炉がNRCから設計認証を取得できれば、今後、建設される新規原子力発電所の有力な候補になるとみられている。

 NRCはこれまでに、ゼネラルエレクトリック(GE)社のABWR(135万kW、97年5月認証取得)、ウェスチングハウス社の「システム80+」(同)とAP600型炉(61万kW、99年12月認証取得)の3つの炉型に対して設計認証を発給している。

「事前サイト許可」手続き実証で3社選定

 エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は6月24日、原子力規制委員会(NRC)の新しい許認可手続きの1つである「事前サイト許可」(Early Site Permit)の実証をドミニオン・エナジー社、エンタジー社、エクセロン社の3社と共同で行うと発表した。官民協力によって2010年までに新規の原子力発電所を建設しようという「Nuclear Power 2010」計画の一環。DOEは、この3社がNRCから事前サイト許可を取得するにあたってかかる経費の少なくても半額を支援する。DOEの負担額は4年間で総額1700万ドルになるとみられている。

 米国を代表する原子力発電事業者である3社は、DOEが3月4日に公表した官民共同による事前サイト許可の実証プロジェクトへの参加を正式に表明。また、NRCに許可申請する具体的サイト名と申請予定日を公表した。それによると、ドミニオン社はノースアナ発電所を候補サイトとして来年9月に、エンタジー社はグランドガルフ発電所を候補サイトとして来年6月に、またエクセロン社はクリントン発電所を候補サイトとして来年6月に申請することを明らかにした。

 「事前サイト許可」は、原子力発電所の建設候補地として事前にサイトだけ許可するというもの。取得後20年間にわたって有効で、さらに20年間の延長もできるため、電力会社としては直ちに建設に着手する必要はない。DOEは、2005年までにはNRCから事前サイト許可が取得できるとみている。

アイダホ研が原子力研究開発の拠点に

 エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は7月17日、米国の原子力研究基盤再構築の一環として、アイダホ国立工学環境研究所(INEEL)を先進的な原子力技術研究開発と核燃料サイクル技術の拠点にすると発表した。具体的には、DOEが進めている第4世代原子炉の開発や「Nuclear Power 2010」プロジェクト、先進的な核燃料サイクルと核変換技術などを支援する。これを受け、同研究所の運営はこれまでの環境管理局に代わって原子力科学技術局が担当することになった。

 またエイブラハム長官は、原子力科学技術局のマグウッド局長に対し、90日をかけて米国の原子力研究基盤を検討するよう指示した。原子力を拡大するというブッシュ政権が掲げた目標を達成する上で、どのような施設や能力が必要かを明らかにすることが目的。原子力科学技術局は、原子力研究諮問委員会(NERAC)と協力して検討を行う。

カメコ社とWH社、濃縮施設建設コンソーシアムに参加へ

 ルイジアナ・エナジー・サービシーズ(LES)社は7月22日、ガス遠心分離ウラン濃縮工場を建設するコンソーシアムに、カナダのカメコ社と米ウェスチング・ハウス(WH)社が参加することで合意し、了解覚書(MOA)に署名したと発表した。

 このコンソーシアムはLES社が幹事会社を努めており、ヨーロッパ(英国、オランダ、ドイツなどの共同出資)の濃縮会社であるウレンコ社のほか、フルーア・ダニエル社、エクセロン社、デューク・エナジー社、エンタジー社が参加している。今後のスケジュールは、10月までにサイトを選定し、年末には米原子力規制委員会(NRC)に建設許認可申請書を提出、2004年後半の着工を目指す。年間生産能力は最終的に3,000dSWU(分離作業単位)。

 なお、米国濃縮会社(USEC)は、米エネルギー省(DOE)との間で新型のウラン遠心分離機を共同開発することで合意し、遠心分離プラントを2010年までに建設する計画があるが、LES社主導のコンソーシアムが事業を順調に進めば、先行き不透明になるとの悲観的な見方もある。

[英 国] BNFL、2001/2002年度決算を発表

 英原子燃料会社(BNFL)は7月16日、2001/2002会計年度(2001年4月〜2002年3月)の最終決算を公表し、すべての業務分野で実績が大幅に改善され黒字に転換したことを明らかにした。

 BNFLグループの総売上高は、セラフィールド再処理工場の処理量拡大などにより前年度実績から1億1600万ポンド増の22億6100万ポンドになった。特別項目算入前の税引前利益は前年度に2億1000万ポンドの損失を出していたのに対して、今回は2200万ポンドの黒字に転じた。燃料製造および原子炉サービス業務(ウェスチングハウス社)の売上高(10億7000万ポンド)は、総売上げの47%を占め、特別項目算入前の税引前利益では7800万ポンドを記録した。マグノックス発電部門の売上は3億8000万ポンドとなり、総売上の17%を占め、特別項目算入前の税引前利益は1億1500万ポンドだった。使用済み燃料およびエンジニアリング部門は、総売上高の27%にあたる6億1500万ポンドだった。セラフィールド再処理工場で記録的な再処理量を達成し、酸化物燃料の再処理では大口の契約を獲得したことから、特別項目算入前の税引前利益は3200万ポンドとなった。

