[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2003年2月中旬〜2003年3月中旬)

[中国−パキスタン]

中国、パキスタンに2基目の原子炉を供給へ

 中国の温家宝首相とパキスタンのジャマリ首相は3月24日、北京の人民大会堂での会談終了後、両国政府の経済技術協力に関する了解覚書(MOU)に署名した。

 このうち、原子力関連では、中国がパキスタンに30万kWの加圧水型炉(PWR)1基を供給することが盛り込まれており、現在稼働中のチャシュマ1号機(PWR、32万5,000kW)と同じサイトに建設の予定。また、中国はこのプロジェクトで5億ドルの融資を行い、中国核工業集団公司(CNNC)が原子炉の製造を担当する。

 稼働中のチャシュマ1号機は、1992年2月のパキスタン原子力委員会(PAEC)と当時の中国核工業総公司(旧CNNC)との間で取り交わされた原子炉供給協定に基づき1993年8月に着工、2000年9月に営業運転を開始していた。採用されている原子炉は、中国の秦山1号機(PWR、30万kW)の改良型。

[米 国]

WH社、ブラウンズフェリー1号機の制御棒交換を受注

 ウェスチングハウス(WH)社は、テネシー峡谷開発公社(TVA)からブラウンズフェリー1号機(BWR、109万8,000kW)の制御棒185本の交換を受注した。

 今回の受注は、WH社が2002年にTVAとの間で結んだブラウンズフェリー2、3号機(BWR、各115万5,000kW)の制御棒に供給する長期契約に関連しており、今回の追加契約分を含めると総額の受注額は1,200万ドル。受注した制御棒は、スウェーデンの核燃料工場で製造され、年内には納品が始まり2008年に完了する見込み。

 なお、ブラウンズフェリー発電所は1984〜85年にかけて、管理や運転上の問題から3基すべての運転を停止した。その後、2号機は1991年、3号機は1995年にそれぞれ運転を再開した。1号機の運転再開についてもTVA理事会が2002年5月、運転再開を承認している。運転再開には、20%の出力増強も含めて17億〜18億ドルかかると見積もられている。2007年5月の運転開始が目標。

NRC、ノースアナとサリー両発電所の運転認可更新を承認

 米原子力規制委員会(NRC)は3月20日、ドミニオン社が所有するノースアナ1、2号機(PWR、1号機=97万1,000kW、2号機=96万3,000kW)とサリー1、2号機(PWR、1号機=84万2,000kW、2号機=84万7,000kW)の運転認可の20年間延長を承認した。これにより運転認可期間は、ノースアナ1号機は2038年4月まで、2号機が2040年8月まで、サリー1号機は2032年5月まで、2号機が2033年1月までとなった。

 両発電所の承認により、運転認可の延長を認められた原子力発電所は全部で14基となった。(次ページ表を参照)

NRC、リバーベンド発電所の出力増強を承認

 米原子力規制委員会(NRC)は2月5日、エンタジー社が所有するリバーベンド原子力発電所(BWR、100万1,000kW)の1.7%の出力増強を承認した。これによって同機の設備容量は104万3,000kWから106万kWに上がる。エンタジー社は承認を受け、4月末までに出力増強を実施する予定。

 NRC事務局は、原子炉蒸気発生設備(NSSS)や計装制御系統、電気系統、事故評価、放射線影響、運転・技術仕様の変更などに焦点をあてて検討を行い、出力を増強した場合でも安全に支障をきたさないと判断、同機の出力アップを承認した。

「原子力発電所の最適化」で提案公募

エネルギー省(DOE)の原子力科学技術局はこのほど、原子力発電所の運転改善を目的とした提案の公募を開始した。「科学技術に関する大統領諮問委員会」(PCAST)による1997年の勧告を受けて2000会計年度に始まった「原子力発電所の最適化」(Nuclear Energy Plant Optimization: NEPO)プログラムの一環として行われるもので、公募の締め切りは4月24日。

具体的な公募テーマは、電気ケーブルの老朽化管理、軽水炉の燃料と炉心の最適化、計装・制御、金属・材料の老朽化、先進的な非破壊検査、使用済み燃料管理、定格出力アップ、セキュリティ強化のための新技術――などで、設備容量の拡大や設備利用率の向上をはかるのがねらい。2003年度に500万ドルの予算が計上されるとみられている。

