[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2002年8月中旬〜9月中旬)

[中  国]

嶺澳2号機が送電開始

 中国通信によると、広東省で建設中の嶺澳2号機(PWR、98万5,000kW)が9月14日に送電網に接続した。同機は7月18日に燃料の初装荷を完了、8月27日には初臨界に達していた。

 嶺澳2号機は、当初の計画より3ヵ月早く発電を開始したことから、年内に営業運転に入る可能性が高くなった。

 嶺澳2号機は第9次(1996年〜2000年)5ヵ年計画に組み込まれた8基の原子力発電所の1つ。なお、同計画に盛り込まれている秦山U-1号機(PWR、64万2,000kW)は4月、嶺澳1号機(PWR、98万5,000kW)は5月に営業運転を開始している。

[パキスタン] 原子力委員長、新規原子力発電所建設を言及

 パキスタン原子力委員会(PAEC)のブット委員長はこのほど、原子力発電所2基(30万kWと60万kW)を増設する計画を検討中であることを明らかにした。

 新規原子力発電所の建設が検討されているサイトは、すでに原子力発電所が稼働中のチャシュマとカラチ。ブット委員長は、炉型や建設スケジュールについては言及していないが、両機が営業運転を開始すれば原子力発電量のシェアは総発電電力量の10%となる見通しを示した。(9月)

[米国 − 日本] ドミニオン社、取り替え用原子炉機器を三菱重工とWHに発注

 ドミニオン・エナジー社は、三菱重工業/ウェスチングハウス(WH)連合との間で、バージニア州にある原子力発電所4基のベッセルヘッドと呼ばれる圧力容器の上部構造物と制御棒駆動装置の取替え工事を発注することで合意し、契約に署名した。

 4基の原子力発電所は、ノースアナ1、2号機(PWR、1号機=97万1,000kW、2号機=96万3,000kW)とサリー1、2号機(PWR、1号機=84万2,000kW、2号機=84万7,000kW)で、燃料装荷で停止する2005年春に工事が行われる予定。総経費は1億7,500万ドル。(9月)

[米 国] DOE、転換施設建設で契約

 米エネルギー省(DOE)は8月28日、フラマトムANP社を幹事会社とするコンソーシアム(企業連合)との間で、ウラン転換工場の建設契約を結んだ。

 それによると、軍事施設から生じる劣化六フッ化ウランのU3O8に転換する工場をケンタッキー州パデューカとオハイオ州ポーツマスに建設する。同コンソーシアムは5年以内に両施設の操業を開始する予定。建設費用は5億5,800万ドルと見積もられており、契約期限は2010年8月3日までとなっている。

 DOEは現在、劣化六フッ化ウランをテネシー州、オハイオ州、ケンタッキー州の3ヵ所の施設で合計70万4,000d保管しており、その処置方法が検討されていた。今のところ、劣化六フッ化ウランを転換してできたU3O8は、そのまま処分するか燃料として利用するか2つの方法が考えられている。

 このコンソーシアムはフラマトムANP社のほか、デュラテック・フェデラル・サービシズ社、バーンズ&ロー・エンタープライズ社、CH2Mhill社、米国濃縮会社(USEC)の5社で構成されている。

NRCが通報・報告規制の改定提案

原子力規制委員会(NRC)は8月26日、安全関連などの事象に関する通報・報告要件の改定を提案した。使用済み燃料の貯蔵設備と監視付き回収可能貯蔵(MRS)設備に対する報告要件を変更するもので、原子炉サイトに対する報告要件との整合性をはかるのがねらい。また、提案された規則では、保障措置に関する事象の事後報告を書面で提出するよう変更されている。

NRCは、通報・報告要件の改定には、通報項目の削減・削除のほか一括通知が盛り込まれている。また、通報期間にも幅をもたすようになっているため、認可取得者の負担が軽減されると説明している。

このほかNRCは、緊急時に一般の人やマスコミからの問い合わせに迅速にこたえられるよう、新たな要件を追加した。NRCの説明によると、安全にとって最も重大な問題(事象)に認可取得者とNRCが努力を払えるようにするだけでなく、そうした事象に関する情報をタイムリーに伝えるようにすることが目的。

発電炉で軍事用トリチウム生産へ

原子力規制委員会(NRC)は9月24日、テネシー峡谷開発公社(TVA)に対し、ワッツバー原子力発電所でのエネルギー省(DOE)向けの軍事用トリチウム製造を許可したと発表した。リチウムを入れた可燃性吸収棒を炉内に装荷してトリチウムを生産する。この方法はDOEが開発したもので、炉内から取り出された照射済みの吸収棒は、サウスカロライナ州サバンナリバーに送られて、ここでトリチウムが回収されることになっている。

