[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2003年1月中旬〜2003年2月中旬)

[韓 国]

廃棄物処分場サイトを4候補地に絞込み

 産業資源部(MOCIE)と韓国水力・原子力発電会社(KHNP)は2003年2月4日、放射性廃棄物処分場のサイト候補地4ヵ所を公表した。候補サイトは朝鮮半島の東西の海岸沿いに2ヵ所ずつ選定され、2004年3月に官民で構成される候補地選定委員会が東西に1ヵ所ずつ、計2ヵ所のサイトを最終決定する。東海岸では慶尚北道・盈徳(ヨンドク)と同道・蔚珍(ウルチン)が、西海岸では全羅南道・霊光(ヨンガン)と全羅北道・高敞(コチャン)がそれぞれ選定された。

 韓国の放射性廃棄物処分場の建設プロジェクトは、1986年に科学技術処(MOST)が中心となって進められたが、安眠島は地元住民の反対で1990年に白紙撤退を余儀なくされた。また、掘業島は同島付近の海底に活断層が存在することが判明したため1995年に中止された。その後、同プロジェクトはMOCIEが主体で進められ、2001年12月から候補地選定作業が行われていた。

 なお、MOCIEが1998年に策定した放射性廃棄物管理計画では、2008年までにサイトを選定して、中・低レベル廃棄物処分場を操業させるとしている。このほかに、2016年までに使用済み燃料の集中中間貯蔵施設を操業開始させることが盛り込まれている。

[米  国]

ブラウンズフェリー1号機、運転再開へ

 テネシー峡谷開発公社(TVA)は2月14日、ブラウンズフェリー1号機の運転再開に向けたプロジェクトが順調に進んでいると発表した。TVAによると、運転再開に向けた作業は約12%が終了している。

 ブラウンズフェリー1号機の運転再開プロジェクトは、20%の出力増強も含めて17億〜18億jかかると見積もられており、2007年5月の運転再開を目標としている。なお、TVAは2004から2005年にかけて、9,900万jをかけ同2、3号機の定格出力をそれぞれ12万kW増強する計画である。

 ブラウンズフェリー発電所は1984~1985年にかけて、管理や運転上の問題から全3基の運転を停止した。その後、同2号機は1991年、同3号機は1995年にそれぞれ運転を再開した。

USEC、ウラン濃縮試験施設建設を申請

 米国濃縮会社(USEC)は2月12日、オハイオ州ポーツマスに遠心分離法を採用したウラン濃縮試験施設を建設するための設置許可を米原子力規制委員会(NRC)に申請した。NRCから承認が得られ次第、建設に着手し、2005年の稼働開始を目指す。総費用は1億5,000万j

 USECは、米エネルギー省(DOE)との間で新型のウラン遠心分離機を共同開発することで合意しており、ポーツマスの試験施設で240台の遠心分離機がテストされることになっている。USECは試験施設での運転を踏まえ、DOEと共同開発した遠心分離技術を採用した濃縮工場の建設に2007年以降に着手する。濃縮工場が操業開始するのは早くても2009年以降とみられている。建設費用は10億j〜15億j。

 また、USECとDOEの共同プロジェクト以外にも、ヨーロッパの濃縮会社であるウレンコ社(英国、オランダ、ドイツの共同出資)主導のコンソーシアム(ルイジアナ・エナジー・サービス:LES)が最新の遠心分離技術を導入した濃縮工場をテネシー州ハーツビルに稼働させるプロジェクトを進めている。LESは3月末までにNRCに建設許認可申請書を提出、2005年に着工を予定している。建設費は総額11億jで、2008年の操業開始を目指す。

[英 国]

BE社、カナダの原子力発電事業から撤退

 BE社は2月14日、大口債権者からの同意を得て、同社が所有するブルース・パワー(BP)社のすべての株式を売却することで正式に契約を締結。カナダの原子力発電事業から完全に撤退した。

