[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2002年12月中旬〜2003年1月中旬)

[中 国]

秦山V-1号機と嶺澳2号機が営業運転を開始

 中国通信によると、秦山V-1号機(CANDU、72万8,000kW)が予定よりも43日早い2002年12月31日に、また嶺澳2号機(PWR、100万kW)が同じく66日早い2003年1月8日にそれぞれ営業運転を開始した。

 秦山V期プロジェクトはカナダ政府の支援のもと1997年にスタートし、1号機は98年6月、2号機は98年9月にそれぞれ着工した。2号機は現在、総合調整試験のピークを迎え、作業は順調に進んでおり、2003年8月に送電網に接続される見込み。建設費は2基合わせて40億j。

 一方、嶺澳発電所の建設プロジェクトは、1号機が1997年5月、2号機が同12月にそれぞれ着工しており、1号機はすでに2002年5月に営業運転を開始している。同発電所は中国が初めて自力で建設、管理する100万kW級の原子炉で、2基合わせた建設費は40億ドル。また、同サイトでは、第1期工事の2基のほかに、さらに2基の原子力発電所を建設する第2期工事も検討されているが、第10次5ヵ年計画期(2001〜2005年)に着工されるかどうかは明らかにされていない。

[台 湾]

新しい放射性物質管理法が成立

 陳総統の承認を受け、2002年12月25日、放射性物質の管理に関する法律がした。この法律は、放射線源や核燃料、放射性廃棄物の規制を目的としたもの。

 台湾の放射性物質管理はこれまで、1968年に公布された原子力法をもとに、原子能委員会(AEC)が規制指針(ガイドライン)や基準を設けていた。こうしたなか、行政院は、新規に放射性物質を規制する法律を制定するため、AECに「放射性物質管理法」の草案を作成するよう指示した。これを受け、AECは2年間に及ぶ検討を経て同草案を行政院に提出し、行政院は2000年3月にこれを承認した。その後、行政院から提出された同法案は立法院を通過した。

国聖発電所サイトに廃棄物固化施設を建設へ

 台湾電力公司は2002年12月23日、北部に立地する第二(国聖)原子力発電所(BWR、98万5,000kW2基)のサイト内に廃棄物固化施設を建設するあたって核能研究所(INER)と技術協力する契約を結んだ。

 INERが独自に開発した固化技術により、国聖発電所から出る200リットル入りドラム缶で1基あたり年間約345本の廃棄物を150本程度には削減できると期待されている。なお、この技術は、すでに南端にある第三(馬鞍山)原子力発電所(PWR、95万1,000kW)でも1998年から操業中の施設で採用されている。

[韓 国]

霊光6号機、営業運転を開始

 韓国水力・原子力発電会社(KHNP)によると、霊光6号機(PWR、100万kW)が2002年12月24日に営業運転を開始した。同機は7月31日に燃料の初装荷を完了した後、9月1日に初臨界に達し、9月16日には送電網に接続していた。

 なお、同じサイトにある5号機(PWR、100万kW)も5月21日に営業運転を開始しているため、2002年末で運転中の原子力発電所は合計で18基(1,571万6,000kW)となった。

[カナダ]

安全委、ブルースA3、4号機運転再開の環境影響評価を承認

 カナダ原子力安全委員会(CNSC)は2003年1月6日、ブルース・パワー(BP)社が申請していたブルースA発電所3、4号機(CANDU、各90.4万kW:休止中)の運転再開に関する環境影響評価報告書を承認した。

 ブルース発電所の運転者であるBP社は、現在休止中のブルースA発電所4基のうち、4号機を2003年4月に、3号機を同6月にそれぞれ運転再開することを前提に、CNSCに対して、運転再開に必要な運転認可の変更を申請していた。運転認可の変更には、カナダ環境影響評価法により、環境影響評価の実施とその結果のCNSCによる承認が必要とされている。

 ブルースA3、4号機に対する環境影響評価作業は、2002年3月に開始され、同12月には公聴会が開催された。CNSCは審査の結果、環境影響評価報告書は要求事項をすべて満たしているとした上で、ブルースA3、4号機の運転再開は、環境に対して重大な悪影響を及ぼすことはないとの結論を下した。