 なお特別項目として、セラフィールド施設での既存廃棄物に関するコスト見直しによる引当金増額(19億3500万ポンド)、コールダーホール発電所とチャペルクロス発電所の閉鎖繰上げ費用(3億7500万ポンド)など合計23億5000万ポンドが計上されているため、グループ全体の特別項目算入後の税引前利益は23億2800万ポンドの損失となった。

原子力債務で白書

 貿易産業省は7月4日、過去の原子力開発プログラム(軍事用を除く)の実施にともなって発生した債務整理に関し将来構想を白書として公表し、設立が予定されている債務管理機関(LMA: Liabilities Management Authority)の具体的な役割を明らかにした。

 LMAは省庁から独立した公的機関として位置付けられ、英原子燃料会社(BNFL)と英原子力公社(UKAEA)が保有する施設の法的、財務面の責任を負う。実際の施設運営はこれまで通り各社が行うが、LMAは施設所有者と規制当局の間に立ち、廃炉・除染の計画を推進することになる。

 1940年代から1960年代にかけて政府によって建設された施設と、生じた廃棄物、そして1960年代から1970年代に設計・建設されたマグノックス炉(現在はBNFL所有)が原子力債務の85%を占めている。これらの債務は政府が引き受けているのに対し、民間企業であるブリティッシュ・エナジー社は、廃炉費用を化石燃料賦課金と自社内部の基金で負担している。今年3月段階で廃炉・除染にともなう債務は、BNFLが405億ポンド、UKAEAが74億ポンドと試算されている。

[フランス] ラファラン首相、EDFの部分民営化を明言

 6月に行われた総選挙を受けて首相に就任したラファラン氏は7月3日、国民議会で施政方針演説を行った。エネルギーや原子力関係では、フランス電力公社(EDF)の部分民営化やエネルギー法策定にむけた公開討論の実施などの施策が打ち出されたが、欧州加圧水型炉(EPR)をはじめとする新規建設計画についての言及はなかった。

 ラファラン首相によると、政府は100%の国営会社であるEDFとガス公社(GEF)の株式を一部、市場に放出する。国が手放す株式の比率や売却の時期は明らかになっていないが、両社の公共性は維持するとしていることから、少なくとも国が51%を確保すると見られる。世界最大の電力会社であるEDFは、国内では独占状態にあるが、欧州の電力市場自由化を受け、国外で積極的に事業を拡大している。これに対しEU各国はフランスに対し市場の開放を強く訴えていた。また、減税や年金改革などに取り組む姿勢をみせている新政権にとって、歳入減を穴埋めする上からも国営企業の株式放出が必至の情勢となっている。ラファラン首相は、EDFとGDFが欧州のエネルギー市場自由化の恩恵を享受するためには、部分民営化は避けられないとの見方を強調、労組をはじめとする関係者の理解を求めた。

 同首相はまた、国民との広範な議論を行った上で、エネルギー法の策定に取組む方針を明らかにした。フランスでは、総発電電力量に占める原子力の割合が約75%と高いにもかかわらず、原子力開発計画について国民が公式に意見を述べる機会が乏しいという批判があった。今回の選挙戦に破れたジョスパン前首相(社会党)も、広範にわたる民主的で科学的な議論を呼びかけていた。ラファラン首相は具体的な討論会の日程などには言及しなかったが、公開討論を通じて再生可能エネルギーや原子力の役割や認識を明らかにし、エネルギー法に盛り込む意向を示した。

 さらに、原子力については懸案となっている原子力安全と透明性に関する法案の成立をめざすことを明言した。これは、前政権が98年に着手した法案で、原子力情報の公開を推進するため、安全規制と放射線防護体制の抜本的な改革が盛り込まれている。しかし、当初めざしていた独立した行政組織への一本化は参事院が99年、違憲とする勧告を下したため法改正は中断した。このため、前政権は今年2月、新しい規制当局と行政を技術支援する研究機関の再編を定めた政令を公布するにとどまり、法案自体は議会に上程されたままになっている。

[ドイツ] ビブリスA、改良終え運転再開

 RWE社所有のビブリスA原子力発電所(PWR、122万5,000kW)は6月18日、3カ月にわたる安全性改良工事を終え、翌19日に運転を再開した。改良された部分は事故緩和システムや耐震システム、非常用電源システムなどで、総額6,500万ユーロ(約70億円)が投じられた。RWE社は今回の改良により、同発電所の安全レベルは国際的な安全基準から見ても高くなったとし、運転継続にむけて自信を深めている。

