[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2002年10月中旬〜11月中旬)

米国:定格出力アップ、2025年までに420万kWに

―原子力発電設備が微減にとどまる見通し

米エネルギー省(DOE)のエネルギー情報局(EIA)は11月20日、米国では新規原子力発電所の建設計画はまだ具体化していないものの、運転期間の延長と定格出力アップ(uprate)によって2025年までの原子力発電設備の落ち込みは小さいとする予測結果を公表した。

EIAが毎年まとめている「2003年版エネルギー見通し」(Annual Energy Outlook 2003:AEO2003)は、2001年実績で9820万kWの米国の原子力発電設備が2006年に1億40万kWのピークに達したあと、2025年までに9960万kWに低下すると予測している。2006年までの設備の増加分220万kWは、新規の原子力発電所によるものではなく、定格出力アップによるもの。なお、定格出力アップは2025年までの合計出力で420万kWに達すると予測されているが、この間に280万kW分が閉鎖されるとみられるため、正味で140万kWの増加にとどまる。

米国では現在、DOEと民間事業者の協力によって2010年までの新規原子力発電所の運転開始を目指したプロジェクトが進められているが、正式に着工が決まっていないため、予測の中には含まれていない。AEO2003は、米国では長年にわたって原子力発電所が建設されていないため、新規原子力発電所の経済性には不確かな面があると指摘している。

このほかAEO2003は、国内総生産で測った米国経済は2001年から2025年の間に年率3%の伸びを示すとみており、これにあわせてエネルギー需要も年率1.5%の伸びを示し、2001年の97.3×1015から139.1×1015Btu(英国熱量単位)に増加すると予測している。また、1人あたりのエネルギー使用量も、同期間中に年率0.7%で増加するとみている。

石油価格は、世界的に石油需要が伸びるとの見通しから、世界平均で2001年の22.01ドル/バレル(2001年のドル価格)が2025年には26.57ドルに上昇すると予測されている。米国の石油輸入依存度はさらに上昇し、原油と製品を含めて2001年の55%が2025年には68%に達する見通し。

発電部門では、天然ガスの割合が大きく伸びると予測されており、総発電量に占める割合は2001年の17%が2025年には29%に上昇する。なお、天然ガスの需要は発電部門を含めて2025年までに54%増加するとみられている。石炭火力発電所は2001年から2025年にかけて新規に7400万kWが建設され、最大電源としての地位に変化はないものの、総発電量に占める割合は52%から48%に低下すると予測されている。

熱電併給を含めた再生可能エネルギーによる発電量は、2001年の2980億kWhが年率2.1%で増加し2025年までに4950億kWhに達すると予測されている。火力発電所の発電コストが低いことに加えて、競争市場では資本コストの低い天然ガスを用いた火力発電所が有利になるため、再生可能エネルギーの導入はゆっくりしたものになるとみられている。なお米国では、発電部門における再生可能エネルギーの占める最低の割合が国によって定められており、こうした基準が継続されるとの前提にたって予測が行われた。

電力価格は、過剰設備と石炭価格の低下という状況の中でますます市場競争が激化するとの見方から、2001年の平均実質ドル価値で2001年の7.3セント/kWhが2007年までに6.3セントに低下すると予測されている。2007年以降については、天然ガス価格の上昇に加えて電力需要の増加を賄うため新規発電所に対する要求が高まるため、年率0.4%で上昇に転じ、2025年までに6.7セントに達するとみられている。

今回の予測には、二酸化炭素の排出量を抑制するための政策措置が考慮に入れられていないため、エネルギーの利用にともなう二酸化炭素の排出量は炭素換算で2001年から2025年の間に年率1.5%で増加し15億5900が22億3700万トンまで拡大すると予測されている。

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