 BP社は、BE社のカナダ法人であるBEカナダ社(82.4%)、カメコ社(15%)、ブルース発電所の2労組(Power Worker's UnionとSociety of Energy Proffesionals:合わせて2.6%)がブルース発電所の運転のために設立した電気事業者で、ブルース発電所(A:1〜4号機:CANDU、各90.4万kW:96〜98年から運転休止/B:5〜8号機 各84.0万kW、CANDU=運転中)を運転している。2001年5月にカナダ原子力安全委員会(CNSC)から運転認可の発給を受けて、同発電所を所有するオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社との間でリース契約を結んでいる。

 売却契約によると、BE社はBP株の79.8%を、カメコ社、TransCanada Pipelines(TransCanada)とBPC Generation Infrastructure Trust(BPC)のカナダ3社からなるコンソーシアムに、残りの2.6%をブルース発電所の2労組に売却。これによりカメコ社はBEカナダ社から新たにBP社の16.6%を獲得し、既存の15%と合わせて31.6%を所有する。TransCanadaとBPCもそれぞれBP社の31.6%を所有する。

 コンソーシアムはまた、BE社が所有しているオンタリオ州で最初の風力発電会社であるフーロン・ウィンド社の株式50%も取得することで合意している。

 なお、同じく売却が予定されている米国の原子力発電事業者アマージェン社の株式50%は、2003年6月30日までに売却される予定である。BE社はこれらの所有資産売却から得られた資金を英国政府に対する債務の支払いの一部に充当する。

[フランス]

EDF、発電所に新型シミュレータを導入

 フランス電力公社(EDF)は1月下旬、各原子力発電所サイトに訓練用の最新型運転シミュレータを導入する計画を明らかにした。フランスでは現在、19地点に合計58基の原子力発電所(PWR)が運転している。今回の計画では、1億3,700万ユーロを投じて、19サイトすべてに最新型もしくは改造型のシミュレータを設置し、運転経験を積ませるとともに緊急時の訓練を受けさせるのがねらい。タレス社製の最新型装置は、従来のタイプと比べて20倍の性能を備えており、3万にのぼる事象をシミュレートできる。新しいシミュレータが導入されるのは、すでに据え付けが終わっているベルビルのほか、ルブレイエ、クリュアス、ゴルフェッシュ、パンリー、ノジャン・シュール・セーヌ、シボーの合計7サイト。また改造型シミュレータは、いままでシミュレータがなかったサンローラン・デゾー、トリカスタン、ダンピエール、フラマンビル、サンタンバン・サンモーリスの合計5サイトに設置される予定。

 シミュレータ導入後は、運転員向けに最初、最低10週間の訓練が実施され、その後も4年間にわたり追加トレーニングが行われる予定。このほか、安全分野のエンジニアや運転チーム・リーダーの育成に活用されるほか、年間12回実施される国レベルの避難訓練でも利用される。

 また、EDFは34基の90万kW級原子力発電所で、耐震性を含めた安全点検が終了したことを明らかにした。一連の点検は1997年から順次、実施されていた。点検中に異常が検出された箇所は、安全当局に報告されるとともに、必要な措置が施されている。EDFによると、130万kW級の発電所での点検も今年中に終了する見通し。

CEA長官交代

 フランス政府は2003年1月8日、前年末に3年間の任期を終えたコロンバニ原子力庁(CEA)長官の後任に、ビュガ(A.Bugat)氏を指名した。同氏は1973年、CEAに入庁、軍事部門に所属した。その後、産業省勤務を経て、92年にCEAの先端技術局長に就任、1999年以降はCEA傘下のテクニカトム社で会長兼最高経営責任者(CEO)を務めていた。

 退任したコロンバニ氏はCEA長官のほか、COGEMAやフラマトムANP社を子会社にもつ持ち株会社、アレバ社の監査役会長を2001年の発足以来、兼務している。現時点では、同氏のアレバ社でのポストに変更はない。

[ドイツ]

SPD、2つの州議会選挙で敗北

 ドイツ北部のニーダーザクセンと中西部のヘッセンの両州で2月2日、州議会選挙が行われ、いずれも連邦政府与党の社会民主党(SPD)が最大野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)に敗れた。昨年9月の総選挙(連邦議会下院)後、初の地方選挙だったが、2期目のシュレーダー政権にとって厳しい評価が下された。今回の選挙結果を受けて、各州政府代表で構成される参議院(上院:69議席)は、野党の議席が35から41に増える見通し。

