[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2002年9月中旬〜10月中旬)

[中  国]

秦山V-1号機、初臨界を達成

 カナダ原子力公社(AECL)によると、中国で進められている秦山V期プロジェクトの1号機(CANDU、72万8,000kW)が9月20日に初臨界に達した。

 同プロジェクトはカナダ政府の支援のもと1997年にスタート。来年2月に営業運転を開始する予定。1号機は1998年6月に着工し、2002年8月に燃料の初装荷を完了した。2号機は98年9月に着工し、来年12月に営業運転を開始する予定になっている。建設費は2基合わせて40億j。

 中国は今年に入り、秦山U-1号機(PWR、98万5,000kW)が4月、嶺澳1号機(PWR、98万5,000kW)が5月にそれぞれ営業運転を開始している。また、9月14日に送電を開始した嶺澳2号機(PWR、98万5,000kW)は現在、総合調整試験と引渡し準備のピークを迎えており、年内の営業運転開始を目指している。

[米 国] NRC、グランドガラフ発電所の出力増強を承認

 米原子力規制委員会(NRC)は10月18日、グランドガルフ原子力発電所(BWR)の1.7%の出力増強を承認した。これによって同機の設備容量は121万kWから123万2,000kWに上がる。

 NRC事務局は同機について、原子炉蒸気発生設備(NSSS)や計装制御系統、電気系統、事故評価、放射線影響、運転・技術仕様の変更などに焦点をあてて検討を行い、出力を増強した場合でも安全に支障をきたさないと判断した。

 グランドガルフ発電所を所有するエンタジー社は来年6月、同サイトを「事前サイト許可」(Early Site Permit:ESP)の候補サイトとしてNRCに申請する予定である。ESPは、原子力発電所の建設候補地として事前にサイトだけ許可するというもの。取得後20年間にわたって有効で、さらに20年間の延長もできるため、電力会社としては直ちに建設に着手する必要はない。

デービスベッセ発電所、近く運転再開へ

 ファースト・エナジー(FE)社は10月7日、現在停止中のデービスベッセ原子力発電所(PWR、91万5,000kW)が2003年初頭に運転を再開する予定であることを明らかにした。

 デービスベッセ発電所は2002年2月16日に燃料交換のために運転を停止したが、圧力容器ヘッド部分の制御棒駆動機構ノズルに亀裂が見つかったため、運転停止が長引いた。同社は、NRCから圧力容器ヘッドを取り替えるよう指示を受けたため、コンシューマーズ・エナジー社から圧力容器ヘッドを購入した。

 なお、FE社が購入した圧力容器ヘッドは、コンシューマーズ・エナジー社が1980年代半ばに建設を断念したミッドランド原子力発電所のもので、すでに取り外されて、デービスベッセ発電所に据え付けられている。その他の作業も年内にも終了の予定。

[ブラジル] 政府がアングラ3号機の建設再開を承認

 ブラジル政府は、国営電力会社であるエレクトニュークリア社(ETN)に対して、建設が中断しているアングラ3号機(PWR、130万9,000kW)の工事再開を承認することを決定した。同機は、来年にも建設が再開され、2008年の運転開始を目指す。

 ETN社は、アングラ3号機の建設再開に向けて提示された、@財務省に健全な資金計画を示すこと、A環境省が規定する環境許可基準に適合していること、B原子力委員会(CNEN)から放射性廃棄物の管理を承認されていること――などの3つの条件をクリアした。

 アングラ3号機の原子炉の供給元である独シーメンス社との契約は依然として有効である。同機は、1980年代半ばに作業が中断するまでに機器の約7割程度が輸入され、現在はETN社の持株会社であるエレクトロブロス社の倉庫に保管されている。

 ブラジルは現在、深刻なエネルギー危機に見舞われており、アングラ3号機の完成を支持する声がある一方、2003年までに天然ガスなどを燃料とした発電所が完成すれば、同機は不要になるとの見方もある。なお、同発電所を完成させるためには、さらに17億ドルが必要と見込まれている。

[カナダ] ピッカリングA4号機の運転再開、2003年上半期末に

オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社のオズボーン社長兼CEOは10月28日、ピッカリングA発電所(1〜4号機、各54.2万kW、CANDU=97年12月より休止中)の4号機の運転再開時期が、当初予定の2002年末から2003年上半期まで遅れるとの見通しを示した。同氏が議長を務めるカナダ独立電力会議の基調講演の中で明らかにした。