NRCによると、装荷が許可される吸収棒の本数は最大2304本で、18ヵ月の運転サイクルで照射されたあと取り出される。トリチウムの生産は、同発電所の運転期間中にわたって行われる。

[カナダ] ブルース・パワー社、自社の財政面の健全性を言明

ブルース発電所(A:1〜4号機:CANDU、各90.4万kW:96〜98年から運転休止/B:5〜8号機 各84.0万kW、CANDU=運転中)を運転しているブルース・パワー(BP)社は9月12日、カナダ原子力安全委員会(CNSC)によるヒアリングの場で、最大出資者であるブリティッシュ・エナジー(BE)社の経営危機による同社の財政面への影響はなく、債務弁済能力があると言明した。

BP社は、英国BE社のカナダ法人であるBEカナダ社(82.4%)、カナダのカメコ社(15%)、ブルース発電所の2労組(合わせて2.6%)がブルース発電所の運転のために設立した会社。2001年5月にCNSCから同発電所の運転認可の発給を受け、同発電所を所有するオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社との間でリース契約を結び運転者となった。現在は、休止中のブルースA発電所3、4号機の運転再開の準備を進めている。

CSNCがBP社に発給した運転認可では、長期間の運転停止が生じた場合に備えて、収入がなくても6カ月間はプラントの維持・管理ができる財務保証を要求している。具体的には、BP社は、偶発事象引当金として2億6,400万カナダドルを用意する能力があることを、3カ月毎にCNSCに示さなくてはならない。このうち、2億2,200万カナダドルをBE社が分担し、残りの4,200万カナダドルをカメコ社が分担することになっている。

CNSCは8月29日、最大出資者のBE社の財政状態悪化によりBP社の運営に何らかの影響が生じた場合でも、今後も運転認可条件を満たす能力があることを証明するよう書面でBP社に要求した。これに対してBP社は9月9日、同社の事業が収益をあげている点を指摘して、独自の偶発事象引当金の創設や保険への加入などにより、仮にBE社が支払不能に陥ったとしても運転認可条件はクリアーできるとする回答をCNSCに提出した。

今回のヒアリングは、BP社の運転認可に対する通常の審査であるが、実質的にBE社の財務問題がBP社の債務弁済能力に影響するかを審議する場として設定された。このヒアリングには、BP社のホーソーン最高経営責任者(CEO)とフーラー副社長が出席した。

ホーソーン氏は、BP社は引き続き必要な財政支出計画を実行できる資金を確保できると述べるとともに、CNSCが懸念している同社へのBE社による債務保証の継続問題に関しても、短期間で適切な処置を決定して、解決できると説明した。同氏はまた、BP社と出資者との関係は財政面よりむしろ運用面に主体があるとした上で、現在運転中のブルースB発電所4基と再開準備中の同A発電所2基を安全に運転するための専門知識をBE社からすべて得ているとも指摘した。

ホーソン氏は、BP社としては財政支援は必要としないが、出資者に対しては引き続き、電力取引契約や、計画外停止で損益が発生した場合についての連帯保証を求めたいとしている。こうした財務保証については従来、BE社とカメコ社が保証するというかたちをとっていた。

[英 国] 王立工学アカデミー、エネ政策案は非現実的と非難

 王立工学アカデミーは8月30日、今年2月に公表された長期エネルギー政策に関する内閣府パフォーマンス&イノベーション部(PIU)の報告書について、「天然ガスの供給保障や再生可能エネルギーを過大評価しており非現実的」とする見解を発表した。

 "The Energy Review"と題したPIUの報告書は、2050年までをにらんだ英国のエネルギー政策のありかたについて述べたもので、年末にまとまることになっている政府のエネルギー政策のタタキ台として位置付けられている。具体的には、再生可能エネルギーと省エネの拡大の重要性を強調する一方で、原子力発電オプションの堅持を提案している。

 今回、工学アカデミーがまとめた報告書は、PIU報告書が天然ガスを豊富で安価な資源と仮定している点に着目。2020年までに英国は天然ガスの9割を輸入に依存する可能性が高い、とした貿易産業省(DTI)の予測を引用して懸念を表明した。同アカデミーは、ロシアからの輸入を見越したパイプラインの整備やガス備蓄施設の建設などで、2020年までに130億ポンドのコストがかかると試算している。