 シュレーダー首相の地元でもあるニーダーザクセン州では、SPDは得票率を前回より14.5ポイント減らし33.4%に後退。これに対してCDU・CSUは12.4ポイント増の48.3%を獲得し、1990年から政権の座を維持してきたSPDに代わって政権につくことになった。また、ヘッセン州でも、SPDの得票率が10.3ポイント減の29.1%だったのに対し、CDU・CSUは5.4ポイント増の48.8%を獲得し、政権を維持した。緑の党と自由民主党(FDP)は両州でわずかに得票率を伸ばした。

 両州の選挙とも主な争点は財政問題で、原子力は含まれなかった。SPDの敗因は、財政赤字削減のため、公約に反し増税案を打ち出したことへの批判が噴出したものと見られている。なお、ニーダーザクセン州は、4基の原子力発電所が運転中のほか、各発電所から出る使用済み燃料を一時的に貯蔵するゴアレーベン中間貯蔵所などのバックエンド施設もある。ヘッセン州には、運転中のビブリス原子力発電所のほか、94〜95年にかけて操業を停止したウラン・MOX燃料工場がハナウにある。

[スイス]

SVA、脱原子力の影響を議論

 2つの反原子力国民請願(イニシアチブ)に関する国民投票を5月18日にひかえ、スイス原子力協会(SVA)は2月17日、国内外のエネルギー関係者らを招き、脱原子力に伴う影響について広範な議論を行った。その中で、SVAのPellaud理事長は脱原子力は非現実的であるとした上で、主要な電源のひとつである原子力が雇用の安定に果たす役割は大きいなどと指摘、脱原子力が経済・社会に及ぼす影響について警鐘を鳴らした。

 2つのイニシアチブとも、運転中の5基の原子力発電所の段階的な閉鎖を求める内容。パワー・ウィズアウト・アトム(PWA)という市民団体は、古いベツナウ1、2号機とミューレベルクの3基はイニシアチブ可決後2年以内に、残りの2基は運転30年目に閉鎖することを要求。一方、モラトリアム・プラス(MOP)は、原子力発電所の運転期間を一律40年に限った上で、新規原子力発電所の建設凍結をさらに10年間延長するよう求めている。国民投票では、この2案に議会で現在、審議中の政府案が添えられる形となる見通し。

 SVA主催の会議で、スイスの風力発電会社は、2010年までに5,000万〜1億kWh規模の風力開発をめざす政府の目標は現状(600万kWh/年)と比べて現実離れしていると厳しい見方を示したほか、風力発電は中期的に見ても電力需要の隙間(ニッチ)を補うにすぎず主要電源とはなりえないとの見通しを述べた。また、ドイツの研究機関は、脱原子力に伴う影響は代替エネルギー確保や化石燃料価格の変動、CO2排出量削減目標の達成などいくつかの要因が絡むものの、スイス経済や環境にプラスの影響を及ぼすことはないと警告した。さらに、スイスの電力会社は1990年までに4基の原子力発電所をすべて閉鎖したイタリアの実例を紹介し、原子力がなくなるとスイスは電力輸出国から一転して輸入国になるとの見通しを示した。

 一方、ベツナウ発電所を所有する北東スイス電力会社(NOK)の理事は、脱原子力の是非にかからわず、放射性廃棄物処分の問題解決にあたらなければならないことを強調した。スイスでは昨年、中低レベル放射性廃棄物の処分研究サイトをニトバルデン州に建設する計画が再度、住民投票にかけられ、否決されたばかり。これを受けて原子力関係者は、国が地元に対してより強力なリーダーシップを発揮しないかぎり、処分場の開設どころか研究施設の建設さえできないと訴えていた。

[ロシア−インド]

