[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2003年1月中旬〜2003年2月中旬)

米DOE、2004年度の予算要求を公表

―原子力水素製造、Pu利用など視野に予算要求

 エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は2月3日、2004会計年度(2003年10月〜2004年9月)の予算要求を公表。@核抑止の維持A核拡散管理Bエネルギー輸入依存度の低減Cクリーンで健康的な環境の達成Dエネルギーの供給確保に向けたインフラの改善E世界レベルの科学研究能力の維持――を目的に掲げ、総額234億ドル(約2兆7600億円)を要求した。

 このうち、原子力のエネルギー利用を担当する原子力科学技術局(Office of Nuclear Energy, Science and Technology)関係では、「先進的燃料サイクル・イニシアチブ」(Advanced Fuel Cycle Initiative: AFCI)と「原子力水素イニシアチブ」(Nuclear Hydrogen Initiative)の2つの新たなプロジェクトのスタートが盛り込まれた。昨年は、官民協力によって2010年までに新規原子力発電所の運転開始を目指す「原子力発電2010」(Nuclear Power 2010)プロジェクトがスタートしているが、新しいプロジェクトはさらに将来をにらんだものとなっている。

先進的燃料サイクル・イニシアチブ

 先進的燃料サイクル・イニシアチブ(AFCI)では、@使用済み燃料の量の削減A使用済み燃料中に含まれる放射毒性の強い長寿命核種の分離B使用済み燃料中にまだ含まれるエネルギーの回収――を目的に6300万ドルが計上されている。

 AFCIとしての予算要求は今回が初めてだが、すでに別の形でプロジェクトが始まっている。まず、2001年度には「先進的加速器利用」(Advanced Accelerator Applications)プログラムとしてスタート。2003年度の「使用済み燃料のパイロプロセス(高温処理)と核変換」(Spent Fuel Pyroprocessing and Transmutation)プログラムを経て、AFCIに拡大改組された。

 AFCIは、2015年までを視野に入れたシリーズ1と2030年までをにらんだシリーズ2で構成されている。

[シリーズ1]

  • 核拡散抵抗性に重点を置きながら、使用済み燃料の先進的な化学処理および電気冶金処理技術を開発する。
  • 軽水炉および改良型ガス炉での利用に向け、核変換用燃料を製造する。商業炉燃料として適切かどうかを確認するため、試験サンプルを製造し、アイダホ国立工学環境研究所のATR(Advanced Test Reactor)とオークリッジ国立研究所のHFIR(High Flux Isotope Reactor)などの照射施設を用いて核変換用燃料の試験に着手する。
  • 先進的な燃料リサイクル・コンディショニングによって、使用済み燃料を有用な燃料とそうでない廃棄物に分離する技術を開発、実証する。アイダホ研のATRとホットセルを用いて、AFCIシリーズ1とシリーズ2向けの候補燃料を製造、照射するとともに、照射後試験を実施する。

[シリーズ2]

  • 高速炉および加速器駆動システムで用いることができる核変換用燃料の製造・試験を含めて、使用済み燃料が持つ放射毒性低減の実行可能性を実証する。
  • 次世代炉の各種燃料オプションの選別作業を完了するとともに、燃料の照射ならびに照射後試験計画を作成し、燃料サンプルの製造に着手する。
  • 使用済み燃料中に含まれるプルトニウムなどのアクチニドを用いて核変換用燃料を製造するため、核拡散抵抗性を備えた先進的な電気冶金処理技術のプロセス開発、ホット試験を実施する。照射済み燃料からのアクチニドの回収ならびにリサイクルされたアクチニドを含む燃料集合体の遠隔製造について調査する。電気冶金処理技術の商業規模へのスケールアップについて実行可能性調査を行う。


  • 原子力水素イニシアチブ

     DOEは2002年1月に公表した燃料電池自動車開発プロジェクトである「FreedomCAR」イニシアチブにつづき、2004年度から「FreedomFuel」イニシアチブに着手することを明らかにした。FreedomFuelイニシアチブは、水素の供給側に焦点をあて、製造、輸送、貯蔵といった分野での各種問題の解決をめざす。2004年度では、2つのイニシアチブを合わせて2億7200万ドルが要求された。

     原子力水素イニシアチブは、FreedomFuelイニシアチブの一環として、原子力を用いた水素製造の可能性について調査するもので、400万ドルが計上されている。2004年度では、「原子力水素技術ロードマップ」を作成し、水素を製造するための化学プロセスと原子力技術を評価するとともに、各プロセスを用いた場合の経済的な利点と環境影響が評価されることになっている。また、最も有望な複数の候補を明らかにした上で、将来、原子力による水素製造プラントを実証するにあたって必要になる研究開発項目も明らかにされる。ロードマップが完成した時点で、原子力を用いた先進的な水素製造システムと先進的な原子炉の設計を統合した施設のコンセプトを作成することになっている。

     原子力水素イニシアチブでは当面の目標として、@熱化学法を用いた水の分解によって水素を経済的に製造する技術を2006年までに実証するA商業規模の水素製造システムを2008年までに運転する――ことを掲げている。


    原発新設に向け事前サイト許可取得めざす

     官民の協力のもと、2010年までに新規の原子力発電所の運転をめざす「原子力発電2010」プログラムに対しては、前年度とほぼ同額の3500万ドルが要求された。2002年度では、連邦政府または民間事業者が所有するサイトが原子力発電所の建設に適しているかどうかという調査に加えて、スケジュールや資金の予測が行われた。こうした作業の完了を受け、原子力発電所の建設に先立ってサイトだけ許可を取得するという「事前サイト許可」の申請は、2003年度の第4四半期に原子力規制委員会(NRC)に対して提出されることになっている。

     またDOEは、2003〜2004年度にかけて、原子力発電所の「建設・運転一体認可」手続きを実証するため、電気事業者と費用を分担するプロジェクトの公募を行うことを計画している。DOEは、2010年までに新規の原子力発電所の運転を開始するためには、遅くても2008年までに建設・運転一体認可を取得する必要があると説明している。


    ITER復帰、ヤッカマウンテン計画も着々と

     2004年度の予算要求では、国際熱核融合炉実験炉(ITER)計画への復帰に対して1200万ドルが計上された。また、ネバダ州のヤッカマウンテンで進められている使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物の貯蔵所開設に向けて、前年度と同水準の5億9100万ドルが要求された。このうち、1億6100万ドルは核廃棄物基金から、4億3000万ドルは軍事用核廃棄物基金から支出される。

     ヤッカマウンテン・プロジェクトを担当している民事用放射性廃棄物管理局(OCRWM)は、2004年度の活動として、2004年中にはNRCに対して正式に認可申請を行うことを計画している。DOEとしては、2008年までに建設認可を取得し、2010年までに貯蔵所の操業を開始したい考えだ。

    [終わり]

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