オズボーン氏によると、OPG社は運転再開作業を通して改装された4号機の主要機器の試運転を2003年の第1四半期中に開始する予定。営業運転開始は試運転の結果にもよるが、現在の計画では第2四半期末になるとしている。4号機の運転再開に要する経費は、1〜3号機と共通の運転システム関係の作業を含めると、総額で約12億米ドル。OPG社の試算によれば、ピッカリングA発電所の全運転期間発電コストはガス・コンバインドサイクル火力発電所より少なくとも20%は低くなるとしている。

オズボーン氏は、ピッカリングA発電所の運転再開の遅れや経費上昇を招いた主な原因として、複雑な運転再開プロジェクト、長期間の環境影響評価作業、運営や工学設計に係る契約締結の決定の遅れなどをあげている。

残る1〜3号機の運転再開については、それぞれ4号機の再開から6カ月間隔で順次行われる予定。

ピッカリングA発電所はOPG社の前身であるオンタリオ州営のオンタリオ・ハイドロ(OH)社が運転していたが、経済性の悪化を理由に97年12月に運転が休止された。その後、99年4月に発効したオンタリオ州エネルギー競争法によりOH社が分割され、同社の発電部門を引き継いでOPG社が発足した。OPG社は州内電力市場自由化の流れの中で、競争力のある電源の確保に迫られ、同発電所の運転再開を決定した。カナダ原子力安全委員会(CNSC)は2001年11月5日、OPG社に対してピッカリングA発電所の運転再開を条件付きで認可している。(原産マンスリー2001年12月号参照)

[英  国] 政府、BE社の融資期間を2カ月延長

 政府は9月26日、それまでのブリティッシュ・エナジー社(BE)への4億1000万ポンドの緊急融資(返済期限:9月27日)に加え、6億5000万ポンド(同:11月29日)の追加融資を発表した。

 BE社は、追加融資により事業の継続と組織の再編が可能になる(ジェフリー会長)、として追加融資を歓迎した。また10月16日には、11月4日に開催する臨時株主総会で、定款に定められた借入限度額を16億ポンドまで引き上げることを検討すると発表した。

 一方ウィルソン・エネルギー担当相は10月22日、スペインで開催されたセミナーの席上、「温暖化防止の観点からすれば原子力の必要性はわかりきったこと。エネルギー政策において原子力オプションの堅持との言い回しは、婉曲的に原子力オプションを却下していることにほかならない」と、原子力発電開発をはっきりと政策上に盛り込むことが重要との見解を示した。政府のエネルギー政策は年内に発表される予定。

[フランス] メロックスMOX燃料工場を拡張へ

 原子力安全・放射線防護総局(DGRSN)のラコステ総局長は9月下旬、フランス核燃料会社(COGEMA)のメロックスMOX燃料加工工場が立地する南部のガール県知事に対して、同工場の生産能力拡張に伴なう許認可手続きの一環として公聴会を開催するよう命じた。同工場の拡張は、ジョスパン前政権が署名を拒んでいたため手続きが遅れていたもので、今年6月の総選挙を受けて誕生したラファラン政権により実現に向かうことになった。手続きが順調に進むと、同工場の生産能力は2003年半ばに現在の100トンHM(重金属)から145トンHMに拡張される見通し。

 COGEMAが同工場の生産能力拡張に踏みきるのは、今年3月のDGRSNの勧告を受けてカダラッシュ工場の閉鎖を決定したため。DGRSNによると、カダラッシュ工場は最新の耐震設計基準を満たしておらず、大地震が起こった場合の危険性が指摘されていた。このため、COGEMAは91年に操業を開始したカダラッシュ工場を2003年はじめに閉鎖し、その代わりに同工場の生産ライン(40トンHM)分をメロックス工場に充てる方針を固めたもの。COGEMAの申請を受けたDGRSNは、安全面で問題はないと結論したが、前政権のコシュ環境相(緑の党)が署名を拒んだため、手続きが遅れていた。なお、DGRSNはメロックス工場の拡張手続きが遅延しても、カダラッシュ工場は予定通り2003年はじめに閉鎖するよう命じている。

