[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2002年11月中旬〜12月中旬)

[中 国]

秦山V-1号機が全出力運転を開始

 カナダ原子力公社(AECL)は2002年12月17日、中国で進めている秦山V期プロジェクトの1号機(CANDU、72万8,000kW)が同日に全出力運転を開始したと発表した。同機は今後、連続100時間の全出力運転などを含めた様々な試験を行い、2003年2月の営業運転開始を目指す。なお、同2号機(CANDU、72万8,000kW)は現在、調整試験に入っており、2003年8月に送電開始の予定で、同11月には営業運転を開始する見込みである。

 秦山V期プロジェクトでは、カナダ政府の支援のもと、同国政府系金融機関からの借款を利用して、フルターンキー方式でCANDU炉2基を建設する。このプロジェクトは第9次5ヵ年計画に組み込まれ、1号機は1998年6月、2号機は同9月にそれぞれ着工した。建設費は2基合わせて40億j。

 なお、秦山U期プロジェクトでは、すでに1号機が2002年4月15日に営業運転を開始している。2002年12月に送電を開始する予定であった2号機は圧力容器に溶接欠陥が見つかったため、送電開始は2003年に延期されることになった。

[米  国] NRC、新デコミ基金規則公布

米原子力規制委員会(NRC)は2002年11月25日、デコミッショニング基金を投資リスクから保護する規定やNRCに対する情報提供などを盛り込んだ最終規則と事業者が規則を実施する際の拠り所となる規制指針を公布した。電力市場の規制緩和が州単位で進む中で、州当局がこれまで通りデコミッショニング基金の監督を行うには無理があるとの判断から、NRCが同基金の監督責任を負うのがねらい。規則では、原子力発電所が売買される場合の運転認可(ライセンス)の移転に際して必要となる基準についても明らかにされている。

現在、原子力発電所が稼働中の州は31州ある。このうち規制緩和が実施されているのは13州に過ぎないが、基数では全体(103基)の半分以上を占める53基が立地している。規制緩和された州では、電気事業者の吸収・合併や原子力発電所の売買などにともないデコミッショニング基金の移転が大きな問題として浮上した。従来のデコミッショニング規則は、こうした状況を考慮して作成されていなかったため、州当局としても対応に苦慮していた。

NRCはこうした状況を踏まえ、独自の監督機能強化などを盛り込んだ規則案を提示。一般からの意見も聴取し、このほど最終規則を公布した。この規則によって、原子力発電所を所有する電気事業者の吸収・合併や原子力発電所そのものの売買が促進するとの見方もある。

USEC社、遠心濃縮試験施設をポーツマスに建設へ

 米国濃縮会社(USEC)は12月4日、新型の遠心分離法ウラン濃縮の主要カスケード試験施設をオハイオ州にあるポーツマス工場に建設すると発表した。

 USECは、ポーツマスのほかケンタッキー州パデューカを候補地として比較検討。コストや日程などを考慮して、ポーツマス・サイトを選定した。USECは2003年初頭にも米原子力規制委員会(NRC)にカスケード試験施設の設置認可を申請する予定で、2005年の稼働開始を目指す。総費用は1億5,000万j。

 USECは、米エネルギー省(DOE)との間で新型のウラン遠心分離機を共同開発することで合意した。それによると、USECは、DOEと共同開発した遠心分離技術を採用した濃縮工場の建設に2007年以降に着手する。濃縮工場が操業開始するのは早く見積もっても2009年以降とみられている。建設費用は10億j〜15億j。

 また、USECとDOEの共同プロジェクト以外にも、ヨーロッパの濃縮会社であるウレンコ社(英国、オランダ、ドイツの共同出資)主導のコンソーシアム(LES社)が2007年に最新の遠心分離技術を導入した濃縮工場を稼働させるプロジェクトを進めている。建設費は総額で11億j。