 同発電所は87年に冷却材喪失事故(LOCA)の前兆事象が起こって以来、安全性が大きな問題となった。特に、SPDと緑の党がヘッセン州の政権を握った91年から99年の間は、多額の費用がかかる地下式の非常用制御室の建設をめぐり州政府との対立が深まった。しかし、99年2月に政権がキリスト教民主同盟(CDU)に替わったことから、より現実的で妥当な改良工事が認められる可能性が生まれた。

 ビブリスA、Bはそれぞれ1975年と77年に運転を開始し、国内で3番目と5番目に古い原子力発電所。RWE社は今回のビブリスAに続き、今後は同Bの改良作業にも着手し、両機の運転を継続する意向を固めている。

ブルンスビュッテル発電所、運転停止長期化へ

 ハンブルク電力(HEW)は5月下旬、ブルンスビュッテル原子力発電所(BWR、80万6000kW)で昨年12月14日に起こった炉心スプレー系配管での放射性蒸気漏れについて内部調査を終えた。また、一連の責任をとって同発電所所長の辞任を発表した。報告によると、配管の破損は多量の放射線分解ガス(水素と酸素)の反応によるもので、外部への放射性物質の漏れはなく、運転員に危険はなかった。HEWは、運転員はこうした要因を考慮

に入れた上で漏洩の直後も運転を継続したと説明する一方、漏洩率の予測を誤り、損害の規模を過小評価した点を認めた。また、結果的に運転を継続したことによって発電所と連邦安全当局の関係を悪化させたとして、一連の責任をとって発電所長が辞任を申し出、HEWもこれを受理した。さらに、他の数名の幹部も、年内に予定されている全社規模の人事異動にあわせて入れ替える方針を示した。 同発電所があるドイツ北部のシュレスビヒ・ホルシュタイン州(社会民主党(SPD)と緑の党の連立)のエネルギー担当大臣(SPD)は、所長の辞任をはじめとする幹部の人事異動は、発電所の運転に対する当局側の疑いを晴らすために重要なステップと、HEW側の処分を評価している。しかし、安全当局は原因究明はまだ不完全とした上で、同社の安全文化(セイフティー・カルチャー)に問題があっ

たと指摘している。このため、同発電所の停止期間は今秋の総選挙まで長引く可能性もある。

 今年9月22日に予定されている総選挙(下院)では、再選をめざすシュレーダー首相(SPD)に対し、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)のシュトイバー候補(CSU、バイエルン州首相)が挑む。なお、16ある特別市と州レベルでは、SPDとCDU・CSUがそれぞれ8州ずつと勢力を2分し、緑の党はシュレスビヒ・ホルシュタイン州とノルトライン・ウェストファーレン州の2州でSPDと与党を組んでいる。

E.ON社、英パワージェン社買収を完了

 ドイツ最大の原子力発電会社であるE.ON社は7月1日、英国第2位の電力会社であるパワージェンの買収が完了したことを明らかにした。両社は昨年4月、買収交渉に合意し、欧州連合(EU)、英国、米規制当局の審査も順調に進み、すべての手続きが終了したもの。今回の買収により、E.ON社はパワージェン社が英国に持つ約784万kWの発電設備に加え、同社の米国子会社であるLG&E社が持つ900万kWも手中に収めたことになる。この結果、同社は、19カ国の電力・ガス市場に約3,000万の顧客を抱え、年間電力供給量は約3,400億kWhに達する。

 E.ON社は、欧米でのエネルギー市場自由化に伴い国外市場への進出を積極的に狙っている。今回の買収は、同社にとって欧州市場での拡大につながるとともに、米国進出の貴重な第1歩であると高く評価している。

 一方、同社による国内ガス最大手のルールガスの買収は難航している。7月5日に連邦政府の承認を得られたものの、これを不服とする国内のガス仲介業者は買収の中止を求める訴訟を起こした。これを受け、デュッセルドルフの上級裁判所は7月16日、買収を一時差し止める判決を下したため、買収プロセスにストップがかかった。ルールガス買収が成立すると、E.ON社は国内のエネルギー市場の3分の2以上を押えることになる。政府は、買収により、国際競争力が強化されると主張しているが、連邦カルテル庁をはじめ消費者や同業他社は国内の自由競争を阻害するとして反対している。

[ベルギー] “脱原子力法案”が議会審議へ

 国内にある7基の原子力発電所に運転期間を定めるとともに、原子力発電所の新規建設を禁止することなどを盛り込んだ“脱原子力法案”は、参事院の許可を得て6月28日に議会へ提出された。同法案は今年3月に閣議了解された後、政府の法律諮問機関の役割を担う参事院で審査を受けていた。与党3党は前回選挙で、議会の150議席のうち94議席を獲得しており、法案の成立が有力視されている。

 同法案は、原子力発電所の運転期間を一律40年とし、40年に達した発電所から順次閉鎖することを義務付けている。法案が成立すると、運転中の7基は2015年から2025年にかけて閉鎖されることになる。原子力発電所の新規建設も禁止されるため、2025年にはすべての原子力発電所が姿を消す。なお、電力供給確保に支障が生じるような事態が生じた場合には、早期閉鎖は行わないとの例外規定が設けられている。ベルギーは電力の約6割を原子力に依存しており、産業界や学識者は脱原子力をエネルギー確保だけでなく、環境や経済の観点からも非現実的として反対している。