ラ・アーグ施設と小児白血病の因果関係特定は困難

 フランス核燃料会社(COGEMA)のラ・アーグ再処理工場と周辺住民の白血病の因果関係について調査していた政府任命の北コタンタン地方放射線生態学グループ(GRNC)は10月3日、同施設から出る放射線とその周辺地域での白血病の発生とを結びつけることはきわめて難しいとする調査結果を明らかにした。今回の調査は、GRNCが2年前に行った初回の調査をベースに、@白血病のリスク要因の予測に用いられるパラメータに関する不確実性の度合い、A英国でセラフィールド再処理工場を対象に環境放射線の医学的要因に関する委員会(COMARE)が行った調査結果との比較、B原子力施設から発生する化学物質による健康や環境に及ぼす潜在的な影響――の3項目について行われた。

 それによると、原子力施設周辺地域の白血病罹患率が全国平均値よりわずかに高いことと、同施設から出る放射性物質の間に関連性があると結論づけることはきわめて難しいと判断し、前回の調査結果を再確認した。

 また、英国の調査との比較では、調査の手法だけでなく調査結果や導き出された結論も共通点が多いことを強調している。さらに、化学物質のリスクは概ね低く、公衆の健康や生態系に影響を及ぼすような要因は見出せないとの見方を示した。特に、原子力施設に搬入または使用された化学物質と白血病の発病リスクの相関関係については、全く証拠がないと結論づけている。

 ただ、化学物質については、あくまでも現在の科学レベルに基づく見方であるとしており、今後は環境影響を計算するモデルを実証するため、環境測定プログラムを策定し、化学物質の有害性についてもさらに調査を進める必要があると勧告している。

 コタンタン半島北部には、ラ・アーグ再処理工場をはじめ、ラマンシェ低レベル放射性廃棄物処分場、フラマンビル原子力発電所、シェルブール港の海軍原子力造船所がある。英国医学誌が97年にこれら施設と白血病の因果関係をめぐる記事を掲載したのが発端となって、フランス政府は疫学と放射線生態学の両分野について専門家チームを結成し、調査を実施した。両調査チームはいずれも、ラ・アーグ再処理施設から出る放射線と地元でわずかに増加した小児白血病との間に有意な関係は見出せないとの結論を2000年に下した。しかし、政府は2000年8月、両チームに再度調査を指示。疫学調査チームは昨年6月、両者の間に有意な関係は見出せないとする2回目の調査結果を発表したばかりだった。

アレバ社とウレンコ社、遠心分離濃縮技術で提携

 フランスの原子力関係企業の持ち株会社であるアレバ社は10月8日、国際的な濃縮会社であるウレンコ社とガス遠心分離技術で協力するため覚書(MOU)を交わした。パリで行われた調印式には、アレバ社の執行役会長でフランス核燃料会社(COGEMA)の会長兼CEOを務めるローベルジョン氏、ウレンコ社のCEOのメッセル氏が出席した。共同声明によると、ウレンコ社グループとアレバ社傘下のCOGEMAは、ウレンコ社が開発した遠心分離法を用いた機器の設計や製造などに共同で取り組むため、折半出資の合弁企業を設立することで基本合意した。また、COGEMAは2007〜2008年にもフランスのトリカスタンにガス遠心分離法を採用したウラン濃縮工場を新しく建設する意向を固めている。両者は、当局の認可を取得しだい、最終契約を締結する予定。

 フランスは70年代、フランス原子力庁(CEA)が開発したガス拡散技術をもとに、COGEMA(59.7%)が中心となりスペイン(11.1%)、ベルギー(11.1%)、イラン(10%)、イタリア(8.1%)と共同出資でユーロディフ社を設立した。同社は、82年から南フランスのトリカスタンでジョルジュ・ベッセ濃縮工場(年間1万800トンSWU)を操業している。その一方でCEAは、大量の電力と水を必要とするガス拡散法に代わる新方式として、80年代はじめからCOGEMAと共同でレーザー濃縮法(SILVA)の開発を行ってきた。しかし、レーザー法は商業ベースでの実用化が見込めないとの結論に達し、ガス遠心分離法に移行する方針を固めていた。アレバ社のローベルジョン氏も昨年9月の同社設立にあたり、今後5、6年のうちに遠心分離法を導入するため、20億〜30億ユーロにのぼる大規模な投資を行う意向を示していた。