 CNSCはBP社の運転認可変更申請に対する公聴会が2月26日に終了した後、最終的な審議を経て、運転認可変更の承認を行うことになる。

 BP社は、ブルース発電所を所有するオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社との間で2001年5月にリース契約を結び、同発電所を運転している。出資者は、カメコ社(31.6%)、トランスカナダ・パイプライン社(31.6%)、BPCジェネレーション・インフラストラクチャー・トラスト(31.6%)、ブルース発電所の2労組(合わせて5.2%)。(原産マンスリー2002年9月号参照)

ブルースA4号機で燃料装荷始まる

 CNSCは2003年1月14日、BP社に対して、ブルースA3、4号機への燃料装荷を許可。これを受けてBP社は同日午後、ブルースA4号機への燃料装荷を開始した。

 4号機の燃料装荷作業は、およそ45日間で完了する予定で、この作業が終了し次第、同3号機の燃料装荷作業が開始される。

[英 国]

原子力・放射線技術者不足が深刻に

 今後10年内に原子力・放射線分野での技術者不足が深刻な問題を引き起こすと指摘した報告書「Nuclear and Radiological Skills Study」が2002年12月5日に公表された。貿易産業省、保健省、国防省、教育技能省、保健安全執行部の委託により原子力技能グループ(Nuclear Skills Group)がまとめた。調査結果を受けた貿易産業省は、政府や産業界、学界などの代表で構成されたタスクフォースをたちあげ、具体的な検討に入ることを明らかにした。

 英国には現在、原子力や放射線に関係した技術者や技能者が13万5000人いると推定されている。部門別にみると、「軍事・発電・核燃料サイクル・汚染浄化」部門に5万6000人、「非破壊検査・製薬」部門に4万9000人、「保健衛生」部門に3万人となっている。このうち「軍事・発電―」部門は、「クライアント」組織と「サポート」組織に分かれており、それぞれ4万6000人、1万人が従事している。サポート組織には、教育関係者、研究者、規制当局者などが入る。

 報告書によると、人員予想が最も難しいのは「軍事・発電−」部門で、とくに原子力発電所の新規建設が行われるかどうかによっても予想が大きく違ってくる。調査にあたった原子力技能グループは、軍事活動と核燃料サイクル事業は維持されるものの、新規原子力発電所の建設は行われないとの前提で人員を予想している。

 それによると、現在の年齢構成をベースにすると、「軍事・発電−」部門での今後15年間の退職による自然減を2万2600人と予測している。また、現在すでに3000人が不足している保健衛生部門でも、今後15年間に9600人が自然に減少するとみている。報告書では、この2つの部門を合わせた「1次ユーザー」の今後15年間の新規需要を1万4800人と推定している。このため、この2つの部門だけで、2002〜2017年の15年間に5万人の技術者・技能者を確保する必要がある。

 一方で報告書は、英国では最近、就職にあたって工学や自然科学系を避ける傾向が強まっていると指摘。絶対的に人数が少ない中で、原子力や放射線分野で必要とする人材を確保することが難しくなるとの見解を示している。

[フランス]

エネルギー政策策定で公開討議へ

 フランス政府は1月8日、今後のエネルギー政策を決定するため、「国家エネルギー論議」を今年3月から5月にかけて各地で開催する計画を公表した。開催の目的は、(1)エネルギー問題に関する情報を国民に伝達するとともに、エネルギー問題に対する解決策を示すこと、A今後30年間のエネルギー政策を策定する決定プロセスに国民を参加させること――にある。この討議はラファラン首相が昨年7月の就任演説の中で打ち出した施策で、これまで政府主導で推進してきた原子力を含めたエネルギー政策を国民参加型に変更するのが大きなねらい。討議の結果は、年内に策定予定のエネルギー政策法に反映される見通し。

 運営は、フォンテーヌ産業担当大臣を中心とし、討議のために任命された賢人委員会、諮問委員会などが支援する。「賢人委員会」は社会学者であるモラン氏、科学者のカスティヨン氏、科学ジャーナリストのレスジー氏からなり、討議の進捗状況を監督する。政財界や有識者など広範な分野から選出された約40名からなる「諮問委員会」は、全体の流れや情報を把握。国民議員であるベッソン氏(大統領多数派連合:UMP党)はエネルギー政策法の制定を踏まえ、国民議会と地方議会の連絡調整役にあたる。また、政府が討議を進める上で必要と判断した企業・団体の参加も認める。すでに開設されている専用の公式ホームページでは、一般国民からの意見や質問を受け付けている。