 また、再生可能エネルギーのシェアを2020年までに20%にするというPIUのシナリオについても、楽観的にすぎるとの疑問を提示。デンマークを例に挙げ、出力が不安定な再生可能エネルギーのシェアが15%前後に達すると、系統安定性が大きく損なわれると指摘した。さらに、PIUが建設を提言している出力2200万kW分の風力発電計画を現実的でないとした上で、700万kWの達成が限度との見解を示した。さらに再生可能エネルギーを拡大するにあたっては、系統安定性を維持するためのバックアップ用として1600万〜1900万kWの従来発電設備が必要であり、そのためには10億ポンドのコストがかかるとした。同アカデミーはPIUが期待をかけるバイオマス・エネルギーについては、「まだ実用段階になく、現状ではダンジネスB発電所を代替するだけでケント州(イングランド南東部)全土に植林する必要がある」とPIUの認識の甘さを批判した。

 原子力については、PIUの提言する「原子力の代替が見つからない場合に備え原子力オプションを堅持する」との消極的な姿勢に疑問を提示。新規原子力発電所の早期着工を強く推奨した。

 なおDTIと環境・運輸・地域問題省(DEFRA)は年内に、政府としての正式な『エネルギー白書(政策)』をとりまとめることになっている。

BNFL、AP1000型炉の経済性を強調

 英原子燃料会社(BNFL)は9月5日、新型炉AP1000により原子力発電の経済性が飛躍的に向上する見通しであるとした報告書を政府に提出した。AP1000はBNFL傘下の米ウェスチングハウス社(WE)が開発した出力100万kWの最新型PWR。

 今回の報告書は、現在政府が策定作業を進めているエネルギー政策の見直しに対して、BNFLとしての見解をとりまとめたもの。報告書は外部の多数の専門家によって作成されたもので、BNFLは原子力発電がコスト面で大きな競争力があるという事実が外部から証明されたと評価している。

 BNFLはすでに、AP1000の認可前審査を規制当局に要請するなど、英国内で具体的な準備を進めている。なお、すでに米国で認可されているAP600(出力60万kW)に続き、同設計をスケールアップしたAP1000についても2004年までには米国で設計認証が得られると期待されている。

 BNFLの試算によると、AP1000が1年間発電するのに要する原子燃料は25トンだが、石炭火力で同じ量を発電するためには年間に約300万トンの石炭が必要になる。仮に世界中の原子力発電所をガス火力で代替した場合、CO2の排出量は年間10億トン増加する。石炭を使用すると、倍の20億トンのCO2が排出される。こうしたことからBNFLは、政府が新たな長期エネルギー政策を策定する上で、原子力や再生可能エネルギーのようにCO2排出量の少ない代替エネルギー源を維持・開発し、安定した電力供給を保障することは避けられないとの認識を示した。

[ドイツ] SPD・緑の党連立与党が政権維持

 9月22日に行われたドイツ連邦議会(下院、基本定数598)総選挙は、シュレーダー首相率いる社会民主党(SPD)と90年連合・緑の党(以下、緑の党)の与党連合が僅差で過半数を制した。シュトイバー・バイエルン州首相を首相候補とする最大野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の政権奪回はならなかった。今回の選挙は、SPDとCDU・CSUの両陣営が得票率では38.5%で並び、SPDがわずかに9000票をリードする大接戦となった。勝敗の決め手となったのはSPDの連立相手である緑の党で、同党は議席、得票率とも前回を上回った。

 このため、新政権の人事や政策で、緑の党の発言力が増すことは避けられないと見られている。SPDと緑の党は今後1カ月以内に連立協定をとりまとめ、各党大会での了承を得た後、連邦議会での首相指名を経て、新政権を正式に発足させる。脱原子力法の撤回を視野に入れていた原子力界にとって、予想以上に厳しい選挙結果が突きつけられた格好。

 選挙管理当局の発表によると、連立与党はSPDが251議席、緑の党が55議席で、両党は合計306議席を獲得。これに対し、野党の保守・中道勢力はCDU・CSUは248議席、自由民主党(FDP)は47議席で合計295議席となった。SPDは前回(1998年)より議席を減らしたものの、緑の党が躍進した結果、過半数を確保した。民主社会党(PDS:旧東ドイツ共産党)は、比例区の得票率が議席配分に必要な5%に達せず、小選挙区当選の2議席にとどまった。