 ウレンコ社は英国、ドイツ、オランダが折半出資する国際企業で、遠心分離法を自主開発した。現在は、3つの工場で合計3,950トンSWU/年の濃縮設備を保有している。今回の仏アレバ社との協力覚書のほか、すでにエクセロン社、エンタジー社などの米国原子力企業とも提携し、コンソーシアム(LES社)を設立している。LES社は今年9月、米国テネシー州に最新式の遠心分離技術を備えた濃縮工場を建設する計画を発表したばかり。

CNE、放射性廃棄物研究で年次報告

 政府の諮問機関である国家科学評価委員会(CNE)は10月14日、高レベル放射性廃棄物(HLW)に関する研究の進捗状況について年次報告書をとりまとめ、政府に提出した。HLWに関する研究は、@長寿命核種の分離・核変換技術、A地下研究施設での高レベル放射性廃棄物(HLW)の深地層処分、B中間貯蔵施設でのHLW長期貯蔵のためのコンディショニング技術開発――の3分野。91年の放射性廃棄物管理研究法はこれらの研究結果を踏まえ、2006年に国民議会が処分方法を最終的に決定するよう定めている。

 CNEは年次報告書の中で、原子力庁(CEA)が実施しているコンディショニング技術は順調に進んでいると評価し、あとはエンジニアリング部門が管理期限や契約内容を遵守できるかどうかにかかっているとの見方を示している。一方、放射性廃棄物管理庁(ANDRA)が実施している深地層処分とCEAによる核種の分離・核変換は、遅れが生じていると指摘し、早急な対応策を求めている。こうしたことから、2006年の期限までに全ての研究成果が出揃うかどうかを疑問視する見方もある。

 とくに、CNEが大きな懸念材料として挙げているのは、深地層処分研究と密接な関係を持つ地下研究所の建設の遅れ。91年法は、異なる2つの地層に地下研究所を建設し、研究を実施するよう求めているが、2000年2月に着工したビュール地下研究所(粘土層)は建設が遅れている。また、花崗岩サイトも住民の反対により建設自体が頓挫している。ビュール地下研究所では、地下500メートルの最深部分に主立坑が到達するのが2003年末、その後に1本目の横坑が完成するのは2004年以降となる見通し。このため、2006年までに得られる研究成果は、基礎的な地質や岩盤に関する実験結果に限られ、地層中の液体流動や地質学的な特性に関する実験は予備的な段階にとどまると見られている。

 一方、長寿命核種の分離については、CNEは2006年までに十分な研究成果が期待できると評価している。しかし、核変換技術研究は、実験施設が十分でないなど深刻な問題に直面していると見ている。中でも、スーパーフェニックス(FBR、124万kW、98年閉鎖)の研究使命を引き継いだFBR原型炉フェニックス(25万kW)の改造工事が長引き、運転停止を余儀なくされているのが最大の問題。さらに、CEAが欧州連合(EU)内の共同研究施設として計画中の粒子加速器を備えた次世代型材料試験炉(MTR)の建設も、EUの予算措置に依存するところが多く、具体化が疑問視されている。

[ドイツ] オブリッヒハイム発電所、2005年に閉鎖へ

 今年9月の総選挙結果を受け発足した第2次社会民主党・緑の党連立政権は10月14日、国内で最も古いオブリッヒハイム原子力発電所(PWR、35万7000kW)にさらに2年間の運転継続を許可した上で、2005年後半に閉鎖することを決定した。ドイツでは今年6月、段階的な原子力発電所の閉鎖を盛り込んだ改正原子力法が成立し、運転中の19基は相互に電力量を融通しながらも最終的に割当てられた発電電力量に達し次第、閉鎖されることになった。同法の撤回を選挙の公約に掲げたキリスト教民主・社会同盟が敗れたことから、同法による初の原子力発電所の閉鎖が確定したことになる。

 同発電所を所有するエネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)社は当初、89年に運転を開始したネッカー2号機(PWR、136万5000kW;89年運開)から150億kWhの発電量を割当て、運転期間を5年半、延長する方針だった。しかし、これに対しトリッティン環境大臣は、発電電力量の移譲は古い発電所から新しい発電所へ充てることが原則と主張し、ネッカー2号機よりフィリップスブルグ1号機(BWR、92万6000kW;80年運開)から55億kWhをオブリッヒハイムに移譲することを認めた。これに対し、環境団体や緑の党内部からは、環境相がオブリッヒハイムの寿命延長を認めたことに批判的な意見も出ている。

