[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2002年9月中旬〜10月中旬)

米国:20年ぶりに2大学に原子力工学課程設置

−原子力人材養成の整備へ

 原子力工学教育の退潮が危惧されてきた米国で、このほど2つの大学に新規に原子力工学課程が設置されることになった。この大学は、サウスカロライナ州立大学(South Carolina State University)とサウスカロライナ大学(University of South Carolina)。米国の大学では1955年に原子力工学教育がスタート。原子力工学科や原子力工学課程を持つ大学は70年代はじめに50近くまで増加したが、近年は最盛期の半分まで減少した。学生数も減少し、米国内の原子力産業が維持できないレベルまで落ち込むのではないかとの懸念が関係者から表明されるようになった。

 こうしたなか、商業用の発電炉(7基)や核燃料成形加工工場、低レベル放射性廃棄物処分施設、エネルギー省(DOE)のサバンナリバーサイトなどを抱えるサウスカロライナ州の2つの大学に原子力工学課程を設置することが同州の高等教育委員会によって認められた。DOEのエイブラハム長官は、最後に原子力工学課程が設置されてからすでに20年以上も経っている中で2つの大学が原子力工学教育に乗り出したことを高く評価した。

 DOEは、サウスカロライナ州立大学が原子力工学課程を設置することを支援するため、2000年から60万ドルを供与してきた。同大学の原子力工学課程は学部に設置され、ウィスコンシン大学と共同で運営される。原子力を専攻する学生は、どちらの大学でも単位を取得することができるが、サウスカロライナのキャンパスでほとんどの単位の取得が可能。原子炉物理などのコースを履修する学生は、ウィスコンシン大学のマディソンキャンパスにある研究炉を利用できる。サウスカロライナ州立大学では、すでに11名の学生が原子力工学課程に登録している。同大学では、新年度には約30名の学生が履修するとみている。

 10月8日には同大学のキャンパスで、ウィスコンシン大学との共同運営による原子力工学課程の設置を祝う昼食会が開催された。席上、挨拶にたったDOE原子力科学技術局のマグウッド局長は、米国内の原子力技術者のうち黒人が占める割合はわずか3〜4%に過ぎないと指摘した上で、伝統的な黒人大学として知られているサウスカロライナ州立大学に原子力工学課程が設置されたことは意義深いと述べた。また同局長は、原子力技術者の初任給は年間5万1000〜6万5000ドルの間にあり他の技術者に比べても最高ランクに位置付けられていると指摘、原子力技術者が待遇面で優位にある実態を紹介した。さらに、共同での原子力工学課程の運営は、こうした方策を検討している他の大学にとっても理想的なモデルになるとの考えを示した。

 一方、サウスカロライナ大学も同日、原子炉の設計や安全、水素製造、材料利用などを専攻分野とする原子力工学の修士課程と博士課程を大学院に設置すると発表した。すでに15名の学生が登録されている。同大学は、新年度には約30名が登録するとみている。

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