[米国−欧州]

DOE、運転期間延長等で欧州と協力へ

米国エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は3月6日、欧州原子力共同体(EURATOM)のメンバーとの間で原子力協力協定に署名した。原子力関連技術の研究開発分野での協力の枠組みを定めるのが目的。協力の分野としては、原子力研究のほか、発電所の運転期間延長・管理、輸送とエネルギー用の新しい燃料、高レベル放射性廃棄物管理など。

エイブラハム長官は同10日、英国のヒューイット貿易産業大臣との間で、エネルギーの研究開発分野の協力を盛り込んだ了解覚書に署名した。石炭クリーン技術や燃料の多様化、環境保護、エネルギー安全保障、国際貿易の拡大などの分野で情報交換と人材の交流をはかる。

[カナダ−米国]

カメコ社、米ウラン濃縮プロジェクトから撤退

 カナダのカメコ社は3月10日、ルイジアナ・エナジー・サービシズ(LES)社が米国テネシー州ハーツビルで進めているウラン濃縮プロジェクトから撤退すると発表した。撤退の理由は明らかにしていない。カメコ社は2002年7月、LES社が進めているプロジェクトに参加することに合意し、了解覚書(MOA)に署名していた。

 カメコ社はサスカチェワン州サスカツーンに本部を置く世界最大のウラン供給事業者で、世界中の原子力発電所にウラン製品を提供しており、トロントとニューヨークの証券取引所に上場している。

 LES社には、ヨーロッパの濃縮会社であるウレンコ社(英国、オランダ、ドイツが共同出資)のほか、フルーア・ダニエル社、エクセロン社、デューク・エナジー社、エンタジー社、ウェスチングハウス(WH)社などが参加している。濃縮工場には、ウレンコ社が開発した最新式の遠心分離技術が導入される。LES社は今後、カメコ社の撤退にかかわらず、年内に米原子力規制委員会(NRC)に建設許可申請書を提出し、2004年後半の着工を予定している。建設費は総額11億ドルで、2007〜2008年に1,000dSWUで操業を開始し、2012年には能力を3,000dSWUに引き上げる計画。

[カナダ]

安全委員会、ダーリントン発電所に5年間の運転認可を発給

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は2月21日、オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社のダーリントン発電所(CANDU、93万5,000kW×4基)に対して5年間の運転認可を発給した。有効期限は2008年2月29日。

カナダでは運転認可の有効期間を定めた規定がなく、CNSCは対象となる施設の状況を検討して、ケース・バイ・ケースで有効期間を決めている。しかし、通常は2年間の運転認可の発給が一般的で、今回の5年間の認可は原子力発電所に対するものとしては過去最長。

OPG社のスミス副社長は、同社のダーリントン発電所が初の5年間の運転認可を得たことについて、数年前から実施してきた運転高度化推進計画の成果であるとのコメントを発表。今後も新たな運転認可期間を通じて、最高の運転成績を達成するよう務めたいとしている。

なお、CNSCは3月20日、OPG社のピッカリング発電所(A:CANDU、54万2,000kW×4基 休止中/B:CANDU、54万kW×4基 運転中)の廃棄物処理施設に対しても、2008年3月31日までの5年間の運転認可を発給した。

[英 国]

BE社、米アマージェン社株を単独で売却へ

 経営危機に陥っている原子力発電事業者のブリティッシュ・エナジー(BE)社は3月7日、米国のアマージェン社株を単独で売却すると発表した。アマージェン社はBE社(50%)と米エクセロン社(50%)の共同出資会社で、米国内で3基の原子力発電所を所有・運転している。

 これまでBE社は、エクセロン社と合同でアマージェン社株を売却することを計画していたが、これまでの入札金額がBE社の希望額に達していなかったため、エクセロン社と合同での売却計画を撤回。今後あらためて、BE社単独で売却交渉を実施することにしたもの。

 BE社は2月14日、同社が所有するカナダのブルース・パワー(BP)社株のすべてを売却。アマージェン社株の50%も、2003年6月30日までに売却し、これら売却から得られた資金を英国政府に対する債務の支払いの一部に充当する予定になっていた。

 なお政府は3月7日、BE社の返済期限をさらに2004年9月30日まで延長した。ただし最高融資限度額は、これまでの6億5000万ポンドから2億ポンドに減額された。

[フランス]