[スペイン] ホセカブレラ発電所、2006年に閉鎖へ

 経済省は10月中旬、国内で最も古いホセカブレラ原子力発電所(PWR、16万kW)を2006年に閉鎖する計画を明らかにした。同機は、1968年に運転を開始したウェスチングハウス社製のPWR。同機は99年、3年間の運転認可(ライセンス)を取得したが、同機を所有・運転するUE-F社はさらに6年間のライセンス更新を行い、40年目にあたる2008年まで運転を継続するよう政府に申請していた。これに対して、規制当局であるスペイン原子力安全委員会(CNS)は先月、政府に対して更新期間は4年間とするよう勧告した。今回の政府決定は、CNSの勧告をふまえて打ち出されたもの。

 スペインでは、ホセカブレラをはじめ9基の原子力発電所が運転を行っている。2001年の原子力発電量は636億kWhにのぼり、総発電電力量の27%を占めた。スペイン政府が最近、承認した国家エネルギー計画によると、今後10年間の国内消費電力の伸びは、年率2.4%のEU平均を上回る3.5%と予測されている。今回、2006年の閉鎖が決まったホセカブレラに代わる新規発電所の建設計画はないが、政府は99年以来、規制緩和の一環として既存炉のライセンス更新や出力増強を認める姿勢を示している。

[スイス] 「廃棄物政策は連邦政府の主導権で」

 スイスでは、今年9月にニトバルデン州で行われた住民投票により、同州のベレンベルクに低・中レベル放射性廃棄物(LLW・ILW)の地下研究所を建設する計画が再び否決され、関係者は解決策を模索している。「LLW・ILW処分概念に関する独立専門家委員会」(EKRA)は10月、連邦政府に対して廃棄物政策でより積極的な役割を果たすよう勧告を行った。具体的には、LLW・ILW処分に関する目標や期限、実施方法を設定した上で、計画を遂行するための国家評議会の設立を求めている。スイス放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)のイスラー理事長は、処分場の立地に関する最終権限を、現在の州(カントン)政府から連邦政府に移譲するよう提案。また、処分場計画については州単位の投票ではなく、国民投票にかけるべきとの意見も出ている。さらに、改正原子力法案を審議中の議会でも今後、原子力施設の立地に関する権限を州から連邦政府に移すことについて審議する予定にしている。

 ベレンベルク計画は、7年前の住民投票で初めて否決されて以降、EKRAが提唱する長期的回収可能貯蔵方法という新しい考え方をとり入れ、建設プロセスを研究施設と処分場に分けるなど大幅に見直された。州議会の承認を得て、2度目の住民投票に漕ぎ着けたが、開票結果が前回より厳しくなったことを受け、EKRAをはじめ関係者は、抜本的な制度変更も視野に入れた連邦政府の強いイニシアチブを求めている。

 なお、スイスではビュレンリンゲンの中間貯蔵施設(ZWILAG)が2001年、操業を開始し、今後40年間は使用済み燃料と再処理されたガラス固化体を中間貯蔵する予定。

[オランダ] ボルセラ発電所、運転継続へ

 オランダ民事裁判所は9月24日、国内で唯一運転中のボルセラ原子力発電所(PWR、48万1000kW)を所有・運転するEPZ社に対して同機を2003年末に閉鎖する法的な根拠はないとする判断を示し、同機の早期閉鎖を主張する前政権の訴えを退けた。この判決に対して、今年5月の総選挙で発足したキリスト教民主勢力(CDA)など3党連立政権は、安全性と経済性を前提条件に同発電所の運転継続を支持しており、上告しない方針。これにより、同発電所の運転期間をめぐるEPZ社と政府との法廷上の争いは終結し、同発電所は今後も運転を継続できることになった。

 ボルセラ発電所は73年に運転を開始した当初は、30年間の運転を予定していた。94年には、当時のSEP社(現EPZ社)は発電所の安全性を改善した上、運転期間を延長する計画を打ち出し、当時のCDA政権から許可を得た。しかし、その直後に労働党政権が誕生し、議会は同11月、運転延長計画を認めないとする動議を僅差で可決した。このため、政府とEPZ社は同12月、同機の改良工事は実施するが、運転期間は延長せず、2003年末に停止することで合意。運転期間の延長が認められないために発生する損失分は、国が閉鎖後に補償することとなった。