[英  国] BE社新会長、再建計画を発表

 ブリティッシュ・エナジー(BE)社は2002年11月28日、同社の経営危機に対し、政府が緊急融資を2003年3月9日まで延長する判断を下したのに合わせ、同日付けで就任したA.モンターグ新会長(政府の上級財務顧問)が主導する再建計画を公表した。それによると、支払いの一時凍結や債権の一部放棄で債権者と協議するほか、BE社が所有するブルース・パワー社(カナダ)とアマージェン社(米国)の株式売却などを柱としており、貿易産業省も承認している。今後BE社は再建計画に関し、2003年1月14日に臨時株主総会を開催し2月までに大口債権者の同意を取得したい考え。こうした手続きが順調に進めば、政府が欧州委員会(EC)に通達し、承認が得られ次第、実施に移すことになっている。

 同計画ではまず、BEは英原子燃料会社(BNFL)など大口の債権者への支払いを一時的に凍結する方針。BNFLはすでにBEの燃料の貯蔵や再処理に関するすべての支払いを2003年3月末まで据え置くことで合意しており、それ以後、BEの再建が完了するまでの期間は使用済み燃料関係サービスの値引きに応じるとしている。

 さらにBEは再建計画の中でBNFLに対し、すべてのBEグループ各社に適用されている既存の契約に代えて、フロント・エンドとバック・エンド双方での新しい支払い契約締結を提案した。新契約では、市場価格に応じて燃料製造や処理サービス価格を調整するとしている。

 一方、英国議会は同日、BE再建問題を審議した。引き続き原子力発電を支持することを強調して再建計画の支持を訴えるヒューイット貿易産業相に対し、野党保守党は「政府はBEに対し財政支援をする一方で、BEに気候変動税を課税している」と非難。BEの危機を招いた政府の責任を指摘すると同時に、この再建計画では気候変動税をBEに課税していることについては何も検討していないと批判した。英国の気候変動税に関して保守党は2002年10月、原子力発電事業者であるBE社を気候変動税の対象から除外すべきとの勧告を行っている。またOECD/IEA(国際エネルギー機関)も同年10月30日、英国の現在のエネルギー政策に対するレビュー"Energy Policies of IEA Countries: The United Kingdom 2002 Review"を発表し、原子力に気候変動税を課す英国政府の姿勢を強く批判している。

[フランス] EDF、EPR建設地に関する報道を否定

 フランス電力公社(EDF)は2002年11月27日、欧州加圧水型炉(EPR)の建設候補地をフランス北部のパンリーと報じた地方紙の記事を全面否定した。記事を掲載したのは、パンリー近郊のディエップ市の地元新聞。同紙は、EDFの内部資料の中にパンリーがEPRの第1候補地として記されていると報じた。ドーバー海峡に面するパンリーには、すでにパンリー原子力発電所1、2号機(PWR、各138万2000kW)が稼働中で、敷地面積や送電設備の点からみてEPRの増設に適したサイトと見られていた。これに対しEDFは、EPRの建設地については現在、何の決定も下されておらず、また近い将来にその予定もないとしている。

 EPRは、フランスのN4シリーズとドイツのコンボイ型を基本に、仏独が共同開発した新型炉。すでに基本設計を終え、サイトを特定し詳細設計に着手する段階にある。緑の党が加わった前政権下では、新規建設の合意が得られなかったが、昨年6月の総選挙で原子力推進派の保守・中道が政権を奪回したため、EPR発注への期待が高まっている。

 しかし、新政府はこれまで国が主導で策定してきた原子力・エネルギー政策を改め、国民との合意に基づき開発を進める意向を固めている。具体的には、今年はじめに国民との公開討論を開催し、再生可能エネルギーや原子力の位置付けを明らかにした上で、年内にもエネルギー法を策定する見通し。このため、EPRの初号機は公開討論とエネルギー法成立を踏まえて発注される可能性が高いと見られている。