首相、「原発新設は白紙」を表明

フォンテーヌ産業担当大臣は3月18日、パリで開催されたフランス初のエネルギー討議の冒頭、欠席したラファラン首相に代わり、国民が原子力の長所と短所を見極めた上で、安全性や放射性廃棄物の処理処分問題の解決策を踏まえて、将来のエネルギー政策を論じることが重要だと討議の意義を強調した。また、同首相はエネルギー行政を地方政府に委任することがエネルギー開発と雇用確保の両面から望ましいとの考えを示した。さらに、原子力発電所の新規建設は全くの白紙の状態であると述べ、昨年11月に地元紙に報じられたパンリーサイトへの増設計画を改めて否定した。

この討議は、ラファラン首相が昨年7月の就任演説の中で打ち出した施策で、政府が主導してきたエネルギー政策を国民参加型に変更するのが大きなねらい。しかし、主催者であるラファラン首相は今回、イラク問題が差し迫ったため、欠席を余儀なくされた。討議の結果は、年内に策定予定のエネルギー政策法に反映される見通し。

「エネルギー政策への新たな挑戦」と題された初回の討議には、500名以上が参加した。「賢人委員会」のモラン委員長(社会党)による「エネルギー:社会の主題」と題した基調講演に続き、政財界の代表者や科学技術分野の専門家によるパネル討論が行われた。パネルは3部からなり、@エネルギー需要は常にプラスかAなぜ生産と消費の方法を変えなければならないかB(エネルギー政策を)誰が決めるかがテーマ。次回の討議は、4月3日にストラスブールで「エネルギーと日常生活」をテーマに開催される予定。

[ドイツ]

ブルンスビュッテル、1年ぶりに運転再開

 ハンブルク電力(HEW)によると、ドイツ北部のシュレスビヒ・ホルシュタイン州にあるブルンスビュッテル原子力発電所(BWR、80万6000kW)は3月25日、約1年ぶりに運転を再開した。同発電所は2001年12月14日に起こった炉心スプレー系配管での放射性蒸気漏れの原因究明のため、2002年2月18日以来、運転を停止していた。

 HEWは2002年5月、配管の破損は多量の放射線分解ガス(水素と酸素)の反応によるもので、外部への放射性物質の漏れはなく、運転員に危険はなかったとする内部調査結果をとりまとめるとともに、所長の更迭や幹部の異動を行い、早期運転再開をめざした。しかし、連邦環境・原子炉安全省(BMU)や州当局は、漏洩後の第一報の遅れなど同社の安全文化(セイフティー・カルチャー)上の問題を指摘し、さらなる原因究明と信頼性の回復を求めた。今回の運転再開は、BMUと州当局がこうした問題が解決し、同社への信頼度が満足できるレベルまで向上したと認めたもの。

 なお、発電所が停止していた間、2002年9月には総選挙が実施され、社会民主党(SPD)が僅差でキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)を破り、SPDと緑の党の第2次連立政権が発足した。シュレスビヒ・ホルシュタイン州も、連邦政府と同じくSPDと緑の党が連立政権を握っている。

[スイス]

改正原子力法が可決

 スイス全州議会(上院)と国民議会(下院)は3月21日、改正原子力法案を承認した。可決された原子力法は、原子力オプションの維持、使用済み燃料の再処理の2006年以降10年間のモラトリアム、放射性廃棄物最終処分場の立地に対する州の拒否権の廃止などが盛り込まれている。具体的には、1990年以来、凍結されていた新規原子力発電所の建設は計画の是非を別途、国民投票に委ねることとなり、事実上原子力モラトリアムが解除されることになった。再処理については、再処理路線の継続か凍結で上下院の主張が分かれていたが、最終的には上院の主張どおり現行の契約が切れる2006年7月以降の10年間にわたって凍結される。また、原子力施設の立地に関する権限を州から連邦政府に移すことになったのは、ニトバルデン州で昨年9月に行われた住民投票により、同州のベレンベルクに低・中レベル放射性廃棄物(LLW・ILW)の研究所を建設する計画が再度否決されたことを受けたもの。