 選挙戦は当初、経済再建を掲げるシュトイバー氏率いる保守陣営が大きくリードし、政権交代は確実とみられていた。しかし、SPD陣営は8月、欧州を襲った大洪水への素早い対応やイラク攻撃への反対表明などで支持を徐々に伸ばし、両者は投票直前、互角に並んだ。また、大洪水は環境政党である緑の党にとって追い風となった。今後の新政権にとっては、外交面ではこじれた米国との関係修復、内政面では400万人に上る失業者や10%近い失業率を抱える雇用問題の解決が大きな課題となる。

連邦議会選挙結果
政党今回の議席数(%)
[投票率79.1%]
前回の議席数(%)
[投票率82.2%]
社会民主党(SPD)251(38.5)298(40.9)
キリスト教民主同盟(CDU)190(29.5)198(28.4)
キリスト教社会同盟(CSU)58(9.0)47(6.7)
緑の党55(8.6)47(6.7)
自由民主党(FDP)47(7.4)43(6.2)
民主社会党(PDS)2(4.0)36 (5.1)
その他0(3.0)0(5.9)
合 計 *603669

(*注)選挙区減少(328→299)に伴い今回(第15回)より定数は656議席から598議席に変更された。なお、小選挙区当選者が配分数を超えた場合は「超過議席」が認められるため、実際の議席数は定数を上回ることがある。

 SPD・緑の党連立政権下では、原子力発電所の早期閉鎖やサイト内の中間貯蔵所建設など、今年4月に成立した改正原子力法にしたがい脱原子力政策が実行に移される。運転中の19基の中では、最も古いオブリッヒハイム発電所(PWR、35万7000kW:1968年運転開始)が2002年末に同法が定める発電電力量の上限に達する見通し。同機を所有するエネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)社は、他の発電所の発電量を割り当てることにより2002年以降も運転を続ける意向を固めているが、法改正後、初めてとなる発電所間での電力量の移譲が円滑に実施されるかどうかは今後の交渉にかかっている。

 このほか、今年の2月以来、運転を停止しているブルンスビュッテル発電所(BWR、80万6000kW)の運転再開も現政権下では見通しが立たない。同機は、昨年12月に起こった炉心スプレー系配管の放射性蒸気漏れが原因で運転を停止している。同機を所有するハンブルク電力(HEW)はすでに内部調査や人事処分を終えているが、シュレスビヒ・ホルシュタイン州(SPDと緑の党の連立)当局は引き続き徹底した原因究明を求めている。HEWは、総選挙で原子力推進派のCDU・CSUが政権復帰することが最良の解決策として切望していた。

SPD、州議会選でも勝利

 総選挙と同じく9月22日に行われた旧東ドイツ北部のメクレンブルク・フォアポンメルン州議会選挙は、若年失業者対策を訴えた与党SPDが勝利し、第1党を維持した。各党の得票率はSPDが40.6%(前回34.3%)、キリスト教民主同盟(CDU)が31.3%だった。同州では、東西再統一を機に5基あった旧ソ連型発電所をすべて閉鎖したため、現在稼働中の原子力発電所はない。

[スイス] ニトバルデン州での住民投票、低・中レベル処分場建設を否決

 低・中レベル放射性廃棄物処分のための地下研究所建設の是非を問う住民投票が9月22日、ベレンベルクのあるニトバルデン州で行われ、賛成8204票(42%)、反対1万1112票(58%)となり、反対が賛成を上回る結果となった。ベレンベルクでの廃棄物施設の建設をめぐる住民投票は、今回が2度目。1995年に実施された前回の住民投票では賛成48%対反対52%の僅差で、処分場の建設が却下されたが、建設を地下研究所に絞った今回は反対がさらに票を伸ばした。

 今回の結果についてロイエンベルガー・エネルギー連邦大臣は原子力に対する反対というより、いわゆる“NIMBY”心理により地元が廃棄物施設の立地を拒んだためと冷静に受け止め、引き続きベレンベルクに代わる候補地探しに取り組む意向を明らかにした。同相はまた、廃棄物の処分を国外に委託することは論外だと否定した上で、あくまでも国内で解決策を見つける方針を示した。

 ベレンベルクは93年にスイス放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)によって、処分場の建設候補地として選定された。95年の住民投票の結果を受けて、連邦政府は同地での建設は研究施設に限定することに加えて回収可能な貯蔵方法を導入するなど、従来の建設計画を見直した。計画の変更を受け、ニトバルデン州議会は昨年10月、建設に了解したが、今回の住民投票で建設の前提となる州民の合意が得られなかったことから、計画は白紙に戻ることになった。