[ドイツ] 産業連盟、原子力の役割を強調

 ドイツ産業連盟(BDI)のクレクラオ理事は2002年11月28日、ドイツ原子力産業会議(DAtF)が主催する会議の席上、脱原子力政策を推進する第2次社会民主党(SPD)・緑の党連立政権に対して原子力オプションの維持を強く訴えるとともに、原子力発電所の新規建設を禁止する政策は誤っているとの見解を表明した。同氏の発言は、エネルギー政策と市場自由化についてBDIとしての見解を述べたもので、会場には政官界や産業界から約70名が出席した。

 同氏は、現政権が原子力に代わるベースロード電源をどのように確保するのか何ら提示していないとした上で、政府に対して新しいエネルギー政策を策定するよう強く求めた。また、ドイツの主要なベースロード電源のひとつである原子力を風力やコジェネ(電熱併給)で代替することはできないとの見方を示し、原子力に代わって再生可能エネルギーの開発に重点を置く政府の方針を批判した。さらに、ドイツはこれまで国際的に高い安全水準により原子力界をリードしてきたが、原子力から撤退した後は、一転してそうした技術開発の世界から退くことになるとし、脱原子力に伴う科学技術レベルの低下にも懸念を示した。

連邦政府とEnBW社、オブリッヒハイム発電所の閉鎖時期で合意

 緑の党のトリッティン大臣率いる連邦環境・原子炉安全省(BMU)とエネルギー・バーデン・ビュルテンベルク(EnBW)社は2002年12月13日、EnBW社が所有するオブリッヒハイム原子力発電所(PWR、35万7000kW)を遅くとも2005年11月15日までに閉鎖することで合意した。BMUは2002年10月、EnBW社の申請を受けて同発電所の運転期間を2005年後半までとする決定を下した。今回の合意は、EnBW社がこの決定を受け入れた上で、具体的な閉鎖時期に初めて言及したもの。

 2002年10月のBMUの決定では、オブリッヒハイムは今春、当初の割当て分である87億kWhの発電電力量を使い果した後、EnBW社が所有するフィリップスブルク1号機(BWR、92万6000kW;80年運開)からさらに55億kWhを譲り受けることができる。この発電量をベースに、同機の閉鎖は2005年後半ごろと決められていた。

 改正原子力法は、原子力発電所の運転期間を発電電力量をベースに定めているため、実際の運転期間は稼働率や停止日数などで変動する。このため、EnBW社は同機の運転を次期総選挙(2006年秋)以降まで引き伸ばし、政権交代を待つ手もあった。しかし、改正原子力法で既存の原子力発電所の運転継続が保証されているとは言え、本来は州政府に委託されている原子力発電所の許認可にBMUが直接、介入するケースが増えている。こうしたことから、同社がBMU側に譲歩したとの見方が浮上している。

 最近では、E.ON社が所有するウンターベーザー発電所(PWR、141万kW)で熱交換器の溶接部分に欠陥が見つかり、同機は2002年9月4日から運転停止を余儀なくされている。この他、これまでにEnBW社のフィリップスブルク2号機が非常用冷却タンク内のホウ素濃度が規定値を外れたとして、2000年10月から12月までの約70日間、運転停止。また、炉心スプレー系配管での放射性蒸気漏れのため、ハンブルク電力(HEW)のブルンスビュッテル原子力発電所(BWR、80万6000kW)が2002年2月以来、運転を停止している。

[ベルギー] 議会下院、“脱原子力法案”を可決

 議会下院は2002年12月6日、7基の原子力発電所に40年の運転期間を定めるとともに、原子力発電所の新規建設を禁止することなどを盛り込んだ“脱原子力法案”を賛成86、反対49、棄権5で可決した。これを受けて、同法案は上院に送付された。1999年の就任以来、脱原子力政策を推進してきたデルーズ環境大臣(緑の党)は、与党3党が上院の過半数(71議席中、47議席)を占めていることから、法案は修正が加わることなく2003年1月中旬までに可決されるとの自信を深めている。同相は、2003年6月に控えた総選挙までに、国王の署名をもって同法を成立させたい考え。