[オランダ] 新政府、ボルセラ発電所の運転継続を支持

 5月15日に行われた第2院(下院:150議席)の選挙結果を受けて、キリスト教民主勢力(CDA)のバルケネンデ党首を首相とするCDA、フォルタイン党(LPF)、自由民主党(VVD)の3党連立政権が7月22日に発足した。総選挙では、コック前首相率いる労働党(PVDA)が大きく議席数を減らし、CDAが第1党に返り咲いた。また、右翼新党のフォルタイン党が移民規制主義を打ち出し、第2党に躍進した。

 原子力推進派のCDAが政権を奪回したことで、前政権が早期閉鎖を迫っていたボルセラ原子力発電所(PWR、48万1000kW)は運転継続がほぼ確実となった。オランダでは慣例として、選挙から連立政権樹立までの交渉や政策協議にかなりの時間を費やす。与党3党はこの間に行った政策協議の段階で、安全性と経済性を前提条件にボルセラ発電所の運転継続を支持することで合意している。それによると、電力の安定供給と京都議定書の目標達成を考慮すると、同発電所の早期閉鎖は無意味であるとしている。なお、運転期間を無期限とするか、事前に定めるかなどの詳細は明らかになっていない。

 オランダで唯一、運転中の原子力発電所である同機は、73年に運転を開始した独シーメンス社製PWR。同機は当初、運転30年目となる2003年末に閉鎖される予定だったが、同機を所有していた当時のSEP社(現在はEPZ社)は安全系統を改良し運転を延長する計画を打ち出し、94年8月には政府の認可を取得した。しかし、その直後に原子力に批判的な労働党連立政権が発足し、同11月の議会で2003年末の閉鎖が僅差で可決された。改良工事後も労働党政権は再選され、ボルセラの運転期間をめぐりEPZ社と政府は法廷で争っていた。

総選挙結果
政党今回の議席数(%)
[投票率78.8%]
前回の議席数(%)
[投票率73.2%]
キリスト教民主勢力(CDA)

43(28)

29(18)

フォルタイン党(LPF)

26(17)

0(0)

自由民主党(VVD)

23(15)

38(25)

労働党(PVDA)

23(15)

45(29)

グリーンレフト党(GL)

11(7)

11(7)

社会党(SP)

9(6)

5(4)

民主66党(D66)

7(5)

14(9)

その他

8(6)

8(5)

注:得票割合(%)は四捨五入のため、合計が100にならない場合がある。

[スウェーデン] SKB、フォルスマルクでの地質調査を開始

 スウェーデン核燃料廃棄物管理会社(SKB)は6月、エスタマル市フォルスマルクで使用済み燃料の最終処分場地質調査を開始した。もう1つの候補地であるオスカーシャムでも、年内に同様の調査が開始される見通しである。

 スウェーデン環境省は2001年11月、使用済み燃料最終処分場候補地3地点(オスカーシャム、エスタマル、ティエルプ)での詳細な地質調査実施を許可。環境省の許可を受け、SKBは地質調査実施を3地点の各自治体に正式に申請した。このうちエスタマルは2001年12月、フォルスマルク地区での最終処分場の地質調査受け入れを正式に決定。オスカーシャムも2002年3月、地質調査受け入れを決定した。ティエルプは2002年4月、地質調査受け入れを拒否した。

 地質調査の受け入れは、最終処分場自体の受け入れを意味していない。SKBは処分場の選定において技術的な実行可能性だけでなく、地元住民から支持が得られたことを処分場立地の前提にすると強調している。SKBはこれまでも「地元住民の支持がない限り最終処分場の立地には着手しない」と明言しており、過去にも住民投票で否決された建設予定地(ストゥールマン、マロ)が候補地から外された経緯がある。

 エスタマルとオスカーシャムでの実行可能性調査は2000年に完了しており、両地点とも花崗岩質だが異なる特性を有し、「深地層処分場の建設に適している可能性がある」との結果が出ている。SKBは、ボーリング調査等の詳細な地質調査に5〜6年かかるとみており、2007年までには最終的に1カ所を選定し、2008年に着工。2015年には操業を開始したい考えだ。

[ブルガリア] IAEA、コズロドイ3、4号機の安全性を強調

 国際原子力機間(IAEA)は6月下旬、ブルガリアのコズロドイ3,4号機に安全性評価ミッションを派遣。両機は同年代の西側炉と同等の安全性を有している、との評価結果を7月9日に公表した。