 その後、オランダ高等行政裁判所は2000年2月、この議会決定を不服とするEPZ社の従業員らの訴えを受けて、同発電所の早期閉鎖を求める議会の決定を違法と判断。今回の訴訟は、前政府が民事裁判所に訴えていたもの。

 ボルセラ発電所は昨年、37億5000kWhを発電し、国内の電力需要の約4%を供給した。稼働率は95.3%で、年間の計画停止は過去最短記録となる14日間を達成した。EPZ社では、こうした好稼働状況をふまえて技術的に可能な限り、同機の運転を継続させる意向を固めている。同社は今後、これまで保留となっていた2003年以降の燃料の手配や従業員の採用などの運転計画に本格的に着手する。

[スウェーデン] 新政権、原子力政策に変更なし

 9月15日の総選挙の結果を受け10月1日、少数与党の社会民主党は緑の党と連立を組むことで合意。翌2日に社会民主党・緑の党・左翼党から成る新政権が発足した。

 現在スウェーデンでは@バーセベック2号機の閉鎖時期、Aドイツ式の段階的な原子力発電からの撤退政策――の2点が懸案事項となっている。現時点では2003年末とされているバーセベック2号機の閉鎖時期は、閉鎖によって失われる電力の代替が条件付けられているため先行きは不透明。ペーション首相も閉鎖は2004年以降になると明言している。原子力発電からの撤退政策についても、議会の決定に従い政府が今夏から産業界との調整に乗り出しているが、進捗状況は明らかにされていない。

[フィンランド] TVO、新規炉入札要件を正式に発表

 民間電力会社であるテオリスーデン・ボイマ社(TVO)は9月30日、新規に建設する原子炉の入札要件を正式に発表した。同国5基目となる原子力発電所は、既存のロビーサ発電所かオルキルオト発電所のどちらかに建設される。出力は100〜160万kWで、炉型は未定。2003年春に入札評価を行い、2003年末に炉型と建設サイトを最終的に決め、政府に建設認可を申請する。順調に進めば2005年にも建設認可が発給されて着工し、2010年にも運転開始する見通し。建設費は17億〜25億ユーロ(約1990億円〜2930億円)と推定されている。

 候補としては、米GE社製ABWR(出力136万kW)、米ウェスチングハウス社製AP1000(PWR、出力100万kW)、スウェーデン・ウェスチングハウス社製BWR90+(BWR、出力150万kW)、仏フラマトムANP社のEPR(PWR、出力155万kW)とSWR1000(BWR、出力97万7000kW)、ロシア製VVER91/99(PWR、出力107万kW)が挙げられている。

[ブルガリア] コズロドイ3,4号機の安全性を主張

 ブルガリアのコバチェフ・エネルギー担当大臣は10月1日、コズロドイ3,4号機(PWR、各44万kW)はIAEAの最新レビューで安全性が証明されたとの見解を示した。ブリュッセルの欧州議会でのスピーチで語ったもので、同大臣は欧州連合(EU)によるコズロドイ3,4号機の閉鎖要求は、技術的な判断ではなく政治的判断からなされたと批判した。さらに同大臣は7月に公表されたIAEAのレビュー結果では、両機の安全性は西側炉に比肩することが証明されたと強調した上で、EU加盟国のメンバーからなる技術面でのピア・レビューを、加盟交渉終了前に実施することを主張した。

 プルバノフ大統領の代理で出席したカラディモフ外交政策次官も、ピア・レビューの実施を訴え、両機の安全性が証明された場合、早期閉鎖リストから両機を除外することを強く主張した。またブルガリア議会も「コズロドイ3,4号機の閉鎖はEU加盟後」とする声明を発表している。

 欧州委員会(EC)のフェアホイゲンEU拡大担当委員は、「ブルガリア側のピア・レビュー実施要求はもっともだが、ECの閉鎖要求は変わらない。3,4号機閉鎖問題は政治的問題となっている」との見解を示している。欧州議会のアダム議員(英国)は、反原子力政策を掲げる一部のEU加盟国が、中東欧諸国に原子力発電所の閉鎖を加盟条件として押しつけたのが問題だとした上で、3,4号機の閉鎖要求に正当性はないとの考えを明らかにしている。