 この法律が成立すると、運転中の7基は2015年から2025年にかけて閉鎖されることになる。原子力発電所の新規建設も禁止されるため、2025年にはすべての原子力発電所が姿を消す。デルーズ環境相は、再生可能エネルギーやコジェネ(電熱併給)システムの開発、天然ガスや石炭への依存拡大、輸入先の確保と多様化、エネルギー税の導入などによって電力の安定供給と地球温暖化問題に対応する方針。

 原子力発電所が全廃された場合、ベルギーの年間CO2排出量は現在の1億5000万トンから2割程度増えると予測されている。このため、90年比7.5%減とするCO2削減目標の達成が危惧されているが、同相は原子力発電所の閉鎖が始まるのは2008〜2012年以降であることから、十分な準備時間があると楽観的な見方を示している。

 7基の原子力発電所を所有・運転するエレクトラベル社をはじめ、産業界や学識者は、国内の総発電電力量の約6割を占める原子力を廃止することは技術、経済、環境のすべての点から非現実的だとして同法案に強く反対する姿勢を崩していない。政府の専門委員会が2000年末に公表したアンペール報告書も、再生可能エネルギーのシェアは2010年に最大でも10%程度に限られると予測しており、緑の党が主張するような代替案では不十分だとの評価を下している。さらに、法案には電力供給確保に支障が生じるような事態が起こった場合、原子力発電所の早期閉鎖は行わないとする例外措置が設けられている。このため、法律の実効性そのものを疑問視する見方もあり、法律成立後も紆余曲折が予想される。

ベルギー議会議席数(1999年現在)
政党名下 院上 院
与 党自由党41942047
社会党*3316
緑の党2011
野党キリスト教社会党*32581524
フラームス・ブロック86
フランドル人民同盟他183
合 計15071


[イタリア] 原子力復活に向け議会で審議がスタート

 原子力発電所管理会社(SOGIN)によると、議会下院内の産業委員会は2002年12月、原子力発電所の建設凍結解除の可能性を含んだ法案の審議に着手した。同法案は、電力会社を含む国内企業が国外での原子力事業に参画することを促すほか、原子力施設のデコミッショニングや放射性廃棄物処分にむけた規制や許認可上の問題を解決することをねらったもの。法案は、同委員会で了承が得られれば、上下院で審議される。

 SOGINによると、政府は原子力オプションの復活には原子力発電所のデコミと廃棄物処分問題の解決が最優先との考えを持っている。原子力開発を所管するマルツァノ産業大臣も、この2つが未解決のうちは、政府が原子力発電所の建設凍結の解除を提案することはないとしている。

 イタリアでは、原子力反対運動やチェルノブイリ事故の影響を受け、87年に原子力凍結が決まり、90年までに全4基が閉鎖されたため、現在運転中の原子力発電所はない。政府は99年末、閉鎖された4基のデコミと廃棄物管理を行うためSOGINを設立した。当時の計画によると、SOGINは10年内にサイト内に貯蔵されている廃棄物の処理と、低・中レベル廃棄物最終処分場および高レベル廃棄物の中間貯蔵施設の選定を、そして20年内に原子炉を解体・撤去し、サイトを緑地に戻す予定。

[ブルガリア] コズロドイ1,2号機、予定通り閉鎖

 ブルガリアは2002年12月31日、コズロドイ1,2号機(VVER-440、出力各44万kW)の運転を停止。欧州委員会(EC)との合意に従い、両機を閉鎖した。

 ブルガリア政府とECは1999年11月、ブルガリアの欧州連合加盟への条件としてコズロドイ1-4号機の閉鎖で基本合意。しかし1,2号機については2002年末の閉鎖で合意したものの、3,4号機の閉鎖時期については、2006年の閉鎖を要求するEC側と、2010年まで運転を継続させたいブルガリア側との間で意見が対立している。