 ブルガリア政府の要請で実施された今回の評価作業は、IAEAのさまざまな評価チームが勧告した一連の改善作業も含め、過去10年以上に及ぶコズロドイ発電所の安全性改善・評価作業の集大成と位置付けられた。同発電所によると、1991年から2006年の間に安全性改善作業に投入される総額は7億ユーロに達すると試算されている。1991年のIAEAレビューを契機に、国際社会は同発電所の安全性改善作業に基金を拠出。1997年に開始された3,4号機の大規模な安全性改善計画は今年になって完了している。

 IAEAは今回のミッションで、両機の設計上および運転上の安全性は同年代の西側炉に比肩し、設計・運転・耐震面での安全対策は西側炉以上のレベルに達していると結論した。

 ブルガリア唯一の原子力発電所であるコズロドイ発電所は6基で構成。1〜4号機はVVER-440型炉(旧ソ連型PWR、出力44万kW)の中でも旧式に属するV-230タイプが採用されている。また5,6号機は比較的新しいVVER-1000型炉(同、出力100万kW)を採用している。2001年の原子力発電電力量は196億kWh(前年比14億kWh増)で、原子力シェアは44.6%だった。

 ブルガリア政府と欧州委員会(EC)は99年11月30日、ブルガリアのEU加盟への条件としてコズロドイ1-4号機の閉鎖で基本合意。1,2号機については2002年末までに閉鎖で合意したものの、3,4号機の閉鎖時期については意見が割れ、ブルガリア側は2008〜2010年の閉鎖を、EC側は2006年の閉鎖を主張している。

[欧 州] エネルギー政策案の議論まとまる

 欧州委員会は6月26日、エネルギーの供給確保に関するグリーンペーパー(試案)をタタキ台に進められてきた議論の結果をまとめた。2000年11月に公表されたグリーンペーパーでは、欧州連合(EU)の域外へのエネルギー依存度は20〜30年内に70%に上昇すると警告、エネルギーの自立をめざした政策を策定することが必要であると勧告していた。また、原子力発電についてはオプションとして維持する必要があるとした上で、あらゆる側面から検討を行い、とくに放射性廃棄物の管理技術や安全性確保の研究を継続する必要があるとしていた。

 グリーンペーパーでは、13項目の疑問点を示し、幅広く意見を求めた。加盟国の議会や地方自治体議会、民間企業、非政府組織などから意見が寄せられた。欧州理事会が暫定的な結論をとりまとめたほか、欧州議会や経済社会委員会、地域委員会も詳細な意見を提出した。なお、欧州委員会は、議論が行われている途中で、いくつかの施策を提案。2001年9月には、再生可能エネルギーの促進とビルの省エネを採択した。

 欧州委員会は、2004年のEU拡大によって世界の石油生産量の20%以上をEUが消費すると予想される状況の中で、地政学的な不確実性や石油価格の変動リスクを踏まえて、石油とガスの備蓄の必要性を示した。欧州委員会は、こうした考えに基づいて提案をすることを検討している。

 原子力発電をEUとしてどうするかという議論の必要性については、安全基準や放射性廃棄物の処理・輸送という問題に持続可能なはっきりとした回答を示すことができるかどうかにかかっているとの考え方を示している。現在、原子力発電によってEU全体の電力の35%が供給されているだけでなく、3億トンを超える二酸化炭素の排出が抑制されている。こうしたことから欧州委員会は、共通基準やEU全体としての規制という形で原子力安全に取り組んでいくことを検討している。EUは、加盟候補にあがっている国との交渉の中で、原子力発電所の安全について厳しい政策を維持していく意向を示している。(エリアスタディ参照)

[リトアニア] イグナリナ発電所の廃止措置で協定締結

 リトアニアは6月下旬、イグナリナ発電所(RBMK-1500、150万kW 2基)廃止措置のための費用として、1億2,500万米ドルの支援を受ける協定を出資者との間で締結した。出資者は欧州連合(EU)加盟8カ国、欧州復興開発銀行(EBRD)、ノルウェー、ポーランド。

 今回合意された支援には、EU加盟を目指す東欧3カ国の旧ソ連型炉の廃止措置を進めるため、2000年6月にEUとEBRDにより設立された基金も利用される。また、資金は非原子力分野の新エネルギー開発の準備にも利用が可能。

政府、国家エネルギー戦略の修正案を承認

 リトアニア政府は7月上旬、イグナリナ2号機の閉鎖を2009年とする一方で、今後も原子力発電オプションを保持することを盛り込んだ国家エネルギー戦略の修正案を承認した。

 リトアニアとEUは6月11日、イグナリナ発電所2号機の2009年閉鎖について基本合意に達しており、この際、閉鎖を約束する見返りに、EUが閉鎖のための広範な資金援助を行うことが取り決められた。今回のエネルギー戦略の修正は、この基本合意を受けたもの。

 修正案には、EUとの合意に基づきイグナリナ2号機を2009年に閉鎖することが明記されている一方で、今後も新規の原子力発電所の建設を選択肢として残すことも盛り込まれている。また、イグナリナ発電所閉鎖の代替電源としては、既存の化石燃料火力発電所の改良を求めている。なお、この修正案が正式に発効するためには共和国議会(セイマス)の承認が必要。