 開催日程は、3月中旬から5月下旬にかけて6回の討議が予定されている。場所は、初回と最終回がパリ、2〜5回はそれぞれストラスブール、ニース、ボルドー、レンヌの4都市。討議のテーマは、初回の「持続可能な発展とエネルギー」以外は、日常生活のエネルギー利用、エネルギーと企業、化石燃料資源、化石燃料以外の資源、持続可能なエネルギー政策となっている。政府は、エネルギー政策法案が策定されるまでは、原子力発電所の新規建設をはじめとする重要なエネルギー政策に関する決定を保留する考えを示している。

フェニックス運転再開へ

 フランスの原子力規制当局である原子力安全・放射線防護総局(DGSNR)のラコステ総局長は1月7日、改造工事のため、運転を停止しているFBR原型炉フェニックス(25万kW)の運転再開を許可する旨を、同炉を所有・運転する原子力庁(CEA)に書簡で通知した。同炉の安全性について審査していたDGSNRの原子炉顧問会は昨秋、運転再開を支持する勧告を提出。これを受けて、DGSNRがバシュロナルカン環境大臣とフォンテーヌ産業担当大臣と協議した結果、両大臣が承認を下したもの。

 フェニックスは1998年11月、25年目の大規模改良のため運転を停止。これまでに中間熱交換器の交換のほか、炉心の支持構造物や耐震防護施設の改造を行った。今回の許可を受け、フェニックスは運転再開の準備を進め、3月にも運転を再開する予定。再稼働後は、3分の2出力で6運転サイクルを行いながら、長寿命核種の分離・消滅研究を実施する。当初1年間を予定していた改造工事が4年程度に長引いたため、閉鎖時期は2008年ごろに延長される見通し。

 FBRのフェニックスとスーパーフェニックス(FBR、124万kW)の両炉は、1991年の放射性廃棄物法に定められている長寿命核種の処分研究を行う上で不可欠の研究施設とみられていた。しかし、前政権は経済性を理由にスーパーフェニックスを閉鎖。このため、廃棄物法に沿った処分研究は、フェニックスだけを利用して行うことになった。同法は廃棄物の処分研究のほか、深地層処分や中間貯蔵に関する研究成果を2006年までに国民議会に報告することを求めているが、地下研究施設での研究開発も遅れていることから、期日内に研究成果が出揃うかは疑問視されている。

ラ・アーグ再処理施設、多様な燃料の再処理が可能に

 フランス政府は1月7日、フランス核燃料会社(COGEMA)のラ・アーグ再処理施設の操業に関する許認可の変更に伴う、4件の行政命令を発給した。いずれもCOGEMAが5年前に申請したものの、前政権時に環境大臣を務めた緑の党のボワネ、コシュ両氏が署名を拒んだため、手続きが滞っていた。昨年の政権交代により就任したバシュロナルカン環境大臣とフォンテーヌ産業担当大臣が今回、そろって署名したことにより、ようやく発給が可能になった。

 行政命令発給により、UP2とUP3の両再処理施設に対して高燃焼度燃料、研究炉燃料、混合酸化物(MOX)燃料など多種な燃料を再処理することが可能になったほか、2つの施設を合わせた年間処理能力の上限を1,700トンとして、それぞれ最高1,000トンまで引き上げられた。また、使用済み燃料貯蔵プールの拡張や施設内の管理体制の変更も認められた。

 このほか、海水への排出に関する許可も出された。具体的には、核種ごとの厳密な限度が設定されたほか、年次報告の公表や長寿命RIの排出量削減のための調査をCOGEMAに義務付けている。

[イタリア]

原子力復活に向け議会で審議がスタート

 議会上院は2003年1月16日、段階的な原子力発電所の閉鎖や新規建設の禁止を盛り込んだ “脱原子力法案”を賛成34、反対16、棄権2で可決した。上院は、与党3党が過半数を占めているため、採択前から可決はほぼ確実と見られていた。法律には国王の署名が必要であるため、成立にはあと数週間を要する見込み。99年に就任以来、同法の策定にあたった緑の党のデルーズ環境大臣は、近く認可予定の40万kW級のコジェネレーション施設の建設計画に言及するなど、原子力の代替エネルギーの開発に積極的に取り組む姿勢を早くもアピールしている。

