[諸外国における原子力発電開発の動向]
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英王立学会WG、炭素税等の措置による原子力の競争力強化を提言

 王立学会は11月18日、政府に対し英国のCO2排出量が再び増加していることを警告し、現在の気候変動税を廃止し、炭素税またはCO2排出認可制度の導入を勧告した。また同学会は、こうした方策により電力市場における原子力の競争力が強化されるとの見解を表明した。政府が年内に発表する予定の新しいエネルギー白書(政策)への提言として、王立学会のワーキング・グループ(WG)がとりまとめた。

 同WGは、現在の気候変動税は一般家庭や運輸部門で使用される化石燃料には課税されない上に、CO2を排出しない原子力発電に課税するなど矛盾点が多く、CO2排出量削減に効果的な方策とは言えないと指摘している。科学者や経済学者から構成される同WGは、あらゆるオプションを検討し、一般家庭も含めたすべてのCO2排出者に対して新たな炭素税を課するか、排出量を管理する認可制度を適用するのが最も効果的な方策だと結論している。

 そして、英国のCO2排出量が再び増加し始めた以上、新しいエネルギー政策によってこうした傾向に歯止めをかけなければ、気候変動の到来に拍車をかけることになると警告した上で、新規原子炉の建設やCO2を排出しない代替エネルギー源の開発が選択肢として考えられるとしている。ただし、新規原子炉の建設には以下の条件をクリアすることが不可欠だとしている。

  • 政府がリーダーシップを発揮する
  • 同型炉をシリーズ建設する
  • 許認可手続きを数年ではなく数か月単位で完了するように見直しを行う
  • 新規炉建設の有無に関わらず、廃棄物処分方策の検討を進展させる
  • テロ対策を実施する

 同WGは、安全性が向上し低コストで工期も短い設計の新しい原子炉が利用できるようになっていることから、こうした条件がクリアできれば、原子力は複合サイクル・ガス火力のコストに近づき、1ペニー/kWh、6ペンス/リットル(石油換算)の炭素税で原子力の競争力は強化されると試算している。

 英国の気候変動税に関しては野党保守党が10月、原子力発電事業者であるBE社を気候変動税の対象から除外するべきとの勧告を行っている。またOECD/IEA(国際エネルギー機関)も10月30日、英国の現在のエネルギー政策に対するレビュー"Energy Policies of IEA Countries: The United Kingdom 2002 Review"を発表し、原子力に気候変動税を課す英国政府の姿勢を強く批判している。

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