 スイスでは5月18日に2つの反原子力国民請願(イニシアチブ)に関する国民投票が予定されており、改正原子力法は政府による3つめの選択肢として位置付けられている。2つのイニシアチブとも、運転中の5基の原子力発電所の段階的な閉鎖を求める内容。ひとつは、古いベツナウ1、2号機とミューレベルクの3基はイニシアチブ可決後2年以内に、残りの2基は運転30年目に閉鎖することを要求。もう1つは、原子力発電所の運転期間を一律40年に限った上で、新規原子力発電所の建設凍結をさらに10年間延長するよう求めている。

[オランダ]

研究炉の新設が浮上

 オランダ政府内の委員会はこのほど、稼働中の高中性子束炉(High Flux Reactor:HFR、熱出力4万5000kW)に代わる新しい研究炉の建設を提言した。HFRは、オランダ北部のペテンにある欧州委員会(EC)の共同研究センター(Joint Research Center)が所有・運転する研究炉。1961年11月に初臨界に達した後、放射性同位元素(RI)の製造や医療照射、中性子科学研究などに使われているが、2015年に閉鎖されることが決まっている。このため同委員会は、同炉が閉鎖された場合の影響について評価していた。それによると、HFRの閉鎖から1カ月後には、少なくともガン診断用のモリブデン99とガン治療用のイリジウム92の2種類が欧州域内で供給不足に陥るとみられている。

 この提言を受けて、オランダのファンヘール環境大臣は3月、議会での答弁の中で新規研究炉の建設を支持するとともに、建設サイトは欧州の中でもすでに医療用RI製造施設が整った場所が好ましいとし、ペテン内への立地を視野に入れた発言を行った。同相は近く、この提言を欧州全体の政財界に呼びかけ、域内のRI自給にむけて新規研究炉建設について議論したい意向を固めている。

[イタリア]

ENEL、フランスからの電力輸入拡大を検討

 閉鎖炉のデコミッショニングと廃棄物管理を行う専門機関である原子力発電所管理会社(SOGIN)によると、イタリア政府は電力公社(ENEL)に対して、欧州一高いとされる同国の電力料金を下げるため、フランスからの電力輸入の拡大を検討するよう指示した。イタリアは現在、総発電電力量の75%を国外からの輸入石油と天然ガスに依存しているため、電力料金が欧州平均と比べて1.6倍もする。イタリアがフランスから輸入している電力は毎年、全体の14〜18%程度で、2001年は177億kWhだった。

 イタリア議会は昨年、ENELなどの国内企業が国外での原子力事業に参画することを促す法案審議に着手した。この法律が成立すると、ENELは将来、電力を輸入するだけでなく、国外の原子力発電所の所有や運転に出資する可能性もあると見られている。

 イタリアでは、原子力反対運動やチェルノブイリ事故の影響を受け、87年に原子力凍結が決まり、90年までに全4基が閉鎖されたため、現在運転中の原子力発電所はない。主な電源は石油、ガスが各35%、水力が20%、石炭が10%となっている。

[ロシア−米国]

元プルトニウム生産炉の運転延長で合意

ロシアと米国は3月12日、シベリアの旧秘密都市で稼働中の元プルトニウム生産炉3基の閉鎖に関する改定合意文書に調印した。調印は、ロシア原子力省(MINATOM)のルミャンツェフ大臣と米国エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官によって、ウィーンのIAEA本部で行われた。今回の合意は、1997年に米露で取り交わされた合意内容を改定するもので、トムスク4、5号機(各LWGR、10万kW)を2005年に、クラスノヤルスク3号機(LWGR、10万kW)を2006年に閉鎖することが取り決められた。米国はこれら3基の閉鎖作業に加えて、代替の石油火力コジェネレーション施設の建設に対して数億米ドルを財政支援する。

ソ連時代に核兵器の開発拠点となっていた秘密都市にあるプルトニウム生産炉は、ソ連崩壊と冷戦終了に伴いその多くが役割を終え、閉鎖された。しかし、ロシアの原子力産業が軍需から民需への転換を進める中で、トムスク-7(現、セーベルスク)にあるトムスク4、5号機と、クラスノヤルスク-26(現、ジェレズノゴルスク)にあるクラスノヤルスク3号機の3基がコンビナートと都市への熱と電力の供給を目的に運転が続けられている。