 法律が成立すると、原子力発電所の運転期間は一律40年と定められる。このため、運転中の7基は2015年から2025年にかけて閉鎖されることになる。原子力発電所の新規建設も禁じられるため、2025年にはすべての原子力発電所が姿を消す。ベルギーは現在、総発電電力量の約6割を原子力に依存していることから、脱原子力後の電力の安定供給を懸念する声は強い。さらに、京都議定書によるCO2削減目標(90年比7.5%)の達成や代替エネルギー確保に伴う電気料金の高騰など、環境、経済、技術のあらゆる分野に影響が及ぶものと見られている。

 一方、運転中の7基の原子力発電所を所有・運転するエレクトラベル社は、脱原子力は天然ガスへの依存を高め、多額の投資を強いるとともに地球温暖化防止対策を遅らせると強く抵抗している。同社は1月下旬、ドール1、2号機(PWR、各41万2000kW)の蒸気発生器(SG)の交換でウェスチングハウス社と118億ドルの契約を締結。据え付け工事は2004年に開始される予定。1975年に運転を開始した両発電所は、7基のうちで最も古く、脱原子力法に従えば2015年に閉鎖されることになる。

 ただ、法律には電力供給確保に支障が生じるような事態が生じた場合、原子力発電所を早期閉鎖しないとする例外措置が設けてあるため、法律の実効性を疑問視する見方もある。また、次回総選挙が5月18日に予定されている。脱原子力法を可決させた緑の党に対する国民の評価が、選挙結果にどう表われるかがひとつの焦点となる。

[スイス]

NAGRA、HLW・TRU処分研究で報告書

 放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)は2002年12月20日、使用済み燃料を含む高レベル放射性廃棄物(HLW)と超ウラン元素(TRU)を、乳白粘土層を母岩とする深地層に処分するための実行可能性実証プロジェクトの報告書をとりまとめ、連邦政府に提出した。それによると、今回調査を行ったスイス高原北部のチュルヒャー・ワインラント(Zurcher Weinland)の乳白粘土層(オパリナス・クレイ:堆積岩の1種)は深地層処分施設の母岩として適しており、放射線防護基準を満たすことが確認された。

 これを受けて、連邦政府の安全当局は今後、報告書を評価し、2006年ごろまでに将来の廃棄物の管理手順や手続きについて最終的な決定を下す意向を固めている。なお、処分場の選定は、一般認可手続きが別途、必要となる。

 スイスでは、NAGRAが実施主体となり、1970年代後半から高レベル廃棄物の最終処分のための広範な調査研究が行われた。85年には「確証プロジェクト1985」がとりまとめられ、深地層処分が技術、安全両面から妥当であることが実証された。これを受け、連邦政府はさらに適切な候補地が国内にあることを実証するようNAGRAに要請。このため、NAGRAは調査地点を乳白粘土層のチュルヒャー・ワインラントのほか、結晶質岩盤(花崗岩の1種)であるアールガオ州北部の2カ所に絞り込み、「処分の実現可能性実証プロジェクト」に着手した。結晶質岩盤については、すでに調査を終了し、この地層での処分が十分に実行可能であることが示されている。

 今回、乳白粘土層での調査が完了したことから、NAGRAは連邦政府が実証プロジェクトを承認し、高レベル廃棄物の深地層処分に関する調査をさらに対象地域を絞って進めるよう働きかけたいとしている。

[オランダ]

与党CDA、第1党を維持

 2003年1月22日に行われたオランダ総選挙(下院、定数150)は開票の結果、中道右派でバルケネンデ首相が率いるキリスト教民主勢力(CDA)が与党第1党の座を確保し、同首相の続投による政権継続がほぼ確実になった。今回の選挙は、前3党連立政権が昨年10月、フォルタイン党(LPF)の内部抗争により内閣総辞職したのに伴ない実施された。前回選挙で反移民を唱えて第2党になったLPFは、26議席から8議席へと大きく議席を減らした。 最大野党の労働党(PVDA)は23議席から42議席へと躍進したが、政権奪回はならなかった。連立与党で中道右派の自由民主党(VVA)は24議席から28議席へと健闘した。