 旧ソ連型炉の軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)であるイグナリナ発電所については、EUが安全性に対して強い懸念を示しており、閉鎖への支援ならびにリトアニアのEU加盟交渉の開始と引き替えに、同国に対して1号機を2005年、2号機を2009年までに閉鎖することを要求。これに対し、議会は2000年5月、1号機を2005年に閉鎖し、2号機については閉鎖時期に関する議論を2004年以降に開始するとする国家エネルギー戦略を承認した。

 しかし、EU側は加盟の条件として2号機の2009年閉鎖の確約を求める態度を緩めず、リトアニア側と交渉が続けられていた。(原産マンスリー2002年7月号参照)

[ロシア] イランの使用済み燃料の引き取りを発表

 ロシア原子力省(MINATOM)のルミャンツェフ大臣は7月12日、ロシアがイランで建設中のブシェール発電所1号機(VVER-1000 = ロシア型PWR、100万kW)に関して、使用済み燃料をロシアが引き取ると正式に発表した。イランが核兵器開発を加速させる恐れがあるとする、米国の懸念に対応したもの。

 ルミャンツェフ大臣によると、ロシアはすでに98年11月、ブシェール発電所への燃料供給に関し、使用済み燃料をロシアが引き取るとする覚書を作成。しかし、その時点では、東欧やCIS諸国にある旧ソ連製原子炉以外の使用済み燃料の国内持ち込みが禁止されていたため、覚書の発効は不可能であった。

 今回は、2001年に外国からの使用済み燃料を再処理目的でロシアに持ち込むことを認めた法律が成立したのを受けて、改めて正式に覚書を取り交わすことになった。ロシアとイランは今年9月か10月頃に署名する見込み。

 ブシェール発電所はパーレビ国王体制下でイラン初の原子力発電所として、当時の西ドイツのKWU社が受注し、74年に129万3,000kWのPWR 2基が着工された。しかし、その後のイスラム革命により西ドイツ政府が建設中止命令を出し撤退、さらにイラン・イラク戦争の勃発により建設は中断した。

 イラン政府は95年1月、ロシア政府との間でブシェール原子力発電所建設協力契約を締結し、96年1月に先ず1号機としてVVER-1000の建設工事がスタートした。ロシア側によると、1号機は2003年12月に完成し、2005年中には営業運転に入る見通し。また、2号機についても1号機が完成し次第、本格的に建設が開始される予定。2号機は、VVER-1000をベースとしながらもKWU社の残した設備を利用したPWR(129万3,000kW)となる。ロシアはこのほか、ブシェール3、4号機(VVER-440、44万kW 2基)の増設についても、イランとの間で検討を進めている。

 イランでの原子力発電所建設についてロシア側は、同国の核兵器保有を懸念する米国の強い反発を受けて、使用済み燃料の引き取りに加え、ブシェール発電所の一連の建設計画が完成した段階で、イランでの原子力発電開発から手を引く考えを明らかにしている。

MINATOM、使用済み燃料再処理事業への必要投資額を試算

 ロシア原子力省(MINATOM)のシンガリェフ広報政策部長は7月9日、使用済み燃料の再処理事業展開のため、ロシアは2010年までに11億米ドル、2030年までに34億米ドルの投資を必要としているとの試算結果を明らかにした。「外国の使用済み燃料のロシアへの輸入を認める関係法制定から1年」と題された円卓会合の席上で語ったもの。MINATOMによれば、投資の財源は、電力料金と外国からの使用済み燃料輸入による利益で賄われる見込み。

 ロシアは現在、旧ソ連型の原子炉が稼働しているブルガリアとウクライナから使用済み燃料を受入れている。シンガリェフ氏は、昨年成立した関連法案に従ってロシアが使用済み燃料をこれらの国以外から実際に受入れるのは、市場での厳しい競争を考えると5〜7年後になるとの見通しを示した。

 ロシアの昨年の使用済み燃料受け入れ実績は、ブルガリアから64トン、ウクライナから100トン。一方、国内で発生する使用済み燃料は年間約850トン。これに対して、国内で行われている使用済み燃料の再処理は、年間130〜150トンに留まっている。

電力輸出体制を巡り送電会社とロスエネルゴアトムが合意

 ロシア国内の送電網を運営しているロシア単一電力系統(RAO EES)と原子力発電コンツェルンのロスエネルゴアトムは7月1日、長年にわたり両者の懸案となっていた電力の輸出権を含む、電力系統の使用に関する新しい取り決めを結んだ。

 RAO EESのチュバイス最高経営責任者(CEO)とロスエネルゴアトムのサラエフ総裁が署名した合意文章では、ロスエネルゴアトムがRAO EES傘下で電力輸出のロシア側の窓口を務めているInter-RAO EESの40%を獲得することになっている。また、両社は国内市場への電力供給量に比例した量の電力輸出権を有する。電力の輸出入に当たっては、Inter-RAO EES内に、両社によって電力輸出または輸入に関する契約を一括して代行する共同輸出入運用機関が設立される。