 ブルガリア政府とECは99年11月30日、ブルガリアのEU加盟への条件としてコズロドイ1-4号機の閉鎖で基本合意した。1,2号機(PWR、各44万kW)については2002年末までに閉鎖で合意したものの、3,4号機の閉鎖時期については意見が割れ、ブルガリア側は2002年時点で決定するとの見解を示した。これに対しEC側は3,4号機ともに2006年の閉鎖を要求していた。

 しかしブルガリア国内では、現行のエネルギー政策で定められた3,4号機の閉鎖期限である2010年まで3,4号機の運転を継続させる声が高まっており、今年2月にコズロドイ発電所を視察したサクスコーブルゴツキ首相も、3,4号機の閉鎖時期は国益に基づいて判断するとの考えを表明した。

 ブルガリアの2001年の原子力シェアは44.6%。EUの要求通り2006年に3,4号機を閉鎖すると、年内に閉鎖されることが決まっている1,2号機と合わせて現在の発電設備容量の2割が失われる。

[ロシア] ベトナムの研究炉の近代化に協力

ロシア政府は10月中旬、ベトナムの南部ダラトの原子力研究所(NRI)にある研究炉の近代化に、1億米ドルにのぼる資金援助を行うことを明らかにした。NRIには旧ソ連設計のTRIGA型研究炉(500kW)があり、炉物理・炉工学、放射化分析の研究等に利用されている。

ロシアとベトナムは2001年2月、原子力開発協力に関する2国間合意文書を締結することで合意しており、今年4月にはロシア政府内部で草案が了承されている。草案には、ロシア原子力省(MINATOM)が原子力発電所の設計、建設、運転分野での研究を含むベトナムの原子力開発に協力することが明記されており、ダラト研究炉の安全性の向上、ウラン鉱床の探鉱と開発、廃棄物管理などが盛り込まれている。

なお、ベトナムはロシアとの協力のほかに、インドとの間でも2001年1月に原子力平和利用に関する協力協定に調印しており、原子力研究所設立のための技術援助等の提供を受けることになっている。

[ウクライナ] EBRD、2原発への資金援助協議を再開へ

欧州復興開発銀行(EBRD)は、ウクライナで建設中のフメルニツキ2号機(VVER-1000=ロシア型PWR、100万kW)とロブノ4号機(同)の原子力発電所2基を完成させるプロジェクト(K2R4計画)への融資に関する協議を再開する。10月18日までウクライナを訪問していたEBRDのルミエール総裁が、ウクライナ議会のリツビン議員との会談後に明らかにした。また、ウクライナのキナク首相もルミエール総裁に対して、K2R4計画への融資協議の再開に前向きであることを言明した。

G7とウクライナは1995年12月、チェルノブイリ発電所を2000年までに閉鎖する見返りにG7が代替電源確保のための資金援助を行うとする了解覚書に調印。ウクライナは代替電源として、建設中のフメルニツキ2号機とロブノ4号機の完成を主張、G7側もこれに大筋で同意した。

EBRDは2000年12月7日、ウクライナに対し、@チェルノブイリ発電所の永久閉鎖の確約、AG7とEUによる技術支援とウクライナ国内における政府機関から独立した原子力規制機関の設置、BK2R4プロジェクトに対する他の国際金融機関の融資、C国際通貨基金(IMF)の同国に対する拡大信用供与(EFF)の延長――の4項目を1年以内に満たすことを条件に、2億1,500万米ドルの融資を決定した。

しかし、2001年末にウクライナ側が上記4項目とは別に、EBRDが要求している国内電気料金の値上げなどの細かな条件のいくつかについてさらなる協議を求めたため、EBRDは状況が整った時点で新しい議論をウクライナ側と開始することとして、融資の決定を見送った。

一方、ウクライナはEBRDとの融資交渉と並行してロシアとの間で2001年10月に両国の協力によりフメルニツキ2号機とロブノ4号機を完成させることで合意。同年12月には合意文書に調印した。両国は今年6月25日、K2R4計画に対してロシアが1億4,400万米ドルをウクライナに融資する契約にも調印している。(原産マンスリー2002年8月号参照)