 CDA、VVA、LPFからなる前政権は、発足後わずか90日たらずで解散となったが、その間、政府はボルセラ原子力発電所(PWR、48万1000kW)の運転再開を認める判決に対し、訴訟しない方針を表明。これに対し、今回の選挙戦で緑の党(グリーン左派党:GL)はボルセラ発電所の早期閉鎖を公約に掲げ、PVDAや社会党もこれに同調する考えを打ち出した。CDAが軸となる次期政権に、反原子力政策を主張する政党が加わる可能性は低いと見られているものの、将来の政局次第では脱原子力の動きが加速するとの懸念もある。こうした中、EPZ社は同発電所の運転を最短でも運転40年目にあたる2013年まで続ける姿勢を崩していない。

[スウェーデン]

83%が原子力発電を支持

 スウェーデンで実施された最新の世論調査によると、67%がバーセベック2号機の早期閉鎖に反対していることが明らかになった。

 この調査はスウェーデンの世論調査機関TEMOが1月、スウェーデン原子力安全訓練センター(KSU)の委託で1000人を対象に実施したもの。バーセベック2号機の閉鎖に関する設問は今回が初めて。それによると、同2号機の早期閉鎖については、3分の2を上回る67%が反対、賛成はわずか24%だった。

 今後の原子力政策について、「11基の原子力発電所の段階的閉鎖を支持する」と回答した人は14%にとどまった。これに対し、36%が「運転を継続し、運転寿命に到達したら新規炉で代替する」、32%が「安全性および経済性に問題がない限り運転を継続する」、15%が「原子力発電開発を推進し、必要とあれば新規炉を建設する」と回答。83%の人が原子力発電を支持している現状が浮き彫りになった。ちなみに、2001年11月にTEMOが実施した同様の世論調査の76%から7ポイント増えた。

 また環境対策での最重要課題について聞いたところ、75%が「CO2排出量の削減」、14%が「水力発電所建設の阻止」と回答。「原子力発電所の段階的閉鎖が環境面で貢献する」と回答した人の割合はわずか7%だった。

 政府は今年3月までに、バーセベック2号機を2003年末で閉鎖するかどうかの最終判断を下す予定である。なお同国の送電網を所有・運営するSvenska Kraftnät社は、「2号機が閉鎖された場合、南部スウェーデンへの電力供給は、厳冬期には電力輸入に頼るとしても危機に瀕する」と警告している。スウェーデンの2002年の原子力発電電力量は約656億kWhで、総発電電力量に占める原子力の割合は45.9%。温暖な気候による水力発電電力量の減少にともない、2002年は約53億kWhの輸入超過となった。

政府、オスカーシャム発電所のMOX装荷を許可

 政府は2002年12月、オスカーシャム原子力発電所の運転者であるOKG社に対し、同発電所でのMOX燃料装荷を許可した。OKG社は1998年11月、同発電所(BWR、1号機:46万5000kW、2号機:63万kW、3号機:120万5000kW)へのMOX燃料装荷を政府に申請していた。

 スウェーデンでは、1974年にオスカーシャム1号機に少数体(3体)のMOX燃料を試験装荷した実績があるが、その後スウェーデンが使用済み燃料の直接処分方針を固め、使用済み燃料の国外移送を禁じる法律が発効したため、国内の使用済み燃料はすべて中間貯蔵施設CLABで貯蔵。使用済み燃料の国外移送は1982年を最後に途絶えている。

 OKG社は、法律が発効する前の1970年代に、オスカーシャム1、2号機で発生した使用済み燃料(140トン)の再処理を英原子燃料会社(BNFL)に委託しており、BNFLの酸化物燃料再処理工場(THORP)が操業開始するまで、セラフィールドに貯蔵されていた。使用済み燃料は1997年に再処理され、136トンの劣化ウランと900kgのプルトニウムを回収している。スウェーデンはプルトニウムを高レベル廃棄物としてガラス/セラミック固化する技術を所有していないため、OKG社は、MOX燃料に加工、原子炉で照射した後、使用済み燃料として処分することを決めた。