インドで建設中のクダンクラム発電所への燃料供給で契約

 ロシアの核燃料製造企業TVELは2003年2月12日、インド原子力発電公社(NPCIL)との間で、建設中のクダンクラム発電所(VVER、各100万kW 2基)に対する2010年までの燃料供給契約を取り交わした。金額は約4億米ドルで、クダンクラム発電所で必要とする燃料のすべてをロシアが供給する。使用済み燃料のロシアへの返還は盛り込まれていない。

 クダンクラム発電所はロシア製のVVER-1000型炉2基からなり、2002年2月にロシアの原子力輸出会社アトムストロイ・エクスポルト(ASE)とNPCILが原子炉供給契約に署名、同3月に着工された。ロシアの受注総額は推定15億ドル。運転開始予定は1号機が2007年、2号機が2008年。

[ロシア]

原子力砕氷船「勝利50年」号、2005年就航へ

 バルチック造船所は2003年2月25日、建設が中断している原子力砕氷船「勝利50年」号(旧名:ウラル)を完成させる契約をロシア運輸省海上輸送局との間で取り交わした。就航は2005年の予定。

 この契約は、カシヤノフ首相による連邦政府命令「ロシア連邦の原子力砕氷船艦隊ならびに勝利50年号の建設完了に対する財政支援」に従って行われた。命令では、勝利50年号の完成のために、連邦政府の予算25億ルーブルを2003年から2005年に掛けて支出するとしている。予算配分は、2003年:8億2,000万ルーブル、2004年:9億1,300万ルーブル、2005年:7億6,700万ルーブル。

 勝利50年号は1989年10月4日にバルチック造船所で建造が開始され、1993年12月3日には進水した。しかし、予算不足から1995年に進捗率80%程度で建設が中断されている。

 なお、この政府命令には、現在就航中の原子力砕氷船に対する15万時間の寿命延長も盛り込まれている。ロシア政府はこれらの措置により、原子力砕氷船による北極海北東航路の定期運行が2012〜2015年まで可能になるとしている。

[ウクライナ]

EBRD、2原発への融資の条件緩和を検討

 欧州復興開発銀行(EBRD)は2003年2月中旬、ウクライナで建設中のフメルニツキ2号機(VVER-1000=ロシア型PWR、100万kW)とロブノ4号機(同)の原子力発電所2基を完成させるプロジェクト(K2R4計画)への融資に関する協議を再開するため、ウクライナ側の要請に沿った融資条件の緩和についての検討を開始した。

 これは、2002年10月に行われたEBRDのルミエール総裁とウクライナ側関係者の会談で、2001年末以来中断しているK2R4計画への融資協議の再開に合意したことをうけたもの。以前EBRDが提示した融資条件の中には、デコミッショニング費用などを確保するため、国内の原子力発電による電気料金を2.5〜2.8米セント/kWhに値上げするという項目が含まれているが、ウクライナ側は国内経済に深刻な影響が出るとして受け入れに難色を示していた。

 2003年2月中旬にロンドンでEBRD関係者と会談したウクライナのハイデゥク副首相によれば、現在の価格である1.23米セント/kWhにデコミッショニング基金への前払金を上乗せして、1.28米セント/kWhとする案の検討に対してEBRDが前向きの姿勢を示している。なお、同副首相は、原子力発電の安全性向上やデコミッショニングに関する費用についてはまだ確定していないとしている。

 G7とウクライナは1995年12月、チェルノブイリ発電所を2000年までに閉鎖する見返りにG7が代替電源確保のための資金援助を行うとする了解覚書に調印。ウクライナは代替電源として、建設中のフメルニツキ2号機とロブノ4号機の完成を主張、G7側もこれに大筋で同意した。

 EBRDは2000年12月7日、ウクライナに対し、@チェルノブイリ発電所の永久閉鎖の確約、AG7とEUによる技術支援とウクライナ国内における政府機関から独立した原子力規制機関の設置、BK2R4プロジェクトに対する他の国際金融機関の融資、C国際通貨基金(IMF)の同国に対する拡大信用供与(EFF)の延長――を1年以内に実施することを条件に、2億1,500万米ドルの融資を決定した。

 しかし、2001年末にウクライナ側が上記4項目とは別に、EBRDが要求している国内電気料金の値上げなどの細かな条件のいくつかについてさらなる協議を求めたため、EBRDは状況が整った時点で新しい議論をウクライナ側と開始することとして、融資の決定を見送った。