 IAEAが2002年7月に公表したレビューでは「同3,4号機の安全性は西側炉に比肩する」と結論しており、ブルガリアはECによる3,4号機のピアレビュー実施を要請。ECは2003年7月までにピアレビューを実施する予定である。

[リトアニア-EU] EU、イグナリナ発電所の廃止措置で資金拠出決定

欧州連合(EU)は2002年12月中旬、リトアニアのイグナリナ発電所(RBMK-1500、150万kW 2基)閉鎖への支援として、2004〜2006年にかけて2億8,500万ユーロの資金拠出を行うことを決定した。リトアニアのEU加盟がコペンハーゲンで開催された欧州理事会の場で12月13日に最終決定されたことを受けたもの。資金は、イグナリナ発電所が供給している地域暖房の代替熱源、使用済み燃料の中間貯蔵施設、放射性廃棄物貯蔵施設の建設などに使われる。

なお、リトアニアはこれとは別に同6月下旬、イグナリナ発電所の廃止措置支援として、1億2,500万米ドルの資金を受ける協定を、EU加盟8カ国、欧州復興開発銀行(EBRD)、ノルウェー、ポーランドとの間で結んでいる。

旧ソ連型炉の軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)であるイグナリナ発電所については、EUが安全性に対して強い懸念を示しており、閉鎖への支援ならびにリトアニアのEU加盟交渉の開始と引き替えに、1号機を2005年、2号機を2009年までに閉鎖することを要求した。交渉の末、リトアニア共和国議会(セイマス)は2002年10月、EU側の要求を受け入れて、1号機の2005年、2号機の2009年の閉鎖を定めた修正国家エネルギー戦略を承認。これを受けてEU側はリトアニアの2004年5月1日のEU加盟を決定するとともに、イグナリナ発電所閉鎖への支援が具体化することになった。

なお、リトアニアとEUの加盟条約の調印は、2003年4月16日にギリシャのアテネで行われる予定であるが、条約批准に際しては、リトアニア国内で国民投票が行われることになっている。(原産マンスリー2002年8月号参照)

[ロシア] 議会が環境復旧に関する英国との2国間合意の署名を要請

ロシア議会下院はカシヤノフ首相に対して、1996年に英国との間で取り交わした、旧ソ連時代の核開発によってもたらされた環境汚染の復旧に関する2国間協力合意の署名・発効を進めるよう要請した。

96年に取り交わされた原子力平和利用に関する英露協力合意では、英国がロシアに対して、旧ソ連時代の軍事利用によって汚染したサイトの復旧計画を支援することになっている。

しかし、この合意はまだ署名・発効しておらず、ロシア議会下院はカシヤノフ首相に対して、条件を確認し、早急に署名を行うよう、正式に要請したもの。議会関係者によれば、合意の発効により、復旧計画への8,400万英ポンドの資金援助が得られ、原子力潜水艦などの使用済み燃料を貯蔵している沿岸部の老朽化した施設の廃止作業を加速することができるとしている。(2002年11月下旬)

レニングラード発電所のバックフィット作業でBNFLと契約

BNFL環境サービス社は2002年12月上旬、ロシアのレニングラード発電所(RBMK-1000 = 軽水冷却黒鉛減速炉、100万kW 4基)のバックフィット作業への支援に関する契約を11月7日に欧州議会(EC)との間で締結したことを明らかにした。BNFL環境サービス社は英国原子燃料会社(BNFL)の子会社で、4基のRBMK-1000型炉のうち3号機と4号機の2基のバックフィットを30カ月間で実施する。

バックフィット作業は2段階に分かれており、第1段階では新しい多重の原子炉停止制御・保護システムを取り付ける。第2段階では、プロジェクト管理、廃止措置の計画作成と準備、運転保守要員支援、供給計画の作成などの分野のコンサルタントを行う。