 今回の結果について、スイス原子力協会(SVA)は廃棄物貯蔵の安全性に疑問を投げかけるものではないとした上で、国内でもビュレンリンゲンで中間貯蔵施設(ZWILAG)が安全に操業中であることを強調した。SVAは、国外では低・中レベル廃棄物処分場が問題なく稼働しているだけでなく、フィンランドや欧米では高レベル廃棄物処分場の建設も具体化している実例を挙げて、国に対してより積極的に廃棄物問題に取り組むよう求めている。

 地下研究所建設の是非を問う住民投票と同じ日に実施された電力市場自由化法の賛否をめぐる国民投票は、賛成97万1775票(47%)、反対107万8112票(53%)となり、同法は否決された。スイス政府は世界的な自由化の流れに呼応し、99年12月に電力市場法案(EMG法案)を可決し、段階的な市場開放をめざした。しかし、労働組合や左翼、環境保護団体は失業増や国外企業の参入などを理由にEMG法に反対。電力業界も移行に伴うコスト抑制のため、期間を延長すべきと主張してきた。そうした中で、2001年4月までに国民投票の実施に必要な有効署名数5万を大きく上回る6万6000人の署名が集まり、国民投票の実施が決まっていた。

 アルプス山系を抱えるスイスは、重要な電源として水力が総発電電力量の約6割を占めている。原子力は5基の発電所により、水力に次ぐ35%の電力を供給している。SVAによると昨年は、過去最高の253億kWhを記録、平均稼働率は90.6%に達した。

下院、再処理路線を堅持

 改正原子力法案を審議中のスイス国民議会(下院)は9月23日、全州議会(上院)が可決した再処理の10年間の一時停止(モラトリアム)について賛成76対反対77の僅差で(2名は欠席)否決した。このため、この案件は上院に差し戻されて再度、審議されることになった。

 改正原子力法案は、政府が2000年以降の原子力開発計画を視野に入れて策定し、昨年3月に議会に提出したもの。再処理問題は、政府内でも意見が分かれたが、最終法案には、スイスの電力会社が英、仏企業との間で結んでいる再処理契約が切れる2006年以降は、使用済み燃料をすべて直接処分とする方針が盛り込まれていた。これに対し、上院は昨年末、2006年から10年間を再処理モラトリアムにするという修正案を可決。下院は今回、上院の修正案も否決し、従来通り再処理路線を堅持する決定を行った。

 これまでの審議で上下両院は、運転中の原子力発電所に運転期限を設定しないことで合意している。99年に政府が受理した2件の反原子力国民請願(イニシアチブ)の取り扱いについては、改正原子力法を政府代替案として示した上で2003年末までに国民投票を実施する方針を固めている。また、高レベル放射性廃棄物の処分は国内処分を原則としながらも、厳しい条件付きで国外処分も認める方向にある。

 両院は今後、再処理問題を再審議するほか、原子力施設の立地に関する権限をカントン(州)から連邦政府に移譲すること、再生可能エネルギーの助成のため原子力発電に0.3スイスセント/kWhを課税することなどについて審議する予定。

[オランダ] 自由民主党、原子力発電所の新規建設を示唆

 今年5月の選挙により3党連立政権に加わった自由民主党(VVD)は9月上旬、来春予定のグローニンゲン州の地方選挙で原子力発電所の新規建設を公約に盛り込む方針を明らかにした。VVDのスポークスマンによると、建設計画はまだ第1ステップに過ぎないという。グローニンゲン州は原子力利用に否定的ではない。同州は、オランダ北部の中心都市。四方を運河で囲まれ、約17万人の人口を抱える。

 オランダで現在運転中の原子力発電所は、南部ゼーラント州にあるボルセラ(PWR、48万1000kW)だけ。前政権は同機の早期閉鎖を迫っていたが、今春の政権交代により運転継続が認められた。

[ロシア−米国] ウズベキスタンの高濃縮ウラン、ロシアへ移送で合意

周辺国の政情不安を受けて、ロシアと米国は9月中旬、ウズベキスタンの研究炉から高濃縮ウラン約70kgをロシアに移送することで合意した。

高濃縮ウランはタシケント近郊のウルグベクにあるウズベキスタン科学アカデミーの原子力研究所の研究炉(タンク型VVER、熱出力1万kW、燃料ウランの濃縮率36%)のもので、情勢が不安定なタジキスタン、キルギスタン、アフガニスタンに隣接しているために、核物質防護上、問題があると指摘されていた。ロシア原子力省(MINATOM)によると、10月か11月には米露合同で、厳重な警備体制の下でロシアへ移送される見通し。ロシアに移送された高濃縮ウランは、同国内で低濃縮ウランに変換される。


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