 RAO EESとエネルゴアトムの電力輸出における送電網使用を巡る対立は、97年に国の一般会計の不足からエネルゴアトム傘下の原子力発電所が独立採算制に移行した時点から発生。一旦は電力輸出による収入を、発電電力量に比例して両社に配分することで合意に達したが、2001年に撤回され、同年の輸出収入2億5,100万米ドルの配分は宙に浮いたままとなっている。ロシアは発電電力量の2.4%をフィンランド、ベラルーシ、カザフスタンなどの近隣国に輸出している。

 ロシアでは92年の独立後、電力供給部門がソ連時代の発送配電一貫体制から、発送電部門と配電部門に分割された。配電部門は地方毎の電力会社が担うことになり、発送電部門はRAO EESとロスエネルゴアトムが担当することになった。RAO EESは主要発電設備(火力、水力)を所有・運転するほか、系統運用を行うロシア単一電力系統中央給電指令所を子会社に持つ。また、配電部門の地方電力会社も74社中、2社を除く全てがRAO EESの傘下にある。

[EU−ロシア] ロシアへの使用済み燃料輸出で国際監視協議会が設置

 ロシアが外国の使用済み燃料の再処理・貯蔵事業を開始したのを受け、ロシア連邦議会下院(デューマ)とEU議会は6月下旬、ノルウェーのベロナ環境財団の仲介により、EU諸国からロシアへの使用済み燃料輸出を合同で監視する国際合同協議会を設置することを取り決めた。

 新しく設置された「使用済み燃料管理と放射性廃棄物の安全性に関する合同協議会」は、EU議会のスタエス議員(ベルギー選出、緑の党/欧州自由同盟)とデューマのミトロフィン議員が共同で議長を務める。協議会のメンバーは、EU加盟国によるロシアへの使用済み燃料輸出計画について情報を交換し、EUの法規に違反している場合や放射性物質による環境汚染の恐れがある場合には、輸出国に対して計画の中止を働きかける。

 同協議会は手始めに、ロシアにおける使用済み燃料輸入事業の採算性や廃棄物管理の現状について、原子力安全の専門家のよる分析を行い、報告書を作成する。この報告書は、使用済み燃料をロシアへ移送するにあたって、欧州委員会(EC)が実現性のある戦略を策定するための資料として用いられる。また、同協議会は、放射性廃棄物管理分野に関するロシアへの将来的なEUの支援を促進する活動も行う。今年10月にはEU議会のメンバーがロシアのムルマンスクを訪問し、各種原子力関係施設を視察したり、地元関係者との間で環境浄化活動に関する会合を開くことが決まっている。

 EU法では、加盟各国が第三国へ核物質を輸出する際、ECの承認を得ることを義務付けている。また、EU域内並びに対域外間での放射性廃棄物輸送についての監督と管理を定めた92年2月3日付けユーラトム通達は、技術的、法的、行政的に安全に管理できない国に対して、加盟国が放射性廃棄物を輸出することを禁止している。再処理を国の基本政策にしていない加盟国では、使用済み燃料が放射性廃棄物とみなされ、こうした国がロシアへ使用済み燃料を移送する場合、問題が発生する可能性がある。このため、EU側としても、ロシアへの使用済み燃料移送が妥当かを評価しなければならず、今回設立された国際協議会がそうした責務を負うことになった。

 さらにEUは、使用済み燃料に関しても、放射性廃棄物と同様の輸出規則を設定する方向で検討を進めており、合同協議会を通して、ロシア側に対してEUと同等の基準の採用を求めていく方針。

 一方、ロシア連邦原子力放射線安全局(GAN)は、ロシアの使用済み燃料契約の現状と将来展望についてMINATOMがまとめた報告書を、幾つかの基本的な立場に合意できないとして受け取りを拒んでいる。報告書は大統領に対するもので、主要閣僚によって大統領への提出が承認されていた。GANのビシネフスキ局長は、MINATOMのルミュアンツェフ大臣にあてた書簡の中で、ロシアは国内的にも国際的にも、大規模な使用済み燃料の取扱いを管理する法的根拠を持っていないと指摘。ロシアが行政的にも技術的にも外国の使用済み燃料を受入れる余裕があるとするMINATOMの主張は誤りであり、国内で唯一稼働中のオゼルスク(旧名:チェリャビンスク-65)にある生産合同マヤクの第1再処理工場(RT-1、年間処理能力400tU)は放射性廃棄物管理に重大な問題を抱えており、外国の使用済み燃料を再処理するには大規模な改修が必要であるとの考えを示した。

 現在、MINATOMでは、いくつかの東欧諸国との間で、ソ連時代に建設された原子力発電所から出る使用済み燃料の引き取り契約を結んでいる。92年から2001年までの間にロシアが引き受けた使用済み燃料は2,030トンで、このうち1,608トンがウクライナからのもの。