 一方、ウクライナはEBRDとの融資交渉と並行してロシアとの間で2001年10月に両国の協力によりフメルニツキ2号機とロブノ4号機を完成させることで合意。同年12月には合意文書に調印した。(原産マンスリー2002年11月号参照)

[カザフスタン]

2002年のウラン生産量、過去最高に

 カザフスタンの国営原子力会社カザトムプロムは2003年2月中旬、2002年の国内総ウラン生産量が過去最高の2,850トン(U3O8)に達したと発表した。また、ウラン販売による総収入は7,000万米ドル以上となった。

 中でも主力のウラン生産センターであるカザフスタン南部のステプノエ鉱山の生産量は、1987年のソ連時代の最高記録である952トンを上回る、1,030トンに達した。

 カザトムプロムは、2010年にはステプノエ鉱山のウラン生産量を8,000トンにする計画。また、2027年には国内全体の生産量を1万5,000トンに引き上げ、世界最大のウラン生産国にするとしている。

ロシア参加でVVER-640型炉3基建設へ

 2003年2月中旬にモスクワで開かれたロシアとカザフスタンの首脳会談で、カザフスタンで計画されているバルハシ発電所(VVER-640、64万kW×3基)をロシアの参加により建設することが確認された。

 バルハシ発電所の建設計画は、首都アルマトイから北400kmのバルハシ湖岸のウルケンにロシア製VVER-640型炉(64万kW、設計寿命60年)3基からなる発電所を建設するというもの。当初は1998年から順次建設する計画だったが、計画が遅れ、フィージビリティ調査がようやくロシアのサンクトペテルブルグにあるAtompoekt国立研究所によって2000年に完了。しかし、カザフスタン政府は2000年9月26日、建設費や運転維持費が高いことに加え、公衆の理解が得られないことなどを理由に着工を見送った。

 そうした中で、バルハシ発電所建設計画は2002年8月20日に政府によって承認された「2002〜2003年のカザフスタンにおけるウラン鉱山産業と原子力発電の開発コンセプト」の中で、再び取り上げられることになった。2002年末には、議会に計画が提出されたが、最終的な決定はまだ下されていない。

 カザフスタンでは、カスピ海沿岸アクタウにあるシェフチェンコ発電所で高速増殖炉原型炉「BN-350」(出力15万kW)が1973年から運転され、発電に加えて海水脱塩にも利用されていた。しかし、出力が小さく経済性に劣っていたことに加え、ソ連の解体により技術的な支援を受けられなくなったことなどから、設計上の運転期間(30年)に達する2003年を待たず、1999年4月閉鎖された。


[各国の2002年の運転実績]

韓 国

 2002年の原子力発電電力量は、霊光5、6号機が相次いで営業運転を開始したため、前年より70億kWh増の1,190億kWhとなったが、平均設備利用率は前年より0.5ポイント減の92.7%に下がった。総発電電力量に占める原子力発電の割合も、前年より0.4ポイント減の38.9%となった。

 韓国では現在、霊光、古里、蔚珍、月城などの4サイトに18基の原子力発電所が稼働中で、設備容量は合計1,571万6,000kW。建設中の原子力発電所は、2004年6月と2005年6月に運転開始を予定している蔚珍5、6号機(PWR、各100万kW)の2基。

 現行の原子力開発長期計画では、2008~2014年までに新たに8基の原子力発電所を増設する一方で、古里1号機と月城1号機を2008年と2013年にそれぞれ閉鎖する予定になっており、2014年時点では26基となる。

台  湾

 2002年の原子力発電電力量は前年より30億kWh増の380億kWhとなった。平均設備利用率は前年より8.7ポイント増の87.8%に上昇した。総発電電力量に占める原子力発電の割合は前年より1.3ポイント増の22.9%となった。なお、2002年の電力需要は前年より5.3%増加した。