レニングラード発電所では、2003年に設計上の運転期間である30年を迎える1号機に対して、運転期間を10〜12年間延長するためのバックフィット作業を行うことも計画されている。1号機は運転期間の延長が計画されているRBMK-1000型炉第一世代に入る11基のうちの1基。

ブシェール発電所への燃料供給契約を締結

ロシア原子力省(MINATOM)のルミャンツェフ大臣はテヘラン訪問から帰国した直後の2002年12月23日、ロシアの協力によりイランで建設されているブシェール発電所1号機(VVER-1000 = ロシア型PWR、100万kW)への燃料供給に関する契約を締結したことを明らかにした。契約では、燃料供給の条件として、使用済み燃料をすべてロシアが引き取り再処理することが取り決められている。

イランの原子力発電開発に対しては、核兵器開発を加速する恐れがあるとして、米国が強い懸念を示しているが、同大臣はブシェール1号機の完成はロシアの義務であるとして、引き続き建設に関与して行く姿勢を改めて強調した。また、両国の原子力分野での協力は平和的なものであり、国際的な合意事項を基に構築されているとして、今後も「合意と計画」に従って継続されるとの見解を示した。今回の契約締結に先立ち、同大臣は2002年7月12日、米国の懸念に対して、ブシェール1号機の使用済み燃料はロシアが引き取ると正式に発表していた。

ルミャンツェフ大臣はまた、ブシェール1号機は計画通り、2003年末か2004年初頭に営業運転を開始すると語った。ロシアによれば、1号機に続き建設再開が計画されている2号機についても、評価作業がスタートすることになっている。

ブシェール発電所はパーレビ国王体制下でイラン初の原子力発電所として、当時の西ドイツのKWU社が受注し、1974年に129万3,000kWのPWR 2基が着工された。しかし、その後のイスラムを受け、当時の西ドイツ政府が建設中止命令を出したためKWU社が撤退。さらにイラン・イラク戦争の勃発により建設は中断した。イラン政府は95年1月、ロシア政府との間でブシェール原子力発電所建設協力契約を締結し、96年1月に先ず1号機としてVVER-1000の建設工事がスタートした。(原産マンスリー2002年8月号参照)

[ウクライナ] 新原子力規制機関の設置関連法案が議会を通過

ウクライナ議会では11月末、原子力規制・放射線防護を担当する政府から独立したウクライナ国家原子力規制委員会(SNRCU)の設立に関する法案を可決、成立した。

SNRCUはこの法律に従い、すべての原子力規制に加え、原子力安全文化の醸成や原子力安全に関する国際協力の推進などを行う。

クチマ大統領は2000年12月5日、現在の国家原子力発電検査部と、環境・天然資源省原子力規制局を統合して、SNRCUを設置する大統領令を公布。また、内閣に対して必要な人員や設備、後方支援、財源等の割り当てを含むSNRCU設置に関する法案の起草を行うよう指示した。委員長には環境・天然資源省原子力規制局副局長のヒリシチェンコ氏が指名されていた。

独立した原子力規制機関の設置については、西側諸国や国際機関から、ウクライナの原子力部門への援助増額の条件として、これまでも何度となく要請されてきていたが、結論は先送りされていた。しかし、欧州復興開発銀行(EBRD)が、チェルノブイリ発電所(RBMK-1000型炉、100万kW 4基:閉鎖)の代替電源として、建設中のフメルニツキ2号機(VVER-1000=ロシア型PWR、100万kW)とロブノ4号機(同)の2基を完成させるプロジェクト(K2/R4計画)への融資に際して、独立した規制機関の設置を条件の一つにあげたことを受けてウクライナ側も設置に向けて動き出した。

なお、EBRDを中心としたK2/R4計画への融資は、合意期限の2001年末までに両者の条件面での調整が付けられなかったため、当面は見送られている。(原産マンスリー2000年12月号参照)


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