1997年9月23日の米露合意では、ロシアは2000年にプルトニウムの生産を終了することと、トムスク4、5号機を2002年と2003年に、クラスノヤルスク3号機を2004年にそれぞれ停止することが取り決められた。しかし、ロシア政府は財政難から短期間でこれら3基の代替となるプラントを建設する余裕がないとして、閉鎖期日の延期を米国に打診。トムスク4、5号機を2005年12月31日、クラスノヤルスク3号機を2006年12月31日まで運転することを提案していた。

ロシア側によれば、今回の修正協議では当初、プルトニウムの生産量が最も少なくなるように炉心の形状を変更して運転を続けることが政府間で合意されていた。しかし、科学技術面での合同協議の結果、この方法ではロシアのプルトニウム廃棄問題の解決にはならないとの理由で、原子炉を閉鎖して代替施設で置き換えることが採用された。なお、今回の改定合意は、閉鎖期日までに代替となる化石燃料を利用したコジェネレーション施設が建設される場合のみ、効力を持つことになっている。

プルトニウム廃棄問題に関してロシアと米国は、2000年9月に取り交わしたモスクワ協定で、お互いに34トンの核兵器解体プルトニウムの処分に合意している。ルミャンツェフ大臣によれば、現在稼働中の旧プルトニウム生産炉が閉鎖されるまでに発生するプルトニウムはおよそ10トンで、これらは米露協定の34トンに加えて処分されることになるだろうとしている。ロシアでのプルトニウム処分は、MOX燃料に加工してVVER型炉(ロシア型軽水炉)に装荷して発電に利用することが計画されており、国際的な資金援助20億米ドルによってフランスで稼働中のMELOX施設を基にしたMOX燃料加工工場がウラルかシベリアに建設されることになっている。しかし、同大臣は、現在のところ調達された資金は8億米ドルに過ぎず、財政面での不安からMOX工場の着工はまだ出来ないとしている。(原産マンスリー2001年8月号参照)

[ロシア]

カリーニン3号機の起動準備が完了

国営原子力発電会社ロスエネルゴアトムのカリーニン発電所(VVER-1000=ロシア型PWR、100万kW×2基:運転中、100万kW×1基:建設中)事務所は3月6日、建設中の3号機の起動に向けた一連の準備作業がすべて完了したと発表した。

起動には天然資源省の許認可が必要となるが、その前提となる連邦政府の環境専門家によるレビューを開始するのに必要な書類一式がすでに天然資源省に提出されており、60名の専門家からなる検討委員会も設置されている。ロスエネルゴアトムは、許認可を得た上で5月には起動試験を開始する計画で、12月に初臨界を達成する予定。試験が順調に進めば2004年中には営業運転を開始する。

[ウクライナ]

内閣、K2R4のフィージビリティ調査を承認

ウクライナの内閣は3月15日、建設が中断しているフメルニツキ2号機(VVER-1000=ロシア型PWR、100万kW)とロブノ4号機(同)の2基の完成(K2R4計画)に関するフィージビリティ調査の結果を承認した。完成に必要な経費は、フメルニツキ2号機が33億1,000万グリブナ(約6億2,100万米ドル)、ロブノ4号機が34億2,000万グリブナ(約6億4,200万米ドル)と試算されている。フメルニツキ2号機は2004年夏に、ロブノ4号機はその数カ月後に営業運転を開始する計画。

フィージビリティ調査の政府承認により、K2R4計画はプラントの完成に向けて大きく前進することになるが、建設に必要な経費の融資についての欧州復興開発銀行(EBRD)との協議はまだ合意には至っていない。EBRDは2月中旬、K2R4計画への融資に関する協議を再開するため、ウクライナ側の要請に沿った融資条件の緩和についての検討を開始していることを明らかにしているが、具体的な協議再開の日程は未定としている。

G7とウクライナは1995年12月、チェルノブイリ発電所を2000年までに閉鎖する見返りにG7が代替電源確保のための資金援助を行うとする了解覚書に調印。ウクライナは代替電源として、建設中のフメルニツキ2号機とロブノ4号機の完成を主張、G7側もこれに大筋で同意した。

西側の融資の取り纏めを行っているEBRDは2000年12月、ウクライナに対して条件付で2億1,500万米ドルの融資を決定した。しかし、2001年末にウクライナ側がEBRDの提示した条件のいくつかについてさらなる協議を求めたため、EBRDは状況が整った時点で新しい議論をウクライナ側と開始することとして、融資の決定を見送った。