 台湾では現在、金山、国聖、馬鞍などの3サイトに6基の原子力発電所が稼働中で、設備容量は合計514万4,000kW。建設中の原子力発電所は、2006年と2007年に運転開始予定の龍門(第四)1、2号機(ABWR、各135万kW)の2基。

インド

 2002年の原子力発電電力量は前年より4億kWh増の196億kWhを記録した。総発電電力量に占める原子力発電の割合は前年並の3.7%。平均設備利用率は前年より6.5ポイント増の89.5%だった。

 インドでは現在、14基の原子力発電所が運転中で、建設中のものは、タラプール3、4号機(PHWR、各54万kW)、クダンクラム1、2号機(VVER、各100万kW)、カイガ3、4号機(PHWR、各22万kW)そしてラジャスタン5、6号機(PHWR、各22万kW)の合計8基。

アルゼンチン

 2002年の原子力発電電力量は前年より13億kWh減の58億kWhで、総発電電力量に占める割合は前年より0.8ポイント減の7.5%。平均設備利用率は、アトーチャが前年より14.3ポイント下がって34.4%、エンバルセも14.0ポイント下がって83.6%となった。

 アルゼンチンでは現在、アトーチャ1号機(PHWR、35万7,000kW)とエンバルセ原子力発電所(CANDU、64万8,000kW)の2基が運転中。建設中はアトーチャ2号機(PHWR、74万5,000kW)の1基。同機は、1980年に着工して進捗率は80%に達しているが、1995年から建設が中断している。

ドイツ

 ドイツ原子力産業会議(DAtF)によると、2002年の原子力発電電力量は1,650億kWhを記録、過去最高となった前年の1,713億kWhを3.6%下回った。運転中の19基による平均稼働率も前年の91.4%から5.4ポイント下がり86.0%となった。総発電電力量に占めるシェアはまだ明らかになっていないが、例年は約3割程度。また、DAtFは、原子力発電は1年間に約1億6,500万トンのCO2排出削減に貢献しており、これは国内の輸送部門による排出量に等しいと説明している。

 近年、増加傾向にあった発電電力量が減少した背景には、発電所の計画外停止が重なったことが大きく影響している。E.ON社が所有するウンターベーザー発電所(PWR、141万kW)は2002年9月4日から、ハンブルク電力(HEW)のブルンスビュッテル原子力発電所(BWR、80万6000kW)が同2月から、それぞれ熱交換器の溶接部分の欠陥や炉心スプレー系配管での放射性蒸気漏れのため運転を停止している。このため、両機の稼働率はそれぞれ60.5%、13.1%にとどまった。

 一方、電気事業連合会(VDEW)が2月17日に発表した速報値によると、水力を含む再生可能エネルギーによる2002年の総発電電力量は、前年比18%増の450億kWhに達し、総発電電力量に占める割合は約8%となる見通し。内訳は水力239億kWh(4.3%)、風力168億kWh(2.9%)、バイオマス・廃材42億kW(0.7%)、太陽光1億kWh(0.1%)。

ベルギー

 エレクトラベル社によると、運転中の7基の原子力発電所による昨年1年間の原子力発電量は、前年の441億kWhから2.3%増の451億kWhとなった。総発電電力量に占める原子力の割合は、前年比1.9ポイント増の60.1%。ベルギーの原子力シェアは例年、フランス、リトアニアに次いで世界第3位を記録している。平均設備利用率は前年の87.7%を2.1ポイント上回る89.8%を記録した。

スイス

 スイス原子力協会(SVA)によると、運転中の5基の原子力発電所による2002年の年間発電電力量は、過去最高となった2001年を1.5%上回る257億kWhを記録した。スイスでは、発電だけでなく熱供給も行われており、ゲスゲン発電所は周辺の工場むけに1億7,000万kWh、ベツナウが「レフナ」地域暖房システムむけに1億4,000万kWhを供給した。2002年の各発電所の発電量と稼働率は以下の通り。

  • ライプシュタット  92億kWh (91.7%)
  • ゲスゲン      79億kWh (93.1%)
  • ベツナウ1号機   29億kWh (91.2%)
  • ベツナウ2号機   30億kWh (94.3%)
  • ミューレベルク   28億kWh (90.7%)

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