 その後OKG社は2001年5月、仏フラマトムANP社との間でMOX燃料供給契約を締結。(1)フラマトムANP社は、回収ウラン(スウェーデンの使用済み燃料をBNFLが再処理して回収したもの)と低濃縮ウラン(ロシアの核解体高濃縮ウランを低濃縮したもの)を用いて、オスカーシャム発電所向け新燃料を供給、AフラマトムANP社はBNFLに委託し、セラフィールドMOX加工施設(SMP)で、使用済み燃料の再処理から生じたプルトニウムをMOX燃料に加工する、――などが決まり、スウェーデン政府の認可待ちの状態だった。

[リトアニア]

原子力オプションの堅持を主張するパクサス氏が新大統領に

 2003年1月5日に行われた大統領選挙決選投票の結果、原子力オプションの堅持を訴えたパクサス前首相が、現職のアダムクス氏を押さえて当選を果たした。パクサス氏の大統領就任式は、2月26日に行われる。

 EU加盟と引き換えに、同国唯一の原子力発電所であるイグナリナ発電所(RBMK-1500:旧ソ連製軽水冷却黒鉛型炉、150万kW×2基)の閉鎖が議会で承認される中、パクサス氏は選挙中、リトアニアはイグナリナ発電所閉鎖後も引き続き原子力発電を推進する必要があると主張していた。

 パクサス氏は、2000年10月27日に首相に就任した際にも、国内への安価な電力供給と電力輸出という最大の外貨獲得手段を維持するため、イグナリナ発電所の閉鎖撤回と、新たに西側製の近代的な技術を採用した原子力発電所を建設する意向を示していた。

 旧ソ連型炉の軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)であるイグナリナ発電所については、EUが安全性に対して強い懸念を示しており、閉鎖への支援ならびにリトアニアのEU加盟交渉の開始と引き替えに、同国に対して1号機を2005年、2号機を2009年までに閉鎖することを要求。2002年6月には、EUがイグナリナ発電所の閉鎖作業に加えて、閉鎖による国内経済への影響への対応も含めた広範な資金援助を行うことを条件に、リトアニアがEUの要求通りイグナリナ発電所を閉鎖するとの基本合意に達した。

 これを受けてリトアニア政府は同年7月、合意に基づいた国家エネルギー戦略の修正を決定。リトアニア共和国議会(セイマス)も10月中旬にこれを承認した。修正エネルギー戦略では、海外からの閉鎖のための十分な援助が受けられない場合と、閉鎖によって国内経済が深刻な影響を受ける場合には、イグナリナ2号機を2009年に閉鎖しないとしている。また、リトアニアは原子力発電を放棄すべきでないとして、新規の原子力発電所建設への法的、財政的、政策的な支持を明らかにしている。

[カザフスタン−ロシア]

トカマク実験施設の建設を計画

 カザフスタンは、ロシアの技術支援によりセミパラチンスク核実験場跡地のクルチャトフに熱核融合トカマク実験施設を建設する計画を進めている。2003年中にも着工し、2006年に完成する見込み。

 カザフスタン政府が国家プロジェクトとして建設を計画している「カザフ・トカマク試験炉(KTTR : Kazakh Tokamak Testing Reactor)」は、セミパラチンスク核実験場跡地のカザフスタン国家原子力センターに設置される。建設に当っては、ロシアのクルチャトフ研究所が技術的な支援を行い、電気物理機械研究所が設計の取りまとめを担当する。建設予算は1,500万ドルで、既に全額をカザフスタンの国家予算から充当することが決まっており、カザフスタン国内から移動した核弾頭の高濃縮ウランを低濃縮化して販売した代金を利用することも検討されている。

 2003年1月中旬にはロシアとカザフスタンの間で作業会合が開催され、今後の作業スケジュールや活動内容が検討された。近々にロシア原子力省(MINATOM)とクルチャトフ研究所、カザフスタンのエネルギー燃料省との間で協力覚書が作成されることになっている。

 KTTR施設は実際に核融合反応を研究するものではく、核融合炉に利用される材料の試験や、エネルギー負荷条件の試験など、核融合炉の実用化を支援する研究に用いられる。

[南アフリカ]

PBMRの発電試験装置が運転開始

 南アフリカでペブルベッド・モジュール高温ガス炉(PBMR)開発計画を進めているPBMR社は、ガスタービン試験装置の運転を2002年11月下旬に開始したと発表。12月現在、順調な成果を上げている。試験装置は世界最初の閉サイクル多軸形ガスタービンシステムで、設計と製作は、PBMR計画チームによる技術指導のもと、ヨハネスブルグ近郊のポチェフストローム大学工学部で行われた。