一方、ウクライナはEBRDとの融資交渉と並行してロシアとの間で2001年10月に両国の協力によりK2R4計画を進めることで合意。同年12月には合意文書に調印している。(原産マンスリー2003年3月号参照)

使用済み燃料管理新指針の検討を開始

ウクライナの原子力発電関係者は協議の結果、国内の使用済み燃料の管理に関する新しい統一指針に関する草案を作成し政府に提出することを目的とした特別作業グループを設置する。3月21日に開かれた原子力関係者会合の場で決定されたもので、会合には国営原子力発電会社エネルゴアトム、ウクライナ国家原子力規制委員会(SNRCU)、国内5ヵ所の原子力発電所からの代表が出席した。新指針案の政府への提案は4月末に行われる見込み。

エネルゴアトムによれば、作業グループはまず、使用済み燃料の処理・貯蔵、特別基金の設立、一括した原子力発電所運営の構造改革、関連した規制の変更などの作業に要する費用の評価を行う。

ウクライナでは2001年からザポロジェ発電所(VVRE-1000、100万kW×6基)サイトで、使用済み燃料乾式貯蔵施設が試験運用を開始。2002年にはSNRCUがこの施設への使用済み燃料の搬入継続を許可している。ウクライナ政府は現在、他のVVER型炉の発電所サイトにもこれと同様の施設を整備することを計画している。また、発電所サイト内での貯蔵に加えて、一部の使用済み燃料は、再処理や中間貯蔵のためにロシアに輸送されている。

[リトアニア]

イグナリナ発電所に使用済み燃料中間貯蔵施設建設へ

リトアニア政府は3月19日、イグナリナ発電所(RBMK-1500、150万kW 2基)サイト内に設置する使用済み燃料中間貯蔵施設の設計並びに建設を正式に承認した。施設はモジュール式が採用され、2005年10月までには第1期の運用を開始し、2009年10月にはすべてが完成する予定。

経済省によれば、国の一般的な手続き要件に従い、施設の入札方法が近いうちに公示され、早急に設計作業が開始されることになっている。総費用はおよそ8,050万ユーロと試算されており、建設費は欧州復興開発銀行(EBRD)が運営するイグナリナ国際廃炉支援基金(IIDFS)から充当される。EBRDは同計画についての入札に関する予備審査の受付けの告示を2002年6月に実施しており、正式な入札を経て2003年11月には契約を締結したいとしている。

IIDFSは2000年にイグナリナ発電所の閉鎖の支援を目的に設立された。基金の総額は現在のところ1億9,100万ユーロで、欧州委員会(EC)、EU加盟8カ国、ノルウェー、ポーランドからの拠出金で構成されている。

旧ソ連型炉の軽水冷却黒鉛減速炉(RBMK)であるイグナリナ発電所については、EUが安全性に対して強い懸念を示しており、閉鎖への支援ならびにリトアニアのEU加盟と引き替えに、1号機を2005年、2号機を2009年までに閉鎖することが決まっている。

[各国の2002年の運転実績]

カナダ

カナダの2002年の原子力発電電力量は761億kWhで、前年の775億kWhより1.8%減少した。設備利用率は79.5%で、前年の81%より1.5ポイントの減少。一方、総発電電力量に占める原子力発電の割合は14%で、前年(13%)より僅かに上昇した。(3月上旬)

スペイン

 スペイン原子力産業会議によると、2002年の原子力発電量は630億kWhにのぼり、過去最高だった前年(636億kWh)をわずかに下回った。総発電電力量に占める原子力発電量の割合も、前年より1ポイント減少し26%となった。9基の原子力発電所の平均稼働率は91%を記録した。9基のうち、コフレンテス発電所(BWR、イベルドローラ社所有)は昨年、6万kWの出力増強を行い、グロス出力は108万5,000kWになった。

ロシア

ロスエネルゴアトムによれば、ロシアの2002年の原子力発電電力量は1,412億kWhで、前年の1,349億kWhを上回る過去最高を記録した。2001年末に営業運転を開始したロストフ(ボルゴドンスク)1号機(VVER-1000、100万kW)が寄与した。

国内の総発電電力量は8,860億kWhで、原子力のシェアは前年の15.4%を若干上回る15.9%であった。また、平均設備利用率は71.7%で、前年の70.3%より1.4ポイント上昇した。(2003年3月下旬)


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