[リトアニア] 原子力規制当局、新規原子力発電所の建設は可能との見解示す

共和国議会による国家エネルギー戦略の修正の承認を受けて、リトアニア国家原子力安全規制局(VATESI)のクタス局長は、イグナリナ発電所に代わる新規の原子力発電所の建設が、規制側の立場からしても十分実現可能であるとの見解を示した。

10月21日の週に開催された国際許認可支援計画(LAP)とVATESIの会合の席で、クタス局長は、今後10年以内に新規の原子力発電所の許認可ならびに建設を行うことは可能であると語った。また、VATESIはこれまで新規原子力発電所の許認可手続きに関与したことがないため、組織の大幅な変更と強化が必要であるとも述べた。

VATESIは旧ソ連からの独立を受け、1991年10月に政府直属の独立した原子力規制機関として設立。原子力施設の運転に対する許認可を発給するほか、検査を実施して安全性についての評価も行っている。局長は首相が指名する。

LAPは、フランス、英国、ドイツ、フィンランド、スウェーデン、英国の西側6カ国が、リトアニアとの間の2国間協力全般を補佐するため、1998年に設立した組織。今回の会合にLAPのメンバーとして出席した米国NRCのペレズ代表は、リトアニアの新規原子力発電所建設計画に対して、米国政府は近代的な設計の原子力発電所の導入をいつでも支援できるような体制を整えていると語った。

廃棄物管理庁、使用済み燃料の処分方法の検討に着手

リトアニアの放射性廃棄物管理庁(RATA)はこのほど、イグナリナ発電所の使用済み燃料の保管と最終処分に関する複数のオプションの評価を実施するため、長期計画の草案作成を開始した。RATAのジャネナス長官が10月23日に開催されたリトアニア原子力安全委員会の会合で明らかにした。

同長官によると、第一草案は今年末に完成する見込みで、最終案は2003年中に提出される。リトアニアでは、使用済み燃料の処分問題に関する議論はまだ予備的段階であるが、ロシアへ輸送して最終処分することも一つのオプションとして考えられている。

RATAはイグナリナ発電所の運転と廃止措置に伴い発生するすべての放射性廃棄物のほか、病院や産業界、研究機関などから発生する放射性廃棄物の管理と最終処分を担当するための組織で、中間貯蔵施設や最終処分場の建設と運営も業務の一つとしている。

一方、規制機関であるVATESIは使用済み燃料問題の取扱いについて、現在のところ、より緊急度の高い案件に手一杯な状態なため予算を配分できず、議論する準備が整っていないとしている。

なお、リトアニアでは、使用済み燃料の処分方法の検討に加えて、低中レベル放射性廃棄物の浅地層処分場の建設も検討されており、RATAとスウェーデン原子力安全国際プロジェクト(Swedish International Project on Nuclear Safety:SIP)との協力合意に基づき、研究のための予算措置がなされている。

[欧 州] 欧州委、初の照射食品報告を採択

欧州委員会は10月11日、欧州連合(EU)加盟国の食品照射の現状などをとりまとめた初の報告書を採択したと発表した。この報告書は、照射食品の表示義務の遵守を含め、加盟国の関係当局が2000年9月から2001年12月にかけて実施した調査結果をまとめたもの。

それによると、EUの食品照射指令(Food Irradiation Directive)の要件を高い基準でクリアーしていることが分かった。ただ、英国当局の調査によると、ヤクヨウニンジンなど放射線照射が許可されていない一部の補助食品の42%が照射されていたことが判明したため、欧州委員会は加盟国に対して同じような違反がないかどうか調査するよう要請した。各国による今回の調査では、6500を超える食品サンプルが検査され、このうちの1.5%が照射されていたにもかかわらず、表示されていなかったことが明らかになった。

EUでは、乾燥ハーブとスパイスの照射が加盟国全体で許可されている。また、ベルギー、フランス、イタリア、オランダ、英国の5カ国では、新鮮果実や乾燥果実、野菜、家禽(かきん)、蛙の足などの照射食品を売買することが許可されている。また、1999年の欧州指令に基づき、すべての照射食品に「照射済み」(irradiated)または「電離放射線で処理」(treated with ionizing radiation)という表示をつけることが義務付けられている。こうした表示義務は、少量であっても照射食品が成分として含まれる食品にも適用される。食品が照射されているかどうかについては、各種の分析方法を用いて検出することができるようになっている。


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