 今回の試験では、起動、最高出力運転、負荷追従運転、負荷遮断運転の4つの運転方式についての実証が行われる。PBMR社のニコルス社長は2002年12月中旬、報道機関に対して、試験結果は予想された数値とほぼ一致しているとコメントした。

 PBMRは電気出力12.5万kW(原型炉)〜16.5万kW(商業炉)の小型高温ガス炉で、輸出も視野に入れた次世代発電炉として、南アフリカ電力公社(Eskom)によって93年から検討が進められてきた。PBMR社は、PBMR計画の実施のためにEskomが中心となって設立された事業主体で、Eskomの他、英国原子燃料会社(BNFL)や米国のエクセロン社などが出資している。

 現在はフェーズTとして、原型炉建設のための環境影響評価作業(EIA)や詳細フィージビリティ調査が実施されており、出資者と政府の承認が得られ次第、原型炉建設にあたるフェーズUに移る予定。PBMR社では、2002年末にもフェーズUを開始できると見込んでいたが、政府からの原型炉建設の許可が遅れているため、2003年にずれ込んでいる。(2002年12月中旬)

[各国の2002年の運転実績]

メキシコ

 メキシコの2002年の原子力発電電力量は前年(87億kWh)より10.3%増の96億kWhとなった。また、平均設備利用率は80.6%となり前年より5.0ポイント上昇した。総発電電力量に占める原子力発電の割合は前年の4.6%から5.0%へ上がった。なお、同国の2002年の電力消費量は前年比で5%増加した。

 メキシコは現在、ラグナベルデ1、2号機(BWR、各68万2,000kW)が運転中。

ブラジル

 国営電力会社であるエレクトロニュークリア社(ETN)によると、ブラジルの2002年の原子力発電電力量は前年(143億kWh)より6.5%減の138億kWh、平均設備利用率は前年より1.6ポイント下げ76.3%を記録した。

 ブラジルは現在、アングラ1、2号機が運転中で、同じサイトには、建設が中断している3号機もあるが、資金調達のメドがたたず完成が遅れている。

フランス

 フランス原子力学会(SFEN)によると、昨年1年間の総発電電力量は前年比1.2%増の5,329億kWhを記録した。このうち原子力は前年比3.5%増の4,155億kWhを供給し、原子力シェアは全体の78%に達した。国内の電力消費量は、過去最高を記録した前年より0.8%減って4,487億kWhだった。また、フランスの電力輸出量は前年より77億kWh増の806億kWh、輸入量は4億kWh減の38億kWhとなった。

スウェーデン

 スウェーデンの2002年の原子力発電電力量は約656億kWhで、総発電電力量に占める原子力の割合は45.9%。温暖な気候による水力発電電力量の減少にともない、2002年は約53億kWhの輸入超過となった。

リトアニア

 リトアニアの2002年の原子力発電電力量は141億kWhで、前年(114億kWh)より24%増加した。総発電電力量に占める原子力発電のシェアは80.3%で、前年の77.6%から2.7ポイントの上昇。平均稼働率も62.1%で、前年の50%を上回った。

ウクライナ

 ウクライナの2002年の原子力発電電力量は780億kWhで、前年(762億kWh)より僅かに増加した。総発電電力量に占める原子力発電のシェアは45.1%で、前年の44.3%より0.8ポイントの上昇。欧州最大規模のザポロジェ発電所(VVER-1000、100万kW 6基)が全原子力発電電力量の52.8%を供給した。同発電所の設備利用率は78.4%で、全原子力発電所の平均設備利用率は75.2%。最高を記録したのは、フメルニツキ1号機(VVER-1000、100万kW)の80.6%。

 2002年中に発生した異常事象は45件で、前年の67件より減少。すべてが国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル1以下であった。

アルメニア

 アルメニア唯一の原子力発電所であるアルメニア2号機(VVER−440、40万8,000kW)の2002年の原子力発電電力量は22億9,000万kWhで、前年の19億kWhより20.5%増加した。稼働率は、前年の60.5%から9.1ポイント上昇して69.6%。総発電電力量に占める原子力発電のシェアは41.8%で、前年の34.8%から7ポイント上昇した。


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