 なお、ロシアでは外国の使用済み燃料再処理事業のため、年間処理能力1,000〜1,500tUの第2再処理工場(RT-2)を、2020年の運転開始を目指してジェレズノゴルスク(旧名:クラスノヤルスク-26)鉱山化学コンビナートに建設中。同コンビナートでは、3万3,000立方メートルの使用済み燃料乾式貯蔵施設の建設が近く開始されることになっている。(原産マンスリー2002年7月号参照)

 ロシアでは、92年に制定された環境保護法第50条により、放射性廃棄物や放射性物質の中間貯蔵および最終処分を目的とした海外から国内への持ち込みが禁じられていたため、海外の旧ソ連型炉からの使用済み燃料を除き、外国の使用済み燃料の商業再処理ができなかった。しかし、外国の使用済み燃料の中間貯蔵、再処理受託を目的に、国内への使用済み燃料の受入れを可能にする関連法案が2001年7月に成立。国際的な安全基準が満たされていることを条件に、特別委員会の承認のもとで、国内へ持ち込むことが可能になった。

[ウクライナ−ロシア] K2/R4完成のためのローン契約締結

ロシアのフリステンコ副首相は6月25日、ウクライナのディユビナ第一副首相との間で、建設中のフメルニツキ2号機(VVER-1000=ロシア型PWR、100万kW)とロブノ4号機(同)の2基を完成させるプロジェクト(K2/R4計画)に対し、1億4,400万米ドルを融資する契約に調印した。

チェルノブイリ発電所(RBMK-1000型炉、100万kW 4基:閉鎖)の閉鎖の代替として、ウクライナと欧州復興開発銀行(EBRD)の間で協議が進められてきたK2/R4計画への西側の融資が不調に終わった。このため、ウクライナは2001年12月、ロシアの協力により2基の発電所を完成させるための合意文章に調印。2002年春の作業開始を目指して、ロシア側は必要な予算措置を2002年度予算に計上していることを明らかにしていた。(原産マンスリー2002年4月号参照)

[ウクライナ] クチマ大統領、原子力発電開発の推進を表明

クチマ大統領は、政府の主要閣僚を前に、建設中の原子力発電所の完成や、国営原子力発電会社エネルゴアトムの負債解消にむけた取組みなど、原子力発電開発のスピードアップを訴えた。

大統領は、7月上旬に開催されたキナク首相を含む主要閣僚と産業界の代表者との特別会合の場で、原子力発電開発の推進は将来の発展にとって必要不可欠であり、経済の重点分野として位置付け問題の解決に当たらねばならないと語った。

大統領は、新規発電所建設や運転中の発電所のアップグレード作業のペースが不十分であると指摘。とくに建設が中断されているフメルニツキ2号機(VVER-1000、100万kW)とロブノ4号機(同)の2基を完成させるプロジェクト(K2/R4計画)については、財源確保のための追加的な枠組を策定し、作業をスピードアップするよう政府に求めた。今年初頭にウクライナ政府が同計画に割り当てた予算は僅かに3,200万米ドルで、その後にロシアとの間で融資の契約が取り交わされたものの、予算不足は依然深刻。ウクライナは、2基の発電所完成に必要な資金を約5億米ドルと見積もっている。

エネルゴアトムについては、大統領は危機的な財政状態にあると強調。電気料金の現金支払率がこの3年間で3%から90%に劇的に改善したにも係らず、同社は電気料金の73%しか受け取っていない。また、現在、総額13億7,700万米ドルに達しているエネルゴアトムが抱える負債は、結果的に政府の負債を増加させることになっていると指摘した。財政難からエネルゴアトムは、原子力発電所の定期検査向けの必要な資材の半分、また資金についても3分の1しか準備できていない。こうした状況を踏まえ、クチマ大統領は閣僚らに対し、関係省庁による作業グループを設置して、エネルゴアトムの抱える諸問題の解決に当たるように指示した。

[カザフスタン] ウラン生産量を拡大へ

 カザフスタンの国営原子力会社カザトムプロムのザキシェフ社長は、今後30年間で同社を世界一のウラン生産者にする考えであると語った。カザトムプロムとカザフスタン先端技術協会の共催で7月上旬に同国で開催された、ウラン産業に関する国際会議の場で明らかにした。会議には企業や大学の関係者のほか、ロシア、フランス、カナダ、ドイツ、ウズベキスタン、キルギスタン、カザフスタンから関係者が参加した。

 ザキシェフ氏は、同社のウラン生産量を現在の年間2,500トンから、2028年には1万5,000トンに拡大させるとした上で、そのための技術開発や組織改革などの施策を実行すると語った。具体的には、国内での新しいウラン鉱山の開発に加えて、ロシアの原子力関係企業との合弁事業なども進める。カザトムプロムは、ウラン増産のために国内のウラン関連産業に対して行われる投資は、総額で5億4,000万米ドルの